【合理的配慮好事例第12回】手帳や業務日誌の工夫で体調管理と相談しやすい環境作りを


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障害者雇用にとって欠かせない健康管理やストレス軽減への合理的配慮。支援機関との連携相談員等による定期的な面談といった取り組みが紹介されることが多いものですが、仕組みの導入には時間がかかる場合もあるでしょう。

比較的すぐに導入できる方法としては、社員手帳や業務日誌の活用があります。合理的配慮好事例解説シリーズ第12回では、手帳や業務日誌を活用して障害者の健康管理をサポートした3社の好事例を紹介します。

1日3回、社員手帳に数値で体調を記入し業務調整や不安軽減へ—THK株式会社 山口工場

THK株式会社は製造業の企業で、身体障害者・知的障害者・精神障害者を雇用し、職場定着に取り組んできました。

同社の山口工場では、障害をもつ従業員の安定した勤怠を目指すため、社員手帳を活用しています。体調を数値化して毎日記録することで、本人・上司・ジョブコーチなどがその日の体調やこれまでの体調の変化を把握しやすくなりました。

体調の記入にあたり、特別なフォーマットは作成されていません。普通の社員手帳に適宜数値を記入するという方法を採用しています。

<社員手帳への体調の記録方法>

  • ジョブコーチが毎日、朝と夕に声をかけて疲労度などの体調確認を行う
  • 体調は朝・昼・帰宅前に記入してもらう
  • 体調は10段階で数値化して毎日社員手帳に記入してもらう

<体調の記録のメリットと活用方法>

  • 体調が変化した場合に、過去の例を参考にして回復時間や回復過程を推測
  • 本人自身が自分の傾向を理解でき、不安が軽減
  • 朝・昼・退勤前の体調で1〜5が続いたり、1日の総合評価が△の記入が続いたりする場合は、従事している作業内容を確認して調整
  • 週に1度の話し合いで体調の変化を確認し、翌週の勤務計画や業務量を調整

こうした取り組みにより、本人と周囲の従業員とのコミュニケーションも増え、職場全体にとっても不安の軽減につながりました。

【参考】
支援機関の活用や企業内における専門人材の育成等による精神障害者の職場改善好事例集(平成26年度)|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
THK株式会社

業務日報で体調と就寝時間・起床時間を記録し欠勤減少へ—株式会社ぐるなびサポートアソシエ

株式会社ぐるなびサポートアソシエは、株式会社ぐるなびの特例子会社です。事務関連業務や福利厚生サービスの提供などを行っており、16名の従業員のうち14名が障害をもつ従業員です。

ぐるなびサポートアソシエで従業員の体調管理に活用しているのは業務日報。毎日作成する業務日報に体調などを記入する欄を設けました。

同社が体調管理の重要性を意識するようになったきっかけは、精神障害をもつ従業員の集中力低下、ミスの増加などです。

就寝時刻が不規則であることが原因で睡眠不足のまま出勤していた従業員は、仕事の能率が低下して気分も落ち込み、不眠につながるという悪循環に陥ってしまい、欠勤が増えていました。そこで、業務日報に体調を書くことを通して、しっかり睡眠をとり生活リズムを整えることを意識してもらったのです。


出典:精神障害者のための職域拡大及び職場定着に関する職場改善好事例集(平成25年度)資料・支援ツール(p.60)|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構

業務日報への記入の際は以下の項目も記入し、定期面談での振り返りにも活用しました。

<業務日報への体調の記録方法>

  • 体調について記載する欄の中に5段階の中から1つ選択して記入する
    • ①とても良い
    • ②良い
    • ③普通
    • ④やや悪い
    • ⑤悪い
  • 就寝時間と起床時間を記入する
  • コメント欄に、体調や眠気などについて記入する

<体調の記録のメリットと活用方法>

  • 自分の生活リズムと体調の関係性を把握しやすくなる
  • 業務日報に記入された体調などの情報を定期面談で振り返ることができる
  • 生活リズムに乱れが生じている場合は、規則的な生活リズムの維持を意識できる

以上の取り組みにより、同社では体調不良による欠勤者を減らすことに成功したとのことです。

【参考】
精神障害者のための職域拡大及び職場定着に関する職場改善好事例集(平成25年度)|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
株式会社ぐるなびサポートアソシエ

選択式で記入しやすく!就業状況とあわせて確認できる業務日報—株式会社ワールドビジネスサポート

株式会社ワールドの特例子会社である株式会社ワールドビジネスサポートでも業務日報に体調に関する記録欄を設けています。全体で184名の障害者が働いており、商品管理業務、社員食堂での食器洗浄、飲食品の販売など多くの職域で活躍しているそうです。

同社では精神保健福祉士の資格をもつサポートスタッフを事業所に配置。さまざまな部署、現場で働く障害のある従業員、業務管理者からの要請に応じて現場で相談支援を行う他、店長などの職場リーダーへの教育も担っています。

その中で、障害をもつ従業員の業務日報に取り入れているのが「1日の振り返り」という記入欄。多くの部分が選択式で記入しやすく、相談したいことを自由に書ける欄も設けられました。


出典:精神障害者のための職域拡大及び職場定着に関する職場改善好事例集(平成25年度)資料・支援ツール(p.63)|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構

<業務日報への体調の記録方法>
以下の項目について、選択肢に○をつける

  • 就業状況
    • 通勤
    • モチベーション
    • 業務量
    • 業務内容
    • 人間関係
    • 挨拶
  • 健康状態
    • 体調
    • メンタル面
    • 生活面
  • 相談
    • 困りごと・悩みごと

平成25年の好事例集に掲載された事例では、業務日報の具体的な活用方法は紹介されてはいません。しかしフォーマットを見ると、店長など職場リーダーにとって振り返るべき項目を把握しやすいといったメリットがあることが分かります。

従業員本人にとっても、自分の状況を確認・理解するのに役立つ項目が多く設定されています。

【参考】
精神障害者のための職域拡大及び職場定着に関する職場改善好事例集(平成25年度)|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
株式会社ワールドビジネスサポート

障害者雇用における体調管理のための社員手帳・業務日誌の記入・活用方法

職場ですぐに活用できる体調管理ツールとして便利な社員手帳や業務日報。毎日使えるものだからこそ、日々の健康に関わることを記入して振り返りやすくなります。

<体調管理のための手帳・業務日誌の記入・活用方法>

  • 体調に関する記入欄を設ける
  • 体調は5〜10段階などの数字または選択式にすると記入しやすい
  • 必要に応じて睡眠時間を記録する欄を設ける
  • 体調と合わせて就業状況なども記入しておくと関連性を把握しやすい
  • 定期的な面談や課題解決の際に記録や業務内容・量を確認する
  • 自由に相談や悩みごとを記入できる欄を設ける

体調に関する記入欄にどのような項目が必要かは、事業所でどのような方が働いているかにもよります。障害をもつ従業員と相談しながら、健康上の課題や業務に影響しやすいことをピックアップしてみてください。

記入した内容を面談で振り返る際は、

  • 生活リズムはどうか
  • 体調の変化はどうか
  • きちんと睡眠をとれているか
  • 業務内容や業務量は適切か
  • 記入されている悩みごとなどは解決できているか

といった点を中心に見ていくとよいでしょう。

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