分かりやすい大人の発達障害と知的障害の違い


近年よく耳にするようになった大人の発達障害。「物事を何度も繰り返し練習しながら覚える」「片付けが苦手」といった印象から、知的障害とどう違うのか分かりにくいかもしれません。そこで、今回は発達障害の種類や特徴、知的障害の特徴とともに、両者の違いや対象となる障害者手帳の違いを解説します。

発達障害とは? 種類・特徴と精神障害者保健福祉手帳

発達障害で比較的世間に知られているのは、「自閉症」「アスペルガー症候群」「注意欠陥多動性障害(ADHD)」などがあります。他に、全体的な知能のおくれはないものの読む・書く・計算する・推論するなどで一部のスキルを身につけるのが難しい「学習障害(LD)」という言葉を聞いたことのある人もいるでしょう。

2004年12月に制定された「発達障害者支援法」(2016年改正)では、これらに類する脳機能の障害で通常低年齢において現れるものを発達障害の定義に含めています。

発達障害のおおもとの原因と考えられているのが、中枢神経系の成熟や機能に障害があること。そうした原因によって、発達障害をもつ人にはさまざまなアンバランスさが生じるとされています。

発達障害は脳機能の問題なので、本人や親御さんの怠慢・しつけ・環境等のせいではありません。

ASD(自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害)

ASDとは、Autism Spectrum Disorderの略で、日本語にすると「自閉スペクトラム症」となります。それまで自閉症・アスペルガー症候群・広汎性発達障害などの名称が用いられていたのをまとめて表現した言葉です。

日本では約100人に1人いると報告されています。

ASDは遺伝的な要因が複雑に関係していて、生まれつき脳機能に障害が見られます。どのような障害があるかは個人差の大きいものですが、主な特徴は以下の5つです。

<ASDの主な特徴>

  • コミュニケーションや感情を共有することがとても苦手
  • 1つの興味・事柄に関心が限定され、強いこだわりがある
  • 感覚刺激にとても過敏(またはとても鈍感)
  • 子供のころからこうした特徴がある
  • 年齢に応じた一般的な発達から見て、対人関係・学習・仕事などで障害が生じている

ただし、「子供のころからこうした特徴がある」という項目については、症状が軽度の場合はASDがあると分からず、大人になってから判明する場合もあります。

また、ASDをもつ人には知的障害も多く見られます。知的障害は、最新のDSM-5(「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」)では発達障害に含まれますが、日本の法律では発達障害と分けて考えるのが原則。知的障害をともなう発達障害の場合、法律としては、まずは「知的障害」に分類されます。

ASDの根本的な治療方法は、まだ見つかっていません。しかし、信頼できる専門家のもとで、それぞれの発達ペースに合わせた学習・教育を行えれば、社会生活に必要な知識やスキルを習得できる可能性があります。強いこだわりなどの個別の症状については、薬を飲むことで和らげることも可能です。

ADHD(注意欠陥多動性障害)

ADHDはAttention-deficit hyperactivity disorderの略で、日本語にすると「注意欠陥多動性障害」です。近年は「注意欠如・多動症」などと呼ばれることも増えています。その名の通り、「不注意」と「多動性・衝動性」が主な特徴です。「片付けられない人」というフレーズや、有名人が公表した発達障害として知っている人も多いでしょう。

不注意とは、活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序立てて活動に取り組むのが苦手などのこと。多動性・衝動性とは、じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人の邪魔をしてしまうなどのことです。

小中学生に相当する年齢の子供で3〜7%程度の子がADHDであると考えられています。近年は特に注目されており、大人になってから判明したという例も多く見られます。

原因として主に考えられているのが、脳の前頭葉や線条体という部分の機能障害。遺伝的要因も関係しているとされています。

ADHDをもつ人には、以下のような特徴が見られる傾向があります。

<ADHDの主な特徴>

  • その人の年齢からみて、「不注意」や「多動性・衝動性」がとても強い
  • 12歳以前に、これらの症状のいくつかが出ている
  • 家庭・学校・職場・その他の活動などの2つ以上の状況で、障害となっている
  • 年齢に応じた一般的な発達から見て、対人関係・学習・仕事などで障害が生じている

ただ、これらに似た症状があっても、一部の神経疾患・身体疾患・虐待・不安定な子育て環境が原因となっている場合は、ADHDとは限りません。ADHDかどうかの診断では、専門家による観察や評価がとても重要になります。

ADHDをもつ場合、その症状を自分でどうにかしようとしても困難であることが多いもの。そのため、失敗を周囲の人に厳しく叱られる経験が多く、自己イメージも否定的になりがちです。

治療にあたっては、本人にとって暮らしやすい環境の工夫、できたことをこまめに褒めるという環境・行動への介入を行います。同時に、症状を軽減する効果が期待されている薬を服用することもあります。

LD(学習障害)

LDは、教育的な立場からはLearning Disabilities、医学的な立場からはLearning Disordersと呼ばれ、近年ではLearning Differencesとも呼ばれています。日本語では、「学習障害」「局限性学習症」と言われます。

文部科学省による教育的な立場からの定義は、以下の通りです。

<LDの教育的な立場からの定義>

  • 全般的な知的発達におくれはない
  • 聞く・話す・読む・書く・計算する・推論するといった能力のうち、1つ以上の能力の習得と使用がとても困難である
  • 視覚障害・聴覚障害・知的障害・情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因ではない

なお、知的なおくれや視聴覚障害がなく、きちんと教育を受けて本人も努力しているのに、読み・書きの能力を身につけるのが困難である障害は「発達性ディスレクシア」と呼ばれます。

日本における2012年の全国調査では、小中学生で学習面に著しい困難を示す子供は4.5%いると報告されました。

発達性ディスレクシアをもつ場合、以下のような特徴が見られます。

<発達性ディスレクシアの特徴>

  • 字を1つずつ拾って読む、単語あるいは文節の途中で区切って読む
  • 文字間や単語間が広い場合は読めるが、狭いと読み間違えが増えて同じ行を何回も読んだり行を飛ばして読んだりする
  • 音読不能な文字を読み飛ばす
  • 音読みしかできない、または訓読みしかできない
  • 「ょ」「っ」などの特殊音節を書き間違えたり抜かしたりする
  • 「は」と「わ」、「へ」と「え」を書き誤る・読み間違える
  • 形の似た文字の誤りが多い

計算や推論が苦手な場合は、算数の理解・習得がとても難しくなります。しかし、必ずしも読み・書きが苦手というわけではありません。

LDへの対応としては、本人の特性に合わせて学習を進め、支援していくことが重要です。LDとASDやADHDを両方もっている場合は、ASDやADHDに対応した治療も必要となります。

発達障害は精神障害者保健福祉手帳の対象

発達障害をもつ人の約70%以上が1つ以上の精神疾患をもっていると言われます。そのため、法律では発達障害を精神障害に含めて規定しています。

発達障害者が障害者手帳を取得したい場合は、基本的には精神障害者健康福祉手帳を申請しましょう。

(関連記事)
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精神障害者保健福祉手帳と障害年金の等級判定基準

知的障害とは? 障害者手帳は療育手帳(愛の手帳)が対象

全体的な知的能力に障害がある場合は、LDではなく「知的障害」と呼ばれます。英語ではID(Intellectual Disability)で、医学用語としては「精神遅滞(Mental Retardation)」です。

100人に1人の割合で知的障害があると見られますが、年齢によって比率は変わります。

知的障害の原因は人によってさまざま。ほとんどの場合は、原因が明らかになっていません。

知的障害の特徴と知的障害をともないやすい疾患・障害

知的障害は、子供のころから症状が見られるかどうかが重要です。全体的な知能のおくれがあっても、大人になってから(脳卒中や交通事故などで)障害が出た場合は知的障害には分類されません。知的障害とされるには、以下の3つのポイントがあります。

<知的障害の3つの目安>

  • 知的な能力の発達に明らかなおくれがある
  • 適応行動をするのがとても難しい
  • 18歳までに障害が起こっている

知的能力は、知能検査(IQテスト)を用いて判断され、IQが70未満だと明らかなおくれがあると考えられます。ただし、知能検査にはいくつも種類があり、テストによって、あるいは本人の体調によって違う数値が出る場合も多いことには注意が必要。そのため、知的障害があるかどうかを判断するための知能検査は、必ず専門家が慎重に行わなければなりません。

一方、適応行動とは、たとえば以下のような行動のことをいいます。

<適応行動の例>

  • 言葉を理解したり言葉で表現したりする
  • 読む・書く
  • お金について理解する
  • 自分の健康や行動を管理する
  • 他の人の考えや感情を認識したり共感したりする
  • 人に操られない
  • 法律やルールを守る
  • 自分の身を守る
  • 食べたり歩いたり、トイレに行ったり、着替えたりする
  • 食事の準備、掃除、整理整頓、交通機関の利用、決められた通りの服薬、電話を使うなどの活動をする

こうした行動を自分でとるのがとても難しい場合に、知的障害を疑うことになります。

知的能力や適応行動に障害が出る原因は、多くの場合よくわかっていません。ある程度分かる場合でも、原因は人それぞれです。

ただ、知的障害をともなうことの多い疾患・障害は知られています。(これらの疾患・障害をともなわない知的障害もあります。)

<知的障害をともなうことの多い障害>

  • ダウン症(21番目の染色体の異常)
  • 中枢神経系の障害(脳の損傷)
  • 自閉症
  • 脳性まひ(生後4週までに受けた脳の障害)

知的障害の内容や程度も個人差の大きいものです。たとえば、以下のような特徴があります。これらの特徴も、人によってあったりなかったり、軽かったり重かったりすることに留意してください。

<知的障害の主な特徴(全て現れるわけではない)>

  • 言葉の発達がおくれる(知っている言葉がとても少ない、言葉を覚えるのに非常に時間がかかる)
  • ものごとを理解したり身につけたりするのにとても時間がかかる
  • 初めてのこと、ちょっとした変化が苦手
  • 一度に記憶できる量が少なく、記憶していられる時間も短い
  • 集中力が続かないか、集中すること自体が難しい
  • 自分で判断するのが苦手(「どうする?」と聞かれても何も答えられないなど)
  • 待ち列に割り込んでしまう、ゲームのルールが分からない
  • 歩き方や姿勢がぎこちない(体がかたすぎたり柔らかすぎたりして、うまく動かせない)
  • 手先が不器用で、細かい作業が苦手
  • 思ったこと・感じたことをそのまま言ってしまう(人の気持ちを想像するのが苦手)

自分の気持ちを言葉で伝えることが苦手な知的障害者でも、周りの人が何を言っているのかは比較的分かるという人はいます。他の人と一緒に過ごしたり話したりするのが好きな人もいれば、人と一緒に過ごすのが苦手な人もいます。

知的障害のない人々と同じように、知的障害者も個性豊か。言葉のおくれは「ことばの教室」などでじっくり学ぶことも多いですが、他にどのようなサポートを必要としているかは、人によって異なります。

【参考】
知的障害(精神遅滞)|e-ヘルスネット(厚生労働省)

知的障害者が取得できるのは療育手帳

知的障害者が障害者手帳を取得したい場合は、まず療育手帳に申請しましょう。

療育手帳は地方自治体ごとに名称や判定基準が異なっています。東京都の場合は「愛の手帳」と呼ばれ、知的障害者更生相談所などで判定を受けます。東京都で規定されている判定は、1度(最重度)〜4度(軽度)の4段階です。

療育手帳は子供のころに取得するケースがほとんど。しかし、18歳未満の段階で知的障害の各症状が見られていれば、大人になってからでも申請できます。

なお、知的障害の他に発達障害や他の精神疾患があり、判定基準に当てはまれば療育手帳とともに精神障害者保健福祉手帳も持つことができます。身体障害をともなう知的障害の場合も、手帳交付基準に合致すれば身体障害者と療育手帳の両方を取得可能です。

【参考】
障害者手帳|厚生労働省
愛の手帳について(愛の手帳Q&A)|東京都福祉保健局

分かりやすい発達障害と知的障害の違い

以上をまとめると、発達障害と知的障害の違いは次の図のように表すことができます。

症状が似ているようで実際は異なるという代表例は、知的障害とLD(学習障害)でしょう。違いは、知的障害者全体的な知能のおくれが見られる一方で、LDでは全体的な知能のおくれは見られず、「文字が読めない・書けない」「計算ができない」といった限定的な障害だという点です。全体的な知能のおくれがあるかどうかで分かれるため、「知的障害があり学習障害もある」ということは発生しません。

知的障害とADHD(注意欠陥多動性障害)も似た障害のように感じられます。しかし、ADHDでは言葉のおくれが必ず出るわけではなく、逆に同年齢の人より優れた知能をもっている場合もあります。また、知的障害とADHDを両方もっているケースも見られます。

自閉症と知的障害の違いが分からないという人もいるかもしれません。自閉症の場合、他の人の考えや感情を認識できない、共感できない、感覚過敏または感覚鈍麻がある場合が多いというのが大きな特徴。知的能力について個人差が大きく、他の同年齢の人より優れている場合もあります。それでも知的障害と自閉症が混同されやすいのは、これらを両方もっているケースが比較的多いのが原因です。

発達障害と知的障害を併発することは珍しくありません。そのため、「発達障害だから知的障害ではない」「知的障害だから発達障害ではない」「発達障害があるから知的障害もある」などの判断は一律にはできません。二次障害としてうつ病などの精神疾患を発症しているケースもあります。

障害の種類や程度の判定は、インターネット上の各種テストを鵜呑みにするのではなく、必ず医師や専門機関にお願いしましょう。

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