精神障害者保健福祉手帳を持つメリット・デメリットと障害福祉サービス


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精神障害者保健福祉手帳を所持していると、障害者割引や障害者雇用枠での就労支援など、さまざまな福祉サービスが受けられます。申請や更新手続きの煩わしさはありますが、精神障害者が手帳を所持するメリットは多く、より豊かな社会生活を送る強い味方となってくれるでしょう。

今回は、精神障害者保健福祉手帳を持つメリット・デメリットや、福祉サービスの中で重要な位置を占める障害福祉サービスについて具体的に見ていきます。

精神障害者保健福祉手帳とは

精神障害者保健福祉手帳(精神障害者手帳)は、精神疾患が原因で日常生活や社会生活に障害のある人に交付される障害者手帳の一種です。1級〜3級の3つの等級があり、数字が小さいほど障害が大きくなります。

精神障害者手帳の対象疾患は、

  • 統合失調症
  • 気分障害(うつ病、双極性障害など)
  • てんかん
  • 薬物やアルコールによる急性中毒又はその依存症
  • 高次脳機能障害
  • 発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害など)
  • その他、ストレス関連障害等

です。

各等級の大まかな基準は、下表のようになっています。

等級 概要
1級 精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級 精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級 精神障害であって、日常生活もしくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活もしくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの

実際の審査では、概ね上記の基準に基づき、症状や普段の行動についてさらに細かく見た上で総合的に判断されます。

精神障害者保健福祉手帳を持つメリット

精神障害者手帳を持つメリットは、税金の控除や交通機関・施設・サービスの障害者割引といった経済的側面が中心です。また、利用にあたって手帳は必須ではないものの、手帳があると就労支援や自立支援等でより選択肢がひろがるといったメリットもあります。

税金が安くなる

精神障害者手帳所持の第1のメリットは、さまざまな税における障害者控除です。

たとえば、所得税では40万円、相続税では85歳に達するまでの年数1年につき20万円が控除されます。

他にも、精神障害者が受益者となる場合は贈与税が6,000万円まで非課税になったり、心身障害者扶養共済制度に基づく給付金や少額貯蓄(350万円までの貯蓄)の利子等が非課税になったりします。

施設利用料や映画鑑賞料金が安くなる

第2のメリットは、多くの自治体で公共施設利用料金の減免です。

東京都の場合、都立公園や都立施設の入場料、都立公園の駐車場の利用料が免除されます。神奈川県でも市町村ごとにさまざまな優遇措置があります。

さらに、TOHOシネマズやイオンシネマなどのチェーン映画館では障害者本人と付き添いの人1〜2人が障害者割引を受けられ、1,000円で鑑賞可能です。

交通機関やタクシー、NHK、携帯料金が安くなる

経済的メリットの3つめは、バスやタクシーの運賃やNHK受信料が減免されたり、携帯電話料金で障害者割引を利用できたりすることです。

東京都の場合、都営の電車・バスは無料で乗車できますし、民営バスの運賃は基本的に半額になります(企業によって割引の有無が異なるので注意)。タクシーの割引は事業者によって異なりますが、もし障害者割引を実施しているタクシーであれば、運賃料金が1割引になります。

NHKの「障害者の方に対する受信料の減免」は、全額免除と半額免除の2種類があります。

全額免除を受けられるのは、世帯に手帳所持者がいて、世帯全員が市町村民税非課税の場合。半額免除を受けられるのは、世帯主で受信契約者である人が精神障害者保健福祉手帳1級の場合です(他の障害者手帳については別の要件あり)。

また、各携帯電話会社も携帯電話料金の障害者割引を設定しています。docomoの場合は「ハーティ割引」、SoftBankの場合は「ハートフレンド割引」、auでは「スマイルハート割引」という名称で出ていますので、手帳を所持しているなら問い合わせてみましょう。

障害者雇用枠で就労できる

障害があることを開示して働きたい人の場合、障害者手帳を持っていると障害者雇用枠での就労が可能です。

障害者雇用枠での就労は、一般枠で働くよりも障害特性に応じた配慮を受けやすく、企業側にとっても障害者の法定雇用率達成につながる等のメリットがあります。

実際に障害者雇用枠で精神障害者を雇用している企業では、通院や受診に配慮した勤務体制をとったり、1時間ごとに休憩時間を設けたりするなどの配慮があるようです。

誰にどのような配慮が必要かはケースバイケースなので、社内または会社が委託する外部の相談窓口に相談し、話し合いながら決めていくとよいでしょう。

障害者雇用促進法で定められた合理的配慮については、こちらの記事で解説しています。
合理的配慮の要請は「わがまま」? 民間企業で義務化する前に知りたい合理的配慮の具体例

障害福祉サービスを受けられる

障害福祉サービスは、障害をもつ人の生活や就労を支援するサービスです。狭い意味では介護給付と訓練等給付の2分類に入るサービスをいいますが、広い意味ではそれらに限らない障害者支援サービスのことをいいます。

介護給付では入浴や食事といった生活に必要な活動を手伝ってもらったり、外出時に付き添ってもらったりできるサービスを利用可能。訓練等給付では、自立した生活を行うために家事等の生活に必要な活動を訓練できるサービスや、障害者雇用枠での就労移行支援、就労継続支援の利用が可能です。

障害福祉サービスは手帳を所持していなくても利用可能です。しかし、手帳があるとサービスを利用する際の選択肢が広がります。

障害福祉サービス(訪問介護・就労支援等)とは

狭義の障害福祉サービスは、「障害者総合支援法」に基づくサービスです。その2大分類である「介護給付」と「訓練等給付」の中で精神障害者が受けられるサービスを紹介しましょう。

精神障害者が受けられる介護給付

介護給付にはさまざまなサービスがありますが、各サービスには対象者が設定されています。対象者に精神障害者が含まれるサービスとしては、以下の6つのサービスが受けられるでしょう。

精神障害者が受けられる介護給付
居宅介護

(ホームヘルプ)

自宅での入浴・排泄・食事の介護等
重度訪問介護 自宅での入浴・排泄・食事の介護と外出時の移動支援や入院時の支援等
行動援護 危険を回避するために必要な支援、外出支援
生活介護 昼間の入浴・排泄・食事の介護等、創作活動又は生産活動の機会の提供
重度障害者等包括支援 居宅介護等、複数の包括的なサービスの実施
施設入所支援 夜間や休日に入所する施設で、入浴・排泄・食事の介護等

ただ、いずれも障害の度合いや居住場所等の要件、お願いできることとできないこともあるため、詳細は以下のリンクで確認してください。

【参考】
居宅介護・重度訪問介護事業の手引き ┃豊島区
障害福祉サービス(障害者総合支援法)|町田市

精神障害者が受けられる訓練等給付

介護給付と同様に、精神障害者が受けられる訓練等のサービスには以下の8種類があります。

精神障害者が受けられる訓練等給付
自立訓練(生活訓練) 一定期間、生活能力の維持・向上のために必要な支援・訓練
宿泊型自立訓練 宿泊させながら日常生活能力向上のための支援、生活等に関する相談・助言
就労移行支援 一定期間、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練
就労継続支援A型

(雇用型)

雇用して就労の機会を提供、能力等の向上に必要な訓練
就労継続支援B型

(非雇用型)

就労する機会の提供、能力等の向上に必要な訓練
就労定着支援 就労に伴う生活面の課題に対応するための支援
自立生活援助 一人暮らしに必要な理解力・生活力を補うため、定期的な訪問や随時の対応
共同生活援助

(グループホーム)

夜間や休日、共同生活を行う住居で、相談・入浴・排泄・食事の介助・日常生活上の援助

こちらもサービスによって対象者に関する要件が異なります。対象者の詳細については、前項のリンクでご確認ください。

障害福祉サービス等情報検索で自分に合ったサービスを検索

広い意味での障害福祉サービスは、数が多い上に自治体によってもサービス内容が異なります。そのため、利用者が自分にあったサービスを探しやすいよう、「障害福祉サービス等情報検索」という検索システムが利用できるようになりました。

障害福祉サービス等情報検索では、全国の都道府県や市区町村、法人名、事業所名等からサービスの検索が可能。検索結果が地図で表示されるため、自宅や施設に近い事業所も簡単に探すことができます。

【参考】
障害福祉サービス等情報検索|WAM NET

障害福祉サービスの利用者負担

障害福祉サービスの利用には、所得に応じた利用料がかかります。ただ、利用者の自己負担額には上限が設定されており、最大でも月額37,200円。生活保護受給世帯や市町村民税非課税世帯なら利用者負担はありません。収入が大体600万円以下の世帯であれば、市町村民税を払っていても月額最大9,300円で障害福祉サービスを利用できます。

障害福祉サービスの申込み方法

障害福祉サービスを利用したい場合、まずは市区町村の窓口や相談支援事業者に問い合わせて利用申請を行います。

手続きの中でサービス等の利用計画を作成・提出する必要がある場合、作成・提出を代行してくれる「指定特定相談事業者」とも契約します。自分で利用計画を作成することも可能ですが、作成する自信がない場合や面倒な場合は指定特定相談事業者に依頼しましょう。利用計画案や具体的な利用計画の提出が必要かどうかは、自治体や利用したいサービス、障害の状況によって変わるため、窓口で確認しましょう。

その後、介護給付であれば障害支援区分の認定調査と審査へ。障害支援区分の認定が済んだら、サービス利用意向の聴取がありますので、市区町村の求めに応じて利用計画案を作成・提出しましょう。

支給が決定したら、支給決定の内容を踏まえて具体的な利用計画を作成し市区町村へ提出。その後、利用予定の事業者や施設で申し込みを行い、サービスを利用できるようになります。

なお、訓練等給付の場合は障害支援区分の判定はありません。

【参考】
利用までの流れ|WAM NET

精神障害者保健福祉手帳のデメリット

手帳を所持することのデメリットは、基本的にはありません。

手帳を所持していると障害者差別を受けるのではないかと恐れる方もいますが、手帳の提示は自分の意思で決められますから、手帳を持っていても割引や優遇措置を受けずにいることも可能です。

ただ、それ以外のデメリットとして、以下のような交付にかかる手続き等の労力が負担になるかもしれません。

医師に手帳交付申請のための診断書を作成してもらう必要がある

障害年金を受給していない人が手帳の交付申請を行う場合、医師の診断書が必要になります。

交付の審査で適切な判定が行われるには、医師に自分の状況をきちんと分かってもらわなければなりません。今通院していない人は、新たに主治医を探す労力もかかります。

診断書作成には1か月ほど必要でしょうし、申請後の審査でも2か月かかります。今すぐ手帳が手に入るわけではありません。

また、こうした一連の過程で、自分が精神疾患によって抱えている障害を自分で把握しなければなりません。

2年に1度の更新手続きがある

精神障害者保健福祉手帳の有効期限は2年。自動更新はされないため、2年ごとに更新手続きが必要です。

更新手続きには、医師の診断書等を提出しなければなりません。期限ぎりぎりまで手続きを行わないでいると、元の手帳の期限が切れても新しい手帳が届かないという、失効期間が発生してしまいます。

また、症状が軽くなった場合は更新手続きの審査で「非該当」となり、手帳を返還しなければならない場合もあります。

こうした「更新できるか、却下されるか」といった心配が心理的負担になるケースも見られます。

精神疾患が原因で生活や仕事で困っているなら手帳申請を検討しよう

精神障害者手帳は必ず所持しなければいけないものではありません。たとえ1級に該当する障害があったとしても、手帳を持ちたくないなら申請しなくても構わないし、取得した後に不要だと感じたら、いつでも返還できます。

しかし、手帳を持つことで社会参加が容易になったり、生活が楽になったりします。他の人に助けてもらえればもっと生きやすくなると感じるなら、手帳は心強い味方になってくれるはず。

精神疾患の初診日から半年以上経っても生活や仕事で支障を感じているなら、精神科医に手帳交付申請について相談してみるのも、1つの選択肢です。

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