障害者職業生活相談員とは|資格要件・認定講習・届出


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障害者を5名以上雇用する事業所には、障害者職業生活相談員を選任する義務があります。障害者職業生活相談員になれるのは、従業員の中で特定の課程を修了した人や一定の実務経験のある人、あるいは障害者職業生活相談員資格認定講習を修了した人です。

今回は、障害者職業生活相談員の職務内容とともに、資格要件や届出の提出先や書き方などを解説します。

障害者職業生活相談員の仕事|ジョブコーチとの違い

障害者職業生活相談員は、障害者が働く企業の従業員として現場で具体的な支援を行う担当者。いわば障害者の職業生活サポートのプロフェッショナルです。障害者を5名以上雇用している事業所は、障害者職業生活相談員を選任しなければなりません。

障害者職業生活相談員を選任する義務

障害者が5名以上働いている事業所には障害者職業生活相談員を選任する義務があると「障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則」に定められています。障害者の雇用人数が5名以上になった日から3か月以内に、選任してハローワークに届け出なければなりません。

まずは、障害者職業生活相談員の役割について理解しましょう。

障害者職業生活相談員とは

障害者職業生活相談員は、障害者の職業生活全般の相談・指導を行います。障害者が企業に雇用された後に安定して就労を続けるための重要な役割を担う専門家です。

主な相談・指導内容は、次の5つ。

  • 職務内容について(障害特性やスキルに応じた職務の選定、職業能力の開発向上など)
  • 作業環境の整備(障害特性に応じた施設設備の改善など)
  • 職業生活について(労働条件や職場のルール、人間関係など)
  • 余暇活動について(休憩の取り方など)
  • その他の職場適応の向上に関して

障害者が働く現場に実際に足を運び、具体的にサポートするのが職業生活相談員の仕事です。

具体的な職務内容

実際に相談員となった社員たちの様子を独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下、機構)の公式ページで見ることができます。

彼らが行っている具体的活動は、以下のようなものです。

  • 様子を見ながら資格取得をすすめる・サポートする
  • スキルアップを支援する
  • 社員低調に毎日体調を10段階で記入してもらい、体調が悪い場合は早退させたり休ませたりする
  • 朝が弱い人の場合、勤務時間を調整する
  • 掲示物やコピー機の高さを調整する
  • 障害者が通りやすい通路にする(物を置かない、机や棚の角にクッション材を取り付ける)
  • パソコン入力の補助装置を導入する

障害をもつ従業員を直接サポートするだけでなく、障害をもたない従業員への働きかけも行います。他の従業員に対して障害について説明したり、研修を行ったりするなどです。

また、もともとは障害のなかった従業員が障害をもった場合のサポートでも大いに力を発揮しており、職場復帰を果たした従業員から感謝の声が聞かれました。

自分だけではサポートが難しいと感じた場合、積極的に地域障害者職業センターや障害者職業・生活支援センターなどの外部機関と連携してサポートしている相談員の姿もあります。現場から直接支援要請できるため迅速な対応が可能で、サポートの相乗効果が期待できます。

さらに意欲的な活動では、定期的に相談員同士が集まり、会議や情報共有などが見られます。

ジョブコーチとの違い

障害者職業生活相談員もジョブコーチも、障害をもつ従業員を職場で支援するという点で同じ役割を担っています。しかし、いくつか違いもあります。

大きな違いは、ジョブコーチが外部支援であることが多いのに対し、障害者職業生活相談員は企業内部での支援だということです。ジョブコーチは地域障害者職業センターや社会福祉法人などから派遣される場合が多い一方、相談員は当該事業所の従業員から選ばれています。

また、支援内容や方針も異なります。ジョブコーチに特徴的なのは、障害者の就労についての具体的な目標設定と支援計画の作成です。計画に基づいて就職や定着の支援を行いますが、最終的には障害者の上司や同僚による支援に移行していくことを目指してサポートします。

それに対し、相談員は、すでに自分の事業所で働いている障害者のために、現場でサポートを続けていく中心的存在です。

資格要件と障害者職業生活相談員資格認定講習


【参考】2019年版障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト|機構

障害者職業生活相談員になるために厚生労働省が定めた資格要件は、大きく分けて2つあります。1つめは、「障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則」の要件に記載された学歴や実務経験を持つこと。2つめは、機構が実施する「障害者職業生活相談員資格認定講習」を修了することです。このどちらかを満たせば、相談員になれます。

まずは多くの人が該当するであろう「障害者職業生活相談員資格認定講習」を修了する場合について説明しましょう。

受講もテキストも無料! 受講対象者には制限あり

障害者職業生活相談員資格認定講習は機構が実施する講習です。受講は無料ですしテキストも無償で提供されています(ネット上で読めます)。しかし、相談員になる資格を認定されるには、実際に講習を受講して修了しなければなりません。

この講習は相談員選任のための受講が前提なので、個人での申込みは受け付けていません。申し込めるのは企業に雇用されている人だけです。その中でも、障害者を5名以上雇用している事業所で障害者職業生活相談員として選任される予定のある人が優先。受講したいと思っても希望者多数だとすぐには参加できない場合があります。申込みはお早めに。

講習の開催頻度は各都道府県で異なります。事業所の多い東京都の場合、2019年7月〜12月は5回実施されました。神奈川県でも、同期間で3回実施されています。

講習の内容と申込み方法

講習は2日間で、合計12時間かかります。主な内容は、

  • 障害者雇用の理念と現状
  • 障害者の雇用管理上の留意点
  • 障害別に見た特徴と雇用上の配慮
  • 障害者の雇用促進施策の体系
  • 関係機関・施設等の概要
  • 障害者雇用に関する各種援助

など。さらに、意見交換会・事業見学会・支援機関見学のいずれか1つ以上が実施されます。

受講の申込みは、機構の各支部にある高齢・障害者業務課に所定の様式にて行います。障害者の雇用数が5名以下の事業所でも申し込めますので、早めの受講がおすすめです。

修了すると「修了証書」が渡されます。届出の際に必要ですので大切に保管してください。

【参考】障害者職業生活相談員資格認定講習|機構

特定の課程の修了や実務経験で資格要件を満たす場合も

次に、もう1つの資格要件について見ていきましょう。

職業能力開発総合大学校の特定の課程を修了したり、一定期間以上の実務経験を持っていたりすると、認定講習を受けなくても資格要件を満たすことができます。具体的には、

  • 職業能力開発総合大学校の長期課程の指導員訓練(福祉工学科に係るものに限る)の修了者、またはこれに準じる者として厚生労働大臣が定める者
  • 大学もしくは高等専門学校の卒業者または職業能力開発総合大学校の長期養成課程の指導員訓練(福祉工学科に係るものを除く)、職業能力開発大学校もしくは職業能力開発短期大学校の専門課程の高度職業訓練もしくは職業能力開発大学校の応用課程の高度職業訓練の修了者もしくはこれらに準じる者として厚生労働大臣が定める者で、その後1年以上障害者である労働者の職業生活に関する相談及び指導の実務経験を有する者
  • 高等学校または中等教育学校の卒業者で、その後2年以上、障害者である労働者の職業生活に関する相談および指導の実務経験を有する者
  • その他の者で、3年以上、障害者である労働者の職業生活に関する相談及び指導の実務経験を有する者

となっています。

つまり、職業能力開発総合大学校の長期課程で福祉工学科に係る指導員訓練を修了していない場合は何らかの実務経験が必要で、大卒者でも1年間の実務経験があるか資格認定講習を修了しなければ、相談員にはなれません。

以上をまとめると、下の図のようになります。

【参考】(注)厚生労働省令で定める資格要件|機構

障害者職業生活相談員選任報告書と提出先

従業員が資格要件を満たし、無事に障害者職業生活相談員を選任できたら、ハローワークに「障害者職業生活相談員選任報告書」を提出しましょう。

報告書には、次のような事柄を記載する必要があります。

  • 事業所の名称・所在地、事業の種類(日本標準産業分類の中分類から記載)
  • 身体障害者・知的障害者・精神障害者である各労働者の数
  • 選任する障害者職業生活相談員の氏名・生年月日・選任年月日・職歴等・権限及び職務区分
  • 障害者職業生活相談員の新任・解任の事由等

選任する障害者職業生活相談員の職歴には、その従業員が資格要件を満たしていることが分かるような職歴・勤務年数、学歴等について記入しましょう。認定講習を修了している場合はそう明記し、講習を修了していない場合は、学歴と職歴、障害者の職業生活に関するサポートの実務経験がどのくらいあるかを明記する必要があります。

権限及び職務区分は、同じ事業所に相談員が2名以上いる場合に重要です。その報告書で選任を報告される相談員が担当する職務区分、主任等の区分を記入しましょう。

記入方法が分からない場合は、管轄のハローワークまで問い合わせると教えてもらえます。

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