【合理的配慮好事例】精神障害者がテレワークする場合の配慮ポイントは?


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障害者雇用促進法により、企業には障害者雇用が義務づけられています。しかし、実際に障害者雇用を進めてみると戸惑う事業主の方も多いかもしれません。

そこで役立つのが、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下、機構)が毎年公表している障害者雇用における合理的配慮等の好事例集。テーマごとに配慮・職場改善事例を紹介しています。

今回は、それらの事例集から精神障害者のテレワークに関する好事例を紹介・解説します。

テレワークは障害者雇用にとっても新しい働き方

世界的な感染症拡大を契機として、日本では「新しい生活様式」が求められるようになりました。

日常生活においては三密回避や手洗い・消毒の徹底、仕事にではテレワークや職場の換気などが新しい習慣として推奨されています。ビジネス系のメディアでテレワークに関するノウハウも盛んに共有されています。

障害者にとっても、テレワークは働き方の1つとして重要な選択肢。通勤が必要な就労より働きやすいというメリットがあるためです。

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障害者が在宅で就労するには|職種と必要なスキル

実際、感染症拡大以前から障害者の在宅雇用の可能性は模索されてきました。在宅で仕事をする障害者に業務を発注した場合に受け取れる「在宅就業障害者特例報奨金」などの制度がある他、在宅での就労のみを集めた好事例集も発表されています。

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【概要編】まずは理解しておきたい!分かりやすい改正障害者雇用促進法(前編)

では、障害者のテレワークを実施するにあたり、事業主側ではどのような配慮が必要になるのでしょうか。政府や自治体が近年特に注力している精神障害者雇用の好事例からポイントを探っていきましょう。

【参考】
新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の実践例を公表しました|厚生労働省

好事例1:特定非営利活動法人 札幌チャレンジドとニフティ株式会社

2009年に公表された「障害者の在宅勤務・在宅就業ケーススタディ」では、精神障害者の在宅就業の好事例として特定非営利活動法人札幌チャレンジドが支援したTさん(精神障害2級・統合失調症)のケースが紹介されています。雇用先はニフティ株式会社です。

ニフティは、個人向けインターネットサービス「@ニフティ」と法人向けインターネットサービス等を手掛ける企業。本社は東京都にありますが、Tさんは北海道在住のまま勤務を開始し、サイト分析担当となりました。

<Tさんの雇用形態と担当業務>

  • 勤務日・時間:月〜金の週5日(9:00〜17:00・昼休憩1時間)
  • 出社:3カ月1回程度(本社へ出社)
  • 担当業務:サイト分析

<業務の進捗管理>

  • 勤怠連絡:本社の直属上司にメールで報告(開始時・終了時)
  • 進捗報告:日報・週報・月報・作業のチェックシートを記入して報告

<作業環境整備>

  • 使用機器・ツール:パソコン・ウェブカメラ・メッセンジャー
  • 環境整備:企業が機器を購入して貸与

<配慮事項等>

  • 業務上の細かいニュアンスを伝えるため、3カ月に1度程度の出社日を設定
  • 本社出社時は疲労の蓄積に注意し、余裕のあるスケジュールを設定
  • Tさんを支援する札幌チャレンジドと連携し、在宅勤務導入支援を受ける
  • ハローワーク、障害者職業センター、民間の人材派遣会社等と常に連携
  • 3カ月に1回、本社から北海道に出張してスキルアップ研修と意見交換会を実施(札幌チャレンジドの事務所が会場)

Tさんとニフティ株式会社の事例のポイントは、以下の4点です。

  • 勤怠や進捗報告のやり方が明確に決められている
  • 仕事に必要な機器類を企業側で用意している
  • 支援機関と常に連携している
  • Tさんの負担に配慮した上で、定期的に対面の打ち合わせや研修を行っている

在宅での仕事は相手の姿が見えにくく「今どんな仕事を進めているのか、よく分からない」などの混乱が生じやすいもの。連絡の仕方を明確に定めたり定期的な打ち合わせを対面で行ったりすることで、状況を把握しやすくなるでしょう。

【参考】
障害者の在宅勤務・在宅就業ケーススタディ -20の多様な働き方-|機構
ニフティ株式会社 公式サイト

好事例2:イオンスーパーセンター株式会社

精神障害者のテレワーク好事例でもう1つご紹介したいのが「就職困難性の高い障害者のための職場改善好事例集-精神障害者、発達障害者、高次脳機能障害者-(平成27年度)」で優秀賞を受賞したイオンスーパーセンター株式会社です。

イオンスーパーセンターは、岩手県に本社を置く総合ディスカウントストア。2014年度から「ダイバーシティ推進」を掲げ、障害者を積極的に雇用しています。店舗での勤務が難しい障害者のために「障がい者在宅勤務制度」を導入し、それまで入社が難しかった精神障害者や発達障害者の雇用が進められてきました。

<イオンスーパーセンター在宅勤務制度での担当業務例>

  • システム系オペレーション業務
  • 人事系システム処理
  • 店舗後方の集計業務

<業務の進捗管理・相談等>

  • 業務上の質問・報告:社内担当者とメールや電話で行う
  • 体調・生活・悩みなどの相談:支援機関が週1回面談を実施→定められた様式で本社人事教育部に状況を報告
  • その他:月1回、支援機関の面談日に本社人事教育部が支援機関で在宅勤務者と面談

<作業環境整備>

  • 使用機器:パソコン・携帯電話
  • 環境整備:企業が機器を購入して貸与

<配慮事項等>

  • 店舗での対人関係業務が苦手な障害者のため、在宅勤務制度を導入
  • 在宅勤務導入前に業務の社内調査や他社の導入事例を分析し、成功事例の多い入力系業務と集計業務から開始
  • 質問・報告・相談を適時できるように社内の担当者を2名選出。連絡事項は具体的に簡潔に伝える
  • 在宅勤務者の居住地で定期的に業務指導などを実施
  • 本人の得意な作業を担当業務とする
  • 短時間勤務からスタートして段階的に勤務時間を延ばせる
  • 職場定着のために支援機関と連携し定期的に面談

イオンスーパーセンターの事例のポイントは、

  • 精神障害者・発達障害者の在宅勤務に適した業務を分析
  • 本人の強みを生かせる業務を割り振る
  • 定期的な面談を実施
  • 業務上の相談以外は支援機関の力を活用
  • 体調や状況に合わせて勤務時間を調整

などの点です。

精神障害者や発達障害者が遂行可能な業務を分析して本人に合った業務を割り振ることで、本人の強みを生かした業務が可能になります。また、支援機関としっかり連携して「悩み事を事業所で全部解決する必要はない」と理解し役割分担をすれば、企業側のサポート担当の負担も軽減されるでしょう。

【参考】
就職困難性の高い障害者のための職場改善好事例集-精神障害者、発達障害者、高次脳機能障害者-(平成27年度)|機構
イオンスーパーセンター株式会社 公式サイト

精神障害者のテレワークに関する配慮のポイント

在宅勤務などのテレワークには、対人関係やコミュニケーションが苦手な方にとって

  • 他の人の目を気にせず働ける
  • 通勤にかかる労力がなく業務に取り組みやすい

といった大きなメリットがあります。

メリットを十分に生かすには在宅勤務者の業務状況を適宜把握することが大切。さらに、健康面や生活面での悩みへの対応も必要です。

今回の2つの事例からは、

  • 勤怠連絡や業務進捗状況のやり方を明確にする
  • 本人に合った業務を割り振る
  • 定期的に面談を実施し、業務上の良かった点・改善点などを話す
  • 業務以外の部分の悩み(健康・生活面の悩み等)は支援機関を活用
  • 支援機関と連携し在宅勤務者の状況や必要な配慮を常に把握

といった成功ポイントが見えてきました。

もし面談や支援機関との連携をあまり実施したことがないなら、まずはこれらの導入から検討してみてはいかがでしょうか。

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