雇用率引き上げに「雇用の質」、精神障害者雇用のポイントは?


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障害者雇用における雇用数は年々増加し、特に精神障害者の雇用数が伸びています。2023年10月現在、民間企業には障害者雇用において法定雇用率2.3%の達成義務があり、2024年4月には2.5%へ引き上げられるとともに、対象も現在の従業員数43.5人以上の企業から40.0人以上の企業へと拡大されます。今まで以上の障害者雇用や雇用の質の向上が求められるでしょう。

そこで、これまでの法改正や今後の動きを押さえつつ、精神障害者雇用を成功させるためのポイントをまとめました。役立つ記事や相談窓口などもご紹介します。

2024年法定雇用率2.5%への引き上げに向けて

2023年10月現在、従業員43.5人以上の民間企業には、法定雇用率2.3%以上の障害者雇用率達成が義務づけられています。これは、障害者雇用促進法第43条第1項に基づく制度であり、今後も法定雇用率の引き上げや対象企業の拡大が公表されています。


出典:厚生労働省「事業主のみなさまへ 障害者の法定雇用率引き上げと支援策の強化について」

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厚生労働省が毎年発表する「障害者雇用状況の集計結果によれば、近年は精神障害者の雇用数が特に伸びているようです。ただし、法定雇用率を達成した民間企業の割合は、中小企業ではなかなか50%を超えません。企業規模別の実雇用率(従業員数における障害のある従業員数の割合)を見ても、100人未満の企業では平均で約1.8%、100人以上500人未満でも約2.1%止まりとなっています。

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義務となっている法定雇用率の達成ができず、雇用状況に改善も見られない場合、障害者雇用促進法第47条に基づき、企業名が公表される可能性があります。2022年度は、5社について社名や障害者雇用の実態、改善されない要因が公表されました。

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今後は、障害者雇用における雇用数だけでなく、雇用の質も求められます。コンプライアンスやインクルージョンの観点も含め、これまで障害者雇用に積極的でなかった企業も、本腰を入れて取り組まなければなりません。

障害者雇用促進法の改正等で知っておくべきこと

障害者雇用に直接関わる法律の1つが、ここまでで何回か出てきた障害者雇用促進法です。障害者雇用促進法は度々改正されており、実雇用率算定に使う雇用障害者のカウント方法、助成金制度の変更などが行われてきました。

特に、カウント方法については、重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者に特例措置が適用され、通常よりも多くカウントできる仕組みとなっています。

助成金制度の変更に関しては、雇用数増加を重視する姿勢から、雇用した障害者における「雇用の質」を重視する姿勢へと転換。助成金の新設・拡充等が行われる一方で、雇用数を基準として金額が設定される調整金・報奨金の支給は縮小されることとなりました。

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「雇用の質」向上には、厚生労働省による「合理的配慮指針」や「障害者のプライバシー配慮に関するガイドライン」も押さえる必要があります。

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障害者雇用の「合理的配慮」提供義務とは?|法律・事例・ガイドライン

さらに、いわゆる「障害者雇用ビジネス」の扱いについても注意しなければなりません。障害者雇用ビジネスとは、障害者雇用を進めたい企業が、障害者雇用ビジネスを行う事業者と契約し、障害者を契約企業の社員として在籍させながら、社外での農作業などを行わせるビジネスモデルです。

障害者雇用ビジネスで問題とされているのは、契約企業が障害者の職場環境改善や、適性に応じた職域の開発・割り当て、合理的配慮の提供についてほぼ関与せず、企業の業務とは無関係な作業ばかりさせているケースがあること。こうしたやり方は実質的に障害者の隔離であり、インクルージョンではないと指摘されています。

もともと障害者雇用ビジネスは当事者や支援者から疑問視されてきました。それが2023年4月の労働政策審議会障害者雇用分科会において、その実態と課題が取り上げられ、国においても問題が明確に意識された形となります。

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法定雇用率達成だけを目的として「頭数だけをそろえる」やり方ではなく、障害のある方々が職場の一員として働けるような「雇用の質」の向上、具体的には、企業自身による体制整備と運用が求められています。

企業が抱える障害者雇用の課題

とはいえ、障害者雇用を進める中で、多くの企業が何らかの課題に直面することは、よくあることです。近年雇用人数を増やしてきた精神障害者の雇用で聞かれる課題には、例えば次のようなものがあります。

【精神障害者雇用でよく聞かれる課題】

  • 受け入れ体制をどう整えたらよいか分からない
  • 実際に雇用してみたが、うまくいかない
  • 障害者の欠勤が多い
  • 障害特性に合う職種・職務が分からない

パーソル総合研究所(協力:パーソルダイバース)による「精神障害者雇用の現場マネジメントについての定量調査」によれば、一般企業における直近5年間について、精神障害者の雇用数が増加した企業は33.8%となっており、身体障害者や知的障害者よりも多い結果となりました。その一方で、精神障害者雇用ノウハウについては、「蓄積途上」「手探り状態」と答えた企業が57.0%と、過半数を占めました。


出典:パーソル総合研究所「精神障害者雇用の現場マネジメントについての定量調査」p.23

そして、雇用ノウハウが蓄積されるほど、精神障害者の定着・活躍が進み、精神障害者雇用の成功度が高いことが示されました。


出典:パーソル総合研究所「精神障害者雇用の現場マネジメントについての定量調査」p.75

障害者雇用における多様な課題は、既に障害者雇用を進めている企業でも検討され、解決が試みられています。特定の解決策が他の同様の課題すべてに当てはまるわけではありませんが、先進事例や好事例を確認することで、自社における雇用ノウハウの蓄積に役立てられるでしょう。

当マガジンでも、これまで多くの企業や団体の取り組みをご紹介してきました。障害種別、テーマ別にご覧いただけます。

(関連シリーズ)

障害者雇用に困ったときの相談先

害者雇用で課題に直面し、自社だけでは解決が困難と思われる場合は、外部の支援機関や関係機関へ相談することも重要な施策の1つです。

代表的な支援機関、関係機関には、次のようなものがあります。

名称 相談できる内容・支援内容
ハローワーク 障害者を対象とする求人受付

就職面接会の開催

就職後の職場定着指導

障害者の雇用管理上の配慮などの相談

必要に応じて専門機関への紹介

障害者雇用に関わる各種助成金の案内

地域障害者職業センター 障害者の雇用管理について、専門的な助言・援助

障害者職場適応のためのジョブコーチによる支援

精神障害者雇用における雇用促進・職場復帰・雇用継続のための総合的な支援

障害者就業・生活支援センター 障害者の特性、能力に合った職務選定の相談

職場定着に向けた支援

障害特性を踏めた雇用管理についての助言

関係機関との連絡調整

職場・家庭訪問等

発達障害者支援センター 発達障害者の仕事面での相談

発達障害者の生活面、人間関係についての相談

発達障害者が受けられる支援についての相談

本人だけでなく、関係者も利用可能

就労移行支援事業所 職場体験等の相談

職場定着等に関する相談など

障害者雇用に成功している企業の多くは、こうした外部支援機関と密に連携し、障害のある従業員それぞれの特性に合った業務の割り当てや各種サポートを実践しています。

当マガジンの編集部がある就労移行支援事業所「ルミノーゾ」でも、障害者雇用に関するご相談をお受けしていますので、お困りの際はぜひお問い合わせください。

【参考】
精神障害者雇用の現場マネジメントについての定量調査|パーソル総合研究所
障害者雇用促進法の概要|厚生労働省
事業主の方へ|厚生労働省

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