改正障害者雇用促進法の施行日と施行内容は?超短時間労働者の算定方法、新設助成金など


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障害者雇用促進法などの一部改正を含む改正法について、厚生労働省は2023年5月11日に施行日と施行内容を記載した公式ページを公開しました。LLP算定特例の全国展開や在宅就労支援団体の登録要件緩和、精神障害者の短時間労働に関する特例、障害者雇用調整金・報奨金の見直し、助成金の新設などが含まれています。

施行スケジュールは?施行内容と付帯決議の概要

2022年12月10日に可決成立し、同16日に公布された「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律」に関連し、厚生労働省は2023年5月11日に施行日を記載した公式ページを公開しました。

この改正には、障害者総合支援法だけでなく、障害者雇用促進法の一部改正なども含まれています。改正内容は、障害者雇用における事業主の責務の明確化、多様な就労ニーズを踏まえた働き方の推進、障害者雇用の質の向上など。2023年4月1日以降に順次施行されるとされていましたが、今回、2024年4月1日施行となる内容も含めて明示されました。

記載されている施行日は、2023年4月1日と2024年4月1日です。それぞれの施行内容のうち、障害者雇用に関するものは以下のとおりです。

2023年4月1日施行
障害者雇用における事業主の責務としての職業能力の開発および向上に関する措置
有限責任事業組合(LLP)算定特例の全国展開
在宅就業支援団体の登録要件緩和
精神障害者である短時間労働者の雇用率算定にかかる特例の延長(省令改正)

 

2024年4月1日施行
週所定労働時間10時間〜20時間未満で働く重度の身体・知的障害者、精神障害者の算定特例
障害者雇用調整金・報奨金の支給方法の見直し
納付金助成金の新設・拡充

また、この改正に対して、障害者雇用に関わるものとして以下の内容が付帯決議されました。

  • 重度障害者の職場および通勤中における介護について、現在実施している雇用と福祉の連携による取り組みの実施状況、働き方を把握する
  • 重度障害者に対して地域生活支援事業で実施されている移動支援について、個別給付とすることも含め、見直しを検討する
  • 重度障害者に対する職場における支援で、助成金の利用が低調な理由について分析する
  • 重度障害者の就労ニーズの掘り起こし等を検討する
  • 難病患者など、障害者手帳は取得できないが障害によって働きづらさを抱える者の就労支援について、就労能力の判定の在り方を検討し、必要な施策を講じる
  • 難病患者等への不利益な取り扱いについて、治療によって不利益な扱いを受けることがないよう、オンライン等の手段の活用なども含めて環境整備に万全を期す
  • 難病患者等の就労について、病気休暇等の普及促進、難病患者の障害者雇用率制度における取り扱いの検討、事業主への正しい理解の啓発、働きやすい環境整備に取り組む
  • 難病に苦しむ者の就労状況について、実態把握に努め、治療をちゅうちょすることなく就労できる環境をつくる
  • 難病に苦しむ者の就労について、関係制度の検討を行い、他領域にまたがる制作の連携を通じた支援策の充実に努める
  • 施行後5年の見直しを待たず、国連障害者権利委員会の対日審査の総括所見を踏まえて、速やかに見直しに向けた検討を開始する(令和10年の定期報告があるため)

次項から、各施行日における施行内容を少し詳しく見ていきましょう。

2023年4月からLLP算定特例の全国展開、在宅就労支援団体の登録要件緩和など

2023年4月1日から既に施行されている内容は、以下の4つです。

  • 障害者雇用において、事業主には、職業能力の開発および向上に関する措置を講じる責務がある
  • 有限責任事業組合(LLP)算定特例が全国展開される
  • 在宅就業支援団体の登録要件が緩和される
  • 精神障害者である短時間労働者の雇用率算定にかかる特例が、当面、延長される(省令改正)

事業主には、職業能力の開発・向上に関する措置を講じる責務がある

まず、障害者雇用における雇用の質の向上に向けて、今回の改正では事業主の責務がより明確にされました。

これまでは、「適当な雇用の場の提供」と「適正な雇用管理」が事業主の責務と記されていました。今回は、これに加えて「職業能力の開発及び向上に関する措置」も明示されています。

これは、ただ「場」を提供するだけでなく、それぞれの特性に合った職域の創出やスキル習得、スキルアップに向けた取り組みの実施が求められているということです。障害のある方が組織のメンバーとして事業所の仕事に取り組めることを重視しています。

有限責任事業組合(LLP)算定特例が全国で展開される

障害者雇用では、中小企業における障害者雇用率の低さが課題となってきました。このひとつの解決策が、事業協同組合等算定特例です。

事業協同組合等算定特例は2009年4月から実施されてきたもの。中小企業が事業協同組合等を活用して協同事業を行い、一定の要件を満たすものとして厚生労働大臣の認定を受ければ、事業協同組合等(特定組合等)とその組合員である中小企業(特定事業主)で実雇用率を通算できるという制度です。

有限責任事業組合(LLP)は国家戦略特区でのみ特例の対象でしたが、今回の施行により、全国で特例対象となりました。

なお、LLP制度は、創業を促し、企業同士のジョイント・ベンチャーや専門的な能力を持つ人材の共同事業を振興するために設けられた制度です。法人格はなく、出資者全員が出資金額までしか債権者に対して責任を負わず、損益配分割合に従った損益に対して課税されるという特徴があります。

LLPが全国で特例対象となったことで、より多くの中小企業が障害者雇用機会を確保しやすくなると期待されています。

在宅就業支援団体の登録要件が緩和される

障害者の多様な働き方を支援してきた在宅就業支援団体についても、登録要件が緩和されました。

これまで、団体登録時に必要な在宅就業障害者の人数は10人でしたが、現在は5人へ削減。従事経験者に関する要件から「2人以上」が削除され、管理者についても「専任の」という要件が削除されました。

同時に、登録申請手続きの簡素化も行われています。これまでは登録申請にあたり、役員の略歴と、在宅就業障害者の業務などについて書面の添付が必要でした。これが、どちらも提出不要となりました。

週20時間以上30時間未満の精神障害者に関する雇用率算定の特例が延長される

従業員が43.5人以上である事業主は、毎年6月1日現在の障害者雇用状況を報告しなければなりません。その際、何人の障害者を雇用しているかは、規定の計算式によって算出されます。

たとえば、週30時間以上働く障害者は基本的に1人あたり「1」でカウントし、重度身体障害者と重度知的障害者はダブルカウントで「2」。週20時間以上30時間未満(以下、「短時間労働」)で働く障害者は、基本的に1人あたり「0.5」でカウントするといった具合です(重度の身体障害者、知的障害者はダブルカウントを適用)。

この算定方法において、短時間労働で働く精神障害者は、一定の条件を満たせば、本来1人あたり「0.5」であるところを「1」でカウントできる特例が、期間限定で適用されてきました。精神障害者の雇用数増加を図ることが目的です。

今回、改正に合わせて省令改正が行われ、この特例の延長が決定しました。さらに、雇入れや手帳交付からの期間に関する条件に関係なく、短時間労働を行う全ての精神障害者について、1人あたり「1」でカウントできるようになりました。

2024年4月からは週10〜20時間未満の雇用率算定、新助成金制度など

2024年4月1日から施行される内容は、以下の3つです。

  • 週10時間以上20時間未満で働く特定の障害者が実雇用率の算定対象となる
  • 障害者雇用調整金・報奨金の支給方法が見直される
  • 新しい助成金制度が設置され、既存の助成金制度の一部が拡充される

週10時間以上20時間未満で働く特定の障害者が実雇用率の算定対象となる

2022年の可決成立から注目されてきた、雇用率算定方法の変更。今回の改正で、これまでは算定対象となっていなかった「週10時間以上20時間未満」(以下、「超短時間」)で働く一部の障害者が算定対象となりました。障害特性で長時間の勤務が困難な方の雇用機会を広げるための措置です。

新しく算定対象となるのは、超短時間で働く重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者です(資料では「特定短時間労働者」と呼ばれる)。実雇用率の算定において、1人あたり「0.5」でカウントできます。

算定対象やカウント方法、超短時間で働く障害のある方については、以下の関連記事でも解説・紹介しています。

(関連記事)

なお、新しい算定方法の導入により、超短時間で働く障害者を雇用する事業主に支給されてきた特例給付金は、2024年4月1日をもって廃止されます。今後、省令や告示等の改正が行われる予定です。詳細については障害者雇用分科会で議論中であり、今後内容が変更される可能性もあります。

障害者雇用調整金・報奨金の支給方法が見直される

障害者雇用納付金制度における調整金や報奨金の支給についても、見直しが行われます。

調整金は、従業員数が100人を超える事業主において、法定雇用率を超えて障害者を雇用している場合に支払われます。報奨金は、従業員が100人以下の事業主で、各月の雇用障害者数の年度間合計数が一定数を超えて障害者を雇用している場合に支払われるものです。

これまで、調整金は1人あたり2万7,000円、報奨金は1人あたり2万1,000円で、人数に上限はありませんでした。しかし、今回の改正により、一定数を超える場合は超えた人数について支給額が減額されることになります。具体的な支給額は、以下のとおりです。

本来の額 超過人数分の支給額
調整金

(従業員数100人超)

2万7,000円/人

(〜10人)

2万3,000円/人

(11人〜)

報奨金

(従業員数100人以下)

2万1,000円/人

(〜35人)

1万6,000円/人

(36人〜)

調整金・報奨金の見直しには、障害者雇用の促進に関する方向性の変化があります。これまでは、障害をもつ方の雇入れや職場環境整備を助成金の支給が中心となっていました。しかし、法定雇用率の引き上げにともなって雇入れが増加してきたことから、今後は雇用の質の向上、障害をもつ方の職場定着支援にも注力したい考えです。

今後、政令や省令等の改正が行われる予定です。詳細については障害者雇用分科会で議論中であり、今後内容が変更される可能性もあります。

新しい助成金制度が設置され、既存の助成金制度の一部が拡充される

調整金や報奨金の支給を含む障害者雇用納付金制度では、障害者雇用率未達成企業が納付する納付金を財源として、職場環境整備や職場定着などさまざまな支援を対象とする助成金制度を設けています。

今回の改正では、障害者の雇入れと雇用継続に関する相談支援などに対応するための助成金制度などが新設されることになったほか、障害者介助用助成金、職場適応援助者助成金等も拡充されることになりました。

新設されるのは、障害者の就労支援事業者に対して支給される「障害者雇用相談援助助成金(仮称)」、中高年齢の障害者などの職場適応を支援する「中高年齢等障害者職場適応助成金(仮称)」です。

障害者雇用相談援助助成金については、以下の関連記事で詳しく紹介していますので、ぜひご確認ください。

(関連記事)
障害者雇用支援者向け助成金を新設「障害者雇用相談援助助成金(仮称)2024年4月から

中高年齢等障害者職場適応助成金は、雇用継続のために35歳以上の障害者について、職場転換の能力開発や環境づくりを行った際に事業主に対して支給されるものです。

今後、省令や告示等の改正が行われる予定。新助成金や既存助成金の拡充に関する詳しい内容は障害者雇用分科会で議論中であり、今後変更される可能性があります。

制度見直しや新助成金を見据えた障害者雇用促進へ

2024年度から障害者雇用率が2.5%、2026年度からは2.7%に引き上げられます。より多くの障害のある方が社会で活躍し、安定した暮らしを手に入れるには、職場も含む社会全体の取り組みが必要です。

今回の改正では、「法定雇用率の達成さえできればいい」という数字だけを追う障害者雇用ではなく、雇用された組織で、その事業活動において活躍できる「雇用の質」と、障害のある方の就労ニーズに合った働き方が重視されています。

障害のある方は、その特性に応じてさまざまな得意分野や苦手分野があります。その中で、特性に合った職域とやり方で働くことにより、本来の能力を発揮できます。障害者雇用に課題を抱えている事業主の方や、これから障害者雇用を始める事業主の方は、障害のある方が組織の一員として活躍できる環境づくりへの準備があるか、実際に環境づくりを進められているかを、ぜひ再チェックしてみてください。

【参考】
令和4年障害者雇用促進法の改正等について|厚労省
第124回労働政策審議会障害者雇用分科会 資料4-1「新設助成金の設定及び既存助成金の拡充について(案)」|厚生労働省

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