2023/07/18
2022年度 障害者雇用の企業名公表 指導が多い産業はどれ?
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2023年3月、障害者雇用促進法に基づく企業名公表が行われました。障害者雇用状況に改善が見られない5社の企業名や状況とともに、各産業で特別指導等の対象となった企業数も掲載されています。障害者雇用が進まない要因は何か、どうすれば障害者雇用促進につながるのかを見ていきましょう。
2022年度の企業名公表は5社
2022年度の特別指導等は、55社に対して行われました。指導の結果、雇用義務を達成した企業が31社あった一方、特別指導等を経ても改善が見られず、今後の速やかな改善も見込まれない企業が5社ありました。
障害者雇用促進法に基づき、この5社の企業名や障害者雇用の状況が公表されています。5社のうち3社は、前年にも企業名が公表されており、依然として大きな課題を抱えているようです。
公表された5社の本社所在地、産業、実雇用率、そして障害者雇用が進まない主な要因は次のとおりです。
本社所在地 | 産業 | 実雇用率 | 要因 | |
A | 東京都千代田区 | 不動産賃貸業 | 0.77%
※1 |
店舗増に伴う従業員増加に対して、障害者の雇用不足数に見合う職域拡大が不十分 |
B | 東京都千代田区 | ビルメンテナンス業 | 0.42%
※1 |
障害者の雇入れに向けた取り組みが行われていない |
C | 広島県広島市 | 小売業 | 0.86%
※2 |
障害者の雇用不足数に見合う職域拡大が不十分 |
D | 東京都渋谷区 | 小売業 | 0.47%
※1 |
一定数の求人を出しているものの求人条件等の見直しが不十分 |
E | 神奈川県横浜市 | 小売業 | 0.88%
※1 |
求人条件等の見直しが不十分 |
※1 2023年1月1日時点
※2 2022年12月1日
全体として、求人条件や職域が障害のある方の就労に合ったものになっていないことがうかがえます。
なお、企業名の公表は、以下の流れで決定されています。
特別指導等の対処となった企業が多い産業
2022年度の特別指導等の対象企業数55社を企業規模で見ると、従業員数1,000人以上の企業が6社、1,000人未満の企業が49社でした。
さらに産業別に見ると、卸売業・小売業、製造業、情報通信業で企業数が比較的多くなっています。
最も多い産業は卸売業・小売業で11社
特別指導等が最も多かったのは、卸売業・小売業で11社です。
卸売業・小売業は他の産業に比べても企業数が多く、2018年の障害者雇用実態調査でも、より多くの障害者が働いているという結果が出ました。しかし、こうして特別指導等の対象企業数が多いことは、企業によって障害者雇用の推進に大きな差があることをうかがわせます。
今回、企業名公表となった企業にも、小売業を手がける企業が複数見られました。障害者向けの求人を出してはいても求人条件が障害を考慮したものになってないなど、障害のある方の特性に対する理解自体や環境整備が追いついていないと考えられます。障害特性等の理解が進まなければ、特性に応じた職域拡大も難しくなってしまうでしょう。
製造業、情報通信業は各8社
次に特別指導等の対象企業数が多かった産業は、製造業と情報通信業です。それぞれ8社が特別指導等の対象となりました。
製造業も、卸売業・小売業と同様に企業数、働く障害者数ともに多い産業です。ただし実態調査では、身体障害者の約20%、知的障害者の約26%が製造業で働く一方で、精神障害者では約6%、発達障害者では約9%と大きな差が見られました。
作業内容と障害特性の相性がわかれば障害者雇用を進めやすいものの、相性の悪い作業を割り当ててしまえば職場定着は難しくなってしまいます。製造業で障害者雇用に成功した事例を参考に、どのような職域で活躍できそうかを今一度確認してみると、職場定着のヒントが得られるはず。事例にある作業内容やサポート方法、特性と作業の相性などをチェックしてみてください。
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他方、情報通信業は比較的企業数が多いものの、そこで働く障害者数は少ない傾向が見られます。実態調査によれば、身体障害者で約3%、知的障害者で約1%、精神障害者や発達障害者では約2%しか情報通信業に従事していません。
情報通信業には大手企業がある一方で、スタートアップやベンチャーなど、若い企業が多いことも特徴のひとつです。はじめは障害者雇用状況の報告が不要だった企業でも、事業拡大で従業員数が43.5人を超えれば、法定雇用率達成が求められます。業界全体として、障害者雇用の取り組みをより意識する必要があるでしょう。
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障害者雇用の促進は支援機関との連携から
障害者雇用を進めるには、障害理解の促進が欠かせません。どのような障害のタイプがあり、どのような困難を抱えやすいのか、どのような職場環境や労働条件が必要なのかなど、基本的な知識の習得から始めましょう。
そうした基礎知識を得た上で、実際の困難に対処する方法、支援の方法といったノウハウも必要です。障害者雇用や障害者支援では、これらの配慮を「合理的配慮」と呼んでいます。
合理的配慮には、
- 障害特性に合った業務の創出・切り出しと割り振り
- 障害特性に合った作業手順書やマニュアル作成
- 障害特性を考慮した指示の出し方
- 健康管理体制や職場環境の整備
- 定期的な面談や相談しやすい体制づくり
合理的配慮を始めとする障害支援に関する知識やノウハウは、主に支援機関による研修や現場でのサポート、支援機関との定期的なミーティングなどで得られます。障害者雇用の促進に成功している他社の取り組み事例の活用も有用です。まずは、ハローワークの窓口や地域障害者職業センター、お近くの就労移行支援事業所にぜひご相談ください。
この「障がい者としごとマガジン」編集部がある就労移行支援事業所ルミノーゾでもご相談を承っています。お困りごとや障害者雇用の進め方など、お気軽にお問い合わせください。
【参考】
障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表について|厚生労働省
平成30年度障害者雇用実態調査の結果を公表します|厚生労働省