DTSパレットが受注業務100種を達成 育成ポイントは毎年の組織編成と機会創出


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障害者雇用が進まない事業所では、障害をもつ社員の職場定着に課題を抱えるケースが散見されます。その一因は、障害をもつ社員の能力と職域のミスマッチ、職域開発の取り組み不足など。そこで、100種以上の業務の受注を達成した特例子会社DTSパレットではどのように職域開発を進め、どのように社員のスキルアップを図っているのか、第一事業推進部の寺村明さんに取り組みをうかがいました。


画像提供:株式会社DTSパレット

特例子会社DTSパレットが誇る100種以上の受注実績

金融や通信、公共、その他多くの企業などに幅広いITサービスを提供しているDTSグループの特例子会社「株式会社DTSパレット」(以下、DTSパレット)が、2011年の設立から10年で受注業務100種類を達成しました。

同社では『自分色の未来を創ろう』を理念とし、障害を持つ社員一人ひとりの成長と自立を促す人材育成と安心して末永く働ける職場づくり、そして働きがいのある多様な職域の創出に取り組んでいます。

2022年7月現在、同社で働くのは障害のない社員7名、身体障害者15名、知的障害者7名、精神障害者27名の計56名。障害者雇用で多く見られるメール便業務やオフィスクリーニングといった業務だけでなく、親会社の給与業務、DTSの統合報告書の制作、RPAロボットの開発など高いスキルを求められる業務も手がけています。

DTSパレットが受注している業務6選

DTSパレットが多く受注する業務は、発注元からもクオリティが高いと評価されています。まずは、その代表的な業務をご紹介しましょう。

注数が多い業務TOP5

受注数が多い業務の第1位は事務処理作業です。親会社の給与・通勤費に関わる業務や証明書・契約書関連業務を担っており、DTSパレットの主要業務となっています。

第2位は印刷関連業務で、名刺・パンフレット等の制作。ただ印刷するだけでなく、写真撮影・加工、印刷物のデザインまで行います。高い業務レベルと印刷物の品質が認められ、近年はDTSの統合報告書の制作を行うまでになりました。

第3位、第4位は、親会社における清掃や消毒といったオフィスクリーン作業、社内外の郵便物等の仕分けを行うメール便作業です。手順をメモしながら繰り返し業務を行うなどの各人の工夫や努力が自立的な業務遂行につながっています。

そして第5位は、DTSパレットが特に注力している動画製作です。同社では、動画製作の社会的な需要が高まっていることを受け、重要な業務と位置づけていち早く着手しました。現在、広報活動のサポートとして動画の撮影から加工・編集まで行っています。ノウハウを蓄積し技術者を増やすことで、受注数を伸ばしてきました。

他にもWEBデザイン分野の評価が高く、DTSのコーポレートサイトを全面リニューアルする際にはその一部を担当するとともに、社員の英語スキルを活かして英語版の制作も担当しました。

特例子会社では珍しいRPAロボットの開発

DTSパレットが受注する業務として他の特例子会社であまり見られないものに、RPAロボットの開発があります。

RPAとは「Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の略で、人間のみが対応可能と考えられてきたタスクを人間に代わって実施できるルールエンジンやAI、機械学習などの技術を用いて自動化すること。処理する手順を登録することで、複数のシステムやアプリケーションを使った作業を自動化できることが最大の利点です。

DTSパレットが請け負っているのは、外注管理事務の効率化。それまでは、外注検収などで管理表を参照しながら1名分ずつ社内システムへ登録していたため、多大な時間がかかる業務でした。

そのRPA化の相談を受けたDTSパレットでは、管理表を複合機でOCR処理してデータ化し、VBAにて変換、検証、マージを実施することでRPAのインプットファイルを生成。そのインプットファイルを使って、RPAにより社内システムへ自動登録するシステムを構築して納品しました。

業務100種を達成する職域開発の秘訣


画像提供:株式会社DTSパレット

100種類以上の業務を受注してきたDTSパレットですが、寺村さんによれば、当初は軽作業を中心とした業務を想定していたとのこと。しかし、就労支援機関等で障害をもつ方がPCスキルの訓練をしていることを知り、方針を変えました。

実際に業務を任せてみると、障害者のPCスキルはとても高く、PCを使った業務が得意だと分かったといいます。IllustratorやPhotoshop、Premiere Proなどの専用ソフトを使える技術者を採用したことで新たな分野で勝負できると考え、デザインや動画製作の受注を開始。英語スキルを持つ社員を採用したことでWEBサイトの英語版の制作も請け負いました。

社員が持つスキルに注目し、それを客先にあるさまざまな業務とマッチングさせること、世の中の変化に合わせて柔軟に職域を創出してきたことがうかがえます。

ただ、社員に技術や経験があっても、世の中で求められるクオリティや納期といったスピード感覚に着いていくのは大変なことです。そのため、DTSパレットでは、まず管理職が客先に障害者雇用での注意点などを説明し、障害をもって働く社員の業務について理解してもらっています。

受注する業務の選択にあたっては、技術の要求水準を管理職がヒアリングして受注できる業務と難しい業務に振り分けます。現場で働く社員には、管理職が業務を細分化して割り当てるとともに、それぞれの能力に応じた余裕のある納期を設定しているとのことでした。

これだけではありません。DTSパレットが受注数を増やしてきた第一の秘訣は、障害者が管理職になれるよう育成することにあります。

企業にとって障害者雇用の目的は雇用率達成が主となるものの、現場の社員にとって雇用率など関係のない話。管理職がマネジメントを行いやすい軽作業や単純作業だけでは社員の成長にとって十分ではありません。さまざまな業務を行えるようになる必要性、重要性を当事者として理解している管理職がいるからこそ、社員がチャレンジできる企業風土の醸成ときめ細やかなサポートが可能になります。

近年、社会情勢は大きく変化し、その変化のスピードも速くなっています。寺村さんは、社会の変化に応じて「業務形態も柔軟に対応させていく」ことが、ESG経営としても重要だと話してくれました。DTSパレットの100種類という他に例を見ない数の業務は、そうした方針を背景として社員がさまざまな種類の業務に果敢にチャレンジしてきたことで達成されたものなのです。

社員育成のポイントは1年ごとの組織編成とリーダー経験


画像提供:株式会社DTSパレット

100種類以上という多岐にわたる業務をこなしてきたDTSパレットが取り組む社員育成のポイントは、1年ごとの組織編成とリーダー経験です。

組織再編で毎年変わる担当業務

社員の育成や職域拡大には「自分でやってみる」「経験を積む」という環境づくりが非常に大切です。それは、実際にやっていく中でその人の得意分野を発見していくから。業務の進め方やスキルの習得・強化では、障害のある社員がマニュアルやテキストを用いながら、他の障害のある社員に教えるという形をとっています。

ある業務から別の業務の担当に移りたいという要望はいつでも出すことができます。ただ、DTSパレットでは毎年の組織編成で業務が変わるため、要望を出さなくてもいろいろな業務を経験できる機会が多いシステムとなっています。一見大変に思われますが、社員のステップアップの機会を積極的に設けた結果、「やってみたらできた」ということが意外に多いことも分かったとのことです。

社員育成における最も重要なポイントは「10年後、どうなっていたい?」という視点です。時代の流れに応じて求められる業務レベルも上がり、社員のスキルレベルもあげていかなければなりません。10年後は今とは全く異なる社会になっているかもしれませんし、今やっている仕事があるとも限らないでしょう。DTSパレットでは、業務単位の視点だけでなく、より大きな視点での育成を常に意識しています。

4人に1人がリーダー職

障害者である管理職の育成では、「サブリーダー」や「リーダー」として働きながら、マネジメントスキルなどのトレーニングを行う仕組みです。それぞれの役割や担当するメンバーの人数は、以下のようになっています。

役職 役割・トレーニング内容 担当人数
サブリーダー 社員の育成

他者の把握

4名
リーダー 上司と部下を持つ立場としての調整役

リーダーシップ

フォロワーシップ

10名

現在、13名の社員がサブリーダーを務めているとのこと。全体で56名のため、4人に1人がサブリーダーという計算です。社会における障害者雇用全体で課題となっている障害者のキャリアアップの困難さから見ると、DTSパレットにおける管理職育成の取り組みは障害者のスキルアップ、キャリアアップに新しい視点をもたらすものです。

こうしたマネジメントを担う立場を経験することには、意外な効果もあるとか。その1つが「勤務が安定するケースが多い」こと。他の社員のことを考える時間が増えて良い意味で自分のことに集中しすぎなくなること、他の社員の役に立てるというやりがいなどが理由と考えられます。

シニア人材の活用

さらに、DTSパレットの社員育成で特徴的なのが、シニア人材の活用です。現在5名のシニア人材が働いており、知識や技術、仕事の仕方などを教えており、今後も活用を進めていく方針です。
2030年にむけた「誰一人取り残さない」というSDGsの理念のもと、シニア人材がもつ豊かな経験や高度な知識・スキルを受け継いでいくことで、社員が未来を支える一員として活躍できるような成長をサポートしています。

働きやすさへの配慮


画像提供:株式会社DTSパレット

安心してチャレンジできる職場づくりを進めるには、働きやすさへの配慮も必要不可欠です。DTSパレットが実施する社員それぞれの特性に合わせたきめ細やかなサポートの中から、主なサポート体制をご紹介しましょう。

コミュニケーションをとりやすい環境づくり

サポートを求めやすい職場環境づくりでは、社員の発言機会を多く設けていることがDTSパレットの特徴の一つでしょう。毎日の朝礼で本人が自分のスケジュールをメンバーに伝えることで社員同士のコミュニケーションを生み、日常業務の中で上長から積極的な声かけも行われています。

コミュニケーション方法は対面でのやりとりだけでなく、チャットツール「Aipo」も積極的に活用しています。Aipoはスケジューラーと一体型で、日常のコミュニケーションとともに業務管理にも役立つツール。社員からの提案で導入しました。

チャットを日々のコミュニケーションツールとして使うメリットは、対面では話しにくい特性を持つ社員や聴覚障害がある社員でもコミュニケーションをとりやすいことです。業務連絡はもとより社員同士の雑談にも多く使われている、「むしろほとんど雑談」(寺村さん)とのことでした。

こうした工夫により、職場全体が楽しい雰囲気の中で業務を進められる環境となっています。

在宅勤務制度とフレックスタイム制

勤務制度では、在宅勤務制度とフレックスタイム制を導入しました。コロナ禍で導入が拡大したテレワークですが、DTSパレットでは社員の要望により2017年から本格導入。フレックスタイム制では、通勤ラッシュが苦手な社員などが自分の通勤しやすい時間帯に出社している例などがあります。

DTSパレットのテレワークは、出社と在宅勤務の両方を行うハイブリッド型です。職場にカメラを設置し、自宅からも社内の様子を見られるよう工夫しています。2022年7月現在、30名ほどの社員がハイブリッド型テレワークで働いているとのことです。

テレワークのメリットは他の事例でも多く言われるように、出社できない人でも安定して働きやすいということ。ただ、出社しないことで健康管理に課題が生じるケースもあります。特にテレワークで働く社員の「大丈夫です」には気をつけなければなりません。実は大丈夫ではない状況でも、うまく言い出せないことがあるからです。

そこで、DTSパレットでは全員一律にテレワークを実施する形にはしませんでした。テレワークの実施には、自己管理ができること、テレワークで働く理由があることという2つの大きな条件を設定しています。

健康管理の意識づけ・サポートと相談窓口の設置

障害者雇用では週所定労働時間が30時間未満の短時間勤務は珍しくありません。ところが、DTSパレットではフルタイムで働く社員が多く見られます。勤務時間の調整や月2回までの通院休暇制度の利用をしつつ、各々が健康管理を行って勤務時間を増やしてきました。

寺村さんによれば、短時間勤務を基本とすると「受注減少につながり、顧客からのニーズに十分対応できない」という問題が出てきます。社会から仕事をもらうため、そして業務の担当者として社員に活躍してもらうためにも、フルタイム勤務が目標です。

もちろん、安心して働けるようにサポート体制を整えています。設立当初から障害者職業生活相談員による月1回の定期ヒアリングを実施し、普段のコミュニケーションの中でも状況把握に努めてきました。就労支援機関の支援員も毎月来社して社員本人と面談等を実施したり情報共有を行ったりしているとのことです。

またコロナ禍にあって不安や不調を訴える社員のために、電話で何でも相談できる窓口「みれろ」を社内に設置。平日9時から17時までなら、1回40分で何度でも相談できます。

DTSパレットは「忙しくて厳しい会社」だが温かい

障害者雇用での業務といえば軽作業を中心としてルーティーン作業がイメージされるもの。しかし、ルーティーン作業が必ず障害をもつ社員の特性にマッチするとは限らず、むしろ合わないと判断されるケースもあります。DTSパレットでは社員の得意分野やニーズの高い業務を踏まえ、高度なスキルが要求される業務も多くになってきました。

今回取材に協力いただいた第一事業推進部の寺村さんは、軽作業ばかりではない業務内容から、DTSパレットを「忙しくて厳しい会社」と表現しています。そこには社員が「障害者」という枠組みの中だけでなく、1人の個人として輝けるようサポートするという同社の方針があります。同時に、「合理的配慮は本来障害のない方にも必要なもの」であり、「障害のない方と障害のある方とがWin-Winの関係」を築き、維持できることが大切だと話してくれました。

求められる業務レベルの高さや案件の多さ、リーダー職としてのトレーニングなど、DTSパレットは「忙しくて厳しい会社」かもしれません。しかし同時に、同社のさまざまな取り組みをとおして、一人ひとりが自分の色で輝けるようサポートしていく温かい職場でもあることがうかがえました。

取材協力・画像提供:株式会社DTSパレット

【参考】
独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「働く広場」2022年6月号
株式会社DTS「【DTS】DTSパレット、障がい者雇用で100種以上の業務受注を達成」|PR TIMES

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