【合理的配慮好事例第14回】研修等で発達障害者のコミュニケーションを支援し適切な質問・確認ができるように


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発達障害をもつ方を雇用してから職場の方が大きな戸惑いを感じやすいことの1つに、コミュニケーション上の課題があります。指示が伝わらない、挨拶や相談をしてくれない、一方的に話が続いてしまうなどの行動に頭を抱えることがあるかもしれません。

しかし、ビジネスマナーやルールに従ったコミュニケーションは、個別指導や全体研修、SSTなどを通して練習し、向上させていくことが可能です。

合理的配慮好事例解説シリーズ第14回では、発達障害をもつ従業員のコミュニケーションスキル向上のための取り組みの好事例を紹介します。

個別指導・全体研修と暗黙のルールの明文化で特性の自己理解と対処を促進—株式会社トランスコスモス・アシスト

株式会社トランスコスモス・アシストは、トランスコスモス株式会社の特例子会社。2005年に設立され、知的障害者や発達障害者を中心に雇用しています。発達障害をもつ従業員が担当するのは、各種データ入力や名刺・社員証の作成、研究資料作成、郵便物の発想や仕分けなどです。

同社の発達障害をもつ従業員には、コミュニケーション上の課題を抱える方が多く見られました。そこで行ったのが、以下の取り組みです。

  • 発達障害の従業員のコミュニケーション・タイプを把握する
  • 指導で使用する言葉や伝え方など、支援方法をできるだけ統一する
  • OJTや全体研修によるコミュニケーション能力の向上を図る
  • 明文化されていない事項について説明する

たとえば、業務報告や連絡・相談で自分の伝えたいことがうまくまとめられない従業員については、業務日報を提出する際に「1分間でまとめる」練習を毎日実施。事前に伝えたいことをまとめてから時間を計りながら報告してもらい、本人に対してその場でフィードバックを行いました。

全体研修については、毎月テーマを設けて実施しています。たとえば、4月は社内ルールやマナーを1日の流れの中で学び、5月は社会人の基本的な心構えとして「お客さまとは?」「サービスとは?」などを考えてもらう、6月は相手をほめるスキルを向上させるSSTを行うといった内容です。


出典:発達障害者のための職場改善好事例集(平成23年度)職場改善のために事業所が作成した資料、支援ツール(p.62)|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構

明文化されていない「暗黙の了解」などについては、「クッション言葉」などを文書にして伝え、習得を目指しました。文書には、相手に要求を伝える前に「すみませんが」「申し訳ありませんが」などの一言をつけ、末尾を「〜していただけますか?「〜してよろしいでしょうか?」という表現にするなど、具体的な表現が記載されています。同時に、「相手にぶっきらぼうな印象を与えてしまう言葉」(できません、やりたくありません、知りません、無理です etc.)も明示しています。

こうした取り組みにより、発達障害をもつ従業員自身が自分の苦手な部分やコミュニケーション上の特性を理解してスキルを向上させ、それを業務全体の効率化にもつなげることができました。

【参考】
発達障害者のための職場改善好事例集(平成23年度)|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
株式会社トランスコスモス・アシスト

個別指導と全体でのマナー研修を実施、総合評価表で振り返り—トーマツチャレンジド株式会社

トーマツチャレンジド株式会社は、有限責任監査法人トーマツの特例子会社。2006年に設立され、従業員62名中20名が発達障害をもつ方々です。PCセットアップ、契約書台帳作成、メール業務などさまざまな業務を担っています。

同社で生じたマナーやコミュニケーション上の課題は、以下のようなものでした。

  • エレベーターの乗り降りのマナーが身についていない
  • 挨拶の声の大きさが適切ではない
  • 業務で問題が起きた際に言葉で表現することが苦手
  • 指導スタッフの説明を理解するのが苦手で同様の問題を繰り返す

職場のマナーやルールについては、問題となった個別の事例について、その都度「どうすればいいのか」を徹底指導するとともに、全体でのマナー研修(参加型、テスト形式)を実施。言葉遣いや挨拶の仕方、いつ誰に報告・相談するのか、休憩時間の過ごし方などを取り上げています。毎回優秀者1名を表彰、マナー研修総合評価表によるフィードバックもあります。

総合評価表には、各項目に対して5段階での評価を記載。その従業員の特性や具体的な出来事についてのコメントも記載されていますので、個人面談でも役立ちます。個人面談では良い点を見つけてコメントすることで、マナー向上の意識付けが行われました。


出典:発達障害者のための職場改善好事例集(平成23年度)(p.32)|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構

問題が生じた時の伝え方や説明の理解では、月に1回行われる個人面談でフィードバックを行い、目標日誌を作成。どのような課題があるのか、どうすればよいのかといった具体的な助言を行っています。

これらの取り組みにより、事業所内でのマナー改善や問題行動の減少、早期の問題解決につなげられました。

【参考】
発達障害者のための職場改善好事例集(平成23年度)|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
トーマツチャレンジド株式会社

発達障害者のコミュニケーション支援に関する配慮ポイント

発達障害をもつ従業員のコミュニケーションを支援する際、まず大切なのは「暗黙のルール」をきちんとルールとして説明することと、根気強く繰り返し指導・練習することです。

事業所内の多くの方に見られる問題なら、全体研修で取り上げて具体的な好ましい振る舞い方を説明し、ロールプレイなどで練習するのもよいでしょう。

フィードバックを行う時は、良かった点を中心にコメントを。課題が見られた点については、具体的にどこをどうするとよいのかを伝えてください。

<発達障害者のコミュニケーション支援に関する配慮ポイント>

  • 障害特性に応じた指導や練習を繰り返し行うとともに、支援方法を統一する
  • 「暗黙の了解」を明文化し文書等でも提示する
  • 問題行動が見られた場合はその都度丁寧に具体的に指導する
  • マナー・ルールとその理由や適切な行動について定期的に全体研修を行う
  • 総合評価表を作成し個別にフィードバックを行う
  • フィードバックでは良い点を中心にコメントする

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が毎年作成する好事例集には、発達障害者に関する合理的配慮をテーマとしたものも多くあります。以下のリンクから過去の好事例を見られますので、ぜひ参考にしてみてください。

障害者雇用の事例集|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構

発達障害の方によく見られる特徴については、以下の関連記事で解説しています。

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