就労定着支援とは。ナチュラルサポートの形成と職場定着のポイント3つ


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「就労定着支援」は障害のある方が、雇用された企業で長く働けるようにするための支援。
仕事を始めたばかりは、緊張や、環境の変化、肉体的な疲労から、悩み事が多いもの。そうしたお悩みを一緒に解決し、安定して働き続ける力をつけるための支援が「就労定着支援」です。

就労定着支援は、障害者総合支援法に定められた障害福祉サービスの1つです。

就労定着支援の利用方法など基本的な情報をお伝え。
実際の事例から、定着支援のポイントを解説します。

就労定着支援の利用対象、利用期間、支援内容、料金など

利用対象者

  • 就労移行支援
  • 就労継続支援
  • 自立訓練
  • 生活介護

などの障害福祉サービスを利用して、一般就労した障害者の方が対象です。

また、就労移行支援事業所が就労定着支援事業所を兼ねているケースも多くあります。その場合は、同じ事業所に支援を依頼するケースが一般的です。当事者の方をよく理解されている事業所の支援は、企業側も安心材料となっています。

利用期間

就労定着支援の利用期間は、最長3年6ヶ月です。
就労移行支援、就労継続支援、自立訓練などを利用して一般就職した場合、最初の6ヵ月間はそれまで利用していた事業所が就労定着支援を行います。

その後も定着支援が必要な場合は、定着支援事業所と契約し、3年間の支援が受けられます。

定着支援は、1年ごとに利用期間を更新していきます。もう支援が必要ないと思えば、更新は不要です。

利用料金

利用料金(自己負担月額)は、厚生労働省が定める障害福祉サービス提供費に応じて設定されます。
前年度の世帯収入や、住んでいる自治体などによって変わります。
なお、世帯収入は本人と配偶者の金額の合計であり、親の収入は換算されません。

世帯の収入状況 負担上限額
生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市町村民税非課税世帯(※1) 0円
一般1 市町村民税課税世帯(所得割16万円(※2)未満)

※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム、ケアホーム利用者を除きます(※3)。

9,300円
一般2 上記以外 37,200円

(※1)3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象となります。
(※2)収入が概ね600万以下の世帯が対象になります。
(※3)入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム、ケアホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合
「一般2」となります。

お住まいの自治体によっては補助が受けられる場合もあります。詳しくはお住まいの自治体の障害福祉課へお問合わせください。

支援内容

定着支援では、障害者と企業の担当者との面談から行います。

【面談内容の例】

  • 勤務状況
  • 業務を担う上での困り事や改善点
  • 生活状況や働く上での困りごと

支援員は双方のヒアリングを行い、課題解決に向けた指導や助言、必要に応じて家族や関係機関と連携しながら環境調整を行っていきます。

定着支援の目標は「ナチュラルサポート」の形成

定着支援の目標は「ナチュラルサポートの形成」です。
ナチュラルサポートとは、ジョブコーチや定着支援事業所による支援が必要なく、社内で当事者が能力を発揮して活躍できる状態のこと。上司や同僚による、職場内の自然な助け合いの中で、仕事を続けられる環境がナチュラルサポートが形成された状態です。

定着支援を担当する支援員はこうした環境を育む役割を担っています。

ナチュラルサポート形成を達成するには、障害者本人の能力や努力だけでなく、支援者の関わり方、職場環境の整備、適した職域の創出・選択なども重要です。

(関連記事)
【障害者編】一般企業の職場定着に重要なナチュラルサポートとは? メリットとNS形成のプロセス

定着支援実際のケース

定着支援では具体的にどんなことが行われるのか、実際のケースをご紹介します。
ご紹介するのは、定着支援事業所としても指定を受ける一般社団法人ルミノーゾの事例です。

ケース1「タスクが増えキャパオーバーを整理」

複数の就労経験があり、社会マナーも出来ているAさん。
就労移行支援を利用し、事務職でフルタイムの勤務に就きました。

業務指示の理解も早く、軽作業からパソコン業務へと徐々に仕事内容が広がっていきます。
職場からは、安心して任せられるという印象を持たれていました。

しかし、ご本人は業務が多いを感じていることを周囲に言えないまま仕事を続け、ストレスから眠れなくなってしまいます。出勤はできるものの、日中の強い眠気に悩まされるようになりました。
前職の離職原因は、頑張りすぎてしまい燃え尽きたことが大きくありました。
こうした事も踏まえ、支援員が間に入り、適切な業務量に減らしてもらうことに。
また、職場で定期的な面談を設けることで、体調管理や業務量の調整を行っていくことにしました。

半年が経過し、ご本人も職場に慣れ、雑談できる同僚もできました。
職場でリラックスできるようになり、定期面談も回数を減らしていくことに。
肩の力を抜いて、業務に臨めるようになっています。

ケース2「在宅ワークでの支援」

実務能力は高いものの、体調が安定しないことに不安があるBさん。
就労移行支援を利用し、フルタイムの事務職ですが、在宅勤務メインの職場に就職されました。
出勤は、週1回。それ以外は在宅勤務です。

勤務開始から2ヶ月が経った頃

  • 体調が安定せず、週1回の出勤が難しい
  • 疲れにより、度々2時間の休憩申請がある
  • 仕事ができない悪循環により思考もネガティブに

といった課題が出ました。
定着支援の日も出勤できず。支援員は、オンラインで企業側、ご本人双方のヒアリングを行いました。

まずは、主治医と相談し、服薬調整により体調の安定へ。
現場とも調整し、週1回の出勤を月に1〜2回へ変更してもらいました。すべてを在宅勤務にしてしまうと、さらにネガティブ思考が深まるという懸念から、このペースが落とし所となりました。企業側の「体調の安定が第一」という理解があっての調整でした。

体調の安定はこれからも課題ですが、支援員や主治医と協力しながらの模索が続いています。

ケース3「特性理解が得られず配置換え」

社会経験は乏しいものの、学生時代に培ったバイタリティのあるCさん。
就労移行支援を利用し、広報の仕事に就きました。
就職後、慣れない環境の中で、「動きが止まる」という特性が出ました。
この「機能停止」状態を、職場での理解が得られず「ずる休みしている」「演技している」と思われてします。
この特性をご自身ではうまく説明できず、悪循環へ。ストレスや疲労の蓄積から、不眠やめまいなどの症状へ広がります。

定着支援で、支援員が間にはいり、特性の説明や職場での業務調整を重ねました。
半年にわたり具体的な解決策を複数提案するも、現場レベルでの理解を得ることが出来ませんでした。
最終的には、ご本人が異動することになりました。

異動先では、特性の理解を得られ実力を発揮。
固まってしまうときにも、適切な声掛けがあり自己解決できるようになりました。
安心して働ける職場となっています。

就労定着のポイント

  1. 障害当事者、企業双方がお互いを理解する姿勢を持つ
  2. どうすれば業務をこなせるのか、双方話し合いの上で解決していく
  3. 同僚となるスタッフに障害理解の研修を行うなど受け入れ態勢を作っておく

職場定着には障害当事者、企業の両方が歩み寄って成長してく姿勢がとても大切です。
支援員はそのためのツールや、情報提供を行います。

3年6ヶ月経過後も支援が必要な場合

前項でお伝えしたように、就労定着は最長3年6ヶ月という期限があります。
この期間の中で、当事者、企業双方が自己解決出来る力をつけるよう支援していきます。
ナチュラルサポートを形成し、外部の支援の必要ない環境つくりを行っていきます。

しかし、3年6ヶ月を超えても支援を希望する場合、障害者就業・生活支援センターへ支援を繋いでいくことになります。
障害者就業・生活支援センターは、障害のある方の就職支援を行うハブ組織です。
自立し安定した職業生活を行えるよう、当事者、企業双方へ情報提供や、関係機関とのコーディネートを行っています。
定着支援の障害者就業・生活支援センターへの引き継ぎは、一律に行われるものではなく、必要性の精査を行った上でなされます。

当事者も自立した生活へ向け、自己解決できるよう3年6ヶ月を過ごしていくことが大切です。

(関連記事)
【ジョブコーチ編】NS(ナチュラルサポート)とは? メリット・形成のポイント・注意点
【障害者編】一般企業の職場定着に重要なナチュラルサポートとは? メリットとNS形成のプロセス
【事業所編】NS(ナチュラルサポート)とは? メリット・NS形成の流れ・現場での注意点

【参考】
障害者就業・生活支援センターについて丨東京労働局

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