精神科デイケアでも実施されるSSTとは? 発達障害や精神疾患を抱える方向けの訓練内容


発達障害者や精神障害者の社会生活訓練方法として注目を集めているSST(ソーシャル・スキルズ・トレーニング、ソーシャルスキル・トレーニング)は、障害をもつ方々の生活の質(QOL)を向上させる方法として効果が認められているトレーニングです。

SSTを活用することで、基本の対人関係や服薬・症状の自己管理などが苦手な方々が、自分の抱える課題に応じてスキルを習得・向上させることができます。

SSTの概要や流れとともに、デイケアでSSTを行っている医療機関をご紹介します。

SSTとは? テーマ設定やセッションの進め方の例

SST(エス・エス・ティ)とは、「ソーシャル・スキルズ・トレーニング」の略。認知行動療法と社会学習理論をベースに作られた社会生活訓練法のことです。「社会生活技能訓練」「生活技能訓練」などと呼ばれることもあります。

SSTで取り上げられるテーマ

SSTでは、社会の中で生きていくためのさまざまなスキルを習得・向上させるためのトレーニングを行います。トレーニングのテーマには、たとえば以下のようなものがあります。

<SSTにおけるテーマ例>

  • 日常のあいさつ
  • お願いの仕方と断り方
  • 会話の始め方と終わり方
  • 飲み会の誘いの断り方
  • 忙しい人への質問の仕方
  • 復職時のあいさつ
  • 服薬の自己管理
  • 症状の自己管理

具体的なテーマは、参加希望者が抱える課題に沿って設定されます。その後、テーマに応じたロールプレイを通して課題を改善していくというのが一般的な流れです。

ロールプレイの前には、テーマをより理解しやすくするため「どのような場面で発生する課題なのか」という場面設定も行われます。「誰が・何を・いつ・どこで・どのように行うのか」「目標は何か」を設定することで、より具体的にイメージして取り組めるでしょう。

グループワークが基本になる

SSTでは、習得したいスキルをロールプレイで学んでいくため、グループワークが基本となります。

同じテーマについてグループで1つの目標を目指して取り組みますが、参加者それぞれが抱える課題は少しずつ異なるかもしれません。そのため、グループ全体の目標を踏まえて、参加者それぞれが自分なりの目標を立てることも重視されています。

もしグループワークでは不安や緊張が強くなってしまうという方の場合は、「個人SST」も可能です。支援者と受講者が1対1で行うSSTです。

セッションの流れとロールプレイ

SSTでは何回かの「セッション」を通して目標達成に取り組んでいきます。セッションの中心はロールプレイ。1回のセッションの中でロールプレイは2回以上実施され、1回終わるごとにフィードバックが行われるのがSSTの特徴です。

たとえば、コミュニケーションに関する課題をテーマとするトレーニングの場合、参加者は課題を抱える「本人役」やコミュニケーション相手となる「相手役」を演じることになります。

1回のセッションの流れとしては、以下のようなやり方があります。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「精神障害者職場再適応支援プログラム SSTを活用した支援の実際」に記載されているトレーニングの流れです。

<SSTのロールプレイとフィードバックの流れ(例)>

  1. 今の気分を一言ずつ言う
  2. ウォーミングアップ
  3. 場面設定の説明
  4. 1回目のロールプレイ
  5. 本人役からの感想(難しかったこと・達成できたこと・気づいたことなど)
  6. 相手役からのフィードバック(肯定的なフィードバックを中心に)
  7. 周囲からのフィードバック(良かった点・改善点・疑問など)
  8. その他質疑応答
  9. 2回目のロールプレイ
  10. 本人役・相手役・周囲からのフィードバック
  11. 全体を通しての感想(参加者全員が一言ずつ感想を言う)
  12. 必要に応じて本人役に宿題を設定する(後のセッションで結果を報告してもらう)
  13. 振り返りシートに記入(セッションの要点・満足度・言いにくかった本音など)

【参考】
精神障害者職場再適応支援プログラム SSTを活用した支援の実際|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
ユースアドバイザー養成プログラム 5 SST(ソーシャル・スキルズ・トレーニング)|内閣府

SST「基本訓練モデル」では何をする?

SSTには目的に応じて複数の訓練があります。障害保健福祉研究情報システムの「精神障害者のSST」によれば、次の6種類を中心にトレーニング内容や方法がまとめられているそうです。

<SSTの訓練の種類>

  • 基本訓練モデル
  • 服薬や症状の自己管理
  • 基本会話
  • 余暇の過ごし方
  • 金銭自己管理
  • 職業リハビリテーション

6種類のうち「基本訓練モデル」と呼ばれるのが、社会生活に欠かせない対人関係の問題を中心に扱うトレーニングです。

先述した「SSTのロールプレイとフィードバックの流れ(例)」も基本訓練モデルとして見ることができます。2回目以降のセッションは、一般的に以下のように進められます。

<基本訓練モデル 2回目以降のセッションの流れ(例)>

  1. 開始の宣言
  2. ウォーミングアップ
  3. 宿題の報告
  4. 場面設定
  5. ロールプレイの予行演習
  6. 良かった点などのフィードバック
  7. 改善点・修正点のフィードバック
  8. モデリング
  9. 新しい行動のロールプレイ
  10. 宿題の設定

ポイントは、「良かった点」「できたこと」など、プラスのフィードバックを大切にすることです。

【参考】
西園昌久「精神障害者への訪問サービスの援助技術の確立に向けた研究」|厚生労働省 (p.40-41)
精神障害者のSST|障害者保健福祉研究情報システム

精神科で実施されているSST —統合失調症のリハビリテーションや生活の質向上に

SSTを受けられる施設は、医療機関や福祉施設、就労支援機関、職場などさまざま。たとえば精神科で実施されている例では、吉祥寺病院のSSTを活用した統合失調症のリハビリテーションや神奈川県立精神医療センターの精神科デイケアがあります。

統合失調症の方を中心とした吉祥寺病院のSSTプログラム

吉祥寺病院のSSTは入院されている方々を中心に実施されています。参加者の8割以上が統合失調症の患者さんです。

統合失調症のリハビリテーション、再発防止、生活の質の向上、社会復帰などを目的として、3つのプログラムが用意されています。

<吉祥寺病院で実施しているSSTプログラム>

  • 基本訓練モデル(1年で3クール、1クールあたり12回実施)
    • コミュニケーションスキルの習得と向上
    • 生活の質を高める
  • 服薬教室(1年で5クール、1クールあたり5〜7回実施)
    • きちんと服薬する
    • 再発を防止する
    • 薬の正しい知識を得る
  • チャレンジグループ(1年で1〜2クール、1クールあたり12回実施)
    • 作業所の見学や利用者との交流
    • 作業体験
    • 買い物と簡単な食事作りの体験
    • 薬の管理方法の学習
    • 援助者への相談の仕方

SSTは患者さんにとってスキル習得・向上になるだけでなく、医療関係者にとってもコミュニケーション力や障害特性の理解向上につながっているようです。

【参考】
SST(ソーシャルスキルトレーニング)について|吉祥寺病院

日帰りで参加できる神奈川県立精神医療センターの精神科デイケア

神奈川県立精神医療センターでは、日帰りで産科できる精神科デイケアでSSTを実施しています。参加者のコミュニケーションスキル向上を中心に、実際の場面を想定してスキルの習得・練習を行います。

同センターのデイケアでは、SST以外にも多くの活動があります。茶道・料理・創作・スポーツ・認知行動療法・クラブ活動・金銭管理・家事の練習などです。

病気の再発を予防したりコミュニケーション力を伸ばしたりしたい方の他、生活リズムを整えたい方、悩みを話し合える仲間が欲しい方なども利用可能。利用を検討する際は、まず主治医に相談してみてください。

【参考】
精神科デイケア|神奈川県立精神医療センター

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