【精神障害者】障害者枠の給料は?仕事の悩み・不安TOP5


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近年、精神障害者の雇用が大きく伸びています。厚生労働省が毎年行う調査では、2021年から2022年で精神障害者の雇用数は1万人以上の増加となりました。しかし、職場では多くの悩みが生まれているようです。民間企業の調査結果とあわせて、現在の精神障害者雇用における当事者の悩み、雇用管理における課題を探ります。

精神障害者雇用の給料・職業

精神障害者の雇用が増え続けています。厚生労働省から毎年発表される「障害者雇用状況の集計結果」を見ると、精神障害のある方で雇用されている方は10万9,765.5人。身体障害者や知的障害者を含む全体で約61万人ですから、約18%の方が精神障害者であるという計算になります。その雇用数は近年特に増加しており、身体障害者や知的障害者の伸び率を上回る状況です。

パーソル研究所(協力:パーソルダイバース)による「精神障害者雇用の現場マネジメントについての定量調査」でも、直近5年間で精神障害者の雇用数が増えたと回答した企業は、他の障害種別より多い結果となりました。身体障害者雇用では28.1%、知的障害者雇用では23.2%の企業が「増えた」とした一方で、精神障害者では33.8%となっています。

しかし、厚生労働省が5年に1度実施する「障害者雇用実態調査」からは、精神障害者雇用の課題も見えてきます。週あたりの労働時間と給料、正規/非正規などの雇用形態に関する課題です。

具体的に確認してみましょう。2018年の障害者雇用実態調査の結果から、精神障害者の週あたりの労働時間と月収、職業を示したものが、下の図です。

これを見ると分かるとおり、週30時間以上働く精神障害者は、他の障害種別よりも10pt以上少ない47.2%、その月収は平均18.9万円でした。精神障害者の過半数は週30時間未満での就労です。週20時間以上30時間未満で働く方は39.7%おり、平均月収は7.4万円。週20時間未満で働く方は5.1%で、平均月収はさらに少ない5.1万円でした。

精神障害のある方の場合、体調面から他の障害種別の方よりも少ない労働時間となる割合が大きくなります。そのため、全体としても平均月収が少ないという傾向が見られます。

雇用形態についても、「無期契約の正社員以外」で働く方は46.2%。次に多いのが「有期契約の正社員以外」(28.2%)となっており、精神障害者雇用では、非正規で働いている方が7割以上を占めていました。

精神障害のある方が従事している職業は、サービス業、事務的職業、販売の職業が比較的多いようです。これら3つの職業が、全体の約75%を占めました。他の職業では、生産工程の職業、運搬・清掃・包装等の職業などが見られます。

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精神障害者雇用は難しい?雇用ノウハウに課題

精神障害者の雇用数が増加する一方で、「精神障害者雇用は難しい」と感じている企業も多いようです。よく聞かれるのは、「欠勤が多い」「勤怠が安定しない」などの声。「精神障害のある当事者の問題」と考える企業もあるかもしれませんが、実状は必ずしもそう断言できるわけではありません。

パーソル総合研究所の調査結果をもう少し詳しく見ていきましょう。同調査では、障害者雇用を行う一般企業691社に対して、障害者雇用ノウハウの蓄積度を尋ねています。精神障害者雇用においては、以下のような結果となりました。


※パーソル総合研究所「精神障害者雇用の現場マネジメントについての定量調査」p.23より作成

精神障害者雇用数が直近5年間で「増えた」とした企業が33.8%だったのに対して、その雇用ノウハウが「十分にある」または「困らない程度にはある」とした企業は、23.1%にすぎません。むしろ「蓄積途上の段階」または「手探り状態」の企業が57.0%と、過半数を占めている状況です。

一般企業における障害者雇用への姿勢についても、障害者雇用を積極的に進めている特例子会社と比較して、大きな違いが見られました。

上の図のように、一般企業の全体的な姿勢は、特例子会社と比較して

  • 戦力化を重視しない
  • 育成を重視しない
  • 専門家と連携をしていない
  • 障害者雇用の優先度が低い
  • 障害者雇用のための組織体制整備を進めていない

といった傾向があるようです。

また、一般企業だけで見た精神障害者の定着度や活躍度に注目すると、障害のある従業員の戦力化や育成、専門家との連携を行っているケースでは、定着・活躍度のポイントがより高くなっていました。

【精神障害者雇用の雇用態度と定着・活躍度】(一般企業)

雇用態度

定着・活躍度

(pt)

戦力化を求め、育成を重視 3.6
専門家と連携し、組織体制を整備 3.3
戦力化を求めず、手厚く配慮 3.3
専門家と連携せず、障害者雇用の優先度が低い 3.1
戦力化を求めるが、育成・配慮はしない 3.1

これらを見ると、精神障害のある従業員の就労について、そもそも企業側が持っているイメージが実際の定着・活躍に必要なポイントとずれている可能性がうかがえます。

その結果、精神障害のある従業員本人は安定した勤務を目指し、早期離職を考えていない状況であっても、合理的配慮の提供や職域とのマッチングが課題となり、不安定な就労や早期離職となってしまっている恐れがあります。

精神障害者が仕事で抱える悩み・不安TOP5

雇用ノウハウがまだ蓄積されていない職場において、精神障害のある従業員はどのような悩み・不安を抱えているのでしょうか。

パーソル総合研究所は、障害者枠で働く当事者と一般枠で働く当事者の困りごと・不満を調査。その結果、以下がTOP5となりました。

【障害者枠で働く精神障害者の悩み・不安TOP5】

第1位 給料が安い 50.0%
第2位 給料が上がらない 41.8%
第3位 評価の基準が明確でない 37.3%
第4位 教育・研修機会が少ない 32.8%
第5位 知識・スキルが身につかない 29.9%

 

【一般枠で働く精神障害者の悩み・不安TOP5】

第1位 給料が安い 52.4%
第2位 給料が上がらない 42.9%
第3位 人間関係に馴染めない 33.3%
第4位 障害をうち明けられない 31.7%
相談相手がいない・相談機会が少ない 31.7%

障害者枠では、給料に対する困りごと以外の困りごとについて、評価基準の曖昧さ、教育・研修の不十分さ、スキルアップの難しさなどがあがっています。身体障害者と比較すると、「教育・研修機会が少ない」は精神障害者のほうが18.7ptと大きな差が見られました。TOP5には入っていませんが、「仕事が簡単・単調すぎる」という選択肢でも、精神障害者のほうが12.9pt多い結果となっています。

障害があること、障害特性の内容を共有しているにもかかわらず、精神障害者雇用では、身体障害者の場合と比較して、能力や希望に合った職域での仕事ができていないことが示唆されます。

一般枠について見ると、さらに身体障害者との差が大きい項目がありました。例えば、「障害をうち明けられない」では、精神障害者のほうが30.5pt多く、「人間関係に馴染めない」でも21.9pt多い結果です。「職場で孤立している」(+19.8pt)、「相談しても対応してもらえない」(+14.8pt)など、精神障害のある従業員は、職場で孤独感を抱えている様子がうかがえます。

雇用ノウハウがある企業の雇用管理例

当事者のこうした困りごとを解消・軽減するには、精神障害者雇用のノウハウを蓄積してきた企業の雇用管理施策を参考にするとよいでしょう。

ノウハウがある企業では、例えば採用前の職場見学や実習を受け入れたり、積極的な外部専門機関との連携を行ったりしています。

また、配属先や業務内容を検討した上で採用計画を立てたり、採用時に必要な合理的配慮の内容や勤務条件、待遇等をていねいに話し合うことも重要。障害特性に応じたコミュニケーションのポイントや配慮事項を現場で共有することも、忘れてはいけません。

さらに、障害者雇用に実績のある企業では、入社後の研修や教育機会の確保にも積極的です。

「無理をさせてはいけないから」と腫れ物に触るようなやり方をするのではなく、成果を出すために、どのような特性に対して、どのような配慮をする必要があるのかをきちんと見定めていきましょう。

なお、一口に「精神障害」と言っても、適切な合理的配慮の内容は人によって異なります。精神障害に対する理解を深めるための研修を行ったり、個別ケースへの柔軟な対応に向けて外部機関との連携を行ったりしながら、ていねいに進めていきましょう。

他の企業の取り組みや好事例などを見ることでも、実践的なヒントを見つけられます。当マガジンでもさまざまな事例をご紹介していますので、ぜひご覧ください。

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精神障害者雇用に活用できる助成金の例

精神障害者の方が職場でよりいきいきと働けるよう、雇用の質の向上に向けた助成金も活用してください。精神障害者雇用の場合、既存の助成金でも対象期間が他の障害種別より長くなったり、実雇用率への算定方法に特例が設けられたりしています。

例えば、「障害者介助等助成金」は、障害のある従業員へ提供する合理的配慮や関連施策について費用を助成するものです。精神障害のある従業員を対象とする場合、障害者相談窓口担当者の配置助成金、職場支援員の配置または委嘱助成金、職場復帰支援助成金などを活用できます。

障害特性に合わせた職場環境づくりでは、「障害者作業施設設置等助成金」などが使えるかもしれません。精神障害者の場合、周囲の従業員の動きや視線が気になって集中しにくいというケースで、仕切りパネル設置にかかる助成が認定された例があります。

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【障害者雇用助成金】障害者作業施設設置等助成金の申請方法と受給後の流れ【2023年度版】

助成金制度は、対象となる施策や助成額等がよく変更されます。最新情報は、厚生労働省やJEED公式ページでご確認ください。

【参考】
パーソル総合研究所(協力:パーソルダイバース)「精神障害者雇用の現場マネジメ ントについての定量調査」
平成30年度障害者雇用実態調査の結果を公表します|厚生労働省

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