障害者雇用におけるジョブコーチとは? 役割・導入方法・受けられる助成金


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民間企業における合理的配慮提供が義務化される改正障害者差別解消法が2021年5月に成立。公布日である2021年6月4日から3年以内に施行予定です。そこで今回は、職場における合理的配慮の提供で重要なジョブコーチの役割、導入方法、受けられる助成金などについて解説します。

ジョブコーチ(職場適応援助者)」とは? 障害者雇用における役割と仕事内容

ジョブコーチ(職場適応援助者)とは、障害者が働く職場において、障害特性を踏まえて職場適応に関する課題を解決するための支援を行う専門職。支援対象となる障害をもつ方が業務を進めたり職場に対応したりするために、さまざまな支援計画を立て、実施します。

たとえば、障害者との面談や業務の調整、マニュアル整備の助言、上司や同僚への指導・サポート方法の助言、体調管理のためのワークシート作成や記録の確認と助言、支援者同士の会議への出席と情報共有、社内でのセミナー実施といったことが、ジョブコーチを中心に実施されています。

特性や職場環境に応じて具体的な取り組みや支援する期間はさまざまですが、標準的な支援期間は2カ月から4カ月程度、障害を持つ従業員と事業主を中心にサポートするのがジョブコーチの仕事と言えるでしょう。

<ジョブコーチによる支援方法と内容>

  • 職場適応に関して具体的な目標を決定
  • 支援計画に基づき支援を実施
    • 標準的な支援期間は2〜4カ月
    • 支援期間は1〜8カ月の範囲で個別に設定する
  • 対象障害者・家族に対する支援
    • 職務の遂行を支援
    • 職場内のコミュニケーションを支援
    • 体調や生活リズムを整えることを支援
    • 安定した職業生活を送るための家族の関わり方についての助言
  • 事業主や上司・同僚に対する支援
    • 障害特性に配慮した雇用管理等を支援
    • 配置、職務内容の設定を支援
    • 障害の理解に関する社内啓発の実施
    • 障害者との関わり方に関する助言
    • 指導情報に関する助言

また、ジョブコーチが行う支援は、将来的に事業所の上司や同僚が障害をもつ従業員を自然にサポートできること(ナチュラルサポート)を目指して進められるのが特徴です。「障害をもつ社員が困っているようだが、どうしたら解決できるのか分からない」という職場での“困った”を解決し、障害の有無にかかわらず一緒に働ける職場作りをサポートします。

実際にジョブコーチが支援を行った事例については、以下の合理的配慮好事例シリーズをご覧ください。

(関連記事)
【合理的配慮好事例第12回】手帳や業務日誌の工夫で体調管理と相談しやすい環境作りを

ジョブコーチの種類は配置型・訪問型・企業在籍型の3つ

ジョブコーチには、所属先に応じて3つの種類があります。「配置型」「訪問型」「企業在籍型」です。

配置型ジョブコーチ

「配置型ジョブコーチ」は、地域障害者職業センターに配置されるジョブコーチ。支援対象となる障害者が働く事業所に出向き、就職等がより困難な障害者を重点的に支援します。

訪問型ジョブコーチや企業在籍型ジョブコーチと連携して支援を行うこともあり、それらのジョブコーチや職場に対して必要な助言・援助を行う役割を担っています。

訪問型ジョブコーチ

「訪問型ジョブコーチ」は、障害者の就労支援を実施する社会福祉法人等に雇用されるジョブコーチです。就労移行支援事業所に在籍するジョブコーチも訪問型。支援を必要とする事業所に出向き、職場適応のための支援を行います。

就労移行支援事業所では、一般就労を目指す方の就職を支援するために多様なプログラム、面接への同席などを実施。さらに、利用者の就職後は職場定着支援として働く障害者と事業主・上司の方の間に立ち、それぞれに必要な助言や支援も行っています。

訪問型ジョブコーチには就労移行支援事業での多くの支援経験があるため、多様な状況や課題に対する支援が可能です。

企業在籍型ジョブコーチ

「企業在籍型ジョブコーチ」は障害者を雇用する企業に雇用されているジョブコーチです。他のジョブコーチとの違いは、外部支援ではなく企業内部の支援者であること。同じ社内で働く障害をもつ方々と上司・同僚に対して、それぞれの特性や状況に応じた支援・助言を実行います。

企業在籍型ジョブコーチは常に事業所内で働いているため、職場環境や制度上の課題など、よりきめ細やかな視点での支援が可能です。

【参考】
職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について|厚生労働省
職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援|JEED

職場にジョブコーチを置く方法

職場で働く障害者の支援でジョブコーチを利用したい場合、配置型・訪問型か企業在籍型かで利用方法の手順が異なります。

配置型ジョブコーチの利用方法

配置型ジョブコーチを利用したい場合は、事業所がある地域の障害者職業センターやハローワークに申し込みます。申し込みは事業主と障害者のどちらでも可能ですが、双方がジョブコーチの支援を受けることについて合意した上で、事業主が申し込む形が一般的です。

「ジョブコーチ支援申込書」は以下のページからダウンロードできます。
障害のある方へのサービス|JEED

申し込むと、支援対象となる障害者の特性や事業所での状況などのヒアリングが行われるとともに、支援計画が策定されます。実際に支援が始まるのは、申し込みから2週間〜1カ月ほどです。

訪問型ジョブコーチの利用方法

訪問型ジョブコーチを利用したい場合は、まずジョブコーチが在籍している就労移行支援事業所などの福祉法人等にお問い合わせを。ジョブコーチ支援を必要とする方と事業所の両方の状況をヒアリングした上で、支援計画が作成されます。その支援計画が地域障害者職業センターに承認されたら、いよいよ事業所での支援開始です。

ジョブコーチによる支援が始まると、職場での課題解決や啓発活動、環境整備、上司や同僚へのOJTなど、さまざまな施策が行われます。これは配置型ジョブコーチも同様で、集中支援期間と移行支援期間があります。

集中支援期間では週に3日ほどジョブコーチが事業所を訪問して支援を実施。移行期間では週に1〜2日程度の支援を通して、職場の上司や同僚の方によるナチュラルサポートへ移っていきます。支援終了後も必要に応じて相談が可能です。

社員が企業在籍型ジョブコーチになるには?

企業在籍型ジョブコーチを事業所内に配置したい場合は、障害者雇用や支援の担当者などが指定の研修を修了する必要があります。ジョブコーチの認定を受けられる研修は、JEEDによる「企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修」と民間研修機関による研修があります。

JEEDによる「企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修」の受講料は無料。集合研修と実技研修で構成されています。

集合研修は東日本と西日本で1会場ずつ用意されるパターンが多く、東日本の会場は幕張の障害者職業総合センターで4日間の研修を受講。職業リハビリテーションの理論、ジョブコーチの役割、障害についての知識・課題・課題分析方法、指導方法などを学びます。

一方、実技研修は各障害者職業センターで実施。実際に障害者を雇用する企業の見学、実習、ケーススタディなどを通して、支援方法を学んでいきます。

2021年度は4月、5月、6月、9月、10月、12月、2月で実施予定です。具体的な時期・日程は事業所がある都道府県の障害者職業センターでご確認ください。

研修の実施に関する最新情報はJEEDの公式ページで確認できます。

企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修|JEED

ジョブコーチになるための研修は、厚生労働大臣が定める民間の研修機関でも受講できます。

代表的なのは、ジョブコーチ・ネットワークの「職場適応援助者養成研修(訪問型・企業在籍型)」。年間5回(東京開催3回・地方開催2回)を基本に行われます。新型コロナ感染症拡大の影響で中止となることもあるため、詳細は最新情報をご確認ください。

ジョブコーチ・ネットワーク 公式サイト

ジョブコーチに関する助成金制度と支給要件・支給額

企業在籍型ジョブコーチを配置する際は、要件を満たせば「企業在籍型職場適応援助者助成金」の利用が可能です。

「企業在籍型職場適応援助者助成金」は、ジョブコーチによる支援のもと社内整備を進める事業主に対して、自社で雇用する障害者のために企業在籍型ジョブコーチを配置して支援させる場合に支給される助成金。支援者となる社員が企業在籍型職場適応援助者養成研修を修了したあとに手続きを行います。

受給手続きは、まず「受給資格認定申請」を行い、次に「支給申請」を行うという2段階で進めます。提出先は申請事業所がある地域のJEED都道府県支部です。

<受給できる事業主>以下の全てに該当する

  • 地域障害者職業センターが作成または承認した支援計画に従って適切に職場適応援助を行う
  • 支援の日ごとに、支援内容を記録した支援記録票を作成・保管する
  • 同一の企業在籍型職場適応援助者が行う職場適応援助について、過去に本助成金を受給していない
  • 同一の対象障害者について、支給の開始日前の3年間に2回(精神障害者の場合は3階)以上、本助成金を受給していない
  • 支給対象期間に、対象障害者と企業在籍型職場適応援助者の労働に対する賃金を支払期日までに支払っている
  • 対象障害者や企業在籍型職場適応援助者の出勤状況や賃金の支払い状況などを明らかにする書類を整備・保管している
  • 支給対象期間の末日までの間に、対象障害者または企業在籍型職場適応援助者を、事業主都合により離職させていない

<対象障害者>(1)〜(4)を全て満たす方

  1. 次のいずれかに該当する方
    • 身体障害者
    • 知的障害者
    • 精神障害者
    • 発達障害者
    • 難治性疾患のある方
    • 高次脳機能障害のある方
    • その他、地域障害者職業センターが認める方
  2. 次のいずれかに該当する方
    • 常用雇用労働者(1年超の雇用が見込まれる雇用保険被保険者等)
    • 精神障害者で、週の所定労働時間が15時間以上の方
  3. 当該対象障害者のための支援計画がある方
  4. 本助成金のうち、現在、訪問型職場適応援助者による支援対象者ではない方

<対象となる支援内容>

  1. 支援対象障害者と家族に対する支援
  2. 事業所内の職場適応体制の確立に向けた調整
  3. 関係機関との調整
  4. その他、地域障害者職業センターが必要と認め支援計画に含めた支援

<支給額(A+Bの合計)>1人あたりの月額、6カ月が上限

A
精神障害者 短時間労働者以外 中小企業…12万円

中小企業以外…9万円

短時間労働者 中小企業…6万円

中小企業以外…5万円

精神障害者以外 短時間労働者以外 中小企業…8万円

中小企業以外…6万円

短時間労働者 中小企業…4万円

中小企業以外…3万円

 

B
企業在籍型職場適応援助者養成研修に関する受講料を事業主が全て負担し、かつ養成研修の修了後6カ月以内に、初めての支援を実施した場合 受講料の1/2の額

助成金の詳細および最新情報はJEEDの公式ページでご確認ください。

企業在籍型職場適応援助者助成金|JEED

ちなみに、職場における障害者の支援を担当する専門職としては、ジョブコーチ以外にも障害者職業生活相談員がいます。以下の記事で相談員とジョブコーチの違いを解説しています。

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