障害者向けインターンシップで自分の可能性を知る—日本IBMの障害者雇用と社会参加支援


IT業界大手のIBMグループでは、障害者向けインターンシップを導入しています。毎年約7か月間にわたって実施され、大学の学生や卒業生が理系・文系を問わず参加。職場での配慮を受けつつ自分の専門性を高め、「こうやって働けるんだ」という具体的なイメージをもてるプログラムとなっています。

障害者向けインターンシップ「Access Blue」

障害者向けの職業訓練やスキル習得というと、ハロートレーニング(障害者訓練)や就労移行支援事業所やリワーク支援などにおけるプログラム参加が中心です。これらのプログラムは支援機関と連携してきた障害者であれば利用しやすいでしょう。
しかし、あまり支援を受けてこなかった人の場合、そうした訓練への参加を迷ったり、就職活動で「これはできないし…」と自ら選択肢を狭めてしまったりすることがあります。障害のない方向けのセミナーや説明会が数多く実施される一方、障害のある方を対象としたセミナーや説明会はあまり多くなく、就職活動に必要な情報を得られる機会が少ないという問題もあるでしょう。

そのような若者向けに実施されている障害者向けインターンシッププログラムが、日本IBMの「Access Blue Program」です。

日本IBMは、障害のない学生に比べて、障害のある学生に対する就職情報が圧倒的に不足していることが課題になっていると指摘。Access Blueを通して職種や職場における配慮などを知り、就職の選択肢をひろげてほしいと考えています。

Access Blueが始まった2014年以降、のべ160名以上の障害を持つ若者が参加。独自の取り組みが評価され、2018年には第7回日本HRチャレンジ大賞の人材育成部門優秀賞も受賞しました。

この約7か月間にわたるインターンシッププログラムの最大の特徴は、長期間の障害者向けインターンシップになっていることです。Access Blueで学ぶ内容自体は障害のない方が学ぶ内容と同じですが、障害特性に応じた配慮を受けられる点が障害のない方向けのインターンシップとは異なります。

プログラムの内容は、以下のようになっています(2020年のコロナ禍ではフルリモートで開催)。

<Access Blueのプログラム概要>(2020年)

  • 人事部とIBM東京基礎研究所による共同開催
  • 学業、就職活動との両立を可能とする在宅勤務を活用
  • ビジネスの基礎から最新テクノロジーまで習得可能
  • 新技術の実証実験に参加可能
  • ビジネスカリキュラム
    1. 「仮想提案プロジェクトを通じたお客さま価値創造」
    2. 「実際の業務部門におけるOJT」
  • ITカリキュラム
    1. 「プログラミング、Web開発などの基礎スキル習得」
    2. 「データサイエンスに関する基礎知識学習と簡易実習」
    3. 「人工知能IBM Watsonの基礎理解と使用体験」
    4. 「チームでのアプリ開発プロジェクト」
  • さまざまな職種の先輩社員(障害のあるIBM社員)との交流

 


出典:障がいがある学生の可能性を広げるインターンシップ「Access Blue Program」|THINK Blog Japan

IT業界大手の日本IBMによるインターンシップと聞くと理系向きのインターンシップのように感じられるかもしれません。しかし、Access Blue参加者の半数以上は実は文系学生とのこと。自分にどのような職業が向いているのかを知りたい、企業での就業体験を通じて自分の特性をもっと理解したい、新しい知識や経験を得たいという若者に応える内容で実施されています。

参加した学生からは、仮想プロジェクトやスキル習得、職場での就業体験を通して「自分の興味・関心や働き方について具体的なイメージをもてるようになったという声が聞かれます。身近に障害をもって働く人がいない参加者にとっては、障害のある社員に質問できることで一つのロールモデルを見つけられるというメリットも、とても大きいでしょう。

IBMの障害者雇用の取り組み

国内に限らず、IBMグループは自社グループでの障害者雇用を推進しています。ビジネスにおける障害者の参加を推進する国際イニシアチブ「The Valuable 500」にも参加しました。

The Valuable 500におけるコミットメント

The Valuable 500への参加に際して公表されたIBMグループのコミットメントは、以下のとおりです。

<IBMグループのThe Valuable 500におけるコミットメント>(概要)

  • さまざまな才能や能力をもつ全ての従業員が最大限に力を発揮できる職場環境を整備する
  • 障害のある社員が最大限の貢献をしてIBMの事業を強化し信頼性を高めるような価値をひろげられるよう、一人ひとりにあった交流を生み出す
  • 神経学的な多様性をもつ貴重な人材がIBMで働けるようなチャンネルと機会を拡大する

IBMグループはこれまでも障害者雇用を進めてきており、今後も継続して取り組むとともに、より働きやすい環境整備や採用活動に取り組んでいくとしています。

日本IBMが運用する多様な働き方制度と職場環境整備

日本IBMには多様な働き方制度があります。障害をもっていることが不利にならないよう、勤務時間や勤務場所などについて柔軟な勤務形態を活用できるものです。

障害者の雇用形態としては、正社員のフルタイム勤務はもちろん、臨時雇用での短期間契約もあります。フレックスタイム制での勤務も可能です。

職場環境整備では、たとえば以下のようなことを実施しています。

<日本IBMの職場環境整備>

  • 情報保障ツールの貸与(聴覚障害者用のリアルタイム字幕作成など)
  • 自家用車・事業所駐車場の利用許可
  • 事業所バリアフリー整備

一方、安全性の確保で行っているのは、事業所内ツアーと災害避難行動支援です。

<日本IBMの安全性確保>

  • 事業所内ツアー
    1. 入社時や事業所移動などで必要が生じた場合に実施
  • 災害避難行動支援
    1. 入社・移動・新規障害登録のタイミングで実施
    2. 「障がいのある社員のための緊急避難安全チェックリスト」を細かく作成

さらに、新たな障害者雇用モデルの確立を目指す「一般社団法人企業アクセシビリティ・コンソーシアム」も設立。障害者雇用に関する調査やセミナー、ワークショップの開催、ロールモデル輩出、経営者や社会への提言等を行っています。

日本IBMグループの企業理念と主な事業

AI技術やクラウド・プラットフォームなどで知られるIBMは、ソフトウェアやシステムの開発、保守、運用の他に研究・開発も行っています。これまで、政府官公庁、自治体、学校、研究所、銀行、ホテル、自動車、航空機など、さまざまな取引先にサービスや技術を提供してきました。

海外グループも含めれば175か国以上で事業を展開し、19の基礎研究所を有しています。

企業理念

日本IBMグループの企業理念は「最も必要とされる存在となるために」です。

お客さまや社会から最も必要とされる存在となるために、社員はIT業界のプロフェッショナル集団として努力していくことが求められます。「One IBM」として世界中で蓄積してきた技術、ノウハウを結集することで、企業改革の支援や社会課題に立ち向かい、より良い世界をつくることがグループのミッションとなっています。

主な事業

IBMといえばAI(人工知能)、Watsonが有名。機械学習の最新技術を採用し、国内でも数多くの業種・業界で導入されています。また、ハイブリッドクラウドや量子コンピュータの分野でも高く評価されてきました。

日本IBMグループの主要会社は日本アイ・ビー・エム株式会社です。2021年6月時点で100%出資子会社は7社。日本IBMグループ各社が手がける事業は以下のようになっています。

また、IBM東京基礎研究所では、アクセシビリティ技術の研究開発を行ってきました。現在、他の企業・団体との共創という形で開発と社会実装に取り組んでいるのは、「AIスーツケース」です。

AIスーツケースは、カメラや多様なセンサーで周囲の情報を獲得し、AIがその情報をもとに目的地まで連れていってくれるというもの。点字ブロックが視覚障害者の歩行の妨げになることがある問題を解決し、点字ブロックがない場所でも視覚障害者が目的地までスムーズにたどり着けるよう支援してくれます。


出典:AIスーツケース・コンソーシアム 公式サイト

【参考】
IBM 公式サイト
IBM|The Valuable 500
障がい者の活躍を支援する取り組み|IBM
障がいがある学生の可能性を広げるインターンシップ「Access Blue Program」|THINK Blog Japan
第7回日本HRチャレンジ大賞受賞企業決定|HR pro
AIスーツケース・コンソーシアム 公式サイト

障がい者雇用に関する最新ニュース しごとマガジンのダイジェスト 障がいと仕事に関する最新ニュースを読もう! メルマガに登録する
就職、職場定着に真に役立つ情報をわかりやすく解説。
あなたの就労に活用ください。
TOP