【発達障害者】雇用の質は大丈夫?当事者の悩み・不安TOP5


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発達障害に対する認知が広まり、厚生労働省による障害者雇用の調査でも独立の項目を設けて集計が行われるようになりました。発達障害で障害者手帳を持つ方の中には、実際に障害者枠での就業を考える方もいるでしょう。

発達障害者が障害者枠で働く場合の雇用形態や平均給与、雇用の質に関する調査結果はどのようになっているのでしょうか。当事者の悩みや不安TOP5もあわせてご紹介します。

障害者枠で働く発達障害者の平均月収・職業

厚生労働省では、5年に1度の障害者雇用実態調査を行っています。2023年10月現在で最も新しい結果は、平成30年度(2018年度)のもの。全国の従業員数5人以上の民間事業所約6,000事業所から回答を得て作成されました。この調査では、身体障害、知的障害、精神障害に加え、発達障害のある方に関する調査も導入されています。

同調査結果で障害種別の平均月収や従事している職業の割合を見ると、以下のようになりました。

まず、発達障害者の労働時間と平均月収では、週30時間以上で働く方(59.8%)の平均月収は16.4万円でした。週20時間以上30時間未満で働く方(35.1%)の場合、平均月収は7.8万円。週20時間未満(5.1%)の平均月収は4.8万円でした。

発達障害のある方が従事している職業のTOP3は、販売の職業(39.1%)、事務的職業(29.2%)、専門的・技術的職業(12.0%)となっています。

(関連記事)
障害者枠で就職した人の給料は?|平均月収と障害者枠のメリット

2023年の発達障害者の雇用状況

民間での調査結果では、パーソル研究所(協力:パーソルダイバース)による「精神障害者雇用の現場マネジメントについての定量調査」があります。企業を対象とした調査は2023年1月19日〜2月9日に、当事者を対象とした個人調査は2月7日〜2月28日に実施されました。


※パーソル研究所「精神障害者雇用の現場マネジメントについての定量調査」pp.22-23 より作成

企業調査を見ると、発達障害者の雇用数が過去5年間で「増えた」と回答したのは594社のうち16.3%あった一方で、大部分を占める72.9%が「直近5年間は雇用経験なし」と回答しました。

発達障害のある方の雇用ノウハウについても、「雇用経験に乏しく手探り状態だ」「雇用経験が全くない」と回答する企業が6割以上を占めています。

発達障害の障害特性は、人によって大きく異なるものです。合理的配慮の提供にあたっては、公的機関が公表しているマニュアルやガイドブック、他企業の好事例、そして何よりもご本人の困りごとに、しっかり向き合わなければなりません。

発達障害者雇用ノウハウは、厚生労働省や独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)、各自治体などがそれぞれに資料を公表しています。当マガジンでも、発達障害のある当事者が働く現場で行われている合理的配慮の好事例や配慮ポイントをお伝えしてきました。

(関連記事)
【合理的配慮好事例第7回】障害者雇用における発達障害者のスキルアップ支援
【合理的配慮好事例第14回】研修等で発達障害者のコミュニケーションを支援し適 切な質問・確認ができるように

発達障害者が持つ職場での不満・悩みTOP5

では、働いている発達障害の当事者の方は、具体的にどのような不満・悩みを抱えているのでしょうか。有効回答数が少ないため、あくまで参考程度ですが、障害者枠で働く当事者と一般枠で働く当事者の回答を比較してみましょう。

 

【障害者枠における不満・悩みTOP5】※有効回答数 71

第1位 給料が安い 47.9%
第2位 給料が上がらない 39.4%
第3位 知識・スキルが身につかない 31.0%
昇進・昇格ができない 31.0%
第5位 行うべき業務の範囲があいまいでやりづらい 28.2%

 

【一般枠における不満・悩みTOP5】※有効回答数 39

第1位 給料が安い 41.0%
第2位 給料が上がらない 38.5%
人間関係に馴染めない 38.5%
評価の基準が明確でない 38.5%
第3位 相談相手がいない・相談機会が少ない 33.3%
物理的な作業環境がよくない・苦痛 33.3%
障害への配慮が不十分 33.3%

全体として、障害者枠で働いている方は、一般枠の方よりもスキルアップや昇進・昇格に対する不満が多いようです。「知識・スキルが身につかない」は、障害者枠のほうが一般枠よりも10.5pt高くなり、「昇進・昇格ができない」は5.4pt高い結果となりました。

一方、一般枠で働く方の場合は、障害枠で働く方より人間関係や障害特性への配慮などで不満・悩みを感じる割合が大きいようです。

人間関係について、一般枠の結果を障害者枠の結果と比較すると、「人間関係に馴染めない」では一般枠のほうが13.1pt、「相談相手がいない・相談機会が少ない」では16.4pt高い結果に。職場環境や制度面については、「評価の基準が明確でない」で11.7pt、「物理的な作業環境がよくない・苦痛」で19.2pt、一般枠のほうが上回り、「障害への配慮が不十分」でも9.4pt高くなりました。

給与については、いずれの場合も「安い」「上がらない」が上位2つを占めていますが、障害者枠のほうがやや多く選ばれています。

職場に障害特性を伝える方法は?

発達障害の障害特性は個人差が大きいため、どのような特性があり、どのような配慮が必要かを適切に職場に伝えなければなりません。では、現在働いている発達障害者は、どのような方法で伝えているのでしょうか。

調査結果に見る伝え方TOP3

パーソル総合研究所による今回の調査で、必要な合理的配慮の伝え方について尋ねたところ、発達障害者が選んだTOP3は次のようになりました。

【発達障害の特性を伝える方法 TOP3】

第1位 自分で口頭で伝えた 72.2%
第2位 支援者に伝えてもらった 43.1%
第3位 自分で書面を作成し提出した 40.3%

他に、割合としては1割ほどでしたが、「支援機関のオリジナルフォーマットを提出した」「ナビゲーションブックを提出した」という回答も見られました。

「合理的配慮を申し出ていない」を選んだ方は、発達障害のある回答者の中ではいませんでした。

ナビゲーションブックの活用

約1割の方が選んだ「ナビゲーションブック」とは、障害者職業総合センターの職業センターで実施される「ワークシステム・サポートプログラム」という専門的プログラムの中で、発達障害者の障害特性を伝えるツールとして開発されたものです。

ご本人が抱える課題を整理したり気づきを記載したりしながら、求職活動や職場定着における障害特性の説明や求める配慮の伝達などに活用されてきました。

より効果的な内容で作成するには、作成する目的に合わせた項目設定や、作成したあとの見直しが重要。フォーマットは、ご本人にとって作りやすく使いやすいものであることが第一です。

求める配慮を他の人に伝えることを目的に作成するケースもあれば、他の人とは共有せずに自分で特性を把握するために作成するケースもあります。さまざまな使い方ができますので、その作り方を押さえておくと便利でしょう。

作成方法や記載する内容については、関連記事で詳しくご紹介しています。「使えそう」と感じられる場合は、ぜひ実際に作成してみてください。

(関連記事)
発達障害者向け情報共有ツール「ナビゲーションブック」は「就労パスポート」とどう違う?

事業所と当事者の意思疎通と協力で「雇用の質」向上へ

近年、障害者雇用では「一定数の障害者を雇用する」という人数重視の姿勢から、「適当な雇用の場の提供、適正な雇用管理等に加え、職業能力の開発及び向上に関する措置」を含む「雇用の質」を重視する姿勢へと移行しています。

これには、それぞれの障害特性に合った業務内容や進め方、能力や成果に応じた昇進・昇格・昇給など、発達障害のある方がもつ能力や得意分野を活かした働き方を模索する取り組みが欠かせません。

発達障害のある方自身ができる取り組みとしては、業務に関わるご自身の障害特性を把握し、伝達することが重要です。障害者枠で働く方は、職場の支援担当者や相談窓口担当者、上司の方に、ぜひ困りごとを伝えてみてください。

一般枠においてクローズで働いている方は、ご自身のためにナビゲーションブックなどを作成し、その項目をもとに、具体的な指示の方法や取り組み方などを上司に相談するとよいでしょう。

たとえば、
「メモを取りたいので、少しお時間をください」
「このタスクの締め切り時間を教えてください」
「今のご指示をメール(またはチャット)でも送っていただけますか」
などの要望を伝えてみてはいかがでしょうか。

職場の同僚や上司の方も「このやり方でなければ認めない」とはせず、求める成果を出すために必要なプロセスの見える化や仕組み化を進め、特性に合った取り組み方を柔軟に検討することが大切です。

【参考】
パーソル総合研究所(協力:パーソルダイバース)「精神障害者雇用の現場マネジメ ントについての定量調査」
平成30年度障害者雇用実態調査の結果を公表します丨厚生労働省

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