2021/03/12
アビリンピック過去問題|第38回全国(2018)機械CAD・建築CAD
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図面の読み取りや作図は、製造や建築にとって欠かせない技能。それらの技能を競うアビリンピック競技種目が、機械の図面作成・モデリングを行う「機械CAD」と建築物の図面作成をする「建築CAD」です。
「機械CAD」や「建築CAD」で高評価を得るには、ただ読図や作図ができるだけでなく、3次元CADをうまく活用して短時間で正確に作業ができる知識と技能が求められます。
2018年大会では、それぞれ課題となる機械や建築物の内容に変更があり、選手たちは当日公開される課題内容に柔軟に対応しなければなりませんでした。
もくじ
競技種目「機械CAD」課題内容と変更点
競技種目「機械CAD」は、3次元CADツールを用いて機械の図面を作成する競技。製造に関わる人でないと目にすることのない分野かもしれませんが、機械を使う私たちの生活には欠かせない技能です。
「機械CAD」競技には、身体障害者・知的障害者・精神障害者が参加できます。
2018年大会の課題は、「スライダクランク」の部品図・組立図・等角投影図・立体分解図の作成でした。2018年大会課題である「歯車ポンプ本体」とは異なるため、まずはスライダクランクがどういった機械なのかを理解しておきましょう。
スライダクランクとは、回転運動力を往復運動に変える機械のこと。典型的には、自動車のエンジンやミシンなどで使われています。
「機械CAD」の課題は3つあります。
<2018年大会「機械CAD」の課題概要>
- 課題1:3次元モデルの作成と2次元図面の作成
- 課題2:各部品モデルを用いたアセンブル作業、立体分解図および等角投影図の作成
- 課題3:組立図の作成
課題1と課題2は事前公開されますが、課題3は当日公開となりました。
各課題の具体的な内容は、以下のとおりです。
<「機械CAD」課題1の指示事項>
- スライダンクの課題図を読図し、3次元モデルを作成する
- 3次元モデルから2次元図面を課題図に示したように作成する
- 寸法が記入されていない箇所の作図は、課題図からスケールで測定し作図する
- 部品の役割を考慮し、必要な情報を記入する
- 図面の表題欄の横に、糸面取り、普通寸法公差、普通幾何公差の中級の指示を記載する
<「機械CAD」課題2の指示事項>
- 課題1で作成した部品と配布される部品モデル(STEPファイル)のアセンブル作業を行う
- 立体分解図と等角投影図を作成し、A3用紙の指定の部分にバランス良く配置する
<「機械CAD」課題3の指示事項>
- 課題図を参照して組組立図を作成し、A3用紙の指定の部分にバランス良く配置する
「機械CAD」大会前の準備と選手が持参できるもの・会場で準備されるもの
「機械CAD」は課題の一部が事前公開されるため、本番で使える3次元CADの操作や実際の作図等を練習することができます。そして、重要なのが大会前の会場下見。本番で使うさまざまな設定を行うため、必ず出席しましょう。
大会前の準備
「機械CAD」で使える3次元CADソフトは、「SolidWorks」か「Inventor」です。どちらのソフトを使うにしても、どれだけソフトのことを知っているか、機能をどれだけ使えるかが全体の作業効率を左右します。「大体知っている」と感じても、もっと便利で効率的なやり方がないか、試してみてください。
また、大会前日の競技会場下見では、以下のことを行います。
<「機械CAD」会場下見で行うこと>
- 表面性状と幾何公差等に関する図示記号の登録・確認作業
- 図面の輪郭線、中心マークおよび任意の図形の作図と印刷確認
表面性状と幾何公差等に関する図示記号は、下見の前に作成してUSBメモリ等に入れて持ち込むことも可能です。
会場下見で行う登録作業と動作確認作業は、本番での作業をスムーズに進めるために不可欠。下見には必ず参加しましょう。
選手が持参できるもの・会場で準備されるもの
2018年大会では、会場に用意されている設備について若干の変更がありました。
2017年大会では、pdfファイル作成ソフトについて、選手がパソコンを持参する場合は予めインストールしておくよう注記がありましたが、2018年大会では注記自体が削除され、会場に用意されるパソコンについてのみ記載されていました。
また、テストプリントや最終提出作品を印刷するのに使うカラープリンタは、前大会では2台ありましたが、今大会は1台のみの用意でした。
以下、選手が持参できるものと会場で準備されるもののリストです。
<「機械CAD」で会場に用意されるもの>
- CADシステム:Windows 10、およびInventor 2018またはSolidWorks 教育版 2017-2018
- pdfファイル作成ソフト:Adobe Acrobat
- プリンタドライバ
- カラープリンタ:A3の製図用紙に印刷できるもの
- パソコンデスク:パソコン・TFT液晶ディスプレイ・JIS標準配列キーボード・マウス・マウスパッド・USB・CD/DVD-ROMドライブ
- 脇机
- 電気スタンド
- 椅子
<「機械CAD」で支給されるもの>
- 印刷用紙:A3(3枚)
- USBメモリ:フォーマット済み(1個)
<「機械CAD」で選手が持参できるもの>
- スケール:メートル用
- 分度器
- 三角定規
- ディバイダ
- 筆記用具:鉛筆・シャープペンシル・消しゴム
- マーカ類
- 粘着テープ
- 電卓
障害特性の関係で、上記以外のものを使う必要がある場合は、必ず事前に申請して許可を受けましょう。
「機械CAD」の制限時間と2018年大会の講評
「機械CAD」の制限時間は、全体で3時間10分。このうち、10分間は休憩時間となっています。2018年大会では、9時〜12時10分で実施されました。
課題量から考えて決して多くない時間なので、いかに正確かつ効率的に進めるかがポイントです。
今大会は金賞受賞者はいましたが、銀賞と銅賞は出ませんでした。CADソフトに十分なれておらず、制限時間内に作品を完成させられなかったためです。
作品が時間内に完成していなければ、高評価を得ることはできません。講評でも、機械製図の知識・技能を習得するとともに、「効率よく作図する力」をつけるよう指摘されました。
競技種目「建築CAD」課題内容と変更点
競技種目「建築CAD」では、提示された課題図を読んで建物の構造を理解し、3次元CADを使って建築基本設計図を作成します。
身体障害者・知的障害者・精神障害者が参加できます。
「機械CAD」同様、効率的な作業が求められるため、CADの知識と操作スキルを向上させて本番に臨みましょう。
2018年大会の課題は、RC造3階建て集合住宅の100分の1の図面作成。作図するのは、各階平面図、立体図、断面図です。
各階平面図と断面図は課題図としても配布されますが、必要な寸法が抜け落ちています。抜けている部分は、与えられた構造部材リスト・建具表・建築設備リスト・階段詳細図を参照しながら算出してください。
今大会で選手たちを最も驚かせたのは、初めて3階建ての建築物が競技課題になったこと。逆に、選手たちにとって嬉しい知らせは、本番で利用できるCADシステムとして、AutoCAD2017とJW-CAD (Version 8.03a)の両方が採用されたことです。
課題の指示事項に関しては、以下の点が追加・変更されました。
<2018年大会「建築CAD」課題の指示の追加・変更点>
- 南立面図に記載する内容
- 建物の躯体、及び建具の見えがかり
- 通り芯、及び寸法
- GLライン、及び▼GL記号
- 図面の線の太さ
- 太線:0.5mm
- 中線:0.25mm
- 細線:0.13mm
- 文字の高さ
- 図面名:4mm
- 室名・通り番号・FL:3mm
- 寸法・建具番号:2.5mm
- 図面の中の階段
- 階段詳細図を見て作図
「建築CAD」大会前の準備と選手が持参できるもの・会場で準備されるもの
「建築CAD」でも、前日の会場下見で競技本番に向けた具体的な作業が行われます。
事前にCADシステムを利用した効率的な図面作成を練習するとともに、大会前日の下見には必ず出席しましょう。
大会前の準備
「建築CAD」課題概要は、事前に公開されます。2018年大会の場合、RC造3階建てであることや、使えるCADシステム、作成すべき図面の種類、図面表現のルールは事前公開されました。
2017年大会までは2階建てが基本だったため、課題概要にある記載を見落としてしまうと、本番当日に困惑してしまうかもしれません。課題概要が公開されたら、必ず隅々まで目を通し、どのような課題が出るのか予測して対策を行いましょう。
作図練習を行う時は、事前公開の課題概要にある指示事項に従うことを忘れずに。線の太さや文字の大きさだけでなく、ISOに規定された図面表現の一部も守らなければなりません。
また、「機械CAD」同様、大会前日の会場下見にも参加する必要があります。会場下見で行うのは、以下の作業です。
<「建築CAD」会場下見で行うこと>
- 図面枠指示書を用いて図面枠を作成
- システムの動作確認
- CADシステムの設定(レイヤー・線種・寸法・ツールバー・文字・環境設定)
- 建築設備リスト図形ファイルの確認
選手が持参できるもの・会場で準備されるもの
「建築CAD」競技の会場には、次のものが用意されています。
<「建築CAD」で会場に用意されるもの>
- パソコン:Windows 7 Pro、TFT液晶ディスプレイ・JIS標準配列キーボード・マウス・マウスパッド・USB・CD/DVD-ROMドライブ
- CADソフト:AutoCAD 2017、JW-CAD Ver.8.03a
- プリンタ:A3サイズの印刷が可能なもの(全体で2台)
- OAデスクおよび椅子
- 脇机
<「建築CAD」で支給されるもの>
- A3プリンタ用紙(3枚)
- 外部記憶装置:(建築設備リスト図形ファイル入りUSBメモリ)
競技でJW-CADが使えるようになった以外は、会場で用意されるものに変更はありません。
選手が持参できるものは、以下に限られていますので気をつけてください。2017年大会ではスケールに三角スケールのことが明記されていませんでしたが、今大会では明記されました。
<「建築CAD」で持参できるもの>
- スケール:ミリメートル用(三角スケールでもOK)
- 筆記用具:鉛筆・シャープペンシル・マーカ等
- 電卓
障害特性のために上記以外のものを競技本番で使いたい場合は、事前に申請して許可を受けてください。
「建築CAD」の制限時間と2018年大会の講評
「建築CAD」の制限時間は、3時間30分です。2018年大会では、9時〜12時30分で実施されました。
短い時間で複数の図面を作成しなければならないため、高評価を得るには次の点がポイントとなります。
<「建築CAD」のポイント>
- 建築と製図規則の知識を使って複数の資料内容を図面にまとめる
- 建築CADシステムの機能を有効活用し、作図時間を短縮する
- 各階平面図・断面図・その他資料をもとに、寸法等を算出して南立面図を作成する
講評では、今大会の課題がRC造3階建てであったことや当日にならないと具体的な課題内容が公開されないことから、「これまでで最も難易度が高い」としていました。
参加した選手5名のうち、時間内に図面を描き終えられたのは3名。この3名が、金賞・銀賞・銅賞を受賞しています。特に、普段から建築設計の業務をこなしている金賞受賞者は、読図力とCAD操作スキルが高く、効率的な作業を実践。その結果、作成した図面を見直す時間がとれたとのことです。
受賞に至るかどうかのポイントとなる要素の1つが、建築図面読解力。素早く正確に図面を読み取る練習を行い、当日公開となる課題内容に臨機応変に対応するスキルを身につけるよう、講評では強調されていました。
【参考】
第38回全国アビリンピック大会概要|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
(関連記事)
アビリンピック過去問題|第37回全国(2017)機械CADと建築CAD