障害者雇用が進まない企業の課題は? 障害者雇用促進法に基づく企業名公表の流れと計画実施における困難


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2021年12月に令和3年度の障害者雇用促進法に基づく企業名公表が行われました。今回の公表企業数は6社です。どのような状況だと企業名公表に至るのか、障害者雇用率が低水準のままの企業ではどのような課題を抱えているのかを見ていきましょう。

令和3年度の「障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表」は6社

2021年12月、厚生労働省から令和3年度の「障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表について」が公表されました。公表された企業数は2014年以来最多となる6社です。

この企業名公表は「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」に基づくもの。今回は、2015年から2017年に障害者雇入れ計画作成命令が発出されたものの、障害者の雇用率に十分な改善が見られなかった企業でした。

企業名公表に至る流れ

障害者雇用促進法に基づく企業名公表は、法定雇用率を達成しないと即座に行われるというものではありません。

一定規模以上の事業主が毎年提出する「障害者雇用状況報告書」の内容に基づき、法定雇用率未満の障害者雇用率である場合などに「障害者の雇入れ計画作成命令」が出されるのが始まり。これは障害者雇用促進法(以下、法)第46条第1項に基づく措置です。

対象となった企業は、その命令に従って雇入れ計画を作成した後、約2年間で計画を実施します。もし計画どおりに取り組みが進められていない場合は、「適正実施勧告」が発出されます(法第46条第6項に基づく)。

計画実施期間満了後は改めて状況を確認。十分な取り組みや改善が見られないと9か月間の「特別指導」対象となり、それでも十分な改善がされていない場合に、法第47条に基づき企業名が公表されるという流れです。

公表された企業の規模と実雇用率

今回公表された企業には、2015年以降に従業員数が増えた企業もあれば減った企業もありました。
企業規模としては、2021年6月時点で以下のような内訳です。

<2021年 公表に至った企業の規模>

企業規模

(基礎労働者数)

企業数
100人以上 300人未満 2
300人以上 500人未満 1
500人以上 1000人未満 2
1000人以上 1

また、公表された企業の障害者雇用率(実雇用率)の変化を見ると、障害者の雇入れ計画作成命令が発出された時点から雇用率がわずかに高くなった企業が多いものの、逆に低くなってしまった企業も見られました。いずれも雇用率が1.20%以下と低い水準にとどまっています。

<2021年 公表に至った企業の実雇用率の変化>

企業 命令発出時(%) 2021年12月(%)
A 0.88 0.46
B 0.00 1.20
C 0.68 0.80
D 0.00 0.84
E 0.91 1.13
F 0.00 0.59

公表された企業では、なぜ障害者の雇用がなかなか進んでいないのでしょうか。なぜ障害者雇用が進まない? 公表された企業に見られた課題

厚生労働省の公表では、どのような点に課題が見られたかの概要が記載されています。その内容は、

  • 障害者向けの求人を提出しているかどうか
  • 実際に障害者を採用したかどうか
  • 求人条件や職務の見直しは十分か
  • 職域開発に努めているか
  • 障害者雇用推進の取り組みを続けているか

などです。

各社の取組状況を見ると、雇入れ計画を始めた当初は障害者向けの求人を提出して若干名の採用を実際に行ったものの、求人条件や職務の見直しが不十分であるという評価が多く見られました。

その後の取り組みとして新しい職域開発を現在も続けている企業がある一方、取り組み自体をやめてしまった企業もあります。

加えて、公表された企業のうち複数で、雇用する障害者数が減少していました。雇用した障害者が継続して就労することが困難な状況が発生している可能性があり、職場定着にも課題があると考えられます。

今回の6社の中で実雇用率が大きく低下した企業は、事業拡大にともなって多くの労働者を雇い入れたものの、障害者の雇用数は増えなかったというケースです。基礎労働者数が800人台から1000人台に増えても、雇用する障害者数は3人にとどまっていました。法定雇用率を達成するには、さらに20人以上の障害者を雇用する必要があります。

障害者雇用・職場定着を進めるには?

障害者雇用や雇い入れた障害者の職場定着を進めるには、第一にどのような障害があり得るのかを知ることが大切です。経営者や人事の方、障害を持つ社員を支援する方などが、さまざまな障害のパターンについて学ぶことで、障害者向けの求人ではどのような条件が適切なのか判断する素地が養われるでしょう。

雇入れや職場定着にあたっては、その社員がもつ障害特性や得意なことを把握するとともに、効果的な合理的配慮を提供しなければなりません。障害の内容はそれぞれの方で異なりますますので、「障害理解に関する研修を受けたから」という概要としての知識にとどまらず、目の前にいる社員と相談しながら担当業務や仕事の進め方を決めていく必要があります。

具体的にどのような業務や仕事の仕方があり得るのかは、障害者雇用で評価されている他社の事例が参考になるでしょう。「障がい者としごとマガジン」でも、「合理的配慮好事例」「The Valuable 500」といったシリーズで障害者雇用に取り組む多くの企業の施策をご紹介しています。

コロナ禍で進んだテレワークについては、障害者のテレワークに有効な取り組みを「在宅ワーク」シリーズでお届けしていますので、ぜひお役立てください。

こうした障害者雇用の取り組みでは財政面での課題も生じるかもしれません。国や自治体では障害者雇用に関する助成金が複数用意されているますので、ぜひハローワークや都道府県窓口に問い合わせてみてください。

【参考】
障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表について|厚生労働省

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