【障害者編】まずは理解しておきたい!分かりやすい障害者雇用促進法


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2018年4月に改正障害者雇用促進法が完全施行されました。事業主には障害者雇用義務だけでなく、障害者差別を禁止、合理的配慮の提供義務もあります。この改正で特に重要な変更点は、雇用義務対象の障害者に精神障害者が加えられたことです。

民間企業で雇用されている障害者はどのくらいいる?

週20時間以上働いている労働者(常用雇用労働者)が45.5人以上の事業主には障害者を雇用する義務があります。具体的に雇用すべき障害者の割合(法定雇用率)も定められたため、新しく障害者を雇用したいと考える事業主は増えています。

実際、民間企業に雇用されている障害者の数は2011年以降増え続けて、2017年には49.6万人となりました。

(関連記事)
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常用雇用労働者の数が100人を越える事業主は、法定雇用率を達成すれば調整金が支給され、達成できなければ納付金を徴収されるという制度もあります(障害者雇用納付金制度)。

そのため、今後も障害者雇用は増えるでしょう。

企業が障害者を雇用するメリット

障害者の雇用は、企業にとっても大きなメリットになるという点も無視できません。

共生社会の実現に貢献できる

働き方改革やダイバーシティが重視される現在の日本には「共生社会の実現」という理念があります。

従来の働き方では働けない子育てや介護世代、シニア世代、障害のある人々などが、それぞれの希望や能力に応じて働けるのが「共生社会」です。障害者を雇用することで、その会社は共生社会の実現に貢献できます。

労働力を確保できる

少子高齢化が進み、労働人口が減っている日本。障害者は「できないこと」に注目されがちですが、「できること」むしろ「得意なこと」もそれぞれ持っています。

障害特性やそれまでに培ったスキルに応じた「できること」に注目し、活躍できる場所をつくれば、障害者雇用によって企業は貴重な労働力を確保できます。

職場環境が整備され他の従業員も働きやすくなる

障害者が働きやすいように職場環境を改善することは、他の従業員にとっても働きやすい環境になるということです。

通院に配慮した勤務時間の設定や、図案を用いた分かりやすいマニュアル、移動しやすい通路、具体的な指示の出し方などは、障害を持たない労働者にとっても働きやすさや生産性向上につながります。

改正障害者雇用促進法に規定された禁止事項と義務

改正障害者雇用促進法は、事業主が障害者を差別することを禁止し、合理的配慮を提供しなければならないと明確に定めています。

障害を持つ従業員が差別や合理的配慮の提供について苦情を申し立てた場合、事業主は、まず自主的に解決する努力をしなければなりません。もし、それで解決できない場合は外部の支援を利用できるような制度もできました。

障害者差別の禁止

これまで働いてきた職場で「これは差別では?」と感じたことはありませんか。

厚生労働省は、具体的に何が差別なのかを示す「障害者差別禁止指針」を示しています。その一例を見てみましょう。

障害者差別の一例厚生労働省「障害者差別禁止指針」より作成)

状況 差別内容
募集や採用 障害者であることを理由に募集や採用の対象から障害者を排除する
賃金 賃金の支払いにあたり障害者に対してのみ不利な条件を適用する
配置 一定の職務への配置に当たり障害者に対してのみ不利な条件を出す
昇進 障害者であることを理由に一定の役職への昇進対象から排除する
雇用形態の変更 雇用形態の変更にあたり障害者に対してのみ不利な条件を出す
退職の推奨 障害者であることを理由に障害者に退職を推奨する
福利厚生 福利厚生の措置の実施にあたり障害者に対してのみ不利な条件を出す

募集や採用から退職まで差別が生じやすい場面はさまざまですが、差別している人々には自覚がないこともあります。

しかし、積極的な差別是正や障害者のための合理的配慮の提供という目的以外で、表にあるような行為があれば障害者雇用促進法違反。差別されたと感じたら、相談・支援窓口などに相談しましょう。

合理的配慮の提供義務

障害者を雇用した事業主は、障害者の業務遂行にとって必要不可欠な「合理的配慮」を可能な限り提供しなければなりません。

何が合理的配慮かはケースバイケースですが、厚生労働省は「合理的配慮提供指針」の中で一例を示しています。

合理的配慮の一例厚生労働省「障害者差別禁止指針」より作成)
※具体的な内容はケースバイケースで決める

障害区分 合理的配慮の内容
視覚障害 点字や音声で情報を提供・職場内の危険箇所を事前に確認する
聴覚・言語障害 連絡や指示に筆談を利用・職場内の危険箇所を視覚的に確認できるようにする
肢体不自由 移動の支障となるものを片付ける・体温調整しやすい服装の着用を認める
内部障害 本人の負担の程度に応じて業務量を調整する
知的障害 図等を活用した業務マニュアルを作成・作業手順を分かりやすくする
精神障害 静かな場所で休憩できるようにする・優先順位や作業手順を分かりやすくする
発達障害 指示やスケジュールを明確にする・図等を活用した業務マニュアルを作成

感覚過敏緩和のためのサングラスや耳栓の着用を認める

難病に起因する障害 本人の負担の程度に応じて業務量を調整する
高次脳機能障害 仕事内容をメモする・写真や図を多用して作業手順を示す

事業主から合理的配慮を提供してもらうには、合理的配慮提供指針に示された「合理的配慮の手続き」に基づき、事業主との話し合いや決定を行うとよいでしょう。

合理的配慮の手続きは、以下のような流れです。

  1. 障害者から合理的配慮の申し出を行ったり、事業主が障害者の働く職場で何か支障となっていることがないかを確認したりする
  2. 当該障害者と事業主とで話し合う
  3. どのような合理的配慮が必要で、どのような措置なら実現できるかを確定する
  4. もし実現が難しい場合、事業主はその理由を障害者に説明する

合理的配慮の手続きがとれるよう、事業主には相談窓口の設置も求められています。

合理的配慮についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
合理的配慮の要請は「わがまま」? 民間企業で義務化する前に知りたい合理的配慮の具体例

苦情処理・紛争解決の努力義務

もし差別や合理的配慮に関して障害者側から苦情の申し出を行った場合、事業主は自主的解決に努める必要があります。具体的には、従業員教育や合理的配慮の提供などが必要となるでしょう。

もし解決できない場合は、新しく設けられた調整制度を利用できます。労働局という第三者が入って解決策を講じていく仕組みです。

障害者のための自立支援

障害者が働くには支援制度や職場の協力が不可欠。それと同時に、障害者自身が労働習慣を身につけたり技術を磨いたりする必要もあります。

そうした障害者の自立支援を行っている代表的なものをご紹介します。

 就労移行支援事業所

就労を希望する65歳未満の障害者で、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる方が対象です。所得に応じた利用料がかかりますが、収入がない場合は無料です。

支援内容は、

  • 生産活動、職場体験その他の活動の機会の提供
  • 就労に必要な知識および能力の向上のために必要な訓練を実施
  • 求職活動に関する支援
  • 利用者の適性に応じた職場の開拓
  • 就職後における職場への定着のために必要な相談や支援

となっています。

利用期間は原則2年。事業所それぞれに特色があるため、利用前に事業所見学を行い、計画的に利用しましょう。

(関連記事)
就労移行支援を使い倒す~選び方から利用方法まで~

ハローワーク

全国に500か所以上ある公共職業安定所(通称ハローワーク)では、それぞれの障害者の状況に応じた支援を行います。

主な支援内容は、

  • 職業紹介
  • 職業の選択や適性に関する支援
  • ハロートレーニング(職業訓練)
  • 必要に応じて地域障害者職業センター等の専門機関の紹介

です。

就労移行支援事業所を利用せずに求職活動をする場合、まずはハローワークで相談しましょう。障害者職業・生活支援センターを利用したい人もハローワークで連絡先を教えてもらえます。

地域障害者職業センター

各都道府県に設置され、ハローワークと連携した専門的な職業リハビリテーションサービスを受けられます。

そうしたサービスを通して以下のことができるよう支援してくれます。

  • 職業適性を把握する
  • 実際の職場で働く経験をする
  • 基本的な労働習慣を身につける
  • 生活習慣づくりや健康管理、金銭管理など、社会生活を送るための技術を向上させる
  • 人生設計を考える

ジョブコーチによる支援も利用可能です(1〜8か月)。障害者の職場で具体的な目標を決めて支援し、できることとできないことを事業所に伝えたり、支援環境を整えたりしてくれます。

精神障害を持つ方の就労支援も重視し、主治医などとの連携して就職・職場復帰・継続雇用等について総合的な支援を行っています。

利用したい場合はまず利用説明会に参加しましょう。参加の予約は電話で受け付けています。

障害者職業・生活支援センター

全国に300か所以上設置されており、障害者の仕事と生活に関して無料で相談・支援を行っています。都内では住所が別の都道府県や地域でも利用可能で、センター近くで仕事を探す場合はとても便利。仕事と生活の両面で問題を感じていたりする場合は、障害者職業・生活支援センターを頼りましょう。

障害者同士の交流プログラムを実施している場合もあります。

発達障害者支援センター

発達障害のある人やその家族、関係する機関や施設の人が利用できます。

支援内容は、

  • 生活面での相談
  • 人間関係についての相談
  • 仕事面での相談
  • どこでどのような支援が受けられるか等の相談

など、発達障害についてさまざまな相談に無料で応じています。

家族や関係者のみでの相談も可能。電話またはメールで予約し、事前に相談シートに記入する必要があります。

その他の支援・相談窓口については、厚生労働省のwebサイトで確認できます。

【参考】
障害者の方への施策丨厚生労働省

障害者の在宅就業支援

通勤が困難な障害者の場合、契約で仕事を請け負って在宅(自宅や病院等)で仕事をする在宅就業という働き方が可能です。これを支援するのが、厚生労働省で登録されている「在宅就業支援団体」です。

在宅就業支援団体による支援内容

在宅就業支援団体では、これから在宅就業を始めたいと考える障害者の相談に応じてくれます。

他にも、

  • 障害者が在宅で働くための技能訓練(主にパソコンやIT関連スキル習得)の実施
  • 発注元の事業主と在宅就業障害者の間に立つ
  • 障害者に対しては仕事の発注や各種の相談・支援
  • 事業主に対しては納期・品質管理

などの支援を受けられます。

在宅就業障害者が実際に行っている仕事内容

支援している団体の得意分野によって仕事内容が異なります。全体の傾向は、パソコンやITを利用した業務が多いようです。

たとえば、

  • ウェブサイトの作成、更新、運営、管理や素材作成
  • プログラム開発
  • インターネットでの情報検索・集計
  • モニター業務
  • CADによる図面作成、住宅間取り図作成
  • 各種文書作成やデータ入力
  • 動画編集

など。

障害者の在宅就業支援全体について情報を得たい場合は、支援ホームページチャレンジホームオフィス丨JEEDが便利です。

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