【事業主編】まずは理解しておきたい!分かりやすい障害者雇用促進法(後編)


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2018年4月に改正障害者雇用促進法が完全施行となりました。事業主に対して障害者雇用が義務づけられ、障害者差別の禁止や合理的配慮の提供義務なども定められています。障害者雇用促進法に違反すれば罰則が適用され、コンプライアンスの観点からも問題視されるため、事業主にとって決して無視できるものではありません。

前編に引き続き、後編では具体的に事業主がやるべきことや提出すべき書類、雇用管理等で困った際の相談窓口について説明します。

事業主がやるべきこと

改正後の障害者雇用促進法の内容から、事業主がやるべきことは大きく3つあります。

  1. 職業相談窓口の設置
  2. 障害者への虐待防止
  3. 障害者雇用に関する届出

順番に見ていきましょう。

職業相談窓口の設置

合理的配慮の提供のためには、相談体制の整備が必要です。相談窓口があれば、合理的配慮が必要だという相談がしやすくなり、合理的配慮の手続きも適切に行いやすくなるでしょう。障害者差別や虐待が生じたときの相談先にもなります。

事業所内に相談窓口を設置するのが難しければ、外部機関に相談対応を委託するという方法でも構いません。いずれの場合も、設置されたことを労働者に周知しましょう。

障害者への虐待防止

障害者雇用促進法では障害者差別が禁止されていますが、これとあわせて「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」(障害者虐待防止法、2011年成立)にも従わなければなりません。

障害者虐待防止法で定める虐待の類型は5つ。職場に限定して見れば、以下のような行為が虐待に当たります。

  • 身体的虐待:障害者に暴行を加えたり正当な理由なく身体を拘束したりすること
  • 放棄・放置:障害者が虐待されているのを放置したり、それに準じた行為を行ったりすること
  • 心理的虐待:障害者に暴言や差別的発言を言ったり著しく拒絶的な対応などをしたりすること
  • 性的虐待:障害者にわいせつな行為をしたり、させたりすること
  • 経済的虐待:障害者の財産を不当に処分したり、給料をきちんと払わなかったりすること

厚生労働省発表の「平成30年度使用者による障害者虐待の状況等」では、障害者虐待の通報・届出件数が増加していることが分かります。特に多いのが、経済的虐待です。

経済的虐待の事例では、

  • 残業代が支払われない
  • 障害者の時給が地域別最低賃金額より100円以上低い

というものが報告されていました。

次に多いのが心理的虐待で、

  • 上司や同僚から「お前は会社への貢献ゼロ」「お前はすべて悪い」等の暴言を受ける
  • 「給料泥棒」「出勤してくるな」等の暴言を受ける

といった事例が見られます。

障害者虐待を受けたと思われる障害者を見つけた場合、見つけた者には市町村や都道府県への速やかな通報が義務づけられています。もし職場で虐待があったり、虐待を放置したりすると、関連法によって刑事罰で処罰されます。

障害者も障害者でない労働者も一緒に安全に働けるよう、事業主は障害者の虐待防止のため措置を講じましょう。

障害者雇用に関する届出

障害者雇用に関する届出は3種類あります。

  1. 「障害者雇用状況報告書」:常用雇用労働者数が45.5人以上の事業主
  2. 「障害者雇用納付金申告書」:常用雇用労働者数が100人超の事業主で一定の条件を満たす事業主
  3. 「解雇届」:障害者を解雇しようとする事業主

雇用状況を毎年ハローワーク(または労働局)に提出

障害者雇用義務制度と納付金制度のもと、常用雇用労働者数が45.5人以上の事業主は毎年6月1日時点での雇用状況について「障害者雇用状況報告書」を提出する義務があります。

さらに、常用雇用労働者数が100人超となる月が年度間で5か月以上ある事業主は「障害者雇用納付金申告書」も提出しなければなりません。

いずれも提出先はハローワーク(または労働局)です。

もし申告内容が誤っていて納付金が発生する場合、納付金+追徴金を納めなければなりません。それでも納付しない場合は督促状が届き、期限までに納付しないと延滞金も発生。場合によっては滞納処分になります。

報告・申告を忘れたり誤りがないよう注意し、不明な点はハローワークなどに相談しましょう。納付金制度に関わる申告・申請に必要な書類や作成方法は、独立法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)のウェブサイトでも確認・ダウンロードが可能です。

障害者雇用納付金丨JEED

解雇する場合はハローワークに解雇届を提出

障害者雇用促進法第81条第1項の規定により、事業主が障害者を解雇する場合、ハローワークへ速やかに解雇届を提出しなければなりません。

解雇届の書式は厚生労働省のウェブページなどからダウンロードすることができます。

事業主の方へ丨厚生労働省

事業主が利用できる助成金制度と窓口相談

障害者の雇用が義務づけられる一方、障害者が働きやすい環境作りや従業員教育にはお金もかかります。そこで、障害者を雇用する事業主に対して多くの助成金制度が用意されています。

助成金の相談だけでなく、障害特性を考慮した合理的配慮の提供の仕方、障害に対する理解の促進など、障害者雇用に関わる相談窓口も複数あります。

障害者雇用に関わる助成金制度

障害者雇用を支援する助成金には、障害者を雇うための施設や設備の設置を支援する「障害者作業施設設置等助成金」や、介助者の配置等を支援する「障害者介助等助成金」などがあります。

障害者作業施設設置等助成金

障害者作業施設設置等助成金の対象事業主は、障害者を雇用するか継続して雇用しており、当該障害者が作業を行いやすくするために施設等の設置・整備を行わなければならない事業所の事業主です。

障害者作業施設設置等助成金には第1種と第2種があり、第1種は、作業施設等を建築・購入する場合に、第2種は賃貸する場合に申請できます。

作業施設等とは、具体的には、作業場所としての「作業施設」、玄関や廊下、階段、トイレなどの「附帯施設」、視覚障害者用拡大読書器などの「作業設備」のことを言います。

障害者介助等助成金

障害者介助等助成金には障害の特性に応じた複数の助成金が含まれおり、たとえば以下のような助成金があります。

  • 重度視覚障害者や重度四肢機能障害者のために職場介助者を配置する→「職場介助者の配置または委嘱助成金」
  • 聴覚障害者の雇用管理に必要な手話通訳・要約筆記等の担当者を配置する→「手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱助成金」
  • 新たに障害者の雇用管理経験を有する担当者を相談窓口に配置したり、外部の障害者専門機関に委託したりする→「障害者相談窓口担当者の配置助成金」

助成金の種類は多く、年度によっても内容に変更があるため最新情報に注意しましょう。助成金の最新情報は、高齢・障害・求職者雇用支援機構のサイトまたはハローワークで確認できます。

障害者雇用で困ったら|相談・支援窓口

障害者雇用で聞きたいことや困ったことがある場合の相談・支援窓口には、総合的に相談・支援してくれる窓口と障害別の窓口があります。

障害者雇用無料相談窓口(厚生労働省委託事業)

公益社団法人全国重度障害者雇用事業所協会(全重協)による中小企業の事業主を対象とした窓口です。

全重協の会員事務所等に設置された相談コーナーで経験豊富な相談員が相談・支援を行っています。セミナー開催や障害者雇用で先進的取り組みを行っている事業所の見学の受け付けなどもあります。

公益社団法人全国障害者雇用事業所協会ウェブサイト

ハローワーク(全国500か所以上)と地域障害者職業センター(47都道府県)

ハローワークでは、事業主に対して、雇用管理上の配慮等について助言を行い、必要に応じて専門機関を紹介してくれます。また、各種助成金の案内も行っています。全国規模で利用できる総合相談窓口です。

一方、地域障害者職業センターでは事業主に対して、雇用管理上の課題を分析し、雇用管理に関する専門的な助言や支援を実施しています。職場適応援助者(ジョブコーチ)支援もあり、対象障害者が職場で仕事ができるよう、具体的な目標を定めて支援してくれます。

障害者就業・生活支援センター(全国に300か所以上)

ハローワークや地域障害者職業センターが雇用・就労に関する支援を主としているのに対し、障害者就業・生活支援センターは障害者の就業面と生活面の一体的な相談・支援を行っています。事業主に対しては、障害者それぞれの障害特性や生活を踏まえて、雇用管理について助言を行っています。

発達障害支援センター(47都道府県)

障害別の相談窓口のうち、発達障害を専門とする窓口です。発達障害の特性の理解と対応の仕方を助言してくれるだけでなく、支援制度や資料情報の提供、相談機関の紹介も行っています。

在宅就業支援団体(2019年6月時点で22団体)とチャレンジホームオフィス

在宅就業する障害者に仕事を発注したい場合は、在宅就業支援団体の力を借りることができます。また、障害者の在宅就業全般についての情報は、高齢・障害・求職者雇用支援機構による「チャレンジホームオフィス」で得られます。

チャレンジホームオフィス丨JEED

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