【事業主編】まずは理解しておきたい!分かりやすい障害者雇用促進法(前編)


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2018年4月に改正障害者雇用促進法が完全施行となりました。事業主に対して障害者雇用が義務づけられ、障害者差別の禁止や合理的配慮の提供義務なども定められています。障害者雇用促進法に違反すれば罰則が適用され、コンプライアンスの観点からも問題視されるため、事業主にとって決して無視できるものではありません。

今回は「事業主編」として、改正障害者雇用促進法の中で特に事業主が注意すべき点を解説。前編では、改正障害者雇用促進法の概要や用語、罰則規定について説明します。

改正障害者雇用促進法とは

「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)は、障害者の職業の安定を図るため、1960年に制定されました。その後、何度か改正が行われ、2018年4月から完全施行されることとなりました。

改正障害者雇用促進法の大きな特徴は、以下の3つです。

  1. 事業主は障害者を雇用しなければならず、法定雇用率を達成しなかった事業主は納付金を納めなければならない
  2. 障害者差別をしてはならず、障害者の業務遂行にあたって合理的配慮を提供しなければならない
  3. 雇用する障害者から差別や合理的配慮の提供などについて苦情の申し出があった場合、事業主は自主的にそれを解決する努力をしなければならない。解決しない場合は、新しく設けられた調整制度を利用できる

改正前後で大きく異なるのは、

  1. について、法定雇用率の対象障害者に精神障害者が加えられたこと
  2. について、障害者差別の禁止と合理的配慮の提供義務が明確に規定されたこと
  3. について、障害者と事業主の間の紛争解決にあたり、新しく支援制度ができたこと

の3点と言えるでしょう。

障害者雇用促進法の概要と罰則

障害者雇用促進法で事業主にとって最も重要なのが、常用雇用労働者が45.5人以上の事業主を対象とする障害者の雇用義務制度です。そして、常用雇用労働者が100人を超える事業主の場合は、障害者雇用納付金制度の対象となり、法定雇用率が未達成なら納付金の納付義務が発生します。

法定雇用率の引き上げと雇用義務

「法定雇用率」とは、事業主が雇用すべき障害者の割合を法律で定めたものです。改正前は、雇用義務の対象障害者は身体障害者と知的障害者でした。改正後における対象障害者は、これに精神障害者が加わっています。そのため、法定雇用率も引き上げられることになりました。

法定雇用率は、以下の算定式によって求められます。

2019年現在は、経過措置としてこの式で求められた数値よりも低い数値が設定されており、民間企業の法定雇用率は2.2%となっています。

法定雇用率は2021年4月までに、さらに0.1%引き上げられる予定。具体的な引き上げ時期は、厚生労働省の労働政策審議会で議論して決定されます。

障害者雇用納付金制度

常用雇用労働者数が100人を超える(厳密には、年度の中で常用雇用労働者数が100人を超える月が5か月以上ある)事業主は、障害者雇用納付金制度の対象となります。法定雇用率を達成しても達成していなくても、ハローワークに申告をしなければならず、達成してれば調整金が支給され、達成していなければ納付金を徴収されます。

「常用雇用労働者」(常用労働者)とは、週20時間以上働いている労働者のこと。正社員の他、1年を超えて雇用されてきた(あるいは1年を超えて雇用されると見込まれる)派遣社員やパート・アルバイトなども含みます。

常用雇用労働者数を算出する際に注意するのは、カウント方法です。週の労働時間が30時間以上の労働者は1人を「1」で、週20時間以上30時間未満の労働者(短時間労働者)は1人を「0.5」でカウントします。

また、重度の身体障害者や重度の知的障害者は通常のカウントの2倍で計算し(ダブルカウント)、精神障害者である短時間労働者も条件を満たせば0.5ではなく「1」でカウントされます。

常用雇用労働者数や雇用している障害者数はこのカウント方法で計算するので、単純な人数ではないことに気をつけましょう。

法定雇用率を達成したかどうかは、「雇用障害者数」と「法定雇用障害者数」を比較します。

もし達成していれば、超過1人あたり月額2万7000円が支給され、達成していなければ不足1人あたり原則として月額5万円が徴収されます。

調整金や納付金の適用対象とならない事業主が障害者を一定数以上雇用した場合、報奨金(超過1人あたり月額2万1000円)の申請が可能です。

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障害者雇用納付金制度とは?仕組み・算出方法を徹底解説!

障害者差別の禁止

雇用に際して、募集や採用段階から退職にいたるまで、障害者の差別は禁じられています。厚生労働省は、何が差別にあたるのかを示す「障害者差別禁止指針」を発表しました。

障害者差別の一例(厚生労働省「障害者差別禁止指針」より作成)

状況 差別内容
募集や採用 障害者であることを理由に、募集や採用の対象から障害者を排除する
賃金 賃金の支払いにあたり障害者に対してのみ、不利な条件を適用する
配置 一定の職務への配置にあたり、障害者に対してのみ不利な条件を付す
昇進 障害者であることを理由に、一定の役職への昇進対象から排除する
雇用形態の変更 雇用形態の変更にあたり、障害者に対してのみ不利な条件を付す
退職の推奨 障害者であることを理由に、障害者に退職を推奨する
福利厚生 福利厚生の措置の実施にあたり障害者に対してのみ不利な条件を付す

 

積極的な差別是正や障害者のための合理的配慮の提供という目的以外で、上の表にあるような行為があれば障害者雇用促進法違反となります。

合理的配慮の提供義務

障害者雇用促進法では、事業主が障害者の就労にあたって合理的配慮を提供する義務も定めています。

厚生労働省は「合理的配慮提供指針」を示し、当該労働者が障害者であると事業主が知っている場合は、事業主は過重な負担にならない範囲で措置を講じなければならないとしました。

措置を講じるにあたっては、合理的配慮提供指針で示された「合理的配慮の手続き」が重要です。合理的配慮の手続きとは、以下のようなものです。

  1. 障害者から合理的配慮の申し出を行ったり、事業主が障害者の働く職場で何か支障となっていることがないかを確認したりする
  2. 当該障害者と事業主とで話し合う
  3. どのような合理的配慮が必要で、どのような措置なら実現できるかを確定する
  4. 当該障害者に説明した上で措置を講ずる
  5. 実現が難しい場合は、その理由を説明する

職場での障害者差別や合理的配慮の提供については、厚生労働省からセルフチェックのためのシートも配布されています。(厚生労働省によるセルフチェックシート)

苦情処理・紛争解決の支援

差別や合理的配慮に関して障害者から苦情の申し出があった場合、事業主は自主的解決に努めなければなりません。それでも解決しない場合は、新しく設けられた調整制度を利用できます。

障害者雇用促進法の罰則規定

障害者雇用促進法の第5章では、罰則を定めています。民間企業に関わる部分では、第86条と第86条の2が中心です。以下の項目のいずれかに当てはまる場合、30万円以下の罰金に処されます。

  • 報告書等の提出義務違反
  • 障害者雇用数が法定雇用障害者数に満たない事業主で、厚生労働大臣から対象障害者の雇入れに関する計画書の作成を命じられたにもかかわらず、計画書を作成または提出しなかった場合
  • 障害者の雇用状況に関しての立入検査が行われる際に協力しなかったり嘘をついたりした場合
  • 障害者である労働者を解雇する際に届出をしなかった場合

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【事業主編】まずは理解しておきたい!分かりやすい障害者雇用促進法(後編)

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