【合理的配慮好事例・第5回】障害者雇用における仕事スキルアップ研修!精神障害者のスキル向上サポート好事例


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精神障害をもちながら働く方々の業務として、単純作業が割り振られることは多くあります。しかし、職場での工夫や練習次第では、職域を広げたり品質を向上させたりできるかもしれません。

精神障害者のスキルアップをサポートするには、どのような配慮が可能なのでしょうか。

合理的配慮好事例解説シリーズ第5回は、精神障害者のスキルアップをサポートする好事例を紹介・解説します。

成功体験の積み重ねでモチベーションアップ!苦手な仕事も段階的に習得 —株式会社西村製作所

国内外で高品質・高性能スリッターとして有名な自動切断巻取機を開発・販売する株式会社西村製作所。平成30年度の「精神障害・発達障害のある方の雇用促進・キャリアアップに取り組んだ職場改善好事例」で障害者のスキルアップ等の取り組みが評価され、優秀賞を受賞しました。

同社では、新卒の社員に対して丁寧な研修を行うとともに、就労支援機関と連携して就労経験のない障害者に実習の機会を提供しています。好事例として紹介されたAさんの仕事は、清掃や片付け、伝票のチェック、職場実習生の指導役などです。

まずはジョブマッチングを行い、Aさん自身が得意な仕事を探しました。さまざまな作業を体験してもらって苦手な仕事からできる仕事・得意な仕事に配置転換することで、成功体験を積み重ねやすくなるからです。

成功体験を重ねると、モチベーションアップにつながります。次第にAさんには「会社に貢献したい」という気持ちが出てきたとのことで、それまで苦手だった電話や来客対応に挑戦することになりました。

新入社員用の電話対応マニュアルを渡し、内線の応答から練習。来客時の対応も、まずは見慣れたお客さまの対応から始めます。こうして段階的に練習を進め、少しずつAさんの対応スキルが伸びていきました。

Aさんが職場実習生を指導する際も、「指導して終わり」ではありません。実習生が効率的な作業のやり方を見た時は前向きに自分の作業にも取り入れるなど、日々の業務の中で積極的にスキルアップを図っているとのことです。

【参考】
精神障害・発達障害のある方の雇用促進・キャリアアップに取り組んだ職場改善好事例集(平成30年度)|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構

株式会社西村製作所 公式サイト

作業内容の調整と分かりやすい指示書でスキルアップ!苦手分野を補う工夫も —株式会社カシマ

株式会社カシマは、株式会社アールビーの100%出資子会社。温水器部品の製造・組立や精密プレス加工などを行っています。粘り強く丁寧な指導によって働きやすい環境づくりや従業員のスキルアップをサポートする取り組みなどが評価され、平成28年度「中小企業等における精神障害者や発達障害者の職場改善」の好事例として優秀賞を受賞しました。

同社が最初に取り組んだのは、「同じ手順で繰り返し作業する」ことと「目で見て理解できる」ことを重視し、写真入りの作業指示書を作成することです。異常が生じたらすぐに知らせられる「アンドン(呼び出しベル)」を考案・設置しました。

新入社員の1人であるBさんはプレス加工に配属され、3カ月のうちに順調に業務のやり方を習得。その後も上達し、安定した品質でプレス加工できるようになりました。

他方、スポット溶接に配属されたCさんは、溶接位置の違いや複雑な判断などが難しく8カ月後には自信をなくしてしまいます。Cさんの特性や業務遂行の様子から見えてきたポイントは、4つありました。

  • 同じ手順での繰り返し作業のほうがよい
  • 部品によっていちいち判断する必要がないほうがよい
  • 品種が限定されているほうがよい
  • 少量の作業が可能なもののほうがよい

検討とCさんの希望から、梱包作業へ配置転換します。

まずは配置転換に向けて、品種に応じた梱包作業のごとに手順やポイントを写真入りで分かりやすく示した作業指示書づくりを実施。どのような梱包が必要かの判断は、指示書を確認しつつジョブコーチの支援も受けて習得してもらいました。

習得にあたっては、3つのステップで根気よく繰り返し練習を行っています。

<配置転換後の手順の習得>

  1. 指示書をもとに、指導者が実際にやって見せる(手本を示す)
  2. 指示書の内容を指導者が言葉で説明する
  3. 本人に実際にやってみてもらう

3つのステップの繰り返しにより、Cさんは短期間で習得できました。

こうした練習以外に行った工夫もあります。品種の判断は人間が行うのではなくバーコード照合を用いること、部品の名称を確認する場合は「絵皿」を使って現物確認にするなどです。

Cさんの苦手な部分を業務上の仕組みでカバーするという同社の合理的配慮とCさん自身の頑張りで、Cさんはスキルアップに成功しました。

精神障害者のスキルアップは特性に合わせた手順や仕組みの工夫と粘り強い練習がポイント

両社の好事例から、精神障害をもつ従業員のスキルアップに必要な7つのポイントが見えてきます。

<精神障害をもつ従業員のスキルアップの配慮ポイント>

  • ジョブマッチングを実施し、本人ができそうな仕事や希望する仕事を任せる
  • 分かりやすいマニュアルを用意する
  • 手本として指導者が実際にマニュアルの手順でやって見せる
  • マニュアルを見ながら言葉で説明する
  • 繰り返し指導・練習する
  • どうしても苦手な部分は、作業の仕組みや手順を変える
  • 成功体験を積み重ねて自信をつける

障害特性に合わせて担当業務を決定することが何よりも大切ですが、マニュアルや設備の整備と練習次第では、やや苦手な分野を含む業務でも担当できるようになる可能性があります。

「何となくうまくいってないようだ」と感じられる場合は、配置転換だけでなく、そうした職場改善も実施してみてください。柔軟に改善していくことが精神障害をもって働く方々のスキルアップや職場での活躍につながるかもしれません。

「どんなマニュアルが分かりやすいの?」と感じた時は、青森県が紹介している事例が大変参考になります。写真入りの作業指示書を作成したことがない事業主の方は、ぜひ一度ご覧になってみてください。

【参考】
障害者作業手順書作成支援|青森県庁

合理的配慮や具体的な問題と解決策については、以下の関連記事でも紹介・解説しています。

(関連記事)
障害者雇用の「合理的配慮」提供義務とは?|法律・事例・ガイドライン
中小企業の障害者雇用トラブルと予防法・解決法|2020年4月から認定制度開始

雇用する障害者のために施設や設備を整備した場合、助成金を受け取れる場合があります。「資金がなくて職場環境を整備できない」とお悩みの場合は、「障害者雇用納付金制度に基づく助成金」などもあわせてご検討ください。

(関連記事)
「障害者雇用納付金制度に基づく助成金」一覧|受給条件・対象者・支給額など

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