【合理的配慮好事例・第22回】身体障害者の職域は? さまざまな障害特性に共通する配慮・支援


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厚生労働省の「令和2年 障害者雇用状況の集計結果」では、民間企業における身体障害者の雇用数は約35万6,000人。障害者雇用の中の半分以上を占めており、正社員としての登用も多く見られます。

障害者雇用で以前から受け入れられてきた身体障害をもつ方々は、どのような業務で働いているのでしょうか。今回は身体障害者の職域について見ていきましょう。

身体障害者が就労している主な産業TOP5(令和2年 障害者雇用状況報告集計結果)

障害種別に見た雇用数の多い産業は、毎年発表される「障害者雇用状況報告の集計結果」から知ることができます。この報告は、民間企業では常用雇用労働者数45.5人以上の会社全てに義務づけられており、企業規模別や障害種別、産業別に雇用されている障害者数が分かるものです。

令和2年の集計では、身体障害者の雇用数が多い産業は以下の5つでした。

<身体障害者の雇用数が多い産業 TOP5(2020年)>

  • 製造業(約10万人)
  • 卸売業、小売業(約4万5,000人)
  • 医療、福祉(約4万3,000人)
  • サービス業(約4万1,000人)
  • 運輸業、郵便業(約2万5,000人)

第1位の製造業のうち、身体障害者の雇用が多い区分は次の5つ。精神障害者と比べて順位の違いはあるものの、TOP5の顔ぶれは同じ結果となっています。

<身体障害者の雇用数が多い製造業の区分 TOP5(2020年)>※「その他」を除く

  • その他機械(約2万9,000人)
  • 電気機械(約2万人)
  • 化学工業(約1万2,000人)
  • 食料品・たばこ(約1万人)
  • パルプ・紙・印刷(約5,000人)

【参考】
障害者雇用状況報告の集計結果について|厚生労働省

身体障害者に多い職業(平成30年度 障害者雇用実態調査)

では、それぞれの産業で身体障害をもつ方はどのような仕事をしているのでしょうか。

厚労省の「平成30年度 障害者雇用実態調査」の結果を見ると、身体障害者が働く分野では

  • 事務的職業(32.7%)
  • 生産工程の職業(20.4%)
  • 専門的、技術的職業(13.4%)

がTOP3となっています。

身体障害者は、知的障害者・精神障害者・発達障害者と異なり、約半数が「無期契約の正社員」(49.3%)。そのため週所定労働時間が30時間以上の方も多く、働く障害者の中では比較的収入も高いようです。

(関連記事)
障害者枠で就職した人の給料は?|平均月収と障害者枠のメリット
障害者雇用の賃金はなぜ安い? 最低賃金制度と減額特例

【参考】
平成30年度障害者雇用実態調査の結果を公表します|厚生労働省

身体障害者の職域や担当業務例(JEED障害者雇用職場改善好事例)

身体障害をもつ方は実際にどのような業務を担当しているのかも見ていきましょう。

JEEDの好事例集で登場する業務には以下のようなものがあります。

事務的職業ではデータ入力やメール業務、書類作成などが多く、企業によっては公的機関への照会など社外の人とやりとりする業務を担う場合も。生産工程の職業では、準備から検査、修理までさまざまな工程に従事している他、製品を運ぶドライバーとして働く方の姿もありました。

環境が整備されれば障害のない方と同じように働ける方もいれば、障害特性の関係で「電話対応はできない」「色を使ったデザインはできない」「重い物の運搬はできない」という方もいます。

同じ身体障害者でも、どのような障害があるかで担当できる業務は大きく異なるため、障害特性に合わせて業務を任せることが重要です。

【参考】
中高年齢層の障害のある方の雇用継続に取り組んだ職場改善好事例集(令和元年度)|JEED
障害者の健康に配慮し、安心・安全に働けるように取り組んだ職場改善好事例|JEED
身体障害、難病のある方などの雇用促進・職場定着に取り組んだ職場改善好事例集(平成29年度)|JEED

職場では身体障害者のためにどんな配慮が必要?

一口に身体障害といっても、視覚障害・聴覚障害・肢体不自由・内部障害など、どのような障害特性をもっているかは人それぞれ。そのため、身体障害者のための職場改善も多岐にわたります。

身体障害者を雇用する事業所では、実際に多くの取り組みを行ってきました。それらの中で、身体障害者全体にとって有効と考えられるものや緊急事態等で重要になる配慮・支援には、次のようなものがあります。

<設備面の配慮・支援>

  • 通路・玄関・トイレなどのスペースを広めにとる
  • 段差をなくしたり自動ドアやエレベーターを設置したりする
  • エレベーターの開閉時間を延長する
  • 障害特性に応じて障害者自立支援機器を活用する
  • 作業療法士などと連携し在宅雇用の社員の環境整備を支援する
  • 音声だけでなくイラストと文字でガイドが表示されるタイプのAEDを導入する
  • アラームランプを設置する
  • 指示やコミュニケーションでスマホや電子メモパッドを利用する

<健康面の配慮・支援>

  • 本人の同意を得た上で限定したメンバーで障害と配慮事項について共有する
  • 通院や体調に合わせて働けるようフレックスタイム制を導入する
  • 通院休暇制度を導入する
  • 通院や体調不良、障害の悪化などで不在になる状況を想定し交代などで業務を円滑に進められる体制を整える
  • 保健師や支援スタッフとの定期面談を行う

<人材育成の配慮・支援>

  • 定期面談での目標設定と評価を行い、給与または賞与に反映する
  • 資格取得を支援する
  • 正社員登用制度を積極的に活用する
  • Web会議システムを利用した在宅OJT制度を導入する

定期通院休暇制度やフレックスタイム制は、身体障害者だけでなく精神障害者などにも重要な制度。有給休暇を取得しなくても健康管理しやすいため、仕事・治療の両立と職場定着にもつながります。

また、障害者自立支援機器では、身体障害者向けの支援機器が多く開発されています。「シーズ・ニーズマッチング交流会」を主催するテクノエイド協会の公式サイトで検索できますので、一度のぞいてみてください。

有名な支援機器は以下の関連記事でも紹介しています。

(関連記事)
障害者在宅就労にも!障害者自立支援機器と好事例

【参考】
公益財団法人テクノエイド協会

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