2019/10/31
【概要編】まずは理解しておきたい!分かりやすい改正障害者雇用促進法(後編)
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2018年4月1日から改正障害者雇用促進法が完全施行されました。
障害者の職業の安定を図ることが目的のこの法律では、法定雇用率が定められ、障害者雇用を義務づけています。それだけでなく、障害者差別の禁止や職場における合理的配慮の提供を事業主の義務とし、これらの問題に関わる紛争解決のための支援なども定めています。
本記事では、改正障害者雇用促進法で何がどう変わったのか、どのようなことを求められているのかを解説。後編では、障害者差別の禁止、合理的配慮の提供義務、紛争解決のための支援について見ていきましょう。
障害者差別の禁止
障害者を雇用において障害者を差別することは、障害者雇用促進法第34条および第35条で禁じられています。これは常用雇用労働者数にかかわらず全ての事業主が対象です。そのため、具体的にどのような行為が差別にあたるのか、きちんと知っておかなければなりません。
厚生労働省は、具体的に何が差別なのかを示す「障害者差別禁止指針」を2015年に示しました。障害者の雇用にあたっては、募集や採用段階から退職まで、さまざまな場面で差別が生じる可能性があります。そうした差別の一例を表にまとめました。
障害者差別の一例(厚生労働省「障害者差別禁止指針」より作成)
状況 | 差別内容 |
募集や採用 | 障害者であることを理由に、募集や採用の対象から障害者を排除する |
賃金 | 賃金の支払いにあたり障害者に対してのみ、不利な条件を適用する |
配置 | 一定の職務への配置にあたり、障害者に対してのみ不利な条件を付す |
昇進 | 障害者であることを理由に、一定の役職への昇進対象から排除する |
雇用形態の変更 | 雇用形態の変更にあたり、障害者に対してのみ不利な条件を付す |
退職の推奨 | 障害者であることを理由に、障害者に退職を推奨する |
福利厚生 | 福利厚生の措置の実施にあたり障害者に対してのみ不利な条件を付す |
積極的な差別是正や障害者のための合理的配慮の提供という目的以外で、表にあるような行為があれば、障害者雇用促進法違反となります。直ちに対策を講じなければなりません。
合理的配慮の提供義務
障害者雇用促進法第36条の2から4では、事業主が障害者の就労にあたって合理的配慮を提供する義務を定めています。これも常用雇用労働者数にかかわらず、全ての事業主が対象です。
合理的配慮とは、ある従業員が障害者であると事業主が知っている場合は、その従業員の業務遂行が困難になっている原因を確認し、もっと業務を遂行しやすくする環境を過重な負担にならない範囲でつくる、ということ。手帳を所持していない障害者に対しても合理的配慮を提供する義務があります。
障害者差別禁止指針と同じように、厚生労働省は2015年に「合理的配慮提供指針」を示しています。
合理的配慮の手続き
ある従業員が障害者であると事業主が知っている場合は、合理的配慮を提供する義務が事業主に発生します。業務の遂行を容易にする建設的な合理的配慮の提供には、事業主と障害者の相互理解が欠かせません。そのため、合理的配慮指針では「合理的配慮の手続き」も示しました。
合理的配慮の手続きでは、以下のような手順を踏みます。
- 障害者から合理的配慮の申し出を行ったり、事業主が障害者の働く職場で何か支障となっていることがないかを確認したりする
- 当該障害者と事業主とで話し合い、どのような合理的配慮が必要で、どのような措置なら実現できるかを確定する
- 当該障害者に説明した上で、措置を講ずる
- もし実現が難しい場合は、その理由を当該障害者に説明する
障害特性の開示はプライバシー保護に注意
合理的配慮の提供にあたり、その障害者にどのような障害特性があるのかを他の労働者に知らせ理解してもらう場面が生じます。しかし、どのような障害特性があるかはプライバシーに関わる問題でもあり、慎重に伝えなければなりません。
他の労働者にどこまで障害の内容を伝えるかは、障害者本人や支援者と事業主が相談して決定しましょう。
相談窓口の設置
合理的配慮の提供のためには、困ったことがあったときに障害者が相談しやすいよう、商談体制の整備が必要です。専用の窓口があることで、合理的配慮の手続きも適切に行えるでしょう。
具体的には、事務所内に相談窓口を設置したり、外部機関に相談対応を委託したりする必要があります。さらに、設置されたことをきちんと労働者に周知することも重要です。
また、障害者や支援者などが相談した場合に、「相談したから」という理由で当該労働者を不当に扱うことは法律で禁じられています。
苦情処理・紛争解決とその援助
改正後の障害者雇用促進法では、障害者雇用に関わる苦情処理・紛争解決とその援助についても定められています。
雇用している障害者から差別や合理的配慮の提供について苦情の申し出があった場合、事業主は自主的にこれを解決しなければなりません。しかし、もしそれで解決できなかった場合でも、個別労働紛争解決促進法の特例として、都道府県労働局長や新しく設置された紛争調整委員会の支援を得られるようになりました。
紛争調整委員会は、調停委員が調停や調停案の作成を行ったり、受諾勧告を行ったりします。
障害者と事業主双方にとってより良い解決策を見つけるため、こうした支援の利用も視野に入れておきましょう。
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