【事務・IT系編】業種別・新型コロナ予防ガイドライン、障害者雇用でのポイント


新型コロナウイルス感染症が終息を見せず、感染予防対策として大企業ではテレワークなどの新しい働き方の導入が進む現在。障害者を雇用している場合、政府や業界団体が示す感染予防対策ガイドラインに従うとともに、感染症で高リスクとされる障害者への配慮も欠かせません。

そこで、障害者雇用の感染症対策で何がポイントになるのかを3回にわたって解説。今回は、オフィスやIT系職種での対策についてお伝えします。

新型コロナウイルス感染予防の基本の対策

最初に、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部による「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」および専門家会議による分析・提言で示されている感染予防の基本対策を確認しましょう。

新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針

「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」で示されている基本対策の概要は以下の12個です。

  • 三密を徹底的に避ける
  • ソーシャルディスタンスを確保する
  • テレワーク時差出勤などを導入する
  • マスクやフェイスシールドの着用などで飛沫感染を防止する
  • 定期的に職場の換気を行う
  • 咳エチケットを徹底する
  • 手洗い・手指消毒を徹底する
  • 共用部分を定期的に消毒する
  • 毎日検温を行い、症状の有無を確認する
  • 体調が悪い時は自宅待機する
  • 新しい生活様式を実践する
  • 感染者や濃厚接触者を差別しない

もし感覚過敏でマスクやフェイスシールドの着用が難しい場合については、タオルやハンカチを常に携帯して咳エチケットを徹底するようにしましょう。また、業務内容やコミュニケーションの仕方などを工夫し、他の人との会話を15分未満に抑えることで、感染リスクを下げることができます。

マスクをつけられない人については、以下の関連記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。

(関連記事)
マスクをつけられない人・病気とは? 中学生が意思表示カードを考案

【参考】
新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針|内閣官房

新しい生活様式とは

基本的対処方針でも登場する「新しい生活様式」は、専門家会議から提案された感染予防のための生活様式です。全部で約40項目あります。そのうち、仕事に関わるものを抜粋してみましょう。

<仕事に関わる「新しい生活様式」>

  • 三密を回避する
  • 人との間隔はできるだけ2m(最低1m)空ける
  • 人との間隔が十分とれない場合は症状がなくてもマスク等を着用(夏は熱中症リスクを下げるため、人との間隔を空けて真正面を避けられるなら、マスクを外す)
  • こまめに手洗い・手指消毒を行う
  • 手洗いは石鹸を使って30秒程度かけて行う(手指消毒薬の使用もOK)
  • 咳エチケットの徹底
  • こまめに換気する(エアコン併用で室温は28度以下に)
  • 毎朝体温を測定して健康チェックを行う
  • 一人ひとりの健康状態に合った生活習慣を理解し、実行する
  • 発熱や風邪の症状がある場合は仕事を休む
  • 会話や食事は真正面を避ける(横並びを推奨)
  • 食事中の会話は控える
  • 通勤など混んでいる時間帯は避け、公共交通機関での会話も控える
  • テレワークやローテーション勤務、時差通勤などを導入・推進する
  • 「オフィスはひろびろと」使う
  • 会議はオンラインで行う・対面の場合は換気とマスク着用を実践
  • 感染が流行している地域から別の地域への移動を控える
  • 感染が流行している地域への移動を控える
  • 発症したときのために、接触確認アプリ「COCOA」を活用したり、誰とどこで会ったかメモしておく
  • 地域の感染状況を知る

事業所での感染予防で判断に迷った時は、新しい生活様式に照らし合わせて考えると分かりやすくなります。

感染予防では、これらの対策を地道に続けていくことが何よりも大切です。

出典:啓発資料・リーフレット・動画|厚生労働省

オフィス(事務職等)における感染予防対策ガイドライン

身体障害者、精神障害者、発達障害者の中でも就業する人が多い事務職。経団連が発表しているオフィスにおける感染予防対策ガイドラインでは、テレワークや時差出勤の実施が推奨されています。

出勤の必要がある場合でも、従業員の健康管理や休憩室・食堂におけるソーシャルディスタンスの確保、換気・清掃・手洗いは他の業種と変わらず重要です。

【参考】
オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン|一般社団法人日本経済団体連合会

テレワークや時差出勤等の実施

オフィス勤務の場合、たとえば特定のパソコンに入っている特別なシステムを使わなければならないなどのケースを除けば、多くの従業員がテレワーク可能です。実際、大企業の社員が大勢テレワークになったことも、ニュースで何度か報じられました。

全面的なテレワークが難しい場合でも、時差出勤やローテーション勤務・変形労働時間制・週休3日制など、柔軟な勤務体制を取り入れることで職場での感染リスクを抑えられます。徒歩・自転車・自家用車による通勤手段が認められれば、従業員は人混みを避けて勤務することができるでしょう。

勤務中の注意事項

これまで、オフィス内部は多くの机をぴったり並べ、1つの空間でたくさんの従業員が業務できるようにレイアウトされてきました。しかし、感染症拡大のリスクを抑えるためには、もっとゆったりとしたレイアウトや席の配置で、三密のリスクを下げなければなりません。

まずは従業員同士のソーシャルディスタンスを確保するため、出勤する従業員が使う座席の間隔をできる限り2mにしましょう。飛沫感染防止のために対面になるような座席配置も極力避けます。座ってはいけない場所などにマークや注意書きをつけておくと分かりやすいでしょう。

座席を対面にせざるを得ない場合は、間にビニールカーテンやアクリル板などを設置してください。受付やミーティングルームといった、どうしても人と人が頻繁に対面する場所についても、ビニールカーテンなどの仕切りが必要です。

出勤時・退勤時・休憩の前後・トイレ後など、定期的な手洗いや手指消毒も実施してください。勤務中は原則としてマスクやフェイスシールドを着用。窓を開けられる場合は1時間に2回以上、窓を開けて換気しましょう。

接触感染を防ぐには、文具類の借り貸しは避け、共有する設備や器具も最小限にすることが重要です。

オフィスへの外部関係者の立ち入りも最小限に。立ち入る場合は、従業員に準じた感染防止対策を行ってもらえるよう説明し、協力してもらいましょう。

従業員に出張させようと考える場合は、事業所と出張先の感染状況を必ずチェックしてから判断を。感染拡大している場合は、原則として不急の出張は見合わせます。出張の代わりに、オンライン会議システムを活用しましょう。もし、どうしても外勤や出張が必要な場合は、最低限の人数で行い、万が一の時のために訪問場所・面会相手・面会時間・移動経路を必ず記録に残しておかなければなりません。

なお、これまで対面で行ってきた名刺交換は、オンラインで行うよう推奨されています。現在、オンライン名刺交換サービスはまだ多くありません。紙の名刺をスキャンして画像データで保存し、Zoomなどの会議システムやメールで画像を相手に送るという方法が現実的でしょう。

株主総会、採用説明会、面接なども、可能な限りオンラインで実施してください。

感染者が確認された場合の対応

従業員の中から感染者が確認された場合は、保健所や医療機関の指示に従うとともに、感染者の人権に配慮して個人名が特定されることのないよう、十分気をつけてください。公表するかどうか、どのように公表するかは、個人情報保護と公衆衛生上の要請の両方を考慮して検討しましょう。

また、複数社が混在する借用ビル内で、同居する他社において感染者が確認される可能性もあります。そのようなケースでは、さまざまな事情を考慮して対応しなければなりません。まずは医療機関や保健所に相談し、その指示に従って対応してください。

IT系職種における感染予防対策ガイドライン

IT系職種における感染予防対策ガイドラインは、一般社団法人情報サービス産業協会から公表されています。対象は、情報システムの企画、設計・開発、保守・運用、マーケティング・営業、データセンターなど。これらの職種では、身体障害者や発達障害者の就労が比較的多く見られます。

ガイドラインに示された感染予防対策の多くは、オフィスにおける対策と同じ。異なるのは、原則テレワークにすることで通信環境の整備が必要になったり、客先常駐という業界特有のケースでの対策が必要になったりすることです。

【参考】
「情報サービス業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」について|一般社団法人サービス産業協会

基本的な感染防止対策

IT系職種のほとんどはテレワークが可能です。そのため、出勤するのは必要最低限の従業員のみとしましょう。出勤した従業員同士のソーシャルディスタンスの確保に留意し、ひろびろと事業所を使います。定期的な換気も忘れずに。

上司・同僚や取引先との会議・打ち合わせは、原則としてオンラインで実施します。直接会って実施せざるをえない場合は、

  • 正面に向かい合って座るのを避ける
  • 参加人数を最少にする
  • 短時間で終了する

という3点を徹底しましょう。

集合型の会議・セミナーの実施や参加は中止または延期。出張も、原則として中止または延期してください。

情報システム開発現場での対策

システム開発を行う場合、複数の企業の社員でプロジェクトを動かしていることも珍しくありません。他社の従業員が働いている場合は、その従業員が所属する会社にも感染防止対策を講じるよう要請してください。

自社でテレワークを実施する場合は、常駐して開発に関わる他社の従業員にもテレワーク環境を整備しましょう。場合によっては、機器類の貸与も必要になります。

逆に、自社の従業員が客先常駐で開発を行っている場合は、顧客企業や元請け企業に感染防止対策を講じるよう要請しましょう。従業員は、基本的に常駐先の感染防止対策に従うことになります。

データセンターでの対策

サーバなどのIT機器を設置・修理したり、通信回線の提供などを担ったりするのがデータセンターです。データセンターの場合、24時間体制での有人監視が一般的。そのため、入退館時の検温・手洗いは必須です。

三密を避けるため、可能な限りマスクを着用するとともに、運営要員の分散配置、共用スペースの定員制限なども行いましょう。

手指消毒のための消毒用アルコールやマスクといった感染予防備品も、予め調達の準備をしておくとよいでしょう。

なお、地域での感染拡大により人の移動が制限されることがあります。移動制限のために担当者が出社できないという事態を想定し、代わりに誰が対応するか等の必要な対策を講じてください。

出社の必要性を減らして快適に業務を進める工夫

IT系職種の場合、他の職種に比べて従業員の多くがテレワーク可能です。結果として、リモート接続が非常に多くなり、「アクセスできない」「機器が足りない」といった問題が生じるかもしれません。

企業としては、従業員の快適なリモート接続に対応するため、以下の対策を検討してください。

<IT系職種のテレワーク対策>

  • ネットワーク回線の容量を増やす
  • 事前にアクセス設定を行う
  • リモート機器を確保する(ノートPCなど)
  • 音声のみの会議を実施する
  • 一部利用者の制限を行う

また、「ハンコを押すためだけに出社する」「電話をとるためだけに出社する」などをなくすため、電子決済や契約書面の電子化を推進したり、電話転送システムや留守電システムの活用を行ったりする必要もあるでしょう。

仕事とプライベートの線引き

さらに、テレワークで生じやすい問題にも気をつけなければなりません。「仕事とプライベートの線引きが曖昧になる」という問題です。

具体的には、仕事熱心でうっかり残業してしまうタイプと、反対に勤務時間中のはずなのになかなか気持ちが切り替わらないタイプに要注意。障害をもつ従業員も、つまずきやすい点です。

仕事とプライベートを明確に分けるには、たとえば以下のような方法が有効でしょう。

<仕事とプライベートを分ける方法>

  • 時間割を作成する
  • 仕事のための作業場所をつくる(1畳程度でもOK)
  • 気が散るもの(テレビや雑誌、趣味のもの、娯楽のための本など)を片付ける

きちんと睡眠時間を確保して健康を管理するためにも、仕事の始めと終わりをはっきりさせるよう従業員に注意喚起しましょう。

障害者雇用や障害のある人のスケジュール・コミュニケーション機器については、以下の関連記事でも詳しく紹介しています。

(関連記事)
障害者在宅就労にも!障害者自立支援機器と好事例

障害のある従業員には、勤務体制等の変更の説明をしっかり

障害をもつ従業員は、新しい状況やオペレーションへの対応が得意でない場合があります。感覚過敏などでマスクやフェイスシールドの着用がとても苦手な人もいるでしょう。事務系の職種やIT系の職種ではテレワークを導入することも多くなるでしょうが、指示や報告の仕方が変わることでコミュニケーションに問題が生じるかもしれません。

障害をもつ従業員には、「なぜ」そうするのか、「どのように」業務を行うことになるのかを特にていねいに説明する必要があります。

「なぜ感染症対策をしなければならないのか」を説明する

そもそもなぜ感染症対策が必要なのかを説明すると、なぜ業務のやり方を変更しなければならないのかを理解しやすくなります。説明する際は、

  • 新型コロナウイルス感染症とはどのような感染症なのか
  • どういう経路で感染するのか
  • 感染しないためにはどうしたらよいのか

などを伝えるとよいでしょう。

発達障害・情報支援センターのポスターの内容が大変参考になります。

【参考】
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の関連情報|発達障害・情報支援センター

図や写真がある分かりやすいマニュアルや掲示を用意する

具体的な業務のやり方を説明する際は、分かりやすいマニュアルがあると安心して取り組めます。

分かりやすいマニュアルを作るには、絵や図・写真を使い、文章は大きめの文字で行間を空けるのがポイント。従業員の障害特性に合わせて、実際に仕事をする場所と内容、手順が分かるように記載しましょう。

青森県が公開している障害者向けのマニュアル集が参考になります。

【参考】
障害者作業手順書作成支援|青森県

手洗い・消毒、ソーシャルディスタンスの確保については、手洗い・消毒の場所にポスターを掲示したり目印をつけたりしましょう。厚生労働省のサイトから無料で素材をダウンロードできますので、必要に応じて活用してください。

【参考】
Q&A、自治体・医療機関・福祉施設向け情報|厚生労働省

繰り返していねいに、穏やかに指導する

もし一度で覚えられなくても、根気よく穏やかに、何度も伝えることで少しずつできるようになっていきます。分かりやすいマニュアルと併せて、一番大切な対策から順番にできるようにしていきましょう。

どうしても新しいやり方に慣れない場合は、その従業員にとってやりやすい業務内容や環境に変更・調整することも検討してみてください。

インフルエンザ流行に備えて、秋・冬も引き続き対策を

2020年の夏は新型コロナウイルス感染症に悩まされている日本ですが、秋になればインフルエンザの流行も懸念されます。

今回の感染予防対策は、インフルエンザ予防対策としても有効。「新しい生活様式」の定着で、全ての従業員が安心して働ける環境・仕組み作りを進めていきましょう。

【関連記事】
第1回【製造業編】業種別・新型コロナ予防ガイドライン、障害者雇用でのポイント
第3回【サービス業編】業種別・新型コロナ予防ガイドライン、障害者雇用でのポイント

就職、職場定着に真に役立つ情報をわかりやすく解説。
あなたの就労に活用ください。
TOP