【サービス業編】業種別・新型コロナ予防ガイドライン、障害者雇用でのポイント


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新型コロナウイルス感染症が終息を見せない2020年8月現在。障害者を雇用している場合、政府や業界団体が示す感染予防対策ガイドラインに従うとともに、感染症で高リスクとされる障害者への配慮が不可欠です。

障害者雇用の感染症対策で何がポイントになるのでしょうか。3回にわたってお伝えする業種別感染予防対策サービス業編では、小売業と飲食業での対策についてお伝えします。

新型コロナウイルス感染予防の基本の対策

まずは、全ての感染予防対策の基本である、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」および専門家会議による分析・提言をみてみましょう。

新しい生活様式と新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針

「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」と専門家会議から提案された「新しい生活様式」では、感染予防の基本として以下の実践を求めています。

<感染症予防の基本対策>

  • 三密を回避する
  • 人との間隔はできるだけ2m(最低1m)空ける(ソーシャルディスタンスの確保)
  • 人との間隔が十分とれない場合は症状がなくてもマスク等を着用(夏は熱中症リスクを下げるため、人との間隔を空けて真正面を避けられるなら、マスクを外す)
  • こまめに手洗い・手指消毒を行う
  • 手洗いは石鹸を使って30秒程度かけて行う(手指消毒薬の使用もOK)
  • 咳エチケットの徹底
  • こまめに換気する(エアコン併用で室温は28度以下に)
  • 毎朝体温を測定して健康チェックを行う
  • 一人ひとりの健康状態に合った生活習慣を理解し、実行する
  • 発熱や風邪の症状がある場合は仕事を休む
  • 会話や食事は真正面を避ける(横並びを推奨)
  • 食事中の会話は控える
  • 通勤など混んでいる時間帯は避け、公共交通機関での会話も控える
  • テレワークローテーション勤務、時差通勤などを導入・推進する
  • 「オフィスはひろびろと」使う
  • 会議はオンラインで行う・対面の場合は換気とマスク着用を実践
  • 感染が流行している地域から別の地域への移動を控える
  • 感染が流行している地域への移動を控える
  • 発症したときのために、接触確認アプリ「COCOA」を活用したり、誰とどこで会ったかメモしておく
  • 地域の感染状況を知る

特に飛沫感染・接触感染を防止するために、三密の回避・ソーシャルディスタンスの確保・咳エチケットの徹底は欠かせません。体調の悪い従業員が休みやすい環境、雰囲気を作ることも重要です。

感染予防では、これらの対策を地道に続けていきましょう。

出典:啓発資料・リーフレット・動画|厚生労働省

サービス業(小売業・外食産業)における感染予防対策ガイドライン

知的障害者や精神障害者の就労も多いスーパーマーケットや百貨店、ドラッグストア、コンビニ、飲食店といったサービス業。これらの業種に関しては、日本小売業協会等12団体共同によるガイドラインや、一般社団法人日本フードサービス協会によるガイドラインがあります。特に外食産業では、日本フードサービス協会が3月に出したガイドラインがチェックリスト付きで便利です。

サービス業における感染防止対策は大きく分けて3つ。店舗における対策、従業員の感染予防、お客さんへの協力依頼です。

小売業や外食産業は私たちの生活に不可欠ですし、リモートワークも難しいもの。混雑もよく生じます。そのため、他の業種で行われている対策に加えて、サービス提供の仕方自体に工夫が必要です。

【参考】
小売業の店舗における新型コロナウイルス感染症 感染拡大予防ガイドライン|日本小売業協会等
感染拡大期における外食産業のための新型コロナウイルス感染症対策(暫定版)|一般社団法人日本フードサービス協会

混雑緩和でソーシャルディスタンスを確保

まず店舗における対策としてやるべきことは、混雑の緩和です。人が密集しやすい場所を把握し、ソーシャルディスタンスを確保するよう呼びかけましょう。

具体的には、レジ前・店舗の出入り口・サッカー台(袋詰めをする台)・エレベータ周辺や内部・従業員のロッカールーム・従業員の休憩室などが混雑しやすい場所。そういった場所には掲示を行ったりアナウンスを流したりするなどして、対人距離を保つよう呼びかけます。掲示や声かけだけでなく、足下や台の上などに目印をつけておくとさらに効果的でしょう。

重症化リスクが高い高齢者や障害者、薬の服用が難しい妊婦などのお客さんが優先的に買い物できる時間を設ければ、お客さんに快適に利用してもらうことができますし、感染拡大予防としても有効です。

従業員とお客さんの手指消毒

次に、従業員とお客さんの手指消毒、共有設備等の定期的な消毒、店内の換気を行いましょう。

従業員の場合、出勤時や売場・厨房・製造加工施設への入場時、トイレ・休憩室への出入りの際に、石鹸での手洗いまたはアルコールによる手指消毒を行います。手が荒れてしまう人には、ニトリルゴム手袋を支給して着用してもらうのもよいでしょう。ゴム手袋をすることで汗をかいて手が荒れてしまうという人の場合は、内側に綿の手袋をするとラクになります。

ニトリルゴム手袋を着用するときは、手袋を付ける前と外した後に必ず手指消毒を行うよう指示してください。綿の手袋もこまめに洗濯を。ニトリルゴム手袋着用中も素手の場合と同じ頻度で手指消毒を行いましょう。

なお、アルコールでの消毒は手袋に小さな穴を開けてしまうという話があります。きちんと感染防止するなら、頻繁に手袋を新しいものに交換するか、アルコールではなく石鹸での手洗いで消毒を行うのがよいでしょう。

お客さんの手指消毒については、店舗入口などに手指消毒液を設置します。掲示やアナウンスなどで手指消毒をしてくれるよう呼びかけも行いましょう。

アルコール消毒液やマスク等が不足しないよう、計画的に確保することも重要です。

共用設備の清掃・消毒と店内の換気

店舗内の清掃・消毒では、通常の清掃に加えて不特定多数が触れる物を定期的に消毒する必要があります。買物カゴ・買物カートのハンドル・扉の取っ手・トイレ・テーブル・椅子・タッチ式の案内パネルなどです。さらにトイレでは、ウイルスを拡散させる恐れの高いハンドドライヤーや共用タオルを使用禁止にしなければなりません。

店舗の換気は、換気設備をきちんと運転・管理することが第一。ドアを定期的に開放して店舗内に空気の流れを作ることも有効です。屋外席を活用するのも換気の代わりとして良いでしょう。

店舗内に設置された喫煙室は、ドアの開放が難しくスペースも狭いため、密状態が生じやすくなります。必要に応じて、利用を制限してください。

接触感染・飛沫感染の防止

小売業や飲食業では、お客さんとの会話が必要になったり、対面での接客を求められたりすることも多いものです。そうした状況での接触感染・飛沫感染を防止するには、従業員とお客さんの間にビニールカーテンなどの透明な仕切りを設置しましょう。特にレジ前や受付などで必要です。

特定の場所ではなく、対面で販売や説明、サービス提供などを行うケースでは、従業員がマスクやフェイスシールドを着用することで感染リスクを下げられます。できる限り真正面での会話は避け、接客時間も必要以上に長くならないよう注意してください。

レジでは、手指消毒やマスク着用といった基本の対策の他、現金の受渡を直接手で行うのをやめ、コイントレーでの受渡に変えるよう勧められています。自動精算機やキャッシュレス決済を使えれば、感染拡大リスクをさらに下げられるでしょう。

商品陳列については、商品や商品を取るための共用物(トングなど)を介した接触感染が懸念されます。原則として、惣菜・ベーカリー等の販売は、パック・袋詰め販売に変更してください。

飲食スペースはテーブルの間隔を広く、定期的に消毒を

小売店舗のイートインスペースやフードコート、飲食店などでは、テーブルや椅子などの共用設備が多くなります。食事のためにマスクを外す必要もあります。感染拡大を抑制するには、共用設備の定期的な消毒、食事中のソーシャルディスタンスの確保が何より重要です。

食事中のソーシャルディスタンス確保に関しては、可能であればテーブルと椅子の数を減らし、各テーブルの間隔を1〜2m空けるようにします。テーブルや椅子の置き場がなく数を減らせない場合は、使用できない席を作ることで対人距離を確保しましょう。家族以外の人々が向かい合わせになって座る大テーブルの場合は、向かい合う人同士の間にアクリル板など何らかの仕切りを設置してください。

飲食店には長時間滞在する人も少なくありません。食事以外の時間はマスクを着用すること、長時間の会話はしないことなど、お客さんへの呼びかけも必要に応じて行いましょう。

共用の調味料や不特定多数が触れられるカトラリー置き場などは、なるべく撤去するのが望ましいとされています。撤去しない場合は、こまめな消毒や交換が必須です。

従業員の健康管理

小売業や外食産業では、コロナ禍の影響で業務遂行の仕方が変化し、お客さんから苦情をもらうことも多いかもしれません。そのため、これまでの勤務より精神的ストレスを受けやすい状況だと考える必要があります。

従業員を感染から守るには、従業員自身の健康管理と、体調が悪い場合の休養がとても大切。勤務中は手洗い・手指消毒等を行い、通勤時の混雑もなるべく避けられる勤務体制になるよう工夫しましょう。さらに、従業員がきちんと食事・睡眠をとれるように、休みやすい環境作りや休憩時間の確保といった部分も忘れずに実施してください。

障害のある従業員への説明と感染予防対策のポイント

障害をもつ従業員の場合、障害をもたない従業員よりも新しいやり方に慣れるまでに時間がかかるかもしれません。マスクやフェイスシールドの着用が困難な場合もあります。

そのため、障害をもつ従業員には、まず「なぜ」そうする必要があるのか、「どのように」業務を行うことになるのかをていねいに説明することが、最も重要です。

「なぜ」の説明には発達障害・情報支援センターのポスターが便利

たくさんの感染予防対策を説明する前に「そもそも、なぜ対策をしなければならないのか」を説明しましょう。

発達障害・情報支援センターのポスターには、感染症に関する基本的な情報と感染予防の生活の仕方がコンパクトにまとめられています。また、NHKによるニュースサイトでは、漢字を読んだり複雑な文章を理解したりするのが困難な人向けに書かれたニュースを見ることができます。これらの資料を一緒に確認しながら、新型コロナウイルスに感染するとどうなるのか、感染しないためにはどうするのかなどを理解していきましょう。

【参考】
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の関連情報|発達障害・情報支援センター
NEWS WEB EASY やさしい日本語で書いたニュース|NHK

分かりやすいマニュアルを作成

知的障害や精神障害、発達障害がある従業員のために、分かりやすいマニュアルをいつでも見られるようにしておくことも重要です。

ポイントは、絵や図・写真を使うこと、文章は大きめの文字で行間を空けることなど。読字が困難な従業員がいるなら、ふりがなを記載するとよいでしょう。

青森県のサイトでは、実際に作成されたさまざまなマニュアルを見ることができます。これらを参考に、従業員の障害特性に合わせて作ってみてください。

【参考】
障害者作業手順書作成支援|青森県

手洗い・消毒とソーシャルディスタンスの確保については、手洗い・消毒を行う場所や、従業員のたつ場所、移動経路にマークをつけるのも効果的です。手洗いの仕方や予防対策に関するポスターと画像素材は厚生労働省のサイトから無料でダウンロードできますので、ご活用ください。

【参考】
Q&A、自治体・医療機関・福祉施設向け情報|厚生労働省

マスクやフェイスシールドをつけられない従業員もいる

繰り返しになりますが、障害をもつ従業員の中には、マスクやフェイスシールドを着用できない人がいます。無理に着用すると体調を崩してしまう場合もあります。

もしそうした従業員がいるなら、無理につけさせるのではなく、本人と相談しながら他の人と至近距離で話す必要のない業務内容に調整しましょう。それと同時に、ハンカチやタオルを常に携帯してもらい、咳やくしゃみが出そうになったらハンカチやタオルで口と鼻を覆うよう指示してください。

慣れるまで、繰り返し穏やかに、ていねいに

障害をもつ人は記憶できる量が少なかったり身体の使い方がうまくいかなかったりすることがあります。その結果、できるようになるまでに時間がかかる場合も少なくありません。

もし一度で覚えられなくても、根気よく穏やかに、何度も伝えることで少しずつできるようになっていきます。分かりやすいマニュアルと併せて、一番大切な対策から順番に覚えてもらいましょう。

どうしても困難な場合は、やりやすい業務内容や環境を変更・調整することも検討してください。たとえば、マスクの着用が困難なら、他の人との距離を確保できる業務を任せたり、他の人との間にビニールカーテンなどを設置したりするなどの工夫が考えられます。

従業員本人と話し合い、必要に応じて外部支援なども利用して対策を講じることで、感染症が拡大する状況でも安心して働いてもらうことが可能です。

これらの対策は、秋や冬を中心に流行するインフルエンザの感染予防にもなります。ぜひこの機会に、従業員とお客さんを感染症から守れる環境・仕組みの整備を進めてみてください。

【関連記事】
第1回【製造業編】業種別・新型コロナ予防ガイドライン、障害者雇用でのポイント
第2回【事務・IT系編】業種別・新型コロナ予防ガイドライン、障害者雇用でのポイント

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