精神障害者がコミュニケーションを高めるには|就労移行支援と補助ツール


精神障害者は緊張や不安を抱えやすいため、他者とのコミュニケーションが苦手な傾向にあります。中には、それが原因で就労を継続できないケースも。今回は、精神障害者が抱える課題とその解決方法を紹介。コミュニケーションスキル向上を目的とした就労移行支援訓練やプログラム、コミュニケーション補助ツールなど活用してみましょう。

精神障害とコミュニケーション上の主な特徴

まずは法律上の精神障害者の定義と、精神障害のコミュニケーション上の特徴について見ていきましょう。

精神障害者とは?

法律では、精神障害者とは「統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者」のことです(「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」の第5条)。

統合失調症は100人に1人弱がかかるといわれる精神疾患で、幻覚や妄想があらわれるのが特徴。精神作用物質による急性中毒又はその依存症については、薬物やアルコールによる急性中毒や依存症が典型例です。知的障害は発達期に生じる知的発達の障害のことで、理解力や思考力、金銭管理・手先の器用さ・読み書き等に困難が伴います。

そして、その他の代表的な疾患は、気分障害とてんかん。気分障害は大きく分けて「うつ病」と「双極性障害」の2つあり、うつ状態では数週間以上にわかって気分の落ち込みが継続します。

一方、てんかんは、脳の神経細胞に突然発生する激しい電気的な興奮によって、繰り返し「てんかん発作」が起こる病気です。症状は、視覚や聴覚に異常があらわれる、頭痛や吐き気がする、身体の一部がけいれんする、突然意識を失う、など人によってさまざまです。

精神障害のコミュニケーション上の特徴

精神障害のコミュニケーション上の主な特徴として、具体的には以下のような特徴があります。

  • ストレスに弱い
  • 不安になりやすい
  • 疲れやすい
  • 若年期の発病や長期入院等の理由で社会生活に慣れていない場合がある
  • 幻覚や妄想の症状が見られる場合がある

精神障害者が抱えるコミュニケーション上の課題

では、精神障害者が実際にコミュニケーションの中でどのような課題を抱えているか、見ていきましょう。

困っていても、自分から助けを求められない

案内表示を見落としやすかったり音声言語でのコミュニケーションが苦手だったりするために、必要な情報を受け取れない場合があります。また、仕事で自分では分からないことも出てくるでしょう。

そのような時に、精神障害者は自分から質問できない、声をかけられないという課題を抱える傾向があります。

声をかけると人に迷惑をかけるのではないか、怒られたり非難されたり、拒絶されたりするのではないかと感じたり、他人と目を合わせることが苦手だったりするためです。

困っている状況を説明できず、どうしてよいか分からない

困っているときに「どうしましたか?」と声をかけてもらえても、うまく伝えられないケースもあります。

自分の中で話がうまくまとまらない、言葉がうまく出てこない、自分の気持ちを表現すること自体が苦手といった場合があるからです。

うまく状況判断ができず、混乱してしまう

精神障害をもつ人の場合、情報や手順が多すぎると混乱してしまうことがあります。音声でのコミュニケーションが苦手な人の場合は、口頭の説明だけでは情報を把握しきれません。集中するのが苦手なケースもあり、周りのことに気を取られ相手の話をうまく聞けなかったり、自分が何をしていたのか忘れてしまったりすることもあります。

他に、待つことが苦手だと列に割って入ったり、会話を遮ったりしてしまうことがありますし、予想外のことが起こるとパニックになることもあります。

コミュニケーションに対して過度に苦手意識を持っている

就労移行支援事業所「ルミノーゾ町田」で実際に多く見られるのは、コミュニケーションに対して非常に強い苦手意識を持っているケースです。

1対1での会話なら問題のない人でも、大人数が見ていると思うと普段の調子で話すことが難しくなってしまいます。

発達障害者の場合、いわゆる「空気が読めない」こと

発達障害者の障害特性としては、自分なりのルールがあり、それをしっかり守ろうとする傾向が見られます。ルールに合わないことがあると、集中できなかったり怒り出したり、パニックになったりして、柔軟な対応が難しいのです。

これが原因となり、周囲にとって「空気が読めない」行動をとってしまいます。

就労移行支援事業所で受けられる訓練やプログラム

就職して長く働き続けるには、コミュニケーション上の課題を解決する必要があります。1人でコミュニケーション能力を高めることは難しいため、就労移行支援事業所などで実施される訓練やプログラムへの参加が有効です。

ここからは、ルミノーゾ町田で実施している訓練・プログラムの中から、コミュニケーション能力の向上を目的とするものを3つご紹介しましょう。

プログラム名「就労パスポートを作ってみよう」


【参考】就労パスポート|厚生労働省

「就労パスポートを作ってみよう」では、厚生労働省が公表した就労パスポートを実際に作成してみます。就労パスポートの作成を通して自身の障害を受容し、周囲へ発信することが目的のプログラムです。

参加者の皆さんは、自身の障害について言語化することで、新しい発見をしている様子。ただ、人によっては障害を言語化することが精神的につらい場合もあります。

プログラム名「アンガーマネジメント」

「アンガーマネジメント」は、怒りについて理解することにより、他者とのコミュニケーションを円滑にすることを目的としています。

このプログラムでは、アンガーマネジメント用のカードゲームなどを活用します。ゲーム感覚で学習できるため参加のハードルが低く、議論も活発に交わされます。予想外の自分の怒りのツボに驚く参加者もいるようです。

プログラム名「アサーション・トレーニング」

「アサーション・トレーニング」では、相手を尊重しつつ、自らの意見・立場を主張できるようなスキルやアサーティブな考え方を身につけていきます。ケーススタディを用いながらグループごとに議論し、どのように対応するのが適切かを話し合ってもらうプログラムです。

人によっては議論の中で混乱してしまう場合がありますが、じっくり話し合うことで、なぜその対応が適切なのか腹落ちする参加者も多く見られます。

コミュニケーション補助ツールの活用も効果的

口頭だけのコミュニケーションが苦手な場合や言葉ではうまく表現できない場合は、コミュニケーション補助ツールを使うと、お互いの意思を伝えやすくなります。

コミュニケーション補助ツールの代表的なものは、コミュニケーション支援ボードと筆談器。どちらも多くの公共施設や交通機関、銀行などに設置されています。いつでも使えるように小型で軽いものを自分で持ち歩くのもよいでしょう。

コミュニケーション支援ボード


【参考】荒川区「コミュニケーション支援ボード」

コミュニケーション支援ボードとは、よくある会話で必要な表現をイラスト付きで記載したものです。誰でも自由にダウンロード・印刷して利用できるため、自宅のプリンターで印刷して持ち歩くと便利です。タブレット端末があれば、そこにダウンロードして使ってもよいでしょう。

コミュニケーション支援ボードはさまざまなところで作られていますが、養護学校を中心に用いられているのは東京IEP研究会が作成したもので、日常生活全般の表現が載っています。一方、交通機関で使う表現を載せたものでは、交通エコロジー・モビリティ財団が作成したボードがあります。

【参考】
コミュニケーション支援ボード|明治安田こころの健康財団
コミュニケーション支援ボード-紙版-|交通エコロジー・モビリティ財団

筆談器(筆談ボード)


【出典】BB-1GX 電子メモパッド boogie board(ブギーボード)クロ|ビックカメラ

筆談器とは、繰り返し文字や絵をかいたり消したりできるボードです。聴覚障害者などが利用する場合が多いのですが、精神障害者でも、音声でのコミュニケーションが苦手なケースや、絵や図で表現するほうが分かりやすいケースなどで活用できます。

筆談器の種類は多く、価格帯も1000円程度のものから1万円近くまでするものなどさまざま。よく使われている商品は、「かきポンくん」(3000円程度)で、もっと安い筆談器では「ジッキースーパーライト」シリーズ(1500円〜2000円程度)があります。

黒と赤の2色で書ける筆談器では、「メモレBR」や「ジッキースーパーライトBR」(いずれも2500円程度)があり、もっと多くの色を使うなら携帯用ホワイトボード「WiWi Board」(1000円程度)が便利でしょう。

ルミノーゾ町田では、「ブギーボード BB-1GX」(4000円程度)を使っています。縦約20cm×横約14cmで110gという軽さが特徴で、電源のオンオフ不要、手でこすっても汚れず使いやすいのが特徴です。家電量販店なら3000円程度で手に入ります。

記事協力:一般社団法人ルミノーゾ 代表理事 竹井弘二

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