2021/05/20
【障害者のテレワーク】サテライトオフィスとは? 活用のメリット・デメリット
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感染症流行の影響で、2020年は一気にテレワークが進みました。多くは在宅勤務という形ですが、コワーキングスペースやカフェを利用するかたもいらっしゃるでしょう。しかし、これには「セキュリティが心配」という事業主の声も。1つの解決案として候補になるのが、「サテライトオフィス」の活用です。
サテライトオフィスとは
サテライトオフィスとは、企業や団体の本拠とは別の場所に設置されたオフィスのこと。支社や支店のような組織体制が整ったものではなく、「社員が必要に応じて仕事ができる場所」という性格のオフィスです。総務省の説明によれば、“本拠を中心としてみた時に衛生(サテライト)のように存在するオフィス”という意味で「サテライトオフィス」と呼ばれています。
サテライトオフィスは、従業員の働きやすさを考えて設置場所や職場環境が用意されるのが一般的です。数人程度の利用が想定された小規模なサテライトオフィスが多く、各社が独自に設置する場合もあれば、数社が共同で活用する場合もあります。
また、サテライトオフィスではインターネットを使った書類の受け渡しやコミュニケーションが多くなります。そのため、セキュリティが高く速い通信環境や機器を備えているのが基本です。
サテライトオフィスの設置・活用は国が進める「働き方改革」にもつながるテレワーク実現の一つの手段であることから、総務省は「おためしサテライトオフィス」事業を進めてきました。
厚生労働省でも障害者雇用におけるサテライトオフィス活用を促すため、パーソルチャレンジへの委託事業として2019年に「障害者のサテライトオフィス雇用推進マニュアル」を公開しています。
【参考】
おためしサテライトオフィス|総務省
障害者のサテライトオフィス雇用推進マニュアル2019|厚生労働省
一般雇用におけるサテライトオフィス事例
まずはサテライトオフィスを活用した働き方がどのようなものかイメージしやすくなるよう、一般雇用におけるサテライトオフィスの事例を見てみましょう。
事例1:株式会社 日立製作所
出典:働き方を推進する日立の新しいサテライトオフィス「@Terrace」を解説|株式会社日立製作所(2017年10月13日)
株式会社日立製作所は、日立グループ全体の働き方改革を推進するため、1999年から一部社員の在宅勤務やサテライトオフィス勤務を進めてきました。多様な人々が多様な価値観をもって効率的に働けるよう、2016年以降は在宅勤務&サテライトオフィス勤務制度を拡充。2020年3月末時点で月間延べ5〜6万人が利用しているそうです。
その中で、2017年に初めて自社のオフィス外に設置されたサテライトオフィスが「@Terrace」(東京都)です。約100㎡のスペースに約100席が設けられ、常設PC31台と有線・無線LANも用意されています。
「@Terrace」は日立グループ全従業員が利用可能。ガラスの壁面を特大スクリーンとして使えるほか、人数に合わせてテーブルのレイアウトを変更できるため、大小さまざまなミーティングに活用できます。
また、パーティションで区切られた個人用スペースも設置。セキュリティが確保されているため、オンライン会議に便利です。
長テーブルになっているカフェのカウンターテーブルのようなスペースでは、一人で業務に集中することも、資料をひろげてメンバーと話し合うこともできます。
現在はサテライトオフィスサービス「ZXY Share」も活用しながら、全国88拠点でサテライトオフィス勤務が可能とのことです。
【参考】
日立はどのようにテレワークを進めてきたのか|HITACHI
ZXY 公式サイト
事例2:富士通株式会社
出典:「テレワーク・デイズ」、富士通グループ全体で5万人以上が参加|富士通株式会社(2019年7月5日)
富士通株式会社も働き方改革の一環として2017年4月から全社員を対象にテレワーク勤務制度を導入。主要な事業所に社内サテライトオフィス「F3rd」を設置し、社外のコワーキングスペースを活用する形でのサテライトオフィス「F3rd+」も増やしてきました。
社内サテライトオフィスは別の事業所からの出張者向け。実際に運用し始めたところ非常に好評とのことで、「他の事業所にも作ってほしい」という声が相次ぎ、本格的な導入を進めています。
社内サテライトオフィスでは通常のオフィスとは異なる雰囲気、リラックスできる場にしようというコンセプトから、従来のオフィスとは少し異なるデザインのテーブルや椅子を導入。休憩スペースやお菓子・コーヒーマシンが置いてあるスペース、バランスボールや懸垂マシンといった健康器具を設置しているスペースもあります。集中して作業ができる「ソロブース」は、利用者が最も多いとのことです。
一部のサテライトオフィスには、ICTを活用した在籍表示システムも導入されています。これは、センサーで自動的に人を感知し、サテライトオフィス入り口に設置されたモニターやスマートフォンの画面にブースの使用状況が表示されるというシステム。どこが空席になっているかが一目瞭然で、利用のしやすさにつながっています。
富士通では、サテライトオフィスを従来型のオフィスや在宅勤務に続く「第三のワークスペース」と考え、働く場所の選択肢を増やし「限られた時間の中で社員一人ひとりが価値を創出できること」を目的に導入を進めてきました。営業などで生じる隙間時間の有効活用も可能です。
2021年には大分県と移住・ワーケーション協定を締結し、遠隔勤務を活用した移住による地方創生、ワーケーション推進による関係人口の創出、地域課題の解決などで連携・協力すると発表しました。
【参考】
社員の働き方の意識を変えるサテライトオフィス|FUJITSU
大分県と富士通株式会社との移住・ワーケーション協定の締結について|FUJITSU
サテライトオフィス活用のメリット・デメリット
サテライトオフィスにはいくつかのメリット・デメリットがあります。主なメリットは、働く場所や時間の柔軟性が高まること、主なデメリットはセキュリティの問題です。
サテライトオフィスのメリット
まず、サテライトオフィスのメリットには以下の7つがあります。
<サテライトオフィスのメリット>
- 仕事と育児・介護・治療などとの両立をしやすくなる
- 通勤時間が減り、従業員への負担が減る
- 従業員の自宅より仕事しやすい環境を整えられる
- 働きやすさにつながり、人材の確保がしやすい
- 遠隔地の従業員を雇用しやすい
- 支社や支店を設置するより低コスト
- 災害等で事業所が稼働しにくい状況になってもサテライトオフィスで事業を継続しやすい
最大のメリットは、移動時間や労力の削減により、従業員が時間をより有効に使えるようになること。通勤時間で大きな身体的疲労や精神的ストレスを感じるかたは多いでしょうが、サテライトオフィスがあれば自宅や出張先に近い場所で働けます。心身の負担が軽減されて元気なまま仕事を開始でき、能率向上にもつながるでしょう。
また、近年は少子化や高齢化が進み、労働人口の減少が課題となっています。事業を継続するには新しい従業員を雇う必要があるものの、「近くに人材がいない」という悩みを抱える事業主は多いでしょう。もしサテライトオフィスがあれば、事業所から離れた場所に暮らす応募者も採用可能です。
サテライトオフィスのデメリット
一方、サテライトオフィスのデメリットとしては、やはりコミュニケーションやセキュリティの問題があげられます。
<サテライトオフィスのデメリット>
- 事業所とのコミュニケーションがとりにくい場合がある
- 事業所よりセキュリティ問題が発生することがある
とはいえ、これらのデメリットはICT機器を整備したり専門業者からサポートを受けたりすれば克服は難しくありません。2020年からは民間企業でのテレワーク事例やノウハウも蓄積されてきています。
チャットや会議にはTeamsやZoom、Google Meetといった定番ツールがありますので、サテライトオフィスを検討する際はあわせてこれらのツールの導入・活用も検討してみましょう。
障害者雇用でサテライトオフィスを導入するには?
一般雇用で少しずつ進められているサテライトオフィスの活用ですが、障害者雇用でもサテライトオフィスを設置するメリットがあります。上手にメリットを活かすにはサテライトオフィスにも合理的配慮が可能な環境を整える必要がありますが、専門の事業者によるサポートを受ければ実現しやすいでしょう。
障害者雇用でサテライトオフィスを導入するメリット・デメリット
障害者雇用でサテライトオフィスを活用するメリットは、通勤が難しい障害者でも通いやすい場所で安心して働けることです。また、障害者の就労をサポートする企業が設置するサテライトオフィスを活用すれば、自社に施設・設備を整備しなくても働きやすい職場を実現しやすくなります。
<障害者雇用におけるサテライトオフィスのメリット>
- 障害者にとって通いやすい
- 就労の負担を軽減できるため、職場定着につながる
- 障害者向けサテライトオフィスなら、バリアフリー化・合理的配慮がある
- 共同利用の障害者向けサテライトオフィスなら、会社を越えた障害者同士の交流が生まれることもある
障害者雇用におけるサテライトオフィスのデメリットは、一般雇用でのデメリットに加えて、障害者向けに設置されているわけではない場合の利用のしにくさにあるでしょう。
<障害者雇用におけるサテライトオフィスのデメリット>
- 事業所とのコミュニケーションがとりにくい場合がある
- 事業所よりセキュリティ問題が発生することがある
- 障害者向けではないサテライトオフィスの場合、合理的配慮を提供しにくい
- サテライトオフィスの利用者がその障害者のみだと、必要なサポートを受けられず働きにくくなってしまう
こうしたデメリットを解消するには、ICT機器の整備や高いセキュリティのシステムやツールを導入するだけでなく、なるべく障害者向けのサテライトオフィスを利用したり、合理的配慮を提供できる人員をサテライトオフィスに配置したりする必要があります。
合理的配慮ができるサテライトオフィスを見つけよう
障害者雇用で活用できるサテライトオフィスを見つけるには、合理的配慮の提供が可能かどうかという点がとても重要です。
自社でサテライトオフィスを設置する場合は、障害のある従業員をサポートできるよう適切な人員を配置しておいたり、出入り口・通路・トイレなどをバリアフリー化しておいたりする必要があるでしょう。
サテライトオフィスとしてコワーキングスペースを活用する場合は、あらかじめ障害者による利用を想定して設計されたスペースから選ぶのがおすすめです。
障害者雇用向けのサテライトオフィスサービスには、たとえば次のようなものがあります。自社の従業員の障害特性や利用のしやすさとあわせて検討してみてください。
【障害者雇用で利用できるサテライトオフィスサービス例】