【合理的配慮好事例・第3回】精神障害者の「仕事ができない」理由は設備かも?テレワークでもできる環境改善


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精神障害をもつ方には、タスクの優先順位を決めたり効率的に仕事を進めたりするのが苦手な方が多く見られます。そのため、好事例集ではうまく仕事を進められないという問題を改善した工夫も取り上げられています。

好事例集では職場改善として紹介されていますが、テレワークで活用できそうなものも。合理的配慮好事例解説シリーズ第3回は、職場の施設・設備の整備例からテレワークでも活用できる設備の工夫を紹介・解説します。

事例1:1日のスケジュールやタスクを視覚化+タイマー活用で仕事にメリハリ—東京グリーンシステムズ株式会社

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下、機構)が毎年公表している「障害者雇用職場改善好事例」で、令和元年度に優秀賞を受賞した東京グリーンシステムズ株式会社は、1日のスケジュールやタスクの視覚化などの取り組みが評価されました。2020年4月時点で41人の精神障害者を雇用しています。

スケジュールとタスクを視覚化しタイマーを活用

1日のスケジュールの視覚化では、業務の場所や種類、セットするタイマーの時間、行うタスクが色つきで記載され、チェック欄を設けたシートを用意。複雑なタスクは細分化し、「○○を持つ」「○○へ行く」などの業務遂行の準備まで記載されているのが特徴です。

スケジュールや業務内容は、障害特性に合わせて本人に無理のないよう調整されています。

タイマーを用いるのは、次のタスクに移るタイミングを分かりやすくするため。長時間連続で作業して疲労が過度に蓄積するのを防ぐのにも効果的です。

タイマーは、スマートフォンや市販のデジタルタイマーを使ってもいいですし、タイムタイマーのように回すだけで簡単に時間設定できるタイマーでもOK。自分にとって分かりやすく利用しやすいものを使いましょう。

業務ごとの専用チェックシートを作成

複数のタスクが手元にあると、「早く片付けなきゃ」「マルチタスクなんてできない・・・!」という焦りが生まれやすいものです。焦ると今までできていたことにもミスが生じたり、頭が真っ白になってしまったりすることもあるでしょう。

1つずつ確実に進めていくには、業務ごとにチェックシートを作成するのがおすすめです。

たとえば、東京グリーンシステムズが使う業務ごとの専用チェックシートは、次のように見やすく理解しやすい様式で作成されています。

出典:東京グリーンシステムズ株式会社 改善策2|高齢・障害・求職者雇用支援機構

専用チェックシートは業務遂行のマニュアルとしても機能します。「やり方を覚えてなきゃいけない」「手順が間違ってたらどうしよう」という不安を軽減することができるでしょう。

<専用チェックシートの作り方>

  1. 業務を工程ごとに分解する(細かく分解する)
  2. 締切時刻や開始時刻が確定しているタスクは時刻を書き入れる
  3. 分解して出てきたタスクを時系列に並べる
  4. タスクの右側にチェックボックスをつける

エクセルで作成しておけば印刷や変更に便利。エクセルでの作成や印刷が面倒なら、ホワイトボードを壁にかけてタスクを書いた付箋紙やマグネットを作って貼り付けるというやり方もできます。

【参考】
中高年齢層の障害のある方の雇用継続に取り組んだ職場改善好事例集(令和元年度)|高齢・障害・求職者雇用支援機構
東京グリーンシステムズ株式会社 公式サイト

事例2:仕事50分+休憩10分で疲れすぎ防止!机の配置でストレス軽減も—トッパン・フォームズ株式会社 日野センター

平成30年度の障害者雇用職場改善好事例では、トッパン・フォームズ株式会社 日野センターが最優秀賞を受賞しました。

同社では障害者雇用について多くの取り組みが行われています。特に「課題発掘チーム」による職場の課題発見と解決策は、他の企業や精神障害を持ちながら働いている人にとって大いに参考となるでしょう。

「仕事50分+休憩10分」ルール!業務時間の中でこまめに休憩をとる

ストレスや疲れを軽減する取り組みとして従業員から評価の高い制度の1つが「有給の一斉休憩時間」です。

精神障害者は障害のない従業員と比較すると疲れやすく、こまめな休憩が必要。そのため、職場定着にあたって小休憩をとりつつ業務を遂行するという工夫がとられます。しかし、「他の人が仕事をしているのに自分だけ休憩するなんて・・・」と遠慮してしまうことが少なくありません。

そこで、同社では50分ごとに10分間の一斉休憩をとるシステムを導入。休憩の10分間は全員が休憩をとりますし有給で休めますので、「私だけなんて・・・」「休んだら収入が減ってしまう・・・」という心配が無用になりました。

壁に向かって座る座席や余裕をもった机配置で緊張を緩和

「課題発掘チーム」には一級建築士のメンバーが含まれています。主に職場改善にあたって施設・設備の整備が必要な際に力を発揮しているようです。

そうして行われた職場改善に、事業所での机の配置変更・オフィス拡張があります。

通常の事業所だと各社員の机はぴったりと並べられ、対人距離もとても近いでしょう。目の前に他の社員がいることで視線が合いやすかったり、その人の動きが気になってしまったりする場合もあります。

そこで、同社のオフィスでは隣席との距離を大きめにとる机配置や、他の人と目を合わせずに仕事ができるような壁に向かった机配置が行われました。

フリーアドレス制でない限り「オフィスの机配置はこうでなければ」という思い込みは生じやすいかもしれません。同社の好事例では、柔軟に考えることで働きやすい環境を作れることが改めて示されました。

【参考】
中高年齢層の障害のある方の雇用継続に取り組んだ職場改善好事例集(令和元年度)|高齢・障害・求職者雇用支援機構
トッパン・フォームズ株式会社 公式サイト

精神障害者のための施設・設備に関する配慮ポイントとテレワークでの活用例

精神障害者のための施設・設備に関する配慮の好事例として今回ご紹介したのは、以下の5つです。

  • スケジュールとタスクを視覚化する
  • タイマーを活用する
  • 業務ごとの専用チェックシートを作る
  • 業務時間の中で50分に1回、10分間の休憩をとる
  • 隣席と距離をとったり壁に向かう席を設置したりする

これらのアイデアをテレワークでも活用するには、たとえば次のよう方法で導入するとよいでしょう。

まず、テレワークでは、事業所で働くよりも自分でタスク管理をすることが多くなります。スケジュールやタスク一覧、専用チェックシートは、エクセルやホワイトボードを使って作成し、いつでも見える場所に置いておきましょう。次は何をするのか、どう進めるのかが一目瞭然なので、業務の混乱を避けやすくなります。

もし会社でスケジュール・タスク一覧やチェックシートを用意できるなら、テレワーク中の社員にもぜひ共有してください。業務遂行や進捗報告に積極的に活用すれば、効果的な進捗管理やスケジュール調整が可能になります。

真面目な性格でなかなか休憩をとれなかったり、集中しすぎてうっかり何時間も作業を続けてしまったりする方は、積極的にタイマーを使いましょう。こまめに休めれば全体の作業効率も上がりますし、仕事が終わると疲れすぎて何もできなくなってしまうような極端な疲労を避けることも可能です。

机の配置については、窓に向かった明るい場所がいいという方もいるでしょうし、壁に受かった配置のほうが落ち着くという方もいるでしょう。その日の気分によって違うこともあるかもしれません。自分にとって心地よく作業できる場所を見つけてください。

テレワークでは、自宅の一部が「職場」になります。障害特性に合わせて働きやすい職場環境を整える工夫を自宅の仕事場所にも取り入れてみてください。

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