あなたの職場は大丈夫? 2020年度「使用者による障害者虐待の状況」障害者虐待の傾向と最低賃金改定


厚労省が毎年公表する「使用者による障害者虐待の状況」では、職場における障害者を対象とした虐待の発生状況や内容を知ることができます。令和2年度(2020年度)では全体の件数は減少しているものの、依然として中小企業での経済的虐待が多い傾向。2021年10月には地域別最低賃金の改定もあるため、注意が必要です。

厚労省が「令和2年度 使用者による障害者虐待の状況等」の結果を公表

2021年8月27日、「令和2年度 使用者による障害者虐待の状況等」が公表されました。これは事業所の事業主や上司などが労働者である障害者を虐待していると通報・届出があった件数、実際に虐待が認められた件数やその内訳などを取りまとめたもので、毎年公表されています。

調査対象となる障害者は、身体障害、知的障害、精神障害、発達障害やその他の心身の機能の障害がある方で、それらの障害および社会的障壁により継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受ける状態にある方。障害者手帳を所持しているかどうかは問いません。

令和2年度の取りまとめ期間は、令和2年4月1日〜令和3年3月31日です。

通報・届出の件数、実際に虐待が認められた件数ともに減少

まずは調査結果の概要を見ていきましょう。

通報・届け出のあった事業所数および障害者数、実際に虐待が認められた事業所数および障害者数のいずれの項目でも、前年度比で10%以上減少していることが分かります。特に虐待が認められた障害者数は2019年度から大きく減少しました。

虐待が認められた障害者数の内訳と虐待種別

ここで、実際に虐待が認められたケースのうち特に多く見られた障害の種別、虐待の種別など、もう少し詳しく見てみましょう。これらの集計では内訳延べ人数となっているため、概要における虐待が認められた障害者数よりも合計人数が多くなっています。

虐待が認められた障害者数の内訳

実際に虐待を受けたと認められる障害者で最も多い障害種別は、知的障害者(215人)。
次いで多いのが、精神障害者(142人)です。

下のグラフや表のように、知的障害と精神障害が全体の約7割を占めていることが分かります。

こうした障害特性のある方を雇用する事業所では、より一層の虐待防止策を講じることが求められるでしょう。

虐待が認められたケースの虐待種別ごとの障害種別と事例

「使用者による障害者虐待の状況等」の報告では、虐待種別と障害種別による人数も公表しています。

虐待種別とは、虐待の内容を5つに分類したもの。身体的虐待・性的虐待・心理的虐待・放置等による虐待・経済的虐待があります。虐待内容によっては犯罪となるものもあるため、下表で具体例とともにご確認ください。

令和2年度の結果では、虐待種別と障害種別をかけあわせて集計したものは以下のようになりました。

全体として経済的虐待が圧倒的に多く、いずれの障害種別でも最多となっています。次いで多いのは、心理的虐待。知的障害をもつ方で何らかの虐待を受けた方は精神障害をもつ方より多いものの、心理的虐待を受けた人数で見ると精神障害をもつ方のほうが多いという結果になりました。

虐待は、内容によっては加害者が逮捕されることさえある重大なもの。無自覚な虐待が発生しないよう、日頃から十分気をつけなければなりません。

障害者虐待と刑法の関係および相談先については、以下の記事でも詳しく解説しています。

(関連記事)
雇用された職場で障害者いじめが発生したら?|障害者虐待の対応と相談先

虐待種別・障害種別の事例

令和2年度の報告には、6つの虐待事例が掲載されました。虐待種別ごとに事例の概略をまとめたのが下表です。

虐待種別の定義だけではイメージしにくいかもしれませんが、毎年公表されるこうした事例は、よりリアルな状況を教えてくれます。もし職場でこのような状況が発生しているなら、それは障害者虐待。事業主はすぐに改善策を講じましょう。

虐待が認められた事業所の規模と虐待種別

「使用者による障害者の虐待状況等」の報告で障害の種別と虐待種別の内容とともに注目すべき点がもう1つあります。事業所の規模と虐待が認められた件数、および虐待種別です。

事業所の規模と虐待が認められた事業所数

まずは事業所の規模と虐待が認められた件数の関係を見てみましょう。


虐待が認められた事業所数が最も多い事業所の規模は、従業員数が5〜29人の事業所。全体の半分以上を占めており、これまでの調査でも大きな課題となってきました。次に多いのが、従業員数5人未満の事業所で、全体の17%を占めています。

従業員数が30人以上の事業所では、基本的に規模が大きくなるほど虐待が認められた事業所数も減少する傾向が見られました。

事業所の規模と虐待種別

続いて、事業所の規模ごとの虐待種別を確認しましょう。厚労省が公表する資料には、虐待が認められたケースの規模別・虐待種別事業所数の表があります。

この表で経済的虐待の割合を事業所の規模別に見ると以下のとおり。500人未満の事業所で、当該規模の事業所で発生した虐待のうち経済的虐待が過半数を占めているという傾向が見られます。

同様に、虐待が認められた事業所における虐待種別で次に多い心理的虐待の規模別の割合も見てみましょう。

心理的虐待の割合は、規模が大きい事業所で比較的割合が高くなる傾向が見られます。ただし、件数で比較すれば中小企業での発生件数のほうが多い点には気をつけなければなりません。

経済的虐待と最低賃金の関係

障害者への虐待が認められたものとして最も多い経済的虐待は、その多くが最低賃金法関連の事例です。典型例は、不当に地域別最低賃金未満の賃金で障害者を雇用しているというもの。令和2年度の場合、虐待に対して労働局がとった労働基準関連法令に基づく指導等(全体の82.0%)のうち、最低賃金法関係はその40.7%を占めました。

経済的虐待で最低賃金法関係の違反が多く見られる要因は、

  • 地域別の最低賃金の改定があることを知らない
  • 最低賃金の減額特例を誤解している

という2点が考えられます。

令和3年度地域別最低賃金改定状況

最低賃金は最低賃金法によって定められている1時間あたりの賃金のこと。地域別に定められており、かつ定期的に改定されるものとなっています。改定されたことを知らずに前年度の賃金のままで働かせるのは違反となり、障害者に対してそれを行えば障害者虐待になってしまいます。最低賃金は、必ず毎年確認しておきましょう。

東京都と神奈川件における令和3年度の地域別最低賃金改定状況は、以下のとおり。定められた発効日から適用されます。

他の地域について厚生労働省の公式ページで確認可能です。同ページには「最低賃金に関するセルフチェックシート」(Excelファイル)もダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

最低賃金の減額特例は「客観的な資料」なしでは適用できない

障害特性によって簡単な業務のみを担当しているなどのケースでは、最低賃金以下の賃金で雇用できる減額特例が適用できることがあります。減額特例が適用されれば、最低賃金以下で雇用していても違反にはなりません。

しかし、減額特例の適用には所定の手続きが必要であり、減額の根拠となる分析や書類の提出も求められる点に注意が必要です。事業主の自己判断で勝手に最低賃金未満の賃金を設定することはできません。

最低賃金の減額特例や金額の設定方法については以下の記事で詳しく解説しています。減額特定の適用を希望する事業主の方は、ぜひご確認ください。

(関連記事)
障害者雇用の賃金はなぜ安い? 最低賃金制度と減額特例

「虐待かも?」と感じた場合の相談・通報先

もし職場で「これは障害者虐待では?」と感じることがある場合は、上司や事業主、外部支援機関の支援スタッフにご相談ください。自治体や労働局などの窓口に相談することも可能です。自治体および労働局の通報・届け出、相談先は以下が代表的な窓口となっています。令和2年度で通報・届出先として多かったのは労働局でした。

お住まいの地域で相談しやすい窓口をあらかじめ探しておき、「これは・・・?」と感じることがあったら、すぐにご相談ください。

「障がい者としごとマガジン」編集部がある就労移行支援事業所ルミノーゾでも、障害者虐待防止などについてノウハウを共有しています。

【参考】
「令和2年度使用者による障害者虐待の状況等」の結果を公表します|厚生労働省

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