障害者総合支援法改正で創設が検討される「就労選択支援」はどんな制度?


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障害者総合支援法の改正案が2022年10月14日に閣議決定され、10月26日に国会へ提出されました。今回の改正案には、障害者の多様な就労ニーズに応じた支援の新設も含まれています。障害者雇用に直接関わる内容のうち、今回は「就労選択支援」について解説します。

障害者総合支援法改正案の目的と概要

今回提出された「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(障害者総合支援法)の改正案は、障害や難病をもつ方の地域生活や就労の支援を強化し、そうした方々が希望する生活を実現していくことを目的としています。

改正案にはさまざまな制度の見直しや創設が含まれ、検討を進めていた2022年6月から既に注目度が高いものでした。それが10月14日に閣議決定され、同月26日に第210回国会(令和4年臨時会)に提出されました。

改正案には、次の6点が含まれます。制度の見直しや創設にあたり、関連する法律の改正も提案されています。

<改正案の概要>

  1. 障害者等の地域生活の支援体制の充実
    (障害者総合支援法、精神保健福祉法)
  2. 障害者の多様な就労ニーズに対する支援及び障害者雇用の質の向上の推進
    (障害者総合支援法、障害者雇用促進法)
  3. 精神障害者の希望やニーズに応じた支援体制の整備
    (精神保健福祉法)
  4. 難病患者及び小児慢性特定疾病児童等に対する適切な医療の充実及び療養生活支援の強化
    (難病法、児童福祉法)
  5. 障害福祉サービス等、指定難病及び賞に慢性特定疾病についてのデータベース(DB)に関する規定の整備
    (障害者総合支援法、児童福祉法、難病法)
  6. その他
    ※障害福祉サービス事業者の仕手について市町村長が意見を申し出る仕組みの創設、居住地特例対象施設への介護保険施設の追加など

施行日は2024年4月1日。ただし、2における「就労選択支援」と5に含まれる内容の一部は、公布後3年以内の政令で定める日から施行される見込みです。他に、3の一部、5の一部、6の一部は2023年4月1日から、4の一部は2023年10月1日から施行予定となっています。

新しい制度「就労選択支援」とは?

今回の改正案には、障害者の就労支援のひとつとして「就労選択支援」という制度の創設があります。
「就労選択支援」は、まず就労支援サービスと就労支援サービスを利用する意向のある障害者が協力して、

  • どのような職種や労働条件で働きたいのか
  • どのような能力・適性があるのか
  • 働き始めた後にどういった合理的配慮が必要か

などを評価・整理します。次に、そうした就労アセスメントを活用してハローワークが職業指導等を実施したり、就労系障害福祉サービスの利用につなげたりします。

これまでも、就労を希望する障害をもつ方の能力・適性などは、就労支援サービスの利用時に把握する取り組みを行ってきました。しかし、その内容が必ずしも就労先の選択や本人に合った働き方には結びついていないケースがあったのです。

現在、障害をもつ方のみならず働き方が多様化しています。そこで、障害者がご自身に合った働き方を実現できるよう、「就労選択支援」で各人の希望・能力・障害の状況などに応じた、よりきめ細かい支援体制の創設が提案されました。これを実現するには、障害者総合支援法だけでなく、障害者雇用促進法の整備も必要です。

「就労選択支援」の利用イメージ

改正案が可決され「就労選択支援」が創設される場合、就労を希望する障害者はどのような流れで就職、職場定着、安定した職業生活へとつなげていけばよいのでしょうか。現段階ではまだイメージ程度にとどまりますが、ざっと利用の流れを見てみましょう。

まず、障害をもつご本人が就労を希望し、就労支援サービスを利用し始める段階で、「就労選択支援」サービスを利用することになります。最初に行われるのは「就労アセスメント」。就労アセスメントでは、次の3つのことを評価・整理します。

<就労アセスメントで評価・整理する3つのこと>

  • ご本人の就労能力や適性
  • ご本人がもつ強みや課題
  • 働くにあたって必要な支援や配慮

この評価は、障害をもつご本人と支援者が一緒に行うことになっています。疾患や障害の特性などの情報を共有しながら、実際に作業などを行ってみてどのような状況なのかを把握するとともに、複数の支援機関が連携してケース会議を行い、アセスメントの結果が作成されるという流れです。

就労選択支援の中で作成された就労アセスメント結果は、その後の就労に向けた訓練や支援で活用されるだけでなく、就職後も活用されます。たとえば、企業で実際に働き始めた後に、勤務時間を段階的に増やしていくためにトレーニングが必要だったり、休職から復職を目指したりする場合です。

また、現在は一般就労をしている障害者が、就労移行支援事業所や就労継続支援事業所などの就労系障害福祉サービスを利用できることは、法律では定められていません。今回の改正案では、こうした就労系障害福祉サービスの一時利用を法律で定める内容も含まれています。この一時利用に関しても、就労アセスメントの結果が考慮される予定です。

雇用と福祉の連携強化へ

就労アセスメント結果が就職や職場定着、復職支援に活用され、就職後も一時的に就労継続支援事業所や就労移行支援事業所を利用できるようになれば、障害者雇用を進める企業と障害者支援を行う事業所が、より連携しやすくなるでしょう。

本改正案では、さらに市町村や障害福祉サービス事業者などが連携できる機関として、障害者就業・生活支援センターが明確に規定されることを求めています。基本となる連携先が一本化されることで、情報共有や相談にかかる手間の軽減も期待されます。

就労を目指す障害をもつ方、就労系障害福祉サービス事業者のみならず、障害者の雇用義務がある企業にとっても重要な改正となるでしょう。

【参考】
障害者、望む仕事に就きやすく 改正法案を閣議決定|時事通信(2022年10月14日)
社会保障審議会障害者部会(第133回)|厚生労働省
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案を国会に提出いたしました|厚生労働省

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