アビリンピック過去問題|第38回全国(2018)義肢と歯科技工


アビリンピックの競技種目には、失った体の一部の機能を補う装具や義歯を製作する種目があります。「義肢」と「歯科技工」です。いずれも日常生活で問題なく使い続けられるものを製作しなければならないため、選手には高度な専門知識や製作スキルが求められます。

2018年全国アビリンピックでは、「義肢」の課題内容は前大会と同じ「下腿義足(PTB式)ソケット」の製作。一方、「歯科技工」の課題は前大会の内容に新たな課題が加わり、「上顎7本の歯の被せものの原型の製作」と「下顎総入れ歯の原型の製作」となりました。

競技種目「義肢」の課題内容と前大会からの変更点

アビリンピック競技種目「義肢」は、脚を失った人のために下腿義足(PTB式)ソケットを製作する種目です。2017年全国大会の課題内容から変更はなく、与えられた断端モデルと材料を使って製作を行います。

身体障害者・知的障害者・精神障害者が参加可能です。

材料や基本的な設備・機械、一部の用具等は会場側で準備されますが、選手が持参しなければならない用具類もあります。認められたもの以外は持ち込めません。予め知らされるリストにないものを会場に持ち込みたい場合は、事前に主催者から許可を受けてください。

2018年大会では、選手が持参できるものと会場に準備されているものに若干の変更がありました。

選手が持参できるものでは、裁ちばさみの代わりにカッターナイフを持ち込むことが可能となった他、千枚通し・パイプホルダー・油粘土の持ち込みも認められました。

<選手が持参するもの>

  • 裁ちばさみ(カッターナイフでも可):1丁
  • 裁革刃:1本
  • ドライバー(+、−):適宜
  • ハーネスクランプ(義肢用クリップ):5個
  • たがね等(ソケットせっこう割出し用):1本
  • ハンマ(金工用):1本
  • 樹脂ハンマ(またはゴムハンマ):1本
  • 角度計:1個
  • ギブスカッター:1本
  • ヒートガン:1個
  • チョーク又は鉛筆(スポンジゴムに転写できるもの):1本
  • 千枚通し(又はこれに類するもの)
  • パイプホルダー
  • 油粘土(ソケット安定支持用)
  • その他、主催者が個別に承認した機材

会場側で準備されるものについては、従来のものに加えて、必要量の麻糸が新たに支給されています。

<会場に準備されている機具類>

  • 作業台:1台
  • カービングマシン(又はサンディングマシン):2人あたり1台
  • 万力:1個
  • 電動ドリル:2人あたり1台
  • ミシン:2人あたり1台
  • 真空ポンプ:2人あたり1台
  • 台ばかり(樹脂用):2人あたり1台
  • 紙コップ(樹脂用):1台
  • PVAフィルム用接着剤
  • タルク
  • アセトン:500cc
  • 直尺:1本
  • 巻尺:1個
  • ビニールテープ:1巻
  • 研磨紙:1枚
  • ひも(丸うち、φ3mm):1本
  • タオル:1本
  • 接着剤(スポンジ接着用、ヘラ・ハケ付き):150g程度
  • ガラス板:1枚
  • 割り箸(樹脂かくはん用)
  • 麻糸:必要量

ソケットを製作するための支給材料については、前大会から変更はありません。

<支給材料>

  • 陽性モデル
  • 牛革(リリーフ用):1枚
  • ビニルレザー:1枚
  • スポンジゴム(黄色のウレタンスポンジ):1個
  • PVAフィルム筒(#6000):2本
  • PVAフィルム(#6000、PVAフィルム筒のふた用):1枚
  • アクリル樹脂(硬性と軟性、混合済)
  • 硬化剤(アクリル樹脂用)
  • ストッキネット:1つ
  • テトロンフェルト:2枚
  • ギボシ(義肢用):2個

「義肢」の制限時間と製作のポイント

競技種目「義肢」の競技時間は、標準時間が4時間15分、打ち切り時間が4時間45分。標準時間を超過すると超過した分だけ減点され、開始から4時間45分経っても完成しない場合は、そこで打ち切りです。

製作のポイントは、断端の正確な型取りやモデルに合わせた加工・組立です。ソケット本体を正確な寸法で作るためには、ソケットの内側に使うクッション材の特性をきちんと理解していなければなりません。日常使用に耐えられる強度や外観になるかどうかは、ソケット本体の加工法である「注型法」の技術にかかっています。

製作技術も含めた「義肢」の評価ポイントは、大きく分けて3つです。

  • 作業態度(安全・丁寧に作業を進められているか、など)
  • 寸法精度(切断端にぴったり吸着しているソケットを製作できているか、など)
  • 出来映え(除圧が必要な部位がスムーズな歩行を妨げていないか、など)

2018年大会では、参加選手の作業態度が全体として高く評価されました。一方で、作品の出来としては、金賞に相当するものはなかったようです。

講評で指摘された製作上の注意は5つです。

  • 高い利用頻度と活動度に合った耐久度を保てるよう、材料の特性を理解してソケットを作成する
  • 充分に荷重支持できるように適合をはかる
  • 切断端の皮膚を損傷しないよう、除圧が必要な部分に対応するようにつくる
  • 下腿切断端の特徴を活かし、膝関節の機能を阻害しないようにつくる
  • 膝カフの取り付け位置は、膝伸展位で最も緊張し、膝を屈曲していくと緩むように設定する

細かな仕様については、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構による全国アビリンピック公式ページから、過去3年分のみ見ることができます。「障がい者としごとマガジン」でも、過去に出題された課題内容の一部を紹介しているので、あわせてご参考になさってください。

【参考】
過去3年の技能競技課題(参考資料)|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構

競技種目「歯科技工」の課題内容、2018年大会は2種類に


アビリンピック競技種目「歯科技工」は、噛み合わせに問題のある人や歯を失った人のために、歯の形状を回復したり入れ歯を作ったりする種目です。

2018年大会では出題される課題内容が1つ増えて、「上顎右側7本の歯の被せものの原型の製作」と「下顎総入れ歯の原型の製作」の2つの課題が出されました。

競技には、身体障害者・知的障害者・精神障害者が参加できます。

上顎右側7本の歯冠回復では、補綴物(被せもの)の原型を歯科用ワックスで盛り上げて形態回復を行います。一方、下顎の総入れ歯の原型製作は、既製の人工歯と歯科用レジン、ワックスを用いた製作です。

上顎の歯は顔全体の印象を左右するため、美しく仕上げなければなりません。奥歯については、顎の動きを考慮しながら上顎との噛み合わせをしっかり作れるかどうかがポイントです。

大会1カ月前に主催者から練習用の模型が送られてきます。選手たちは、それを使って練習を重ね、本番に臨むことになっています。

2018年大会の作品は講評でも非常に高く評価されており、ハイレベルな戦いとなりました。整理整頓や清掃といった基本的な作用姿勢も好印象だったようです。

「歯科技工」の制限時間と評価ポイント

「歯科技工」の制限時間は5時間です。

2018年は午前9時から午後3時の時間帯で実施され、途中に1時間の昼休憩がありました。作品提出が可能なのは午後2時30分から。午後3時になっても完成しない場合は、そこで作業打ち切りです。

「歯科技工」の評価ポイントは5つあります。

<競技種目「歯科技工」の評価ポイント>

  • 上顎前歯は健全な歯との形態的バランスや顎の動きを考慮しているか
  • 上顎前歯は審美的に美しく製作されているか
  • 上下の歯ともに顎の動きを考慮しているか
  • 上下の奥歯は噛み合わせも配慮して製作しているか
  • 下顎の歯肉が自然で機能的に形成されているか

見た目の美しさと機能性の両方が求められるため、さまざまなことを考慮しなければならない一方、製作時間は限られています。大会前の練習では、丁寧に作業を進めるとともに、効率よく製作する練習を行いましょう。

「歯科技工」で会場に準備されているもの・選手が持参するもの

「歯科技工」では、多くの器具と材料が会場側で用意されます。以下がそのリスト。練習でも同様の環境を整えて取り組むと、本番の感覚をつかみやすくなるでしょう。

<「歯科技工」で会場に用意されている器具類>

  • 技工作業机とOAチェア
  • 電気スタンド(卓上式とクランプ式、100V 27W 蛍光灯)
  • ハンドエンジン
  • スチームクリーナー(ジーシー社製)
  • ポータブルガスバーナー(「ラボバーナー」)
  • 歯科用ハンディトーチ(「YDM YG-8800」)
  • エアーダスター(スプレー式・エアーガンの代用として)
  • デンタルタオル
  • 雑巾
  • ビニール袋(ゴミ入れ用)
  • デンタルマスク
  • ティッシュペーパー

<「歯科技工」で会場から支給される材料>

  • 上下石膏模型(課題模型・主催者側が製作)
  • 下顎前歯部(硬質レジン人工歯・サーパスまたはベラシアSA)
  • 下顎臼歯部(硬質レジン人工歯・サーパスまたはベラシアSA)
  • パラフィンワックス(GC パラフィンワックス)
  • 歯冠回復用ワックス(GC キュービックワックス(アイボリー))
  • トレー用レジン(松風トレーレジンⅡ 粉液)
  • 咬合紙(赤・GC アーティキュレイティングペーパー)
  • 咬合紙(青・GC アーティキュレイティングペーパー)

一方、選手が持参するものもいくつかあります。特に、大会前に主催者から送られた咬合器は忘れずに持っていきましょう。

<「歯科技工」で選手が持参するもの>

  • 咬合器(松風ハンディⅡA・主催者から送付されたもの)
  • 設計用色鉛筆(青色)
  • トレーレジン混和器
  • トレーレジンスパチュラ
  • ワックス形成器具類
  • ワックス溶解皿
  • バー・ポイント類(咬合調整に必要なもの)
  • その他、選手が必要とする器具(電気式ワックス形成器、電気式ワックス溶解器など)

選手が持参するもののリストに含まれていないハンディトーチとハンドエンジンについては会場側で用意されていますが、自分用に準備したい場合は持ち込むことも可能です。

なお、大会前には練習でワックスリムを製作するでしょうが、それを大会当日に使うことはできません。そのため、事前に作成したワックスリムの持ち込みも認められないので気をつけてください。

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