アビリンピック過去問題|第37回全国(2017)義肢と歯科技工


失った手や足、歯の外観や機能を補うのに必要なのが、義肢や入れ歯。全国アビリンピックの競技には、義肢製作の技能を競う種目「義肢」や、入れ歯製作の技能を競う種目「歯科技工」があります。いずれも、日常生活での使用に耐えられるものを製作するため、高度な専門知識やスキルが要求される競技です。

2017年の競技課題は、それぞれ「下腿義足(PTB式)ソケットの製作」と「全部床蝋義歯の製作」でした。

競技種目「義肢」とは? 正確で迅速な作業が必要なソケット製作

アビリンピック競技種目「義肢」は、義肢を使う際に切断部分に装着する「ソケット」を製作する技術を競う種目です。2017年全国大会では下腿義足(PTB式)ソケットの製作が出題されました。

「義肢」では、切断部分(断端)の形状を正確に型取りする技術や、断端モデルに合わせた加工・組み立てを行うのに必要な解剖学的・人間工学的知識が要求されます。また、ソケット本体の加工法が「注型法」となっているため、正確かつ素早く作業を進めなければなりません。皮革やスポンジゴム、樹脂など多様な材料の特性を熟知し、適切に扱うスキルも必要です。

身体障害者・知的障害者・精神障害者が参加できます。

「義肢」の評価ポイントは、大きく分けて3つです。

  • 作業態度(安全・丁寧に作業を進められているか、など)
  • 寸法精度(切断端にぴったり吸着しているソケットを製作できているか、など)
  • 出来映え(除圧が必要な部位がスムーズな歩行を妨げていないか、など)

「義肢」で支給されるもの・持参するもの

「義肢」では、非常に多くの材料や器具類を使用します。そのため、材料と多くの器具類は競技会場で用意してくれます。大会前日に選手自身が下見できますので、材料や器具に不備がないか、機械は正常に動くかなどを確認しましょう。

会場に準備されているものは、以下の通りです。

<会場に準備されている機具類>

  • 作業台:1台
  • カービングマシン(又はサンディングマシン):2人あたり1台
  • 万力:1個
  • 電動ドリル:2人あたり1台
  • ミシン:2人あたり1台
  • 真空ポンプ:2人あたり1台
  • 台ばかり(樹脂用):2人あたり1台
  • 紙コップ(樹脂用):1台
  • PVAフィルム用接着剤
  • タルク
  • アセトン:500cc
  • 直尺:1本
  • 巻尺:1個
  • ビニールテープ:1巻
  • 研磨紙:1枚
  • ひも(丸うち、φ3mm):1本
  • タオル:1本
  • 接着剤(スポンジ接着用、ヘラ・ハケ付き):150g程度
  • ガラス板:1枚
  • 割り箸(樹脂かくはん用)

<支給材料>

  • 陽性モデル
  • 牛革(リリーフ用):1枚
  • ビニルレザー:1枚
  • スポンジゴム(黄色のウレタンスポンジ):1個
  • PVAフィルム筒(#6000):2本
  • PVAフィルム(#6000、PVAフィルム筒のふた用):1枚
  • アクリル樹脂(硬性と軟性、混合済)
  • 硬化剤(アクリル樹脂用)
  • ストッキネット:1つ
  • テトロンフェルト:2枚
  • ギボシ(義肢用):2個

支給された材料は原則として交換・再支給されません。もし材料に不備がある場合は、競技委員に申し出ることで交換・再支給されます。競技開始前に不備や不足がないか、十分に確認しましょう。

小型の用具類は選手が持参します。認められたもの以外は競技中に使用できませんので注意してください。また、競技中の貸し借りもできません。

<選手が持参するもの>

  • 裁ちばさみ:1丁
  • 裁革刃:1本
  • ドライバー(+、−):適宜
  • ハーネスクランプ(義肢用クリップ):5個
  • たがね等(ソケットせっこう割出し用):1本
  • ハンマ(金工用):1本
  • 樹脂ハンマ(またはゴムハンマ):1本
  • 角度計:1個
  • ギブスカッター:1本
  • ヒートガン:1個
  • チョーク又は鉛筆(スポンジゴムに転写できるもの):1本
  • その他、主催者が個別に承認した機材

「義肢」の制限時間と課題概要

自然で機能的な義肢は、手や足を失った人々の生活の助けになります。

2017年の全国アビリンピック競技種目「義肢」で出題されたのは、下腿義足のソケット製作。きちんと装着できるか、歩きにくくないか、日常の使用に耐えられるかなど、さまざまな観点から採点されます。

「義肢」の制限時間

競技種目「義肢」の標準時間は、4時間15分。標準時間内に課題を完成させ、競技委員に製作終了を申し出ましょう。

標準時間を過ぎると、超過時間分の減点があります。もし4時間45分経っても完成しない場合はそこで打ち切りとなり、未完成であることの減点もされてしまいます。

「義肢」の課題概要

2017年全国大会では、与えられた陽性モデルと材料を使って、下腿義足(PTB式)ソケットの製作が課されました。

製作にあたっては提示された仕様に従わなければなりません。ソケット製作とギボシ取り付けの仕様は、次のようになっています。

<下腿義足(PTB式)ソケット製作とギボシ取付けの仕様>

  • 陽性モデルの8か所の除圧部(腓骨頭、腓骨端、脛骨粗面、脛骨稜、脛骨外顆、脛骨端、両側のハムストリングス)にリリーフ(牛革)を貼り付ける
  • 除圧部以外の場所に革の貼付けは行わない
  • 陽性モデルに貼り付ける軟ソケット用スポンジは、5枚以上に分割して貼る
  • 陽性モデルにかぶせるストッキネットは4枚、テトロンフェルトは2枚
  • 積層加工は、真空ポンプを使って作業する
  • 積層加工用樹脂は、アクリル樹脂を用いる
  • アクリル樹脂は、硬性80%:軟性20%が混合済みのものを使用する
  • 硬化剤の使用量は、アクリル樹脂の約3%程度
  • 製作した下腿義足(PTB式)ソケットの上縁と軟ソケットは適切にトリミングする
  • 製作した下腿義足(PTB式)ソケットにカフベルト用ギボシを取り付ける

評価ポイントである作業態度・寸法精度・出来映えに注意しながら、適切に材料を使いつつ完成させましょう。

講評によれば、2017年大会に参加した選手の皆さんは、いずれも義肢・装具製作技能検定試験2級合格相当の完成度の高い作品を完成させていました。ただ、適合状態や実際の日常的な使用に耐えられるだけの丈夫さという点から見て、金賞受賞にはあと一歩だったとのことです。

競技種目「歯科技工」とは? 公式器具類で事前練習が可能な全部床蝋義歯の製作

アビリンピック競技種目「歯科技工」は、義歯を作る技術を競う種目です。2017年全国大会では、2016年大会と同様、入れ歯の原型となる全部床蝋義歯(総入れ歯)を制限時間内に完成させる課題が出されました。

身体障害者・知的障害者・精神障害者が参加できます。

「歯科技工」の評価ポイントには以下の4点が含まれます。

  • 患者の年齢や性別などを考慮しながら美しく前歯が並べられているか
  • 臼歯が安定する位置にあるか
  • 顎がスムーズに動くように臼歯が並べられているか
  • 歯肉の形成が自然で機能的にできているか

器具類や材料を常に整理しつつ、効率よく作業を進めましょう。

「歯科技工」の事前準備と当日会場に用意されているもの・持参するもの

「歯科技工」は、大会前に練習用材料が各選手に送られてくるのが特徴です。選手たちは、それらの器具や材料を使用して練習し、本番に臨みます。

事前に送付された器具類の一部は大会当日でも使用するため、忘れずに会場へ持って行きましょう。

「歯科技工」の事前準備

「歯科技工」では、大会1か月前までに各選手に練習用の咬合器一式・上下無歯顎模型・人工歯が送られてきます。大会までに、それらを使って製作練習を行いましょう。

まずは、自分で咬合床を製作します。咬合床の大きさ等は数値が示されますので、それに従って作りましょう。この数値は本番の競技と同じこともありますし、異なることもあります。2017年大会の場合は、事前に示された数値と同じ数値での製作でした。

「歯科技工」で会場に用意されているもの・持参するもの

「歯科技工」でも、材料と多くの器具類が会場に用意されています。事前練習でも同じ環境を整えて製作すると本番の感覚をつかみやすいでしょう。

<会場に準備されている器具類>

  • 技工作業机とOAチェア
  • 電気スタンド(卓上式とクランプ式)
  • ハンドエンジン
  • スチームクリーナー(他の選手と共用)
  • 湯沸かしポット(他の選手と共用)
  • ポータブルガスバーナー(ラボバーナー)
  • 歯科用ハンディトーチ(YDM YG-8800)
  • エアーダスター
  • デンタルタオル
  • 雑巾
  • 紙コップ(水くみ用)
  • ポリバケツ(水入れ用)
  • ビニール袋(ゴミ入れ用)

<支給材料>

  • 上下無歯顎石膏模型(課題模型):1組
  • 上下咬合床用ベースプレート:1組
  • 咬合器用マグネットプレート:2枚
  • 前歯部硬質レジン人工歯:1式
  • 臼歯部硬質レジン人工歯:1式
  • パラフィンワックス:3枚
  • 硬質石膏(GCニュープラストーン LE ファスト):3kg 共用
  • 咬合紙(赤・GCアーティキュレイティングペーパー):1綴

選手が持参するものは以下の通りです。

<選手が持参するもの>

  • 咬合器(松風ハンデイⅡA・主催者から送付されたもの):1台
  • 咬合平面板(松風ハンデイⅡA用・主催者から送付されたもの):1つ
  • ワックス形成器具類
  • ワックス溶解皿
  • ラバーボール
  • 石膏スパチュラ
  • バー、ポイント類(咬合調整に必要なもの)
  • ノギス
  • 筆記用具類
  • その他、競技に必要な器具類(電気式ワックス形成器、電気式ワックス溶解器など)

事前に練習用として送られてきた咬合器と咬合平行板は当日にも使いますので、忘れずに持参してください。なお、大会前に製作したワックスリムを本番の競技で使うことはできません。

「歯科技工」の制限時間と課題概要

「歯科技工」は長丁場となる種目の1つ。咬み合わせだけでなく、患者情報に即したものが作られているかどうかも重要。仕様や要件に従い、丁寧に作業を進めましょう。

「歯科技工」の制限時間

「歯科技工」の制限時間は5時間です。2017年の競技は、9時〜15時で行われ、途中12時〜13時には昼休憩が入りました。

14時30分になると作品の提出が可能です。もし15時になっても作品が完成しない場合は、そこで作業打ち切りとなります。

「歯科技工」の課題概要

課題は、上下無歯顎模型に咬合床を製作して咬合器に装着した上で、試適用全部床蝋義歯を製作すること。概ね以下の様な流れで製作します。

<「歯科技工」の製作の流れ>

  1. 咬合床の製作(咬み合わせをとる)
  2. 咬合器に石膏模型を装着
  3. 年齢・性別を考慮して、既製の人工歯を並べる
  4. パラフィンワックスで歯肉を形成する
  5. 完成

製作にあたっては、指示や要件に従いましょう。主な指示や要件は、以下の通りです。

<咬合床製作についての指示>

  • 基礎床(ベースプレート)は主催者が準備したものを使う
  • 咬合平面は模型基底部から30mmの高さ
  • 上顎中切歯切縁位置は切歯乳頭中心点から8mm前方になるように咬合床を製作
  • 製作した咬合床は咬合器に装着する

<人工歯排列および歯肉形成についての指示>

  • 前歯部人工歯排列のオーバーバイトは1mm程度、オーバージェットは3mm程度
  • 咬合様式はフルバランスドオクルージョン(適度に削合調整する)
  • 前歯部人工歯排列および歯肉形成は、指定された患者情報に合わせて行う
  • 患者情報:70歳女性、身長155cm、体重55kg
  • 口蓋皺壁を形成する

<人工歯の要件>

  • 前歯部:松風ベラシアSA、形態O4、色調A3
  • 臼歯部:松風ベラシアSA、形態S28、色調A3

2017年大会の講評によれば、競技参加者は20代〜50代の4名。全員が時間内に作品を完成できたとのこと。いずれも完成度が高く、レベルの高い競技だったそうです。その中で各作品の差が出たのは、最終的な仕上げの部分でした。さらに、評価の高い選手は無駄のない作業が特徴で、整理整頓された作業環境で製作していたということです。

常に作業環境を整えておくことで効率のよい作業が可能になり、それが細部を調整する時間的余裕も生んだのかもしれません。製作自体に関係する技術だけでなく、環境整備も重要であることが見てとれた大会でした。

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