2020/10/10
アビリンピック過去問題|第37回全国(2017)機械CADと建築CAD
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アビリンピックには、図面を読んだり作図したりするスキルを競う種目もあります。機械の図面を作成する種目「機械CAD」と建築物の図面を作成する「建築CAD」です。いずれも、高度なCADの操作技術と正確な読図、規格に沿った作図と抜け漏れのない情報の記述ができるかどうかがポイントとなります。
2017年全国アビリンピックの「機械CAD」と「建築CAD」は、それぞれ例年とは異なる内容での競技となりました。
もくじ
競技種目「機械CAD」とは? 使われたOSとCAD
アビリンピック競技種目「機械CAD」は、3次元CADを使って機械の図面を作成する技能を競う種目。提供された図面を読み、機械の構造を理解した上で製図規格に従った図面作成やモデリングを行います。制限時間内に、寸法等の情報を抜け漏れなく入れ、正確な図面を作成するのがポイントです。
身体障害者・知的障害者・精神障害者が参加できます。
2017年の全国大会で使用されたOSはWindows 10、使用された3次元CADはInventor 2018とSolidWorks 教育版 2017-2018でした。
「機械CAD」で用意されるもの・持参できるもの
競技種目「機械CAD」では、競技に必要なものの多くは会場側で用意されています。選手が持ち込めるのは、筆記用具やスケール、ディバイダなどです。
会場に用意されたものと持ち込みが認められたもの以外を競技で使う必要がある時は、事前に許可を受けなければなりません。
「機械CAD」で用意されるもの
「機械CAD」では、CADシステムや机、USBメモリなどは会場側で用意したものを使用します。自分で練習する時も、なるべく同じ環境で作業できるようにしましょう。
<「機械CAD」で会場に用意されるもの>
- CADシステム:Windows 10、およびInventor 2018またはSolidWorks 教育版 2017-2018
- pdfファイル作成ソフト:Adobe Acrobat
- プリンタドライバ
- カラープリンタ:A3の製図用紙に印刷できるもの(共有で2台)
- パソコンデスク:パソコン・TFT液晶ディスプレイ・JIS標準配列キーボード・マウス・マウスパッド・USB・CD/DVD-ROMドライブ
- 脇机:70cm×70cm程度
- 電気スタンド
- 椅子
3次元CADの2種類のうちどちらを使うかは、事前に選択しなければなりません。一度選択すると変更できませんので、自分が使いやすいほうを選びましょう。
また、課題提出用に以下の2つも支給されます。
<「機械CAD」で支給されるもの>
- 印刷用紙:A3(3枚)
- USBメモリ:フォーマット済み(1個)
「機械CAD」で選手が持参できるもの
選手が会場に持参できるものは、以下の通りです。
<「機械CAD」で持参できるもの>
- スケール:メートル用
- 分度器
- 三角定規
- ディバイダ
- 筆記用具:鉛筆・シャープペンシル・消しゴム
- マーカ類
- 粘着テープ
- 電卓
上記以外のものを競技で使うことは、原則としてできません。もし障害特性のために補助デバイスを持ち込む必要がある場合は、必ず事前に申請して許可を受けましょう。
競技中の貸し借りは禁止されています。
「機械CAD」の制限時間と課題概要
「機械CAD」では、競技時間中に10分間の休憩時間があります。競技時間が前半と後半に分かれるので、作業の目安として活用しましょう。
なお、競技の事前準備として会場の下見があるのも特徴です。下見では、図示記号等の登録や出力確認など、重要な作業を行います。図示記号は大会当日に使うものですので、間違いなく登録・出力できているかしっかり確認しましょう。
制限時間と2017年のスケジュール
「機械CAD」の制限時間は3時間です。途中に10分間の休憩があります。
2017年は9:00-12:10で実施。全体で3時間10分の競技となりました。
図面の規格と事前準備
「機械CAD」での製図作成は、最新の日本工業規格(JIS)に従います。また解答図は指示に従ってA3の大きさで枠や中心マーク等を作成します。具体的な数値や種類等の指示は、事前に公開される課題の概要に記載されていますので、確認してください。たとえば、2017年の課題には以下のような指示がありました。
<「機械CAD」での製図に関する指示>
- 断面を描いた場合には、その切り口にハッチング等を施さなくてもよい
- 相貫線および隠れ線については、必要と思われる部分を作図する
- 半径の寸法および面取りの寸法は図形に記入する
- 寸法の許容限界は、「公差域クラスの記号(寸法公差記号)」「寸法許容差」または「許容限界寸法」のいずれかによって記入する。ただし、普通公差は不要
- 課題図に示した寸法、寸法の許容限界および公差域クラスの記号は、そのままの値を解答図に用いる
- 対称図形は、指示のない場合、中心線か半分だけを描き、破断線等による図の省略はしない
- ねじは課題図と同じように描く
- 表面性状に関する指示事項は、表面性状の図示記号と表面粗さのパラメータ及びその数値によって表す
- 表面性状に関する指示事項は、競技課題に指示された場所に大部分が同じ表面性状を一括して示し、その後ろの括弧内に他の表面性状があることを示す。他の表面性状については、図形に指示する
- 角隅の丸みおよび角の45°の面取りについては、表面性状の図示は行わない
「機械CAD」には会場の下見があります。下見の時に、大会当日に使う記号等を作成・登録しますので、必ず参加しましょう。
会場下見で作成・登録できるのは、表面性状と幾何公差等に関する図示記号です。これらの図示記号は、規格に沿って事前に作成しUSBメモリ等に保存して持ち込み、下見の際に登録しても構いません。
登録が済んだら、解答図の枠・中心マークおよび任意の図形を作図し、線種や表面性状等の図記号がきちんと印刷されるか確認しましょう。
きちんと印刷できていたら、枠・中心マーク・第三角法の記号以外は削除します。表題欄・部品欄は、大会当日に課題図から写し取りましょう。
大会当日の課題
大会当日は、配布された課題文と図面を読み、部品図・組立図・等角投影図・立体分解図を作成し、表題欄と部品欄を作成して図面を完成させます。
2017年の課題は、歯車ポンプの図面作成とモデリングでした。
当日は、まず競技委員の指示に従って競技課題や使用工具等の確認を行うことから始まります。次に、指示に従って解答図の枠や中心マーク、図名・氏名・番号・投影図および尺度の欄を作成し、必要事項を記入しましょう。
その後、歯車ポンプ本体の課題図を読図して、3次元モデルの作成に入ります。本体の3次元モデルが完成したら、その2次元図面を課題図の通りに作成。課題図に寸法が記入されていない部分については、課題図をスケールで測定して作図します。各部品に必要な情報も忘れず記入しましょう。さらに、表題欄横に糸面取り・普通寸法公差・普通幾何公差の中級の指示を記載します。
以上が終わったら、自分で作成した部品モデルと会場で配布された部品モデル(STEPファイル)を使ってアセンブリに入りましょう。アセンブリができたら、立体分解図と等角投影図を作成し、指示に従ってA3用紙にバランス良く配置します。
きちんと配置できているか、印刷されるかは、競技中のテスト出力で1回だけ確認できます。テスト出力をしたい時は、黙って手を挙げると、競技委員が指示を出してくれます。
作図したデータは、会場側で用意されたUSBメモリに保存するとともに、競技で使用するコンピュータのデスクトップ上にも保存してください。
なお、競技終了時刻前に解答図が出来上がったら、手を挙げて競技委員に申告することで自分の競技を終了することができます。競技終了後は、指示に従ってUSBメモリに作図データを最終保存します。
2017年全国大会の「機械CAD」のポイント
大会で使われる3次元CADと普段使っている3次元CADが異なる場合、操作に手間取る可能性が高くなります。特に、2017年の「機械CAD」は3次元CADソフトSolidWorksとInventorが初めて競技に導入された年でしたので、操作技術が評価に大きく影響しました。
製図規格に沿った線の太さ・種類、加工指示等をしっかり入れることもポイントです。特に寸法の抜け漏れに注意してください。
2017年全国大会の「機械CAD」参加者は7名。機械製図の知識とCADの操作療法に秀でた選手が金賞を受賞しました。
競技種目「建築CAD」とは? 使われたOSとCAD
アビリンピック競技種目「建築CAD」は、建築の設計者が描いたスケッチや建物の構造を理解し、CADを使って建築基本設計図を作成する種目です。いかに早く正確に作成できるかが競われます。
身体障害者・知的障害者・精神障害者が参加可能です。
「建築CAD」のポイントは3つ。
- 建築と製図規則の知識があり、複数の資料内容を1枚の図面にまとめる力
- 建築CADの知識と効率的な操作のスキル
- 各階平面図と断面図、資料を基にして南平面図を作成する力
使用されたOSはWindows 7、建築CADはAutoCADでした。
「建築CAD」で用意されるもの・持参できるもの
競技種目「建築CAD」でも、競技に必要なものはほとんどが会場に用意されています。選手が持ち込めるものは少ないので注意しましょう。
もし認められたもの以外を競技で使う必要がある場合は、事前に許可を得るのを忘れずに。
「建築CAD」で会場に用意されるもの
「建築CAD」でも、「機械CAD」と同様にCADシステムやプリンタ、机などが用意されます。紙やUSBメモリも支給されますので、当日は必要なものが全て揃っているかしっかり確認しましょう。
<「建築CAD」で会場に用意されるもの>
- パソコン:Windows 7、TFT液晶ディスプレイ・JIS標準配列キーボード・マウス・マウスパッド・USB・CD/DVD-ROMドライブ
- CADソフト:AutoCAD 2017
- プリンタ:A3サイズの印刷が可能なもの(全体で2台)
- OAデスクおよび椅子
- 脇机
<「建築CAD」で支給されるもの>
- A3プリンタ用紙(3枚)
- 外部記憶装置:(建築設備リスト図形ファイル入りUSBメモリ)
「建築CAD」で選手が持参できるもの
「建築CAD」の場合、選手が自分で持ち込めるものは以下の3点です。
<「建築CAD」で持参できるもの>
- スケール:ミリメートル用
- 筆記用具:鉛筆・シャープペンシル・マーカ等
- 電卓
障害特性などを理由に、会場側で用意されるものと選手が持参できるもの以外の器具を使用する必要がある場合は、事前の下見の時までに申請して許可を受けましょう。許可されたら、CADシステムの設定を行う前までに選手が接続し、主催者に確認してもらう必要があります。
事前に許可を受けていないものを大会当日に持ち込むことはできません。競技中の機器やデータの貸し借りも禁止です。
「建築CAD」の制限時間と課題概要
2017年全国大会の「建築CAD」では、制限時間が例年よりも長くなり、作業量も増えました。
「機械CAD」と同様、「建築CAD」でも事前の会場下見が行われます。下見では、CADシステムの設定や動作確認をしつつ、大会当日に使用する図面枠の作成を行いましょう。
制限時間と2017年のスケジュール
「建築CAD」の制限時間は3時間30分。
2017年の全国アビリンピックでは13:30-17:00で実施されました。
途中休憩はありません。
図面の企画と事前準備
「建築CAD」で従う企画は基本的にISOです。しかし、一部はJIS規格に従って作成する必要があるので注意しましょう。
<「建築CAD」で用いるJIS規格>
- JIS Z8312:線の基本原則
- JIS Z8321:製図—表示の一般原則—CADに用いる線
- JIS Z8313-0:製図—文字—第0部:通則
- JIS Z8317:製図—寸法記入方法—一般原則、定義、記入方法及び特殊な指示方法
- JIS A0101:土木製図通則 ※6.線、10.図形の表し方のみに従う
- JIS A0150:建築製図通則 ※12.3、13.2.9〜12.2.10.1、13.3.3、13.5のみに従う
なお、建具寸法や表現は、大会当日に配布される建具表に従います。
「機械CAD」同様、「建築CAD」でも事前に会場の下見があります。下見の際、図面枠指示書に従って図面枠を作成し、システムの動作確認やCADシステムの設定等を行いましょう。また、建築設備リスト図形ファイルがありますので、これも確認してください。
CADシステムの設定では、レイヤー・線種・寸法・ツールバー・文字・環境設定のみ設定可能です。許可されたもの以外の情報(図形や文字)を登録することは認められません。
大会当日の課題
大会当日は、配布された課題を読図し、建築CADを使って建築基本設計図を作成します。2017年の課題内容はRC造建築物でした。配布される課題は、図面枠指示書・1階平面図・2階平面図・断面図・階段立面図・構造部材リスト・建具表・建築設備リストの8点です。なお、解答図を作成する図面枠は、会場下見で作成した図面枠を使用します。
まずは配布された図面やリストを参照し、南立面図を作成しましょう。課題で配布される南立面図には、必要な情報が抜け落ちています。そのため、それらの情報を自分で書き込まなければなりません。南立面図を作成する際は、以下の内容を忘れずに記載しましょう。
<南立面図に記述する内容>
- 建物の躯体、及び建具の見えがかり
- 外部共用廊下のFL高さ
- 2階外部共用廊下手摺の高さ
- 最高高さ
- 通り芯
- GLライン、及び▼GL記号
- 図面名と縮尺
なお、作図では、支給されたUSBメモリに入っている建築設備リスト図形ファイルに保存された図形を使う必要があります。
競技中、提出図面も含めて3回までプリンタ出力が可能です。
解答図は縮尺1:100でA3用紙にプリンタ出力して提出しましょう。同時に、デスクトップ上にもファイルを保存します。
2017年大会の「建築CAD」のポイント
2017年全国大会での「建築CAD」の課題は、それまでの課題に比べて作業量の多いものでした。競技時間自体も長くなったので、最後まで集中して抜け漏れなく図面を作成できるかどうかがポイントです。
AutoCADのクラシックモードやコマンドのカスタマイズはできませんので、普段と異なる設定での作業になる場合は、事前にしっかり操作を練習しておきましょう。
平面図や断面図には、全ての寸法が記載されているわけではないことにも注意が必要です。記載されていない部分は、構造部材や建具、建築設備のリストを参照しながら図面を作成しなければなりません。
2017年大会では、参加した選手3名のうち図面を完成できたのは1名だけでした。読図力とCADの操作技術の高さにより、効率的に作成できたようです。