HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)とは? ストレス緩和と仕事上のポイント


近年話題になっているHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)は、1990年代に米国で提唱されたことで広まった人間の気質に関する言葉です。現在の日本では「繊細さん」「敏感くん」「繊細すぎる人」など、さまざまな呼び方があります。

こうした方々は、他の人が気にならないようなことがとても気になったり、交流が楽しめなかったり等、発達障害やうつ病と誤解されやすい部分もあります。しかし、HSPは病名でも障害の名前でもありません。

HSPにはどのような特徴があるのか、疲れやすいHSPの方々が疲れを和らげたり疲れにくい職場環境を得たりするにはどうすればよいのか、具体的なポイントを見ていきましょう。

HSPとは? HSE、HSS、そしてSPS・・・関連用語の分かりやすい違い

HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)は、米国の心理学者エイレン・N・アーロン博士が1996年に提唱した言葉です。直訳すると「とても敏感な人々」という意味。統計的には人口の15〜20%、すなわち5人に1人がHSP気質だろうと言われています。

アーロン博士によれば、HSPとは以下の4つ全てに当てはまる方のことです。

<HSPの4つの特徴(全部当てはまる)>

  • 長い時間考えたり、深く考えたりする
  • 刺激を受けやすく、他の人が気にしないことにも気づく
  • 共感力が高く、他の人の感情に大きく影響されたり、小説や映画などに深く感情移入したりする
  • 大きな音や人ごみが苦手で、他の人から言われた些細なことにも傷つきやすい

HSPに関連して、HSE、HSS、そしてSPSというアルファベット3文字が登場することがあります。SPSは概念の名称、HSEとHSSはHSPと同様に人間の気質を指す言葉です。

まず、SPSとは「感覚処理過敏性(Sensory Processing Sentitivity)」を意味しています。心理学的な観点と神経科学的な観点から考え出された概念で、感受性がどのくらいあるかを考察する場合に使われます。私たちの日常生活では、ほとんどお目にかからない言葉です。

HSEは「外向性HSP(Highly Sensitive Extoversion)」の略。HSPは人との関わりに疲れたり一人で静かに過ごすことを好んだりする傾向があります。そのため、HSPは全員内向的だと思われがちです。しかし、実際には自分の内面世界とともに外側の世界からの刺激も必要とするタイプがいることがわかりました。それがHSEです。

HSSは「刺激探究型(High Sensation Seeking)」を意味します。好奇心が強くて新しいことを求め行動するタイプのことです。HSSという言葉はアーロン博士ではなくマービン・ズッカーマン博士が提唱しました。HSPとはもともと別の概念で、「HSS型HSP」「HSP型HSS」のように組み合わせて使われる例が見られます。

<HSSとHSPの両方の気質を持つ人の基本的な特徴>

  • さまざまなことに敏感で内面的世界を大切にしている
  • 外側の世界について新しいことを見たり聞いたりするのが好き
  • 自分から積極的に新しい刺激を求めて行動を起こす
  • 刺激を求めて外の世界に駆け出し、一気にのめり込んでいくものの、さまざまな刺激や施行で疲れたり傷ついたりしてしまうことも多い

人口の約6%がHSS型HSPだと考えられています。

繰り返しになりますが、HSP、HSE、HSSが意味しているのは人間の特定の気質のこと。病気や障害の名前ではないため、病院で「あなたはHSP(という病気または障害)ですね」と言われることはありません。

HSPの特徴 内向型と外向型があるが、どちらも高い感受性をもつ

一口にHSPといっても内向型と外向型(HSE)があります。両者は少しだけ違う点もありますが、多くの点で共通した気質を持っています。

<HSPの内向型と外向型に共通する特徴>

  • 他の人よりも細かい情報に気づくため、情報処理が多く疲れやすい
  • 人ごみ・音・光・においなど、外からの刺激に敏感
  • 周囲の人の感情・思考に影響されて自分もそれに合わせてしまうことが多い
  • 物語やアート作品に感動したり泣いたりすることが他の人より多い
  • いつも周りの人に気を遣っている
  • 人間関係の中で相手を優先して自分を責めることが多い
  • 頼まれると断りづらい
  • いろいろ考えたりチェックしたり、周囲の状況によって集中しにくかったりするため、他の人より仕事が遅くなってしまうことが多い

一方、HSPの内向型と外向型の違いは、たとえば以下のような点です。

<HSPの内向型と外向型(HSE)の違い>

  • 外向型は内向型より自分の考えや気持ちを話すことを好む
  • 基本的には不特定多数に対してSNSで自分が発信しようとは思わないが、外向型は信頼する人たちと画像や日々の出来事を共有することは好き
  • 外向型は、他の人たちと協力し合うことが好き
  • 外向型は、電話に出ること自体に抵抗感は少ない(それでも知らない人からの電話にはあまり出たくない)

さらに、HSEの大半はHSSだと考えられています。

ただ、HSEもHSP全体に共通する傾向を持っていることには変わりありません。その結果、外側の世界の刺激を求めつつも、細かいさまざまなことに気づいてしまうために疲れやすく、セルフケアが間に合わないとうつ病などにつながってしまう方もいます。

HSPかどうか自体は診断の対象ではありませんが、もし心の不調を感じているなら、カウンセラーや精神科・心療内科の医師に相談してみてください。

HSPの疲れの取り方は自己理解・自己肯定・刺激の軽減がポイント

HSPが疲れやすいのは、他の人より刺激を受けやすく情報処理が多いことが主な原因です。もともとの気質の問題なので病気ではありませんし、治療できるものでもありません。そのため、日頃から自分の状態を把握し、きちんと休むことが大切になります。

きちんと休むには、まず「自分は他の人よりも感受性が強いんだ」という自己理解をしましょう。その上で、意識的に刺激を減らし、疲れの軽減や回復につなげます。

<HSPの疲れの取り方(例)>

  • 家族や周囲の人々から離れて、1人で過ごす時間をもつ
  • 周囲の音を和らげる(イヤーマフ、ノイズキャンセリングのイヤホンなどを使用)
  • 周囲の光を和らげる(カーテン、サングラス、偏光グラスの眼鏡、明るさや色を調整できる照明などを使用)
  • 自分の気持ちを自分で把握する(ノートやスマホに「私は○○と感じている」などと書いてみる)

もし「あれもしなきゃ、これもしなきゃ」「休日にごろごろしているだけなんて・・・」と気になってしまうなら、自分の気持ちを大切にすることから始めてください。

HSP当事者でありHSP専門カウンセラーでもある武田友紀さんは、幼い頃の自分をイメージして、自分が迷っていることをその子に尋ねることを勧めています。世間体や世の中の常識にとらわれない頃の自分に尋ねることで、自分の本心に気づきやすくなるそうです。

自分の気持ちを確認し、「私はこうしたかったんだ」「私はこう感じていたんだ」と納得できたら、それを肯定しましょう。

感受性の高さや思考の深さは、世の中の些細な変化や周囲の人々の変化から楽しいこと・気持ちの良いことなどを拾い上げられる素敵な資質。どこからか漂う花の香りに気づいたり、葉っぱの大きさや色のちょっとした変化に季節の移り変わりを感じたり、映画や芸術作品を観て心躍らせたりしたことも多いはずです。

自分にとって楽しい時間、心地の良い空間などをつくって、ゆっくり心を休めてください。

仕事の探し方のポイントは、繊細さを生かせる穏やかな環境

HSPにとって働きやすい仕事を探すなら、繊細さを生かせる仕事がおすすめです。そこで、HSPの特徴を次のように言い直してみましょう。

  • 物事を深く考える → 静かな環境でじっくり考えられる仕事
  • 共感力が高い → 他の人の相談や悩みを聞く立場、顧客の気持ちを大切にする仕事
  • 他の人が気づきにくいことに気づく → 細かなチェックが必要な仕事

こうした言い換えで頭に浮かぶ仕事があったら、それを書きとめておきましょう。具体的な職種が思い浮かばない場合は、求人票を見るときにこのような観点で仕事を探してみてください。

HSPにとって働きやすい仕事のポイントは、会社の勤務制度や福利厚生、休暇制度にもあります。以下のような配慮や制度があれば、同じ仕事でも疲れを和らげることができるでしょう。

  • セルフケアやメンタルヘルスに配慮している(心の不調を感じた時に休養・相談ができる)
  • テレワークや時差出勤ができる(人ごみや職場のさまざまな刺激を避けられる)
  • フリーアドレス制(事業所内の自分の好きな場所で仕事ができる)
  • 残業がとても少ない、年間休日が多い(心と体を休める時間を多くとれる)

すでに働いているなら、職場の環境に配慮することで、もっと働きやすくなるかもしれません。

HSPは他の人の感情や物事の変化に敏感で、不安や恐怖を感じやすい傾向があります。いつも怒鳴る人、イライラしている人、人が多すぎる場所からはなるべく遠ざかるようにすると疲れを緩和できます。

物理的な刺激(エアコンの風・ドアの開閉の音や衝撃・コピー機の音や振動など)が苦手な場合も、あまり近づかないようにしたり席替えをしてもらったりしましょう。席替えをお願いする場合は「もう少し離れているほうが集中して仕事ができます」などと上司に伝えるのがおすすめ。もし席替えが難しいなら、上着やストールで風を和らげたり、ノイズキャンセリング・イヤホンの使用を認めてもらったりするなどの代替手段を講じてみてください。

【参考】
The Highly Sensitive Person 日本語サイト
武田友紀『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』飛鳥新社、2018年
敏感くんのゆううつ ~HSCの子どもたち~|Eテレ バリバラ
HSP/HSC(敏感すぎる人)のカウンセリング|心理オフィスK
HSSってなに?HSPの人の30%が持つ好奇心旺盛な気質とは!|働く人の心ラボ(一般社団法人日本産業カウンセラー協会)
長沼睦雄「HSPスペシャルネット講座 第二回」|十勝むつみのクリニック

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