2026/06/03
強度行動障害とは?自傷・他害……その原因と基本の支援方法
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強度行動障害とは、自分の体を叩いたり他人を叩いたり、食べられないものを口に入れたりするなど、本人や周囲の人の暮らしに影響を与えるような行動が頻繁に生じる状態です。こうした行動は生まれつきのものではなく、対応の仕方をうまく学習できなかった結果生じるものと考えられています。その行動の激しさから養護者や支援者からの虐待につながることもあり、適切な理解と支援が強く求められています。
強度行動障害の原因や支援方法、強度行動障害支援者養成研修についてご紹介します。

もくじ
強度行動障害とは?厚生労働省などによる定義
強度行動障害は、自傷や他傷、異食などといった行動が頻繁に現れる状態を指します。厚生労働省の資料や国立障害者リハビリセンター公式ページには、こうした行動の例とともに「特別に配慮された支援が必要」という文言が含まれた定義が記載されています。
| 厚生労働省の資料における定義 ※1 |
| 自傷、他傷、こだわり、もの壊し、睡眠の乱れ、異食、多動など本人や周囲の人のくらしに影響を及ぼす行動が、著しく高い頻度で起こるため、特別に配慮された支援が必要になっている状態 |
| 国立障害者リハビリセンター公式ページにおける定義 ※2 |
| 自分の体を叩いたり食べられないものを口に入れる、危険につながる飛び出しなど本人の健康を損ねる行動、他人を叩いたり物を壊す、大泣きが何時間も続くなど周囲の人のくらしに影響を及ぼす行動が、著しく高い頻度で起こるため、特別に配慮された支援が必要になっている状態 |
強度行動障害は、知的障害を伴う自閉症の人に比較的多く見られるとされています。しかし、こうした行動障害自体は“生まれつき”のものではありません。周囲の環境や関係性にミスマッチが生じているときに現れやすく、適切な支援があればある程度予防することができるからです。
※1 出典:「第1回 強度行動障害を有する者の地域支援体制に関する検討会 参考資料3」(厚生労働省)p.12
※2 出典:「強度行動障害支援者研修資料」(国立障害者リハビリセンター 発達障害情報・支援センター)
強度行動障害はなぜ起こる?原因と支援の難しさ

では、周囲の環境や関係性とのミスマッチとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。原因となるミスマッチの例と、そうしたミスマッチが強度行動障害につながる流れ、支援の難しさを見ていきましょう。
強度行動障害の原因
強度行動障害として現れている行動の多くは、周囲の環境と関わる中で学習されてきたものであると言われています。
例えば、
- 今、何をする時間なのか、わからない
- 次にどうなるのか、予想ができない
- 相手から何かを言われているが、その内容を理解できない
- 苦手な音や匂い、不快な温度の中にずっといる
といった状況があったとします。
本人としては、こうした状況から逃れたかったり、自分が不安や緊張の状態にあることを伝えたかったりします。多くの人は、ここで実際に自分の状況や意思を伝えることができるでしょう。
ところが、強度行動障害のある人の場合、言葉でうまく伝えられず、どうすればよいかもわからない状態になってしまいます。その結果、激しい行動を取るのです。
不安や不快な状況にある際の対処法は、本来であれば、子どもの頃から少しずつ学習していきます。しかし、本人に適切な行動を身につける力があったとしても、周囲がそれに気づかず不適切な関わり方をすれば、対処法を学ぶことが難しくなってしまいます。
このような「未学習」の状態が続くと、どうにか自分の気持ちや希望を伝えようとして、自分なりの行動を取ります。それが、自分を叩く、他人を叩く、大声を出す、物を壊す、長時間泣き続けるといったものなのです。
これらの行動が本人や他者の健康を害したり物を壊すようなものであったりすると、周囲の人はそれを止めようとして、無理に抑え込む・身体拘束をするといった手段に出ることがあります。あるいは逆に、何でも本人の言う通りにしてしまうケースもあるでしょう。
しかし、そうした対応は本人が適切な対処方法を学ぶことにはつながらず、むしろ行動をエスカレートさせてしまうことがあります。「こうすればわかってもらえる」「こうすれば自分の望み通りになる」という誤学習が成立してしまうからです。これが強度行動障害へと発展していきます。
「見てほしい」
「気づいてほしい」
「一緒に遊びたい」
「今の状況を知りたい」
「これをやりたい」
「これはやりたくない」
「ここにいたい」
「ここから逃れたい」
「いつまでやればいいのかわからず、不安だ」
強度行動障害の支援では、こうした本人の気持ちや要望に気づき、本人に理解できる形でコミュニケーションを取ることが求められます。大人になってからでも、適切な関わり方によって強度行動障害の予防や改善を図ることができます。これを念頭に置き、根気強く取り組んでいくことが大切です。
強度行動障害の支援の難しさと対策
強度行動障害のある人には、一定の割合で自閉スペクトラム症(ASD)の人たちが含まれています。そして、ASDの特性の1つであるコミュニケーションの難しさが、支援の難しさにつながっています。簡単に言えば、本人には学ぶ力があるにもかかわらず、「本人にとってわかりやすく学ぶ機会が与えられない」ということです。
また、強度行動障害による行動の激しさから、それに対応できる事業所が少なく、受け入れ後も不適切な支援(強制的な押さえ込みや身体拘束、暴力など)が発生し、障害者虐待につながる例も見られます。支援者は、「強度行動障害の支援は無理なのでは……」と悲観的な気持ちになるかもしれません。
しかし一方で、施設等で適切な支援を受けた人について、他害行為などの危険な行動が減ったという例も報告されています。本人の特性やニーズに合わせて環境を整え、支援することが、改善につながったのです。強度行動障害の適切な支援方法を支援者側が学べるよう、都道府県は地域生活支援事業として「強度行動障害支援者養成研修(基礎研修・実践研修)」を実施しています。
強度行動障害の支援方法は「構造化」
ここで、強度行動障害の基本的な支援方法の概要をご紹介します。ポイントは、本人の特性・ニーズの把握と、特性に配慮した「構造化」、施策の評価とブラッシュアップです。
本人の特性・ニーズを理解し、支援を整備する

本人の特性やニーズを把握するには、まず知的障害のある自閉症の人の特性を理解しなければなりません。先述したように、強度行動障害のある人には一定の割合でASDも見られるからです。
知的障害を伴う自閉症の特性には、例えば次のようなものがあります。
【知的障害を伴う自閉症の特性(例)】
| 特性の分類 | 特性の例 |
| 社会性 |
|
| コミュニケーション |
|
| 想像力 |
|
| 感覚 |
|
| 認知・記憶 |
|
| 注意・集中 |
|
| 運動・姿勢 |
|
社会的特性が見られる場合、本人にとって「何をするべきか」を明確にすることで、集団への適応を促すことができるでしょう。コミュニケーションの特性や想像力の特性がある場合は、「見てわかるツール」の活用が効果的です。認知・記憶の特性に対しては、情報や課題をひとつずつ処理することは比較的得意である可能性を探ってみてください。これを活かせれば、ルーティンや作業を今よりも進めやすくなるでしょう。
自閉症の人は、多様な特性をそれぞれの組み合わせでもっています。一人ひとりについてどのような特性があるのかを把握することが、その人の強度行動障害の予防・改善の基礎となります。
基本的支援の4つのステップ

強度行動障害の支援の要は「構造化」です。構造化とは、「環境を整えること」であり、本人にとってわかりやすい情報やツールを整備することを意味します。構造化の流れは4つのステップに分けられます。
【強度行動障害の基本的支援 4つのステップ】
| ステップ | 概要 |
| (1)本人の特性・ニーズを把握する |
|
| (2)本人の特性に応じた構造化を整える |
|
| (3)PDCAサイクルで改善する |
|
| (4)課題が発生したら再構造化をする |
|
本人の特性に応じた構造化については、
- どのような流れで生活するのか
- この場所では、何をするのか
- 何を・どのくらい・どうやってやるのか、次は何をするのか
といった点を整理したうえで、絵・写真・見本などを使って伝える支援が有効です。必要な情報にすぐ目がいくよう、色分けをしたり目立つ色で囲んだりするのもよいでしょう。
コミュニケーションに関する構造化では、本人と支援者が理解し合える形が理想です。本人がコミュニケーションに成功しやすいよう、「このような場面では、こう言う」「こういう意思を伝えるには、こう表現する」といった具体例を示したり、絵カードや文字カードを本人が簡単に並べ変えて伝えられるような仕組みを取り入れたりする事例があります。
特に、「自分が困っているときに、他の人を頼る」ということを知らないようであれば、「困っています」「手伝ってください」といった助けを求める表現を使えるよう、少しずつ練習していくとよいでしょう。
伝えるタイミングがわからないことが困難につながっている場合は、「〇〇が終わったら声をかけてくださいね」「〇時になったらお話をしましょう」などと伝える方法があります。
1度の計画・実践で全てを改善するのは難しいことです。PDCAサイクルを何度も回しながら、根気強く取り組んでいきましょう。
強度行動障害支援者養成研修とは

強度行動障害の支援について、より具体的なノウハウを学ぶには、強度行動障害支援者養成研修の受講を検討してみてください。2013年度から都道府県の地域生活支援事業で基礎研修が実施されており、翌2014年度には実践研修も開始されました。
強度行動障害支援者養成研修の受講者として想定されているのは、入所、通所、居宅、相談等、強度行動障害者の障害福祉サービスに携わる全ての職員です。
基礎研修では、現場で支援を行う職員を対象に、障害特性の理解や支援計画(支援の手順書)に基づく支援のやり方、日々の記録などについて学びます。他方、実践研修の内容は、支援計画の作成やアセスメントのやり方、PDCAサイクルを回しながら支援をブラッシュアップしていく方法などです。
研修の実施団体やスケジュールは、各都道府県の公式ページで公表されています。
なお、過去の研修で使われた資料が国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターで公開されています。理解の確認などに活用するとよいでしょう。
強度行動障害のある人は「困った人」ではなく「困っている人」
強度行動障害のある人について、これまで「困った人」という見方が大半でした。しかし、そうした行動の原因に目を向けると、誰よりも困っているのは本人であることがわかってきました。そのため、現在の支援の現場では、強度行動障害のある人は「困っている人」という視点を持つことの重要性が強調されています。
「その人にどのような特性があり、周囲の環境とどのようなミスマッチを起こしているのか」
こうした視点を持ち、本人にとって「わかりやすい状態」を整備できるよう、少しずつ調整・支援していきましょう。
【参考】
【画像・イラスト素材提供】
Akwo/ photoAC
kabu / PIXTA(ピクスタ)


