ワークシェア体制・ユニバーサルオフィス等で障害者雇用を推進—大和ハウスが障害者雇用率2.46%を達成


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住宅の建築を中心とする事業展開で2019年度に業界1位の売上高となった大和ハウスグループ。同グループでは障害者雇用も積極的に進めています。2020年6月には定雇用率を上回る2.46%の障害者雇用率となり、同年1月に大和ハウス工業が参加した「The Valuable 500」のコミットメントの1つを達成しました。

今回は、大和ハウスグループのコミットメント内容や障害者雇用における具体的な取り組みを見ていきましょう。

2020年1月、大和ハウス工業がThe Valuable 500に参加

大和ハウス工業株式会社は2020年1月23日に障害者の活躍推進に取り組む国際イニシアチブ「The Valuable 500」に参加しました。

The Valuabel 500への参加にはコミットメントを公表する必要があります。大和ハウス工業のコミットメントは以下の2点です。

1.啓蒙活動の実施

  1. 福祉支援活動による啓発
    • 社員に対して定期的に行っている啓発研修に「体験」「行動」を組み合わせた、福祉支援活動「ソーシャル・インクルージョン・プログラム」を実施します。
    • 当活動により、障がいへの理解をより深め、ユニバーサルデザインを取り入れた住まい提案やユニバーサルマナーの向上などに活かします。
  2. 積極的な情報発信
    • 福祉支援活動の一環として、バリアフリー情報を活用したイベントに参加し、そこで収集した情報をもとにエリアのバリアフリーマップを作成・配布することで、地域の啓蒙活動につなげます。
    • また、障がい者のさらなる社会参加に貢献する取り組みや企業姿勢などを、ホームページやオーナー様向けの冊子等で積極的に発信します。

2.社会参加への環境整備

  1. 障がい者雇用の目標設定
    • 障がい者雇用の促進として、他の従業員と同様に個人の適性に応じて、営業・設計・工事・管理など、能力を発揮しやすい部門に配属し、活躍の場を拡げていきます。
    • また、厚生労働省が定めた民間企業における障がい者雇用の法定雇用率2.2%を上回る2.4%を目標に積極的に障がい者を採用します。
  2. 事業所のバリアフリー化
    • 職場環境向上のため、事務所を新築する際はバリアフリー新法に則してスロープや滑りにくい床、低い段差などのユニバーサルデザインを積極的に採用します。
    • トイレは社内外の方が利用できるよう、多目的トイレを必ず設置することをルール化し、障がい者が不自由なく快適に過ごせる職場環境づくりを行います。

出典:障がい者の社会参加を推進する国際イニシアチブ「The Valuable 500」に加盟しました|大和ハウス工業

これまでも、大和ハウスグループではダイバシティ&インクルージョンに取り組んできました。たとえば、全国の事業所、工場、ショッピングセンターなどに難聴者との会話を支援する卓上対話支援システム「comuoon」を導入。障害の有無にかかわらず働きやすい職場づくりを進めています。

大和ハウスグループの障害者雇用の取り組み

大和ハウスグループには、「大和ライフプラス株式会社」(東京都)という特例子会社があります。2011年2月に設立され、同年3月に特例子会社の認定を受けました。

同社では、「一人ひとりが持つ個性や違いを大切にし、すべての人が本来持っている能力を活かし、活躍の場を拡大させる」ことに注力。2013年度に障害者職場改善好事例で優秀賞を受賞し、2020年6月、グループで法定雇用率を上回る障害者雇用率2.46%も達成しています。
2020年では、全体の34%が精神障害者、21%が知的障害者、15%が発達障害者となっています。


出典:数字で見るDLP|大和ライフプラス

では、大和ライフプラスの職場で具体的にどのような合理的配慮や工夫をしているのか、順番に見ていきましょう。

ワークシェア体制やマニュアル化により得意分野を生かす

大和ライフプラスで行っている工夫の1つめは、複数の業務を複数名で行う「ワークシェア体制」です。

ワークシェア体制は、従業員それぞれが得意な分野の業務を担当し、苦手分野を補い合うことで業務を円滑に進めたり、急な早退・欠勤があっても他のメンバーで業務を分担して進めたりすることなどを可能にします。

ワークシェア体制は、1人で1つの業務を最初から最後までやるよりも柔軟性が高く、全体として業務の質も上がりやすいのが特徴。障害者雇用においてメリットが大きい進め方です。

ワークシェア体制を有効に機能させるには、情報共有が欠かせません。そこで、大和ライフプラスでは、ホワイトボードを活用しています。進捗状況や業務に関する情報がすぐ分かるように、共有事項を分かりやすく「見える化」しました。

同時に、業務マニュアルを作成して作業手順の明確化も実施。何をどうするかがはっきりしているため、安定した作業につながっています。チームによっては音声認識ソフトで読み上げられる「聞いて理解するマニュアル」も作成しました。

ユニバーサルオフィスの実現と支援機器の活用

大和ライフプラスでは、障害の有無に関係なく働きやすい職場環境づくりを目指し、整備を進めています。具体的には、ユニバーサルオフィスの実現や支援機器の活用があります。

ユニバーサルオフィスの整備では、たとえば以下のような取り組みを行ってきました。

<大和ライフプラスのユニバーサルオフィス>

  • 床面のタイル色にコントラストをつける
  • 扉をすべて引き戸にする
  • デジタルサイネージで情報発信を行う
  • 小休止やコミュニケーションの場となるリフレッシュルームの設置

また、障害特性に合わせて適切な機器を導入すれば、苦手を補って業務効率を上げたり、疲れすぎないようサポートしたりすることが可能。そのため、大和ライフプラスでは視覚障害者用の音声読み上げソフトや読書拡大器、聴覚障害者用の音声文字化アプリや補聴援助テーブルマイクなどを導入してきました。

障害をもつ社員に適切なサポートを提供できるよう、社会福祉士精神保健福祉士、障害者職業生活相談員、ジョブコーチなど、専門資格を持つ社員も多数在籍中です。

スキルアップ・キャリアップを支援

障害者雇用では簡単で単調な職務ばかりでスキルアップやキャリアアップが難しいという課題がよく聞かれます。

しかし、大和ライフプラスでは得意分野を強化して働くスペシャリストや、さまざまな職域で働くジェネラリストといった社員を育成。正社員であれば、資格支援制度の利用も可能です。

目標管理制度を使い、半期ごとに成果・意欲・能力の向上に関する目標を定めるとともに、定期的なフィードバックも行ってきました。目標への取り組みは、昇給や賞与にも反映。社員の区分や人材育成の目標を明確にした職能等級制度により、キャリアアップを支援しています。

こうしたサポートにより、同社では管理職、リーダー職、サブリーダー職、そして事業運営の中核を担う人材のほとんどを障害のある社員が担っています。勤続年数を見ても3年以上5年未満が全体の25%、5年以上10年未満が26%となるなど、職場定着が進みました。


出典:数字で見るDLP|大和ライフプラス

勤務体制と多様な休暇制度

障害者雇用では、治療と仕事の両立が欠かせません。これには、柔軟な勤務体制と多様な休暇制度が解決策。大和ライフプラスにも、こうした勤務体制と休暇制度があります。

大和ライフプラスの勤務体制には3つのポイントがあります。フルタイム勤務、時短勤務、フレックスタイム制です。

<大和ライフプラスの勤務体制>

  • フルタイム勤務
    1. 正社員で採用
    2. 時短勤務の場合も正社員採用となる
  • 時短勤務
    1. 時短勤務から開始して、少しずつ職場に慣れていく
    2. 状況に応じてフルタイムへの移行も可能
  • フレックスタイム制
    1. 月間の所定労働時間を設定
    2. 通院等で遅刻・早退が必要でも柔軟な勤務が可能

フルタイム勤務で働くかたと時短勤務で働くかたの割合は、概ね半々となっています。


出典:数字で見るDLP|大和ライフプラス

休暇制度では、よく見られる有給休暇・産休・育休・介護休暇・子の看護休暇・慶弔休暇の他に、積立有給休暇、ステップ休暇、妻出産休暇などがあります。

<大和ライフプラスの休暇制度(一部)

  • 積立有給休暇
    1. 時効により消滅する休暇のうち、年10日を上限として積み立て、私傷病等の際に使用できる
    2. 最大積立日数80日
  • ステップ休暇
    1. 正社員が対象
    2. 勤続5年ごとに5日間の特別休暇が付与され、手当が支給される
  • 妻出産休暇
    1. 配偶者の出産時に2日間の休暇を取得できる
  • 子の看護休暇
    1. 未就学児の子を対象が対象
    2. 病気等での看護が必要な場合に休暇を取得できる

他にも、労働災害、通勤災害、生理、仕事外でのケガや病気、公務等の休暇制度も設けられています。

【参考】
多様な人財活躍2(障がい者等)|大和ハウスグループ
働く環境|大和ライフプラス

大和ハウスグループの企業理念と主な事業

大和ハウスグループは、国内166社、海外194社あり、グループ従業員は全部で4万7133人です(2020年3月時点)。これまでに、住宅(戸建住宅・賃貸住宅・分譲マンション)183万戸、商業施設4万4千棟、シルバー施設(医療・介護施設など)8300棟を供給してきました。


出典:戸建住宅(注文住宅/分譲住宅/森林住宅)|大和ハウスグループ

企業理念

大和ハウスグループの企業理念は、以下のようになっています。

一、事業を通じて人を育てること
一、企業の前進は先づ従業員の生活環境の確立に直結すること
一、近代化設備と良心的にして誠意にもとづく労働の生んだ商品は社会全般に貢献すること
一、我々の企業は我々役職員全員の一糸乱れざる団結とたゆまざる努力によってのみ発展すること
一、我々は、相互に信頼し協力すると共に常に深き反省と責任を重んじ積極的相互批判を通じて生々発展への大道を邁往すること

出典:大和ハウスグループ理念体系|大和ハウスグループ

企業理念の下にあるのは経営ビジョンと社員憲章。経営ビジョンで表明されているのは「人・街・暮らしの価値共創グループ」として人が心豊かに生きる社会の実現を目指すとともに、お客様一人ひとりと永遠の信頼を育むこと。社員憲章では、環境に配慮した安らぎとくつろぎの空間の提供、誠意をもってお客様と向き合うこと、感謝の気持ちを忘れず公正であることに努めることなどを社員に求めています。

一貫して“多くの人の役に立ち、喜んでいただける商品開発やサービスの提供”に努め、世の中に必要とされる企業であることを大切にしています。

2021年度からは事業本部制を本格導入し、業容拡大とガバナンス強化の両立を図る「攻めと守りのバランス経営」を実施。さらなる企業価値の向上を目指すとともに、環境問題やさまざまな社会課題の解決により一層取り組み、循環型経済の形成に貢献していくことを目指します。

主な事業

大和ハウスグループは、創業以来、鋼管構造による創業商品「パイプハウス」、プレハブ住宅の原点「ミゼットハウス」などを開発してきました。

戸建住宅がコア事業で、賃貸住宅、分譲マンションなどとともに売上高全体の約46%を占めます。商業施設、事業施設(物流施設、医療・介護施設等)も売上高全体の約44%となっており、2大事業の1つです。(2020年3月時点)

他にも、有料老人ホーム、リゾートホテル、フィットネスクラブ、カーシェアリング拠点など約4360か所を運営しています。

現在は、リフォームや買取再販事業などの住宅ストックビジネスの強化、かつて開発した戸建住宅団地の再耕(再生)事業「リブネスタウンプロジェクト」の展開、海外における地域に密着した事業を展開など、現在の社会状況に応じた取り組みも進めています。

グループ全体の売上高は、2010年に1兆6098億円、2020年3月には4兆3802億円に増加。住宅・建築業界で第1位の売上高となりました。

【参考】
大和ハウスグループ 公式サイト

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