【合理的配慮好事例・第20回】休職した社員の職場復帰支援はどうする? 復職支援のポイント


障害をもつ従業員の場合、障害のない従業員よりも体力がなかったり落ち込みやすかったり、長年の勤務で症状が悪化してしまったりして休職することも。そのため、障害者雇用においては休職中・復帰後の支援体制がとても重要です。

合理的配慮好事例解説シリーズ第20回では、まず休職の原因になりやすいことを確認。その後、休職中や職場復帰後に事業所で実際に行われたサポートの事例を見ていきましょう。

休職の原因になりやすいこと

障害をもつ従業員が休職する時、一体何が原因になっているのでしょうか?

理由は人それぞれですが、原因になりやすいものとして以下の7つが考えられます。

<休職の原因になりやすいこと>

  • 勤務内容
    • 苦手な業務、簡単すぎる業務、納期やノルマのプレッシャーなど
  • 労働時間
    • 長すぎる、短すぎる、朝が苦手など
  • 人間関係
    • 上司・同僚との関係、孤独感など
  • 職場環境
    • 相談しにくい、業務が分かりにくい、機器が使いにくい、騒音で集中できないなど
  • 異動による環境変化
  • 家族や友人の変化
  • 症状の悪化

休職が必要な従業員がいたら、本人にとって休職の原因になったのは何なのかを主治医や支援機関と連携・協力しながら把握しましょう。原因の把握なしに「今は休職し療養して、回復したらまた元の職場と業務に戻って」というだけでは、原因や課題を解消しないまま復帰することになり、再度の休職につながりやすくなってしまうからです。

医師や支援機関などと原因や本人に合った業務、必要な配慮などを確認することで、療養中の従業員への適切なサポートや復帰後の安定した勤務につなげられます。

具体的にどのような支援が必要なのか、実際に行われたサポート内容を見ていきましょう。

主治医・産業医・関係機関と連携、配置転換と声かけを実施—THK株式会社山口工場

THK株式会社山口工場は、THK株式会社が国内に有する13の工場の1つ。同工場で障害をもつ従業員が担当するのは、機械要素部品の洗浄・外注組み立て品の受入れ検査・LMブロックの部品添付挿入といった業務です。

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の「平成26年 支援機関の活用・企業内における専門人材の育成等による精神障害者のための職場改善」の好事例として優秀賞を受賞しました。

休職した従業員に対する復帰支援内容は、主治医・産業医・関係機関との相談・連携、復帰後の声かけや体調管理のサポートなどです。

支援制度の内容

山口工場で復帰支援を行う際に連携したのは、主治医・産業医・障害者職業センターの3者。それぞれへの相談内容は以下のようなものでした。

<連携先と相談内容>

  • 主治医
    • 従業員本人の状態の把握
    • それに合わせた具体的な配慮内容
  • 産業医(産業医面談の実施)
    • 従業員の状況の確認
    • 復帰の判断・相談
  • 障害者職業センター
    • 職務選定の相談
    • 障害特性に応じた配置転換の相談

復帰支援にあたっては、休職中から復帰後までサポートを行っています。

休職中の支援では、主治医を交えた三者面談により従業員の状態を把握。その後、復職が決まるまで会社の総務課長と看護師が、社内行事・人事異動・作業風景の写真・焦らず休んでほしいことなどを月1回の手紙で休職中の従業員に伝えるという方法で、継続的にコミュニケーションをとりました。

<休職中の支援>

  • 三者面談(本人・主治医・会社)
  • 月1回の手紙による連絡(総務課長・看護師)
  • 産業医面談
  • 復帰に向けた計画の立案
  • 支援機関への相談

産業医面談で復帰可能と判断されてからは、復帰に向けた計画の立案、本人に合った業務に関する支援機関への相談、復帰後の配慮や注意点などの確認を実施。復帰時は、第2号ジョブコーチのサポートのもと、2週間ほどかけて事業時間に合わせた出社訓練も行っています。

本格的に復帰した後は、本人と同僚の両方に声かけを行い、信頼関係強化や職場全体の不安軽減につなげました。社員手帳に疲労度を数値で毎日記入してもらうことで健康状態を本人と確認したり、週1回の上司を含めた面談で翌週の勤務計画作成・業務量調整も行ったりもしています。

<復職時・復職後の支援>

  • 2週間ほどの出社訓練を実施
  • 本人と同僚への声かけで不安軽減
  • 疲労度を毎日記録し、本人と振り返りを実施
  • 体調を崩した場合や本人が不安を感じる場合、疲労度の記録から回復過程を振り返り、不安軽減へ
  • 週1回の面談を行い、本人の要望を確認して翌週の勤務計画作成・業務量調整

復職の事例

山口工場で休職・復職した事例として紹介されたのは、精神障害をもつ方の例。休職中は体力面や健康面での心配があり、復職してもしっかり仕事ができるか、同僚に溶け込めるか不安を感じていたといいます。また、以前の業務に苦手意識もありました。

支援を受けつつ職場復帰した際の配置転換で新しく担当した業務は、自分に合っている業務だと感じられたとのこと。その後も体調を確認しながら仕事を続け、急ぎの仕事にも対応できるまでになったそうです。

【参考】
支援機関の活用や企業内における専門人材の育成等による精神障害者の職場改善好事例集(平成26年度)|JEED
会社情報|THK株式会社

復帰後に新たな障害特性が判明、配置転換とチェックシートを活用—東京グリーンシステムズ株式会社

東京グリーンシステムズ株式会社は、第3セクター方式の特例子会社。アグリ事業、フード事業、オフィス事業、清掃事業など、さまざまな事業を手掛けており、JEEDの「令和元年度 中高年齢層の障害者の雇用継続に取り組んだ職場改善」好事例として優秀賞を受賞しました。

同社の取り組みとして紹介された事例は、復帰後の支援を中心としたもの。復帰前と復帰後で本人の様子が変化している場合の支援事例です。

復帰後の新たな課題の発見

同社で復職した従業員の1人は、下肢機能障害をもつ身体障害者。長年の勤務の中で股関節の状態が悪化し、5カ月間休職しました。

復帰してみると、本人が以前より業務に苦手意識を持っており、長年担当していた作業の流れや留意事項を忘れていることが判明。その後も忘れやすくなっていることが目立ち、医療機関で相談することになりました。

変化の原因は、30年以上前の事故の影響で「新たなことを覚えづらい」という特性が加わっていることでした。

課題への対応方法

復帰後に新たに分かった課題への対応として、同社では以下の取り組みを実施しています。

<復職後の具体的な支援>

  • 毎日の定型的なメールコーナー業務と週2回の給茶機メンテナンス業務へ配置転換
  • メールコーナーを以前から担当していた社員とペアを組んで従事
  • いつも同じ手順で業務を遂行できるよう、ペアの相手を固定
  • 2つの業務を組み合わせることで1日の業務の流れにメリハリをつける
  • 障害特性に応じてチェックシートを作成・活用する
  • 勤務時間を軽減し、身体的疲労度を減らす
  • 家族と情報共有をして出勤日や予定の確認を確実に行う

同社の支援で特徴的なのが「作業予定&チェック表」といったチェックシートの作成・活用です。その日の業務スケジュールと作業手順、留意事項、作業の進捗などが1枚で分かるようになっています。チェックシートの活用により、手順通りに正しく漏れなく業務を遂行できるようになりました。


出典:中高年齢層の障害のある方の雇用継続に取り組んだ職場改善好事例集(令和元年度)東京グリーンシステムズ株式会社|JEED (p.22)

【参考】
中高年齢層の障害のある方の雇用継続に取り組んだ職場改善好事例集(令和元年度)|JEED
東京グリーンシステムズ株式会社

障害者雇用における職場復帰支援のポイント

今回の2つの事例で重要な支援ポイントは、休職中と復職後それぞれに3つあります。

休職中の支援ポイント

休職中の支援における第1のポイントは、本人の治療や障害特性、特性に応じた職務などについて専門家と相談・連携すること。それぞれの専門分野を中心に相談すると、より適切なサポートができるでしょう。

<相談・連携先と主な相談内容の例>

  • 主治医
    • 本人の病状の確認・仕事での配慮点
  • 産業医
    • 本人の病状確認・職場復帰の可否の判断・仕事での配慮点
  • 障害者職業センター
    • リワーク支援・本人に合った業務内容の検討・復帰後の配慮点
  • 第2号ジョブコーチ
    • 職場での声かけ・職場での面談・業務内容の調整など、実際の業務でのサポート
  • 就労移行支援事業所などの支援機関
    • 生活のリズムを作ったりスキルを習得したりするなどのリワーク支援・職場定着支援など

第2のポイントは、会社から本人の負担にならない範囲で定期的に連絡をすること。多すぎず少なすぎない頻度で職場の状況を伝えることによって、休職中の従業員も「会社では今どうなっているのか」を知ることができます。また、そうした職場の状況を知らせることで、事業所が従業員の復帰を前提に考えていることも伝わるでしょう。

第3のポイントは、復帰が決まってから実際に業務に復帰するまでの間に移行期間を設けること。「復帰直後だし、これでいいか」などの曖昧なものではなく、仕組みとして移行期間を設けることで「この2週間は練習なんだ」と明確に意識しやすくなります。

なお、職場復帰を支援する「リワーク支援」は障害者職業センターだけでなく精神科のある病院や一部の就労移行支援事業所でも実施。具体的な支援内容や実施機関や職場復帰の手順などは以下の関連記事で紹介・解説しています。

(関連記事)
リワーク支援に必要な手続きと期間・費用
うつ病の種類と休業のタイミング、仕事復帰の手順

職場復帰後の支援ポイント

職場復帰後の第1の支援ポイントは、復帰後の本人の状態の確認です。

  • 障害特性に変わりがないか
  • 休職前の担当業務に復帰するか、配置転換が必要か

これらの点を本人や主治医、産業医などとしっかり確認しましょう。

第2のポイントは、健康管理のための記録をとり、本人と振り返りを行うなどしてサポートすること。疲労度や感じるストレスの度合いなどを毎日数値で記録していくと面談にも活用できて、安定した勤務につなげやすくなるでしょう。

第3のポイントは、復帰後の本人の状態に合った業務量や勤務時間を設定し、必要に応じてチェックシートなどを作成・活用することです。

復帰後に配置転換を行う場合は、新しい業務を覚えることと仕事のある生活に戻ることの両方に取り組まなければなりません。心理的・体力的に無理が続くと再度休職となってしまう場合がありますので、いきなり元の業務量や勤務時間に戻すのではなく、1〜3カ月ほどかけて段階的に戻していくことを目指すのがおすすめです。

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