2020/08/21
【製造業編】業種別・新型コロナ予防ガイドライン、障害者雇用でのポイント
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2020年8月現在、まだ新型コロナウイルス感染症が終息を見せず、感染予防対策として大企業ではテレワークなどの新しい働き方の導入が進んでいます。障害者を雇用している場合、政府や業界団体が示す感染予防対策ガイドラインに従うとともに、感染症で高リスクとされる障害者への配慮も欠かせません。
そこで、障害者雇用の感染症対策で何がポイントになるのかを3回にわたって解説。今回は、食品製造業をはじめとした製造業全般での対策についてお伝えします。
新型コロナウイルス感染症対策本部による基本方針
政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は、2020年3月に「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」を作成しました。2020年8月現在の最新版は、5月25日版。各業界団体は、この基本的対処方針や専門家会議による分析・提言をもとに、業界に合ったガイドラインを作成し、公表しています。
そこで、まずは全てのガイドラインの基盤となっている政府の新型コロナウイルス感染症対策本による基本方針から、私たちにできることを確認していきましょう。
【参考】
新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針|内閣官房
すべての基本は飛沫感染防止のための「三密」回避
感染拡大予防として最も重要なのは「三密」を避けることです。三密とは、「密閉空間」「密集場所」「密接場面」のこと。3つの「密」がそろうほど、感染が広がるリスクが高くなります。
<三密とは>
- 密閉空間・・・換気の悪い室内などのこと
- 密集場所・・・多くの人が密集している場所のこと
- 密接場面・・・互いに手をのばしたら届く距離で会話や発声が行われること
また、厳密な三密にあたらない状況でも、たとえば人混みや至近距離での会話、大声を出したり歌ったり、呼吸が激しくなるほどの運動をすることで、感染拡大のリスクが高まるとも言われています。
大人数での飲み会やセミナー、イベントなど、三密を回避できない状況での集まりは当面行わないようにしましょう。
手洗いや手指消毒の徹底・共用部分の消毒で接触感染防止
会話や咳・くしゃみなどによる飛沫感染以外に、複数の人が触る場所や物からの接触感染にも気をつけてください。接触感染を防ぐには、石鹸を使った手洗いや手指のアルコール消毒、ドアノブなど共用部分の定期的な消毒が不可欠です。
接触感染防止として多くの業種のガイドラインで推奨されているのが
- トイレ使用後の手洗い・手指消毒を徹底
- 鼻水・唾液がついたゴミは、ビニール袋に入れて密閉
- ゴミを回収する人はマスクや手袋を着用
- マスクや手袋を外した後は、石鹸と流水を使って手洗い
という4点です。
消毒の仕方はいくつかあり、インターネット上でもいろいろと話題になりました。以下に示すのは、2020年8月現在で有効性と具体的なやり方が示されている代表的な消毒方法です。
<手指の消毒>
- 石鹸による手洗い(指先・手首も忘れずに洗う)
- 手指用アルコール消毒液(70%〜80%程度)を手指につける(手に傷があったりアレルギーがあったりする場合はNG)
<物の消毒>
- 食器や箸などは80度のお湯で10分間消毒
- 希釈した次亜塩素酸ナトリウムを使って物の表面を拭いたあと水拭き(換気を徹底・素手で扱わない・原液のままの使用は危険・塩素系のものと一緒に使わない・容器の注意書きをよく読む)
- 布類は界面活性剤入りの洗剤で洗い、よくすすぐ(洗濯用洗剤など)
なお、一時話題になった次亜塩素酸水については、手指消毒の有効性はまだ評価されておらず、物の表面の消毒についても大量に使用する必要があること、保存の仕方に気をつける必要があることなど、不便な点が多いと言われています。もし使用するなら、適切に保存・管理されたものを物の消毒に使いましょう。
また、どのような消毒液であっても、空間への噴霧は人体にとって危険。次亜塩素酸やアルコール消毒液の空間噴霧は決して行わないよう、厚生労働省からも注意喚起が出されました。
「空間除菌」をうたう各種商品については、安全性や効果が疑われているため、安全で効果があるという科学的根拠が認められるまでは、使用を避けたいところです。
【参考】
社会福祉施設等に対する「新型コロナウイルス対策 身のまわりを清潔にしましょう。」の周知について|厚生労働省・経済産業省
咳エチケット|厚生労働省
基本的対処方針と「新しい生活様式」
以上を踏まえて、対策本部の基本的対処方針と専門家会議による「新しい生活様式」にあるさまざまな対策から製造業に大きく関わるものをまとめて見てみましょう。
<仕事での予防対策と新しい生活様式>
- 三密を回避する
- 人との間隔はできるだけ2m(最低1m)空ける(ソーシャルディスタンスの確保)
- 人との間隔が十分とれない場合は症状がなくてもマスク等を着用(夏は熱中症リスクを下げるため、人との間隔を空けて真正面を避けられるなら、マスクを外す)
- こまめに手洗い・手指消毒を行う
- 手洗いは石鹸を使って30秒程度かけて行う(手指消毒薬の使用もOK)
- 咳エチケットの徹底
- こまめに換気する(エアコン併用で室温は28度以下に)
- 毎朝体温を測定して健康チェックを行う
- 一人ひとりの健康状態に合った生活習慣を理解し、実行する
- 発熱や風邪の症状がある場合は仕事を休む
- 会話や食事は真正面を避ける(横並びを推奨)
- 食事中の会話は控える
- 通勤など混んでいる時間帯は避け、公共交通機関での会話も控える
- テレワークやローテーション勤務、時差通勤などを導入・推進する
- 会議はオンラインで行う・対面の場合は換気とマスク着用を実践
- 感染が流行している地域から別の地域への移動を控える
- 感染が流行している地域への移動を控える
- 発症したときのために、接触確認アプリ「COCOA」を活用したり、誰とどこで会ったかメモしておく
- 地域の感染状況を知る
感染者・濃厚接触者やその他関係者への差別を行わない
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、患者や感染者、その家族、医療関係者や支援者などへの差別的扱いが見られるようになっています。
しかし、感染が拡大する状況では、誰が感染していてもおかしくありません。もし事業所から感染者が出た場合は、保健所などの指示に従って対策を行いつつ、感染者やそのご家族を温かく見守ってください。不安を抱える他の従業員やそのご家族、会社の関係者に対する状況説明と感染対策の周知も不可欠です。
感染症の軽視や過度な怖がり方をしないよう、感染症について現在分かっている科学的根拠や政府・自治体からの情報をもとに、感染症の実態と対策への理解を進めましょう。
食品製造業の感染拡大予防ガイドライン
では、本項から業界別の感染予防ガイドラインを紹介していきます。三密回避や手洗いの徹底など、対策本部の基本的対処方針で紹介した内容は割愛し、その業界で特に気をつけることや雇用する障害者への配慮を中心に見ていきましょう。
まずは、緊急事態宣言下でも事業継続を推奨されてきた食品製造業における感染拡大予防ガイドラインです。
【参考】
食品製造業における新型コロナウイルス感染症感染拡大予防ガイドラインの策定のお知らせ|一般社団法人食品産業センター
従業員の感染予防と換気の徹底
食品製造業では、普段から衛生管理にとても気を配っています。そのため、感染症対策としては、基本の衛生管理を徹底しつつ、消毒や換気をより積極的に行うことがポイントです。
まず、従業員のマスクやフェイスシールドの着用以外に、必要に応じて手袋を着用したり、こまめな手洗いを実践したりしましょう。
換気については、食品製造現場であっても、食品の衛生管理に支障のない範囲で換気を行います。もし換気設備での換気では不十分だと思われるなら、定期的に窓やドアを開けて換気を行いましょう。
食堂や休憩室は常時換気がベストです。
食品製造現場・社員食堂・更衣室・休憩室などでの三密を避ける
食品製造現場では、ソーシャルディスタンスを確保するために業務の方法や導線について点検を行いましょう。これまで他の従業員のすぐ後ろを通って移動したり、1m以内の範囲で複数の従業員が作業をしてきたりした場合、まずは従業員同士の間隔を1mにすること、他の従業員の近くを通らずに作業場に行ける導線を確保することなどが重要です。
従業員はできる限りマスク・ヘアネット・使い捨て手袋・作業着などを着用。感覚過敏がある従業員でマスク着用が困難な場合は、他の人と1m以上の距離を保持できるようにしてください。会話も、マスクをしない人と行う場合は15分未満としましょう。
社員食堂・休憩室・更衣室では、一度に入室する人数を減らすことで三密のリスクを下げます。飛沫感染予防のため、対面での食事や会話もなるべく避けてください。
食事や休憩のスケジュールが従来と異なる場合、障害のある従業員には何時に食事をしたり休憩したりするのかを具体的に伝える必要があります。食堂、休憩室、更衣室、トイレ、作業場などへの出入りの際に行う手洗い・手指消毒は、実際にその場所ややり方を見せることで、覚えやすくなるでしょう。
事務所はテレワークを推奨
食品製造業でも、テレワークが可能な職種は積極的にテレワークを実施しましょう。
人事や経理といった部署はテレワークが難しいかもしれません。その場合は、ペーパーレス化を進めることで接触を避ける、フレックス制や時差出勤制度の導入で三密回避を行うなどの対策が必要です。
受注センターや苦情対応部門等もテレワークが困難ですが、席の間隔を広げて十分な換気を行い、ブース化を進めることで、感染リスクを下げられます。
製造事業場における感染予防対策ガイドライン
製造業は、身体障害者や知的障害者が従事することも多い仕事。従業員が機械などを操作して製造を行う製造事業場では、他の業種と比較しても全体的にテレワークが難しいのが実情でしょう。作業場やロッカールーム、休憩室、食堂など全ての施設で感染拡大予防のための対策を実施することが、大変重要です。
製造事業場における感染予防については、経団連がガイドラインを出しています。
【参考】
製造事業場における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン|一般社団法人日本経済団体連合会
従業員の健康管理と作業服の洗濯
作業場・ロッカールーム・休憩室などでは、従業員同士がなるべく2mのソーシャルディスタンスを確保できるように工夫しましょう。接触感染・飛沫感染防止のため、作業服はこまめに洗濯します。
事業場に請負労働者や派遣労働者がいる場合、事業者を通じて自社と同じように感染予防対策を行うよう要請することも忘れてはいけません。
それ以外の検温や症状の有無の記録、体調不良の場合の自宅待機の徹底などは、食品製造業のガイドラインと同じです。
従業員の勤務体制や通勤手段
製造作業場での三密回避は、出勤時間をグループごとにずらすことが第一です。従業員同士が勤務中に十分なソーシャルディスタンスを確保できるよう、人員配置や作業空間の見直しをしてください。
事業場に勤務する従業員のうち、管理部門など事業場でなくても業務が可能な職種は、できる限りテレワークを実施しましょう。そうすることで、作業場にいる人数を減らすことができます。テレワークは自宅での勤務としてもよいですし、サテライトオフィスを設けて、そこに勤務してもらう形でも構いません。
テレワークが困難な職種では、交通機関のラッシュをさけて通勤できるような工夫が必要です。具体的には、時差出勤・ローテーション勤務・変形労働時間制・週休3日制などの導入です。事業場で実施しやすいものを導入しましょう。週休3日制などは、従来よりも通勤頻度が減らせますので、その分職場での感染リスクを下げることができます。
もし従業員が徒歩・自転車・自家用車などで通勤できる場合は、それらの通勤手段を積極的に承認するのもよいでしょう。
次に、毎日行ってきた朝礼や点呼ですが、全体で行うのではなく小グループで行うように変更します。事業場内の従業員の移動も最小限に抑えられるよう、工程ごとのゾーニングも必要です。
休憩や食事の際の三密回避は、食品製造業と同様に休憩時間をずらすことで対応可能。休憩や食事中に対面で座ることをなるべく避けるよう、従業員に注意を促してください。
施設・設備の清掃・消毒と換気
製造事業場でも、接触感染や飛沫感染を防ぐために清掃・消毒や換気の徹底が不可欠です。
製造事業場で特に消毒を意識すべきところは、以下のような場所。定期的な消毒をスケジュールに組み込みましょう。
<製造事業場で消毒を意識すべき設備>
- 生産設備の制御パネルやレバー
- ドアノブ
- 電気のスイッチ
- 手すり・つり革
- エレベータのボタン
- ゴミ箱・電話
- 共有のテーブル・椅子
設備の特性上、消毒ができないものについては、従業員それぞれが自分専用の手袋を装着して作業するようにします。もし従業員各自が占有できる器具があるなら、貸し借りを原則禁止にするなどの対策もよいでしょう。
もちろん、始業時・休憩前後・トイレ後の手指消毒の徹底や、トイレではペーパータオルや個人用タオルで手を拭き、ジェットタオルを使用禁止にするなども重要です。
製造事業場の場合、換気は1時間に2回以上が推奨されています。窓を開けられるなら窓を開けて換気を行いましょう。休憩室は常時換気が原則です。
施設見学者や取引先等外部関係者の立入について
製造事業場には、従業員以外の人が立ち入ることもあります。しかし、感染症が拡大している状況では、見学者や外部関係者の立ち入りをなるべく控えてもらうほうが得策です。
もし立ち入る必要がある場合は、事業場で行っている対策を説明し、その方針に従ってもらいましょう。
感染者が確認された場合の対応
事業場で感染者が確認された場合は、落ち着いて保健所や医療機関の指示に従ってください。感染者の勤務場所を消毒し、できれば同じ勤務場所の従業員を自宅待機させるなどの対応も必要です。
事業場内で感染者が確認されたことを公表するかどうかは、個人情報保護への配慮と公衆衛生上の必要性の両方を考慮して検討しましょう。決して感染者を差別したり、感染防止対策を軽視したりしないよう注意してください。
総括安全衛生管理者や安全衛生推進者は、保健所との連絡体制を確立し、積極的に聞き取りなどに協力しましょう。
新型コロナ感染予防はインフルエンザ対策にもなる
新型コロナウイルス感染症に対する対策がとられる中、中国では新型インフルエンザの発生が確認されています。たとえ新型コロナが落ち着いたとしても、今年の秋や冬は新型インフルエンザに引き続き気をつけなければなりません。
今回紹介したガイドラインや障害者雇用にとってのポイントは、新型インフルエンザ感染予防対策としても有効。障害のある人もない人も安心して働けるように、今回導入する感染予防対策を引き続き実施していきましょう。
【参考記事】
第2回【事務・IT系編】業種別・新型コロナ予防ガイドライン、障害者雇用でのポイント
第3回【サービス業編】業種別・新型コロナ予防ガイドライン、障害者雇用でのポイント