気持ちが沈む時は「WRAP元気回復行動プラン」で改善


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仕事やプライベートなど、気持ちが沈むことは多いもの。すぐに誰かに相談できればよいのですが、「まずは自分で何とかしたい」と考えることもあるでしょう。そのような時に使える方法が「WRAP(元気回復行動プラン)」です。WRAPの「元気に役立つ道具箱」の作り方、気分の改善に役立つプランの作り方などをご紹介します。

WRAP(元気回復行動プラン)とは

「WRAP(元気回復行動プラン)」とは、気分が沈んだ時や精神的にとてもつらい状況に陥った時のためのセルフケアとして使える、元気を回復するためのプログラムです。まずは基本的な考え方を見ていきましょう。

WRAPの開発と意味、WRAPファシリテーターとは

WRAPでは、元気を回復するために必要な5つのポイントを意識しながら、「元気に役立つ道具箱」を使って6つのプランを作成・実践していきます。

WRAPは、メンタル面で困難を抱えた自身の経験や他の当事者たちの経験をもとに開発されたもの。以下の4つの言葉の頭文字をとり、米国のメアリ・エレン・コープランド氏が中心となって「WRAP」としてまとめられました。読み方は「ラップ」です。

  • W:Wellness(元気)
  • R:Recovery(回復)
  • A:Action(行動)
  • P:Plan(プラン)

日本のWRAP研究会は、これを「元気回復行動プラン」と訳しています。

米国では精神障害をもつ方のセルフヘルプや支援などに使われ、世界的にも活用が広まっています。日本でも10年以上前に紹介され、少しずつ医療や福祉の支援現場で使われるようになってきました。

現在は、WRAP研究会などが各地でWRAPクラスを開催したり、WRAPクラスを進行する「WRAPファシリテーター」養成のための研修を実施したりしています。

WRAPのやり方で必要な3つのこと

WRAPにおけるリストやプランの作り方は後ほど詳しくご紹介します。先に、それらを使って元気を取り戻すために必要な3つのことを確認しておきましょう。

<WRAP実践で必要な3つのポイント>

  1. 「リカバリー」に大切な5つのことを知り、実践すること
  2. 「自分の専門家は自分」であると認識し、自分の経験を大切にすること
  3. 自分の経験から、各プランを作ること

精神的に大きな課題を抱えていると、「自分はずっとこのままなのではないか」と感じてしまうこともあるでしょう。第一に大切なのは、そこからの「リカバリー」に大切なポイントを知り、実践することです。

困難に悩まされる中で、周囲の多くの方から「こうするといい」「あなたは○○だから」と言われることも多いかもしれません。そうした意見やアドバイスは役に立つこともあります。しかし、それが自分に合っているかどうかを判断できるのは、誰よりもまず自分自身であることを忘れてはいけません。これが、2つめに大切なことです。

そして、3つめに大切なことは、自分の考えや自分の行動を自分で決定できること、それに責任をもつこと。元気回復行動プランにおける各プランを実際に作っていく中でも、自分自身の経験や「自分ならどうするか」を大切にしながら考えていきましょう。

「リカバリー」に大切な5つのこと

では、リカバリーに大切な5つのポイントとは何でしょうか。それは、次のようなものです。

<リカバリーに大切な5つのこと>※

希望
  • 元気になれる希望がある
  • 目標を持って、それを達成することができる
  • 自分を応援するもの、自分が前向きになれるものがある
主体性
  • 「自分で選択する」という責任を引き受ける
  • 自分の専門家は自分自身である
  • 自分の健康、自分の生活に責任を持つ
  • 自分の考え方や決定は他人に指図されるものではない
学び
  • 自分が元気に暮らしていくために必要なことを学ぶ
  • 自分にとって適切な判断、選択をするために学ぶ
権利擁護
  • 自分は権利を主張し、権利を獲得するために必要なことを行う
  • 権利を得るために時間や労力がかかることがあることを知っている
サポート
  • 自分に必要なサポートを自分で伝え、得る
  • 支援者からのサポート、当事者からのピアサポート、職場や生活でのナチュラルサポートなどが選択肢となる
  • 自分もサポートが必要な人の力になるような関係性を育む

これらの項目は、元気で豊かに暮らしている方々の生活から導き出された共通点となっています。

WRAPを実践するにあたり、

  • 私は元気になれる希望がある
  • 私は私の考えや行動を自分で選択し、自分の専門家として責任を持つ
  • 私にとって適切な決定をするために、私は学ぶ
  • 私にとって必要なことは、冷静に伝え、私の権利を守る
  • 私に必要なサポートを自分で手を伸ばして得るとともに、私も他の人の力になるような関係を育む

という姿勢をもつことで、「他の人の協力も得ながら、私は元気になれる」という気持ちにつなげられます。

※参考
元気回復行動プラン|東京WRAP
「私たちにとってリカバリーの意味すること」|WRAPの道具箱

「元気に役立つ道具箱」の作り方

WRAPで欠かせないのが「元気に役立つ道具箱」です。これは、「いい感じの自分」でいられるようにするためのヒントや行動をリストアップしたもの。WRAPでは6つのプランを作っていきますが、プランの中で「どうすればよいか」を考えるときに、この道具箱から対処法を選ぶことになります。

道具箱を作るときは
「これをやったら気分がよくなった」
「これをやるといいかもしれない」
といったことを、何でも構いませんので、たくさんリストアップしていきましょう。

以下は、元気に役立つ道具箱の例です。
「いい感じの自分はどのような状態か」
「いい感じの自分になるには、自分ならどうするか」
を考えながら、作ってみてください。

<元気に役立つ道具箱の例>

  1. 決められた時間に薬を飲む
  2. 散歩する
  3. ジョギングする
  4. 1時間に1回、休憩をとる
  5. お風呂に入る
  6. 好きな本を読む
  7. 推しのライブ映像を観る
  8. 絵を描く
  9. 誰かと話す
  10. 窓を開けて深呼吸する
  11. ゆっくり眠る
  12. 徹夜をしない
  13. 診察を受ける
  14. 病気も自分の個性の一つと考える

道具箱の中で「特にこれは効果がある」と思うものには、マークもつけておきましょう。あとで作成するプランの一つ、「クライシスプラン」で役立つ可能性が高いからです。

WRAPにおける6つのプランの作り方

WRAPでは、いい感じの自分でいられるように、あるいは元気を取り戻せるように、6つのプランを作成して活用します。作り終わったら、いつでも見られるよう、印刷してカバンやポケットに入れておいたり、スマホでいつでも見られるようにしておいたりすると便利です。

(1)日常生活管理プラン

「日常生活管理プラン」は、いい感じの自分でいるために「毎日するとよいこと」「時々するとよいこと」などのリストを作成します。次の3つの項目について、自分の経験を振り返りながら、書き出していきましょう。

<日常生活管理プラン>

項目 書き方
いい感じの自分とは
  • いい感じの自分がどんな感じかを書く
  • 回復に向かっていくときの自分がどのような自分かを書く
  • 気分が落ち込んだときに、いい感じの自分を思い出すためのヒントにする
毎日するとよいこと
  • 元気に役立つ道具箱から、毎日するとよいことを選んで書き出す
  • 薬を飲む、食事をする、運動するなど
時々するとよいこと
  • 元気に役立つ道具箱から、時々するとよいことを選んで書き出す
  • 仕事を休む、リラクゼーションやマッサージを受ける、カラオケに行くなど

日常生活管理プランを作成したら、目に入りやすい場所に貼りだしておきましょう。トイレの壁、自分の部屋のドアなど、なるべく毎日見る場所を選ぶと実践しやすくなります。

(2)引き金と対応プラン

次は、生活の中で落ち込んだり怒りを覚えたりしたときのために、「何があるとそのような気持ちになるのか」「そのような気持ちになったときは、どうすればよいのか」を書き出しましょう。これは「引き金」と「対応プラン(行動プラン)」と呼ばれます。

<引き金と対応プラン>

項目 書き方
引き金
  • それが起きると気分が沈む、ストレスを感じることを書き出す
  • 自分の経験を振り返りながら書き出していく
  • スマホをなくす、バカにされる、失業する、大きな音が鳴る、ケンカをするなど、多くの場合は、外部の状況や出来事が引き金となる
対応プラン
  • 引き金があったときに、どうすれば気分が沈むことを避けられるか、対応方法を書き出す
  • 元気に役立つ道具箱の中から選んでも、それ以外の方法でもOK
  • 実際に試してみて効果がない場合は、対応プランを作成し直す

引き金は、日常のちょっとしたことかもしれません。引き金やプランを書き出していくときは、「まさかこんな程度のことが…」と思うものでも、念のため書いておくようにしましょう。

引き金と対応プランを作成したあとに、実際に落ち込んだり怒りを覚えたりする原因を新しく見つけた場合は、それも書き加えていくと、今後の役に立ちます。

(3)注意サインと対応プラン

3つめのプランは、「注意サイン」とその「対応プラン(行動プラン)」の作成です。ここでは、自分自身の状態について、注意が必要な状態をリストアップし、その対応プランを考えます。

注意が必要な状態とは、たとえば「眠れない日がある」「好きなことなのに楽しく感じられない」などです。

<注意サインと対応プラン>

項目 書き方
注意サイン
  • 自分が不調を感じる前に自分自身に起きた変化を振り返る
  • ちょっとした「いつもと違う」という変化を見逃さないよう、書き出す
  • 眠れない、楽しくない、返事をしなくなる、緊張している、イライラしているなど
対応プラン
  • 注意サインに気づいた時に、いい感じの自分になるための方法を書き出す
  • 元気に役立つ道具箱の中から選んでも、それ以外の方法でもOK
  • 実際に試してみて効果がない場合は、対応プランを作成し直す

こちらも、作成後に新しくサインを見つけた場合は、書き加えていくとよいでしょう。

(4)調子が悪くなっている時のサインと対応プラン

ここまでは、日常生活の送り方やちょっとした変調への対応方法など、比較的軽いものについてプランを作成してきました。しかし、これら3つのプランを実践していても、調子が悪くなることがあるかもしれません。

そこで、4つめは調子が悪くなった時のためのプランを作りましょう。大きな困難が発生した時、大きくはないかもしれないけれど複数の困難が積み重なってしまった時などに、それ以上悪化させないよう活用するものです。

まずは過去や今の状況を振り返りながら、調子が悪くなっている時にどのようなサインが見られるのかを書き出していきましょう。

<調子が悪くなっている時のサインと対応プラン>

項目 書き方
調子が悪くなっている時のサイン
  • 調子が悪くなっているときに現れるサインを書き出す
  • よく頭痛がする、食欲がない、眠れない日が続く、集中できないなど
対応プラン
  • 元気に役立つ道具箱の中で効果の高いと思われるものを確認する
  • 調子が悪くなっている時にするべきことを書き出す
  • 診察を受ける、支援機関に相談する、誰かに一緒にいてもらうなど
  • 調子が悪い時に意識して毎日やるべきことも書き出す
  • カーテンを開けて太陽光を浴びる、食事をする、薬を飲むなど
  • 実際に試してみて効果がない場合は、対応プランを作成し直す

調子が悪い状態では、普段できていることでも実践しにくい気分になります。そのため、この状態を脱するために毎日やるべきことをリストアップする際は、「瞑想を10分間やる」など、自分に指示を出すつもりで書き出すことが重要です。

(5)クライシスプラン


最後に、自分一人では対応しきれないほどの不調に陥った時のためのプランを作成します。このような状態をWRAPでは「クライシス(危機的状況)」と呼びます。

クライシスでは、自分で自分のケアができない状況ですので、他の人に対応をお願いしなければなりません。そのため、他人にしてほしいことを事前に書き出しておき、それをしてほしい人に事前にプランを知らせておく(渡しておく)必要もあります。

クライシスプランには9つのパートがありますので、作るのが少し大変かもしれません。それぞれのパートの目的を確認し、書けそうなところから、他の人に伝えやすいように書き出していきましょう。

<クライシスプラン>

項目 書き方
1.普段の自分
  • いい感じの自分はどのような人かを書き出す
  • 自分のことを知らない人にも想像できるよう、いつもの自分がどんな人かを書き出す
2.介入が必要になる状態
  • 自分がどんな状態になったら、他の人に介入してもらいたいかを書き出す
  • 介入が必要な状態について自分で把握しにくい場合は、家族や友人、医師、支援者などと相談してみる
  • 親しい人を認識できない、感情の起伏が激しいなど
3.サポーター
  • 介入が必要になった時、自分の代わりに誰に何をやってもらうかを書き出す
  • 人数は5〜7人くらい
  • 医療従事者、家族、ピア、支援機関の支援者など
  • やってもらいたいことの例は、支払い、病院への同行、関係機関への連絡、家事など
  • ケアや治療に関わってほしくない人は誰かも書き出す
4.主治医・医療関係者・薬
  • クライシスから抜け出すために、主治医や医療関係者、薬局の名前と連絡先を書き出す
  • 現在服用している薬の名前と量、いつ服薬すればいいかを書き出す
  • 飲まないほうがいい薬がある場合は、理由とあわせて書き出す
5.効果的な治療、グループ、プログラム
  • 自分のクライシスに対して、どのような治療やグループ、プログラムが効果的かを理由とあわせて書き出す
  • これまでの経験などから、効果的ではない治療やグループ、プログラムがある場合は、その理由とあわせて書き出す
6.クライシスから抜けるためによい場所
  • クライシスから抜け出すために一番よい場所と過ごし方(受けたいケア)を書き出す
  • 自宅でも、自宅以外でもOK
7.入院・病院
  • 入院治療が必要となった時、どの病院に入院したいかを書き出す
  • 入院を避けたい病院も書き出す
  • 入院したら受けたい治療と受けたくない治療も、理由とあわせて書き出す
8.他人からの支援
  • クライシスから抜け出すために、サポーターにしてほしいことを書き出す
  • サポーターにしてほしくないことも書き出す
  • してほしいことの例は、ピアカウンセリングをしてほしい、話を聞いてくれるなど
  • してほしくないことの例は、強制的に何かをさせられる、行動を妨げられるなど
9.サポーターがプランを使わなくてもよいと分かる状態
  • クライシスから抜け出し、サポーターが介入する必要がなくなった状態について、書き出す
  • 安定して眠れるようになった、思考がまとまるようになったなど

他にも「これは知らせておくほうがいい」と思われることがあれば書き出しておきましょう。他の人がどう対応すればよいか、より分かりやすくなるかもしれません。

(6)クライシス後のプラン

クライシスのような大変な状況を抜け出した後は、回復した今の状態について書き出したり、クライシスの経験について振り返ったりしましょう。そうすることで、普段の生活だけでなく他の対応プランの内容の更新や、他の人がサポートしやすい情報の提供に使うことができます。

<クライシス後のプラン>

項目 書き方
自分は、どのように感じているのか
  • クライシスから抜け出した今、自分がどのように感じているのかを自由に書く
クライシスを経験して気づいたことはあるか
  • 今回のクライシスの中で、気づいたことを書く
  • 「Aさんに頼むペットの世話について、もう少し詳しくやり方を書いておく必要があった」「今回クライシスになった原因は○○かもしれない」など
クライシス後の時期に、誰にサポートしてほしいか
  • クライシス後の時期に、誰にどのようなサポートをしてもらいたいかを書く
  • 「Aさんに話を聞いてほしい」「Bさんに休憩時間の声かけをしてほしい」など

クライシス後のプランは、サポートしてほしい人にも共有しておくと便利です。いい感じの自分を再び維持するためにも、クライシス後の一定期間は、日常生活管理プランや各対応プランを実践しやすくするためのサポートを頼むとよいでしょう。

クライシス後のプランも、他のプランと同様、必要に応じて更新していくことが大切です。

普段の生活から危機的状況の脱出、リカバリーへ

メンタルの不調は、さまざまなきっかけで起こります。日頃から、小さなセルフケアを重ねて、大きな不調に陥らないように心がけましょう。

それでも大きな不調を感じた時は、事前に書き出したやるべきことに従ってセルフケアをしたり、他の人にサポートを頼んだりする必要があります。

しかし、余裕がないと、その場で解決方法を考えることは難しいものです。WRAPは、余裕がない状況でも自分で自分を大切にできるよう、事前にさまざまなプランを作っておくもの。はじめは「どんな方法が自分に合っているのか」と試行錯誤が続くかもしれません。そんな時は、「自分の専門家は自分である」ことを、ぜひ思い出してください。

より自分に合ったやり方になるよう、日々の経験を振り返ったり、病気の性質や障害特性を学んだりしながら、各プランを更新・活用していきましょう。

【参考】
WRAPの道具箱
東京WRAP
WRAP(元気回復行動プラン:ラップ)が大切にしていること(専門職)|COMBO

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