ご存知ですか? 発達障害でも見やすい「UDフォント」の特徴と活用例


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発達障害をもつ方の中には「明朝体が読めない」「ずっと明朝体で読んでいると体調が悪くなる」といった困難を抱える方々がいます。そうした特性をもつ方にも読みやすいようにと開発されたのが「UDフォント」です。今回は、UDフォントの特徴や活用例、ダウンロード先、無料で使えるUDフォントなどをご紹介します。

発達障害では読めない文字がある? フォントと読みやすさの関係

発達障害を持つ方や高齢の方などには「言葉は理解できるが文字を読めない(読みにくい)」といった特性を持つ方がいます。「ディスレクシア(読字障害)」の方や視力が弱い方などです。

文字を読めない(読みにくい)原因は人によってさまざまですが、1つの要因としてフォントの影響が見られます。印刷や画面表示のために使われる文字のデザインが、そうした方々にとっての「読みやすさ」を損なっているというケースです。

比較的広く知られているのは、「明朝体」の読みにくさ。文字には極端に太い部分と細い部分が混在し、「セリフ」と呼ばれる三角形の飾りがついているフォントです。

明朝体は、読字に問題のない方にとっては「すっきりしていて読みやすい」と言われるものの、発達障害などをもつ方や視力が弱い方にとっては、細かなデザインの影響で「文字全体の形を把握しにくい」フォントとなっています。


※フォントの影響による文字の見え方には大きな個人差があります

長文のビジネス文書や論文などでは明朝体を推奨するところもあります。ただ、より多くの人にとって読みやすい文書作成を目指すのであれば、使用するフォントを一律に決めてしまうのは得策ではないでしょう。

発達障害でも読みやすい「UDフォント」とは

実は、こうしたフォントのデザインによる読みにくさを軽減するために開発されたフォントがあります。それが「UDフォント」(ユーディーフォント、ユニバーサルデザインフォント)です。

まずは公共の設備やビジネスなどでも広く使われている「モリサワのUDフォント」を例に、ゴシック体とUDフォントの違いをご覧ください。

<モリサワのUDフォントの特徴>

出典:株式会社モリサワ「UDフォント」頒布用カタログ

モリサワのUDフォント以外でも、UDフォントとして発表されているものには概ね以下のような特徴があります。

<UDフォントの主な特徴>

太さが均一
装飾 誤認につながりやすい要素の減少
文字の中の隙間 見やすいよう大きめ
濁点・半濁点など 大きくする

極端に文字にかぶらないようにする

似た形の文字

9と6、pとqなど

ひっくり返しても見分けられるよう、文字同士の形を変える

UDフォントは、これまで文字の読みにくさにつながってきた要素をなるべく減らすことで、より多くの人にとって読みやすくなるよう工夫されたフォントです。2006年に「イワタUDフォント」が最初に開発され、2009年から各メーカーもUDフォントを発表し始めました。2017年にはMicrosoftのWindowsにも搭載され、無料で使えるようになっています。

UDフォントの活用例

2020年以前から普及し始めたUDフォントですが、まだその特徴や存在を意識していない方も多いでしょう。そこで、UDフォントが使われている事例をいくつかご紹介します。

たとえばモリサワのUDフォントでは、茨城県行方市が広報紙にUDフォントを採用して市民から評価され、市が発信するなるべく多くの文書にUDフォントを用いる方向で進めてきました。同市の学校現場でもUDデジタル教科書体を採用し、配布するプリントなどに活用しています。

また、モリサワのUDフォントで特に注目されたのが奈良県教育委員会の取り組みです。奈良県教育委員会の小﨑誠二さんは「UD(ユニバーサルデザイン)がついている書体があるということを知ることから、教育に携わるすべての人の意識を変えていきたい」と語りました。教員への研修をとおしてUDフォントの存在を伝え、研修に参加した先生方がUDフォントを学級通信などに利用。子どもたちからは「変わった! 読みやすくなった!」という反応がすぐ返ってきたそうです。

その後、奈良県生駒市では小学生116人を対象にUDフォントを用いた長文読解の実験を実施。UDフォントと一般的な教科書体で36問ずつ解くという形式で正答率を比較したところ、一般的な教科書体では66%、UDフォントでは81%となりました。

現在、モリサワのUDフォントは市販の小学生向け辞書や学習教材でも多く使われています。

各種UDフォントは、行政や教育現場の他、ぱっと見て分かることが重要な道路標識、駅の案内板や、見やすく分かりやすい説明が求められる商品説明などにも用いられています。企業においても、2022年1月からモリサワの「UD新ゴ」が富士通のコーポレートフォントに採用されました。


出典:富士通の新コーポレートフォント和文にモリサワのUD新ゴが採用|PR TIMES

UDフォントはどこでダウンロードできる? モリサワは無料版あり

現在、数十種類のUDフォントが公表されています。その中で代表的なものといえば、「イワタUDフォント」「モリサワUDフォント」「ヒラギノUDフォント」などでしょう。

Microsoft Windows 10では2018年のメジャーアップデートからモリサワの「BIZ UDフォント」が無料で使えるようになりました。

Windows以外にUDフォントをインストールしたい場合や、モリサワの「BIZ UDフォント」以外のものを使いたい場合は、原則として各種プランの契約やフォントの購入が必要になります。代表的なUDフォントのダウンロード・購入方法が分かる公式ページは、下表のとおりです。

<モリサワのUDフォント> 無料版あり

使えるフォント BIZ UDゴシック/明朝
公式サイト MORISAWA BIZ+ 無償版

(要会員登録)

※有料版では50種類以上のUDフォントを利用可能

※Windowsでは「Biz UDフォント」を標準で搭載

※BIZ UDフォントはGoogle Fontsへも提供(2022年4月現在)

<ヒラギノUDフォント>

使えるフォント ヒラギノUD角ゴ/角ゴF/丸ゴ/明朝
公式サイト ヒラギノフォント 製品情報

※単体ダウンロード販売、30台以上のPCで使うボリュームライセンス、モリサワパスポートの年間契約などの購入形態あり(パッケージ販売は終了)

<イワタUDフォント>

使えるフォント 最新版を含む30種類以上のUDフォント
公式サイト 新イワタLETS

※年間契約なしの場合、フォントの個別販売あり

まずはお手元のパソコンにUDフォントがインストールされていないかチェックしてみてください。インストールされていない場合は、「MORISAWA BIZ+ 無償版」などを導入したり、企業・団体のイメージにあったUDフォントを購入したりするとよいでしょう。

文字のバリアを減らし「読める文書」へ

仕事では、マニュアルや手順書、議事録など、さまざまなビジネス文書に接する機会が多いものです。障害者雇用などで
「うまく文章を読み進められない」
「文章を理解するのに時間がかかる」
「文章を読んで理解すること自体が難しい」
といったケースに遭遇した方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、これまで「文字が読めない」と困ってきた方が、UDフォントを用いることで「読めた」「わかりやすかった」「自分は文章を読めない人間ではなかったんだ!」と感動した例が複数報告されています。文字自体が読めないのではなく、フォントの影響で文字として認識しにくかったのです。

もちろん、文字が読めない(読みにくい)原因はフォントの影響だけとは限りません。それでも、より多くの人にとっての読みやすさに配慮したUDフォントを用いることで、文字のバリアが軽減される可能性は高いでしょう。

UDフォントにもいくつかの種類がありますので、まずは従業員に実際に見てもらい、読みやすいフォントを選んでもらってみてはいかがでしょうか。文字のバリアを減らし、学習や業務の効率アップへつなげましょう。

【参考】
認知されにくい読み書き障害 UDフォントを使うと | 産経新聞
UDフォント読みやすさ追求 高齢化、視覚障害増に対応 | 東京新聞
「UDフォント」暮らしの中に 弱視や読字障害でも読みやすく | 西日本新聞me
視覚過敏の人でも見やすいフォント選び・資料やスライド作成のコツ(チアキ編) | 子ども情報ステーション by ぷるすあるは
自治体・教育委員会・教育現場の導入事例|モリサワ
モリサワ「Windows 10 October 2018 Update」での「BIZ UDゴシック/明朝」の正式採用を発表|モリサワ

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