【職場での障害者いじめ】令和元年度は虐待が認められた件数が減少


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障害者雇用の中で問題になることもある障害者に対するいじめの問題。厚生労働省は毎年「使用者による障害者虐待の状況」を調査・公表しています。職場での障害者虐待に関して、通報・届出のあった件数や実際に虐待が認められた件数、虐待の種類などの割合が分かるものです。

令和元年度では、実際に虐待が認められた件数が、事業所数・障害者数ともに前年度から減少しました。

「令和元年度使用者による障害者虐待の状況等」の概要

「使用者による障害者虐待の状況等」は、障害者虐待防止法に基づいて毎年8月下旬に公表されます。使用者とは、障害者を雇用する事業主や職場の上司などのことです。

通報・届出があった場合、当該事業所に対して、労働局や労働基準監督署または公共職業安定所による訪問調査が実施されます。もし実際に虐待が認められれば、関連法令に基づいた指導も行われています。

令和元年度にあった通報・届出や、実際に虐待が認められた件数は、以下のとおりでした。

<2019年度の職場における障害者虐待の状況>

  • 通報・届出の件数
    • 事業所数 1,458事業所(198事業所減)
    • 対象障害者数 1,741人(201人減)
    • 虐待が認められた件数
      • 事業所数 535事業所(6事業所減)
      • 対象障害者数 771人(129人減)

    虐待された障害者の就労形態別で見ると、正社員が31.3%、期間契約社員・派遣労働者・パート等ではあわせて54.9%となっています。

    一方、虐待を行った使用者の内訳は、事業主が88.1%、所属の上司が9.7%という結果でした。

    虐待種別では圧倒的に経済的虐待が多く認められました。一般に、“障害者いじめ”や“障害者虐待”と聞くと、障害のある人に暴力を振るったりひどい言葉をぶつけたりするイメージがあるかもしれません。そうした虐待も実際に認められますが、身体的虐待や心理的虐待以上に多いのが、賃金などに関わる経済的虐待です。

    虐待される障害者の障害種別では、全体の45.9%が知的障害者。虐待を行った使用者のうち約9割が事業主であることから、知的障害者への賃金未払い等が依然として多く発生している状況だということもうかがえます。

    【参考】
    「令和元年度使用者による障害者虐待の状況等」の結果を公表します|厚生労働省

    経済的虐待のうち最低賃金法関係の虐待は46.7%

    障害者への虐待として最も多い経済的虐待。経済的虐待とは、障害者の財産を不当に処分したり、障害者から不当に財産上の利益を得るなどしたりすることです。たとえば、次のような行為が経済的虐待にあたります。

    <経済的虐待の例>

    • 賃金を払わない
    • 最低賃金を不当に下回る賃金で働かせている
    • 本人の同意なしに財産や預貯金を処分・運用する

    虐待の程度によっては、窃盗罪、詐欺罪、恐喝罪、横領罪などに問われる可能性もあります。

    実は、経済的虐待のうち多くのケースで最低賃金法違反が指摘されています。令和元年度では、46.7%が最低賃金法関係の虐待でした。 “最低賃金を不当に下回る賃金で働かせている”というものです。

    知的障害者の場合、作業内容によっては最低賃金法の減額特例が適用され、最低賃金未満の賃金で雇用されるケースが珍しくありません。特例を適用するには届出が必要ですが、届出をせずに行っていたり、特例を適用できない状況を知りながらこっそり最低賃金未満で雇用していたり、事業主の知識不足だったりして、最低賃金法に抵触してしまうことがあります。

    最低賃金の減額特例は、客観的な証拠がなければ適用できません。障害者を雇用する際は、経済的虐待が発生しないよう、十分に気をつけましょう。

    最低賃金法と減額特例については、以下の関連記事でも解説しています。

    (関連記事)
    障害者雇用の賃金はなぜ安い? 最低賃金制度と減額特例

    障害者虐待が多く認められた業種と事業所の規模

    障害者の虐待が多く認められた業種では、製造業や医療・福祉が目立っています。他に、サービス業などでも比較的多く発生しているようです。

    <2019年度 虐待が認められた事業所の業種・規模>

    • 製造業(147事業所)
    • 医療福祉(109事業所)
    • 卸売り・小売業(69事業所)
    • 宿泊業・飲食サービス業(40事業所)
    • その他サービス業(45事業所)

    事業所の規模別では、前年度に引き続いて従業員数30人未満の中小企業が目立ち、66.2%を占めていました。実際に虐待が認められた事例として、ビルメンテナンス業の中小企業での心理的虐待、製造業の中小企業における身体的虐待・放置による虐待、従業員数5人未満の飲食店における経済的虐待などが報告されています。

    障害者いじめ防止!虐待をしない・させない

    障害者いじめを防止するには、何よりもまず、障害に対する理解や配慮を深める必要があります。虐待にいたってしまったケースで、虐待する側に自覚がなかったり、あまり深刻に考えていなかったりすることがあるためです。

    何が虐待にあたるのか、どうしたら虐待を避けて障害者支援ができるのか、トラブルが発生したときはどこに相談すればよいのかなど、障害のない従業員や事業主が知識を得て活用できるチャンスを作りましょう。

    虐待防止に必要な研修や、虐待と思われる状況を発見したときの通報・届出については、関連記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

    (関連記事)
    雇用された職場で障害者いじめが発生したら?|障害者虐待の対応と相談先

    毎年9月は障害者雇用支援月間。研修への参加や制度の整備など、障害者いじめ防止のためにできることをあらためて検討してみてください。

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