2020/12/29
【合理的配慮好事例・第2回】精神障害者の雇用管理は難しい?健康管理問題解決のため新制度導入も
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「精神障害者の雇用管理が難しい・・・」
精神障害者を雇用する事業主から、こんな声が聞かれることがあります。主な原因の1つが健康管理の問題です。
精神障害があるとストレスを感じる場面が多く、定期的な通院やカウンセリングを必要とする方も多くいます。安定して仕事を続けていくには、休息をとったりケアをしたりする時間が不可欠。合理的配慮好事例解説シリーズ第2回は、精神障害者雇用で健康管理のための制度を新しく導入した好事例をご紹介します。
もくじ
事例1:障害特性に合わせ勤務時間を軽減—東京グリーンシステムズ株式会社
東京グリーンシステムズ株式会社は、野菜の栽培やレストラン運営、オフィス作業、清掃など、幅広く手掛ける第3セクター方式の特例子会社。東京都・多摩市・SCSK株式会社が共同出資しています。100人を超える従業員のうち約40人が精神障害者で、令和元年度障害者雇用職場改善好事例で優秀賞を受賞しました。
同社では、業務で従業員に大きな負担がかからないよう、それぞれの体力・体調・人間関係・メンタルなどに配慮。社内にジョブコーチを置いて健康管理支援を行い、支援機関・医療機関・従業員のご家族とも連携しながら勤務時間や業務内容を調整しています。
障害による症状や体調不良などが業務遂行に影響する場合は、本人の同意を得て周囲に説明し、従業員同士で協力・支援し合っています。
【参考】
中高年齢層の障害のある方の雇用継続に取り組んだ職場改善好事例集(令和元年度)|高齢・障害・求職者雇用支援機構
東京グリーンシステムズ株式会社 公式サイト
事例2:定期通院やカウンセリングに休暇制度を導入—トッパン・フォームズ株式会社 日野センター
平成28年に「精神障害者等雇用優良企業にも認定され、平成30年度職場改善好事例では最優秀賞を受賞したトッパン・フォームズ株式会社 日野センター。同社では、障害をもつ従業員の健康管理のために複数の新しい制度を導入しました。
短時間契約社員制度とコース選択制度の新設
障害をもつ従業員がフルタイム以外でも安定して収入を得られるように導入したのは、短時間契約社員制度。フルタイムでなくても固定月給制が適用される仕組みです。
さらに、短時間契約社員を対象としたコース選択制度も新たに導入しました。「グループリーダーコース」では、他の社員が行う業務の進捗や品質管理を担当。「専門職コース」では、専門スキルが必要な業務が発生した際に専門職として働くことが可能です。コース選択制度を利用すると、基本給に加えて手当が支給されます。
こうした新制度の導入は収入面の不安解消だけでなく、従業員のモチベーションアップや埋もれていた能力を引き出すという良い結果にもつながりました。
定期通院等休暇制度の導入
障害を持ちながら働く方々の大きな悩みの1つは、定期的な通院です。「他の人が働いている中で自分ばかり休んでしまう・・・」という遠慮から通院しにくい状況が生まれてしまうからです。しかし、健康管理にとって通院の問題はおろそかにできません。
そこで、同社では定期通院等休暇制度を導入。事前に通院回数(休暇取得日数)を申請することで「○日は通院の日」という前提で働けるようにしました。この制度は診察だけでなく定期的なカウンセリングでも休暇を取得できます。通院先の医師の診断書・意見書を添えて会社に申請書を提出することで利用可能です。
従業員からは「(周りの同僚も利用していた)自分だけではないので気が楽」「通院しやすくなってよかった」といった声が聞かれていました。
定期通院等休暇は無休ですが、半日単位で取得可能。たとえば午前に通院し午後から出社するなら、日給相当額の50%が支給されます。
【参考】
中高年齢層の障害のある方の雇用継続に取り組んだ職場改善好事例集(令和元年度)|高齢・障害・求職者雇用支援機構
トッパン・フォームズ株式会社 公式サイト
精神障害者の健康管理の配慮ポイント
東京グリーンシステムズとトッパン・フォームズ 日野センターの好事例からは、4つの健康管理の配慮ポイントが見えてきます。
<精神障害者の健康管理の配慮ポイント>
- 支援機関・医療機関と連携する(就労移行支援や定着支援、従業員の主治医など)
- 精神障害者を支援する専門スキルを持つ社員を増やす
- 短時間勤務制度を導入する
- 定期通院のための休暇制度を導入する
健康管理と休養、通院は切り離せない関係。勤務時間の調整や休暇制度を導入することで、障害をもつ従業員が心のバランスや体調を整えやすくなり、治療と仕事を両立しやすくなるでしょう。
なお、働く障害者を支援する専門スキルを持った社員には、企業在籍型ジョブコーチの他に障害者職業生活相談員もいます。障害者職業生活相談員については、以下の関連記事をご覧ください。
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