【合理的配慮好事例第18回】 一緒に働く喜びを感じながらスキルアップへ! JEED好事例で何回も受賞する会社の企業風土


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障害者雇用における合理的配慮の取り組みを紹介してきた本シリーズ。第17回に引き続き、第18回でもJEED(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)の障害者雇用好事例で複数回受賞している企業の企業風土を見ていきましょう。

合理的配慮好事例解説シリーズ第18回では、株式会社ベネッセビジネスメイトとリゾートトラスト株式会社を紹介します。

株式会社ベネッセビジネスメイトの受賞歴・企業理念・企業風土

株式会社ベネッセビジネスメイトはベネッセグループの特例子会社です。グループ会社の業務サポートやファシリティサービス、ベネッセスタードーム(プラネタリウム)、マッサージルームのスタッフなど、グループ内外のさまざまな業務で障害をもつ方が活躍しています。

障害特性・個性に応じたツールや職場環境などを整え、協力し合って業務を遂行できる企業風土です。

主な受賞歴

  • 2015年 岡山県障害者雇用優良事業所表彰
  • 2016年度 障害者雇用職場好事例 優秀賞 受賞
  • 2017年 Good Job Award 準大賞 受賞「大学と企業の連係による就労支援」(明星大学とのコラボ)
  • 2019年 東京都障害者雇用エクセレントカンパニー賞 受賞
  • 2019年度 障害者雇用職場好事例優秀賞 受賞
  • 2020年 岡山県産業労働部長賞 受賞

【参考】
株式会社ベネッセビジネスメイト 会社情報

企業理念

ベネッセグループ全体の企業理念は、「Benesse=『よく生きる』」こと。「「志」をもって、夢や理想の実現に向けて一歩一歩近づいていく、そのプロセスをも楽しむ生き方」を意味しています。

この大きな理念のもと、同社では

  • その事業領域において市場競争力をもつ自立した会社となり、ベネッセグループや社会にとってなくてはならない存在となる
  • ベネッセグループ障がい者雇用支援の役割も果たしていく

ということを目指しています。

これを実現するために同社が担うものが、

  • 障がい者が働きやすく、活躍できる仕事のしかた、職場作り
  • ベネッセグループのシェアードサービス会社として、品質の高いサービスを提供し、事業成長を支える
  • 障がいのある人が長く働ける職場作り、新しい働き方にチャレンジし、その事例やノウハウを社会にも広く還元する

という3点です。

設備や制度

ベネッセビジネスメイトでは、「働きやすい環境を作ること」と「業務の難易度を下げること」で、障害のある社員が担える職域を拡大させてきました。

働きやすい環境づくりでは、支援の基本となる就労支援機器の導入や情報の見える化などを実施。相談先が分かりやすいように「相談体制図」の掲示を行ったり、こまめな休憩が必要な社員のための休憩場所を確保したりするなどの取り組みを行っています。

また、障害の有無ではなく担当業務とその自立の度合いで等級が決まる給与等級制度や、平均90%の登用率を誇る正社員登用制度などもあります。

<設備等整備の取り組み>

  • 障害特性に応じて、画面拡大ソフト・画面読み上げソフト・ブギーボード・お知らせライト・キャンセリングイヤホンなどの就労支援機器を導入
  • 困った時や体調不良の時に相談できることを示す相談体制図を掲示
  • 1人ひとりの1日のスケジュールがひと目で分かるようにボードに貼り出す
  • 仕事場に休憩場所を確保し、ソファ・ヘッドホン・砂時計を設置

<制度導入などの取り組み>

  • 各部門に指導員と障害者のサポート体制を整備
  • それぞれの特性に合わせた業務の組立・創出・ツールの工夫を実施
  • 定着推進課を設置し、研修の企画・運営、支援機関との連携、指導員のフォローを実施
  • 会社では業務に関する指導・支援を担当、家庭や支援機関では生活における支援を担当するなどの役割分担を行い、連携
  • 必要に応じて、社員の家庭・支援関係者・会社で「支援会議」を実施
  • 支援機関関係者・指導員・上司が一堂に会する「パートナーミーティング」で関係を強化
  • 個人の状況に合わせた集合研修や、指導者・管理者向けの研修等を実施
  • 給与等級制度は障害の有無に関係なく共通で、担当業務とその自立の度合いで等級を設定
  • 正社員登用制度(7時間勤務を6カ月以上継続した契約社員・登用率は平均90%)
  • キャプテン制導入やキャリアアップ・環境調整を目的としたジョブローテーションを実施

業務の難易度を下げる方法では、工程を見直し、シンプルにして切り出すことがポイントです。同社ではこれを「楽ジョブ」と呼び、積極的に実施してきました。

たとえばOAセンターの例では、工程別に縦割りにしてチームで業務にあたるという体制へ。個人の特性や強みに合わせて配置が可能になり、急な依頼にも対応できるようになったということです。

他にも、業務の特徴に合わせてさまざまな工夫を行っています。

<業務の遂行や体調管理等に関わる支援>

  • RPA・ITテクノロジーを活用したチェック体制で業務効率や品質を向上
  • 業務内容を明確にして誰でもわかりやすいマニュアルを作成
  • 絵を使って手順の確認を分かりやすく表示
  • 必要に応じて10分休憩を設ける
  • 壁新聞などで社会状況や季節に応じた情報を発信・共有(在宅勤務が増えている場合は会社HPにも掲載)
  • 指導員や障害のある社員のための産業医、臨床心理士による面談日の設定

障害をもつ社員からは、
「個性を尊重しながらスキルアップできるように関わってもらえる」
「前職に比べてしっかりとしたお給料を頂ける」
「毎日のびのびと仕事が出来て充実しています」
など、高評価を得ています。

また、
「誰かの模範となれるように仕事の完成度を高めていきたい」
「サブリーダーになりたい」
といったスキルアップやキャリアアップへの意欲を語る社員の声も多いようです。

社員同士の交流

ベネッセビジネスメイトでは、社員同士の気遣いや協力が日常の風景となっています。

障害のある社員から見ると、他の社員がみな親切であるとともに、課長やリーダー、指導員といった直接業務に関わる社員以外に、部長からも気遣いの言葉があるとのこと。自らもスキルアップして周りのメンバーをフォローできる喜びを語る声もありました。

指導員と障害をもつ社員の関係についても、「メンバーから、感謝の気持ちを言われたときは、会社の仲間として信頼関係が築かれていると実感でき、とてもうれしく思います」という声のように、信頼し協力し合う様子が語られていました。

社員自身が企画・実施するイベントやスポーツ大会も重要な交流の場。障害者技能競技大会(アビリンピック)にも毎年出場しています。

【参考】
株式会社ベネッセビジネスメイト

リゾートトラスト株式会社の受賞歴・企業理念・企業風土

リゾートトラスト株式会社は、会員制リゾートホテルを中心に事業を展開する総合リゾート企業です。東京・横浜・名古屋・大阪の事業所内にある「事務支援センター」で、障害者雇用を推進しています。

同社の特徴は、特例子会社という形ではなく、同じ事務所の中で障害のある社員と障害のない社員が一緒に働いていること。積極的に業務を切り出して支援センターに移管しており、今では80種類以上の業務を担っています。

2013年には精神障害者の平均勤続年数が5年超に。職場定着を実現した企業としても知られています。

主な受賞歴

  • 2011年 平成23年度 障害者雇用職場改善好事例 優秀賞 受賞
  • 2013年 平成25年度 障害者雇用職場改善好事例 最優秀賞 受賞
  • 2015年 平成26年度 ダイバーシティ経営企業100選
  • 2017年 東京都障害者雇用優良取組企業表彰 受賞
  • 2019年 令和元年度 職場改善好事例 奨励賞 受賞

【参考】
リゾートトラスト株式会社 | CSRサイト

経営理念

リゾートトラストグループの経営理念は、新天地開拓を企業精神として
「信頼と挑戦」
「ハイセンス・ハイクオリティ」
「エクセレントホスピタリティ」
を追求し、お客さまのしなやかな生き方に貢献することです。

その中で、障害の有無によって特別に区別されることなく社会生活を共にできる「本当の意味のノーマライゼーション」を目指し、障害者雇用、シニア世代の雇用、性別等に関係なく活躍できる職場環境作りに取り組んできました。

設備や制度

同社の事務支援センターでは、DM作成や簡易データ入力など障害をもつ従業員の得意な業務を担当。各部門の業務量軽減に貢献しています。

業務を委託した部門では、本来の業務に集中しコスト削減を実現。事務支援センターでは、従業員が会社への貢献を実感し職場定着しやすくなるという「相互向上作用」が生まれているのが特徴です。

<設備等整備や制度導入などの取り組み>

  • ホワイトボードを活用した業務の割り振り
  • 有給休暇とは別の「定期通院休暇制度」の導入(月2日まで、年間12日取得可能)
  • 短時間勤務、フレックス勤務の導入
  • 一定の時間になるとパソコンが自動的にシャットダウンするシステムを導入(労働時間の改善)
  • 東京人事総務部に「障害者雇用・リワーク推進センター」を設置し休職者のリハビリ出勤などを担当

<業務の遂行や体調管理等に関わる支援>

  • 地域の生活支援機関との連携
  • 体調に合わせた勤務時間の設定
  • 特性に合わせた業務の割り振り
  • グループで業務を担当
  • 積極的な職域拡大
  • 業務工程の分析とマニュアルの整備
  • 業務の手順を元にしたチェックシート、タイムスケジュール、日報の作成
  • サポートスタッフ対象の研修を定期的に実施
  • ケース記録を作成しサポートスタッフ間や支援機関との間で情報共有
  • 障害をもつ社員が同じグループにいる他の障害をもつ社員の特性を個別研修で理解
  • 一定の作業能力に達した社員に対するスキルアップ教育(1人2業務以上担当できるように育成)
  • 障害をもつ社員の家族が介護を必要とする場合は、本人了解のもとで支援機関等と連携し支援を実施

それぞれの特性・個性に合わせて業務の割り振りでは、たとえば誰がどのフロアにいるかなどの記憶力に優れている社員が郵便物の仕分けやフロアへ届ける業務を担当。社員自身の朗らかな性格もあり、笑顔や元気な挨拶が他のフロアの社員にも元気を与えているようです。

定期通院休暇制度やグループでの業務は、65歳を超えても仕事と治療の両立がしやすく、事業所としても急な欠勤に柔軟に対応できる環境につながりました。

社員同士の交流

リゾートトラストの事務支援センターは、会社の1つの部署。もともと社内ではあまり認知度が高くなかったものの、同センターの実績が社会の中で評価されていくうちに、ほとんどの社員に認知されるようになったとのことです。

事務支援センターに依頼したDMを取りに来た社員からは、「自分の業務のサポートをしてくれる」ことを実感する声が聞かれます。

事務支援センター内でも、障害をもつ方同士の相互理解やサポート体制を支援しています。たとえば、知的障害についてよく分からず不安を抱えている精神障害の方に個別研修を実施し、それぞれ何が得意で何が得意ではないのか、どの部分をサポートすればよいのかを把握できるようにしました。グループ内での仲間意識の形成と生産性向上につながったとのことです。

障害をもつ社員・家族・支援機関のつながりの場として、年に1回、保護者や支援機関が参加する「保護者会」も開催しています。

【参考】
リゾートトラスト株式会社
検索結果「リゾートトラスト株式会社」|障害者雇用事例レファレンスサービス

好事例で多数受賞する会社における企業風土の共通点

今回紹介した2社には、以下のような共通点があります。特徴は、社員同士が一体感をもって働き、分かりやすい業務マニュアル作成などで障害をもつ社員のスキルアップ、キャリアアップにつなげている点などです。

<好事例で多数受賞している企業の企業風土の共通点>

  • 障害をもつ社員と障害のない社員が一体感を得られる
  • 健康管理を支援する相談体制・休暇制度がある
  • 地域の支援機関や社員の家族との連携している
  • 社内の支援者や上司を対象とする研修の実施している
  • チームで業務を遂行し、キャリアアップや欠勤時の柔軟な対応につなげている
  • 業務工程の分析と分かりやすいマニュアルの整備する
  • 職場定着や復職をサポートする部署を設置する

障害者雇用と職場定着に成功している企業には、

  • 障害特性への理解
  • 特徴・個性を活かせる業務の創出・拡大・割り振り
  • 支援機関との連携

という3点が根付いています。

障害のある社員も障害のない社員も「ともに働いている」「助け合って仕事をしている」ことが感じられる環境なら、お互いに感謝を伝え合ったり一緒に働く喜びを感じやすくなります。

そうすることで社員のモチベーション向上や職場定着につながり、好循環を生み出していけるでしょう。

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