【合理的配慮好事例・第11回】在宅勤務なら日本全国から障害者を募集できる【障害者雇用】


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感染症拡大を背景にテレワークで働く人も多くなった2020年。あらためて在宅勤務のメリットを感じる方も多いのではないでしょうか。障害者雇用でも、障害をもつ方の在宅勤務の可能性が模索されてきました。

合理的配慮好事例解説シリーズ第10回では、そうした在宅勤務による障害者雇用のうち、事業所の所在地とは異なる地域から障害者を雇用している好事例を紹介・解説します。

障害者の在宅勤務で定評あり! チーム制と社員教育がポイント—株式会社沖ワークウェル

株式会社沖ワークウェル(東京都)は、OKIの特例子会社。当初から障害者の在宅雇用に取り組んでいる企業で、従業員数49名のうち32名が障害をもって働く在宅雇用者です。重度の肢体不自由者が活躍しています。

在宅雇用の対象者は全国から募集

同社は、世間でテレワークが話題になる前から積極的に障害者のテレワークを推進してきました。

障害者のテレワークの最大のメリットは、通勤が困難でも就労できるという点。そのため、同社の在宅雇用者は全国各地で業務を行っており、自社開発のコミュニケーターを使って常に連絡を取り合っています。

沖ワークウェルの公式サイトでも、在宅雇用者の都道府県例が紹介されています。

<沖ワークウェルの在宅雇用者が暮らす都道府県の例>

  • 長野県
  • 香川県
  • 鹿児島県
  • 静岡県

チーム制で業務を担当 スキルが高ければリーダー抜擢も

同社では独自のコミュニケーションツールを開発して在宅勤務でも孤独を感じにくい環境を整え、体調やメンタル面への配慮を行ったり、チーム制導入による業務管理や昇給システムを導入したりして、長期雇用を実現しています。

その中で特に特徴的なのがチーム制での業務です。チームは事業ごとに10名程度のメンバーで構成。在宅勤務の社員は必ずどこかのチームに所属して共同で業務を担当します。

チームの中でスキルの高い社員はリーダーに昇格し、全体の進捗管理や顧客対応を担当。業務担当メンバーも、自社開発のコミュニケーションツールで互いに相談や会議を行いながら仕事を進めています。

同社開発のコミュニケーションツール「ワークウェルコミュニケータ」は2020年現在、他社にも提供されています。詳しくは以下の関連記事をご覧ください。

(関連記事)
障害者在宅就労にも!障害者自立支援機器と好事例

在宅雇用でも社員の育成を怠らない

在宅雇用だと、直接会う機会が少ないため社員教育を行いにくいと感じるかもしれません。しかし、沖ワークウェルでは、先輩社員がOJTトレーナーとなり、3年かけてマナーや業務スキルの向上を支援。具体的には、社員それぞれが希望するスキルや資格を4半期ごとに相談し、目標を設定しています。

目標設定の面談を担当するのは、在宅勤務者の労務管理・育成・プロジェクトマネジメントを担う「コーディネーター」と呼ばれる社員。生活相談員や社会福祉士だけでなく、エンジニアなどもコーディネーターに任命されています。

障害特性への配慮という観点の他、専門職の視点からもサポートできるため、職業生活全般から業務に関する個別の具体的な相談まで対応可能です。
【参考】
障害者の在宅雇用事例集—就職支援ノウハウを活用して—|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
株式会社沖ワークウェル 公式サイト

毎日のテレビ会議や専用ポータルサイトで体調管理—株式会社リクルートオフィスサポート

株式会社リクルートオフィスサポート(東京都)でも、都外の各地域から在宅勤務者を積極的に採用しています。従業員334名中227名が障害者で、そのうち127名が勤続5年以上。精神障害者も多く雇用しています。

テレビ会議やチャットシステムを活用しながら研修やミーティングを行い、職場定着へ。これらの取り組みが評価され、平成30年度の障害者雇用職場改善好事例で優秀賞を受賞しました。

在宅勤務制度を導入した背景と準備

同社が在宅雇用を導入した背景には、事業所がある首都圏を中心とする採用では必要な人員を確保できないかもしれないという懸念がありました。首都圏以外の地域から採用するには、通勤の可否に大きな問題があります。そこで、在宅勤務制度の導入が検討されることになったのです。

同時期、北海道旭川市でもテレワークの実証実験を実施。そこで、同社は旭川市に相談。在宅勤務者の採用を開始します。障害者就業・生活支援センターなどを通して5人の在宅勤務者を採用できました。

在宅勤務者に任せる職域の開発を行うべく、同社では業務の見直しも実施。検討の結果、以下のような新しい職域を確保することができたそうです。

<リクルートオフィスサポートで在宅勤務者のために開発された職域>

  • 「SUUMO」の掲載している物件情報内容に誤りがないか審査する
  • 「タウンワークNet」に掲載する求人情報に法令上の不備がないか審査する
  • 「じゃらん」の口コミに不適切な表現がないかチェックする

その後、同社は北海道の釧路市や岩見沢市、沖縄県からも障害者を採用しました。採用後はまず2週間の研修プログラムを在宅勤務者に受講してもらい、業務に必要なスキルの習得を支援。必要に応じてチャットシステムで質問を受け、アドバイスを行っています。

在宅勤務者の1日のスケジュールはテレビ会議の全体朝会から

同社の好事例では、在宅勤務者の1日のスケジュールも紹介されています。

<リクルートオフィスサポートの在宅勤務者の1日>

  • 9:30-10:00 テレビ会議で全体朝会
  • 10:00-12:00 審査業務(業務連絡・相談はグループチャットを利用)
  • 12:00-13:00 昼休み
  • 13:00 業務開始時にチャットで報告
  • 13:00-16:00 審査業務
  • 16:00-16:20 日報作成
  • 16:20-16:30 テレビ会議で全体夕会
  • 16:30 業務終了

出退勤連絡は、就業前と終業後にMicrosoft Teamsに書き込みます。

朝会や夕会は同じ班の在宅勤務者と班長がお互いの顔を見ながら実施することがポイント。天気や体調のこと、当日の業務のことなどを話すだけでなく、お互いの顔色や声、発言の様子などからも体調等の変化がないか確認できるからです。

在宅勤務者の体調管理用にポータルサイト「namara」を活用

ただ、テレビ会議の映像や音声のみから全ての体調を確認することはできません。より正確に把握して業務量の調整等を行うには、本人の自己申告や業務進捗の情報なども重要です。

そこで、同社は在宅勤務者専用のポータルサイト「namara」を立ち上げました。在宅勤務者が毎朝体調を自己申告し、業務進捗を入力するためのサイトです。

もし業務中に体調不良になった場合は、チャットで連絡することで個別面談を受けられます。その面談の内容によって早退や業務量の調整などの配慮へ。必要であれば、東京の事務所に常駐する保健師との面談も可能です。

【参考】
精神障害・発達障害のある方の雇用促進・キャリアアップに取り組んだ職場改善好事例集(平成30年度)|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
株式会社リクルートオフィスサポート 公式サイト

全国から障害者を募集し在宅雇用する際の配慮ポイント

在宅勤務で障害者を採用する際に重要なのは、出勤がないことのメリットを確保しながら自宅で業務を行うことの孤独感や体調管理への配慮を行うこと。今回紹介した2社の例のように、在宅勤務者がスキルアップできる仕組みを整えることも忘れてはいけません。

<在宅雇用で障害者を採用する際の配慮ポイント>

  • テレワークのメリットを活かし、遠隔地からの採用も視野に入れる
  • 個人情報保護等も考慮し、在宅勤務者用の職域を開発する
  • 在宅で受講できる研修プログラムを開発・導入する
  • チーム制などを導入し、業務を分担する
  • テレビ会議やチャットでいつでも相談できる体制を作る
  • 体調管理を把握・支援する仕組みを作る
  • 産業医や保健師などとテレビ会議等で面談できる仕組みを作る

2020年、テレワークに注目が集まる一方で「自宅で本当に仕事しているのか?」「個人情報の扱いは大丈夫か?」等の理由でテレワークを断念した企業もあると言われています。障害をもつ従業員のテレワークについても、同様の不安や「どうやって育成したらいいのか分からない」等の悩みが出てくるかもしれません。

しかし、在宅勤務は障害をもつ方にとって大きな就労機会です。障害者雇用が少なく就職が難しい地域でも募集することで企業側はより広く人材を採用できますし、応募者にとっても引っ越しなどの大きな環境変化を避けながら働けるでしょう。

テレワークに関するサービスやノウハウが増えてきた今こそ、障害者の在宅雇用を成功させるチャンスです。

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