【高次脳機能障害】休職後から復職までの流れ・休職中にやること


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けがや病気での脳の損傷が原因となり、高次脳機能障害になることがあります。回復やリハビリのために休職が必要な場合もあり、ご本人やご家族は不安でいっぱいでしょう。高次脳機能障害がある方が職場復帰するにはどのような準備が必要なのでしょうか。復職プログラムを実施する障害者職業総合センター(NIVR)の取り組みをもとに、休職から復職までの流れとご本人や職場がやれるとよいことをご紹介します。

休職後から復職までの大まかな流れ

けがや病気によって脳に損傷を負うと、それが原因となって高次脳機能障害になるケースがあります。高次脳機能障害でどのような症状が出るか、何ができなくなるかは個人差が大きいものの、主な症状としては

  • 詳しい情報などを覚えられなくなる
  • 集中できなくなる
  • 脳を損傷した部分と反対側の空間の刺激を見落とす
  • 目的にあった行動ができなくなる
  • 感情的、攻撃的になる

などが見られます。

高次脳機能障害になると、まずはけがや病気のための休養期間が必要となり、その後は新しい生活の仕方に向けた評価や診断を受けて医学的リハビリテーションを行うため、仕事を長期間休まなければならないことも多いでしょう。

医学的リハビリテーションなどによって少しずつ生活の仕方を習得していくと、状況に応じて復職に向けた準備が可能になります。


※NIVR「実践報告書No.40」より作成

復職に向けた一般的な流れとしては、けがや病気の治療と医学的リハビリテーションを行って日常生活が安定してきたら、復職に向けて健康管理、仕事に必要な能力の回復や代替手段の習得、職業生活にあった生活リズムの習得などに取り組むことが第一となります。その後、復職後にどのような仕事ができるのかを検討することになるでしょう。

復職に向けて取り組みを進める中で、自分ではできないこと、職場でサポートしてもらえればできることなどについても少しずつ分かってきます。これらのことは、会社側に「配慮してほしい事項」として伝えておくと職場での準備が進めやすくなります。

その後は、主治医や会社の産業医、人事担当者などとの話し合いをもとに、復帰時期や復帰後を調整。事業所によっては、本格的に復帰する前に「リハビリ出勤」で職業生活の練習を行います。そして「復帰して大丈夫そうだ」と判断されれば、いよいよ復職です。

これらの流れについて、次の項目から、NIVRによる「実践報告書No.40 高次脳機能障害者の復職におけるアセスメント」の内容に従って、より詳しく見ていきましょう。

ステップ1 受障・医学的リハビリテーション・在宅生活の安定

まずは復職の準備よりも前に、けがや病気の治療が優先です。手術や検査、療養のための入院期間で身体が回復してくると、やがて医学的リハビリテーションのために転院することになるでしょう。

転院先の病院では、入院しながら症状や障害の状態などを医師に診てもらい、その診断に基づいて医学的リハビリテーション実施します。高次脳機能障害によってできなくなったことをできるようにしたり、代わりの方法を身につけたりするトレーニングです。

退院後は、日常生活を安定させることが目標となります。復職を意識する場合は、特に仕事時間を意識した睡眠リズムや移動・食事・トイレといった普段の活動について、さまざまな工夫をしながら安定して行えるように練習していきましょう。

ステップ2 障害特性の確認・復職に向けた準備・職場との情報共有

日常生活が安定してきたら、高次脳機能障害をもつご本人と企業側の担当者が情報交換を行いながら復職への準備を始めます。ご本人が取り組むこと、事業所側で取り組むことをそれぞれ見ていきましょう。

高次脳機能障害をもつご本人がやること

高次脳機能障害をもつご本人がこの期間に取り組むことは、ご自身の状態を把握し、健康管理をしながら仕事に必要なスキルや代替手段を身につけたり、通勤などの移動の練習をしたりすることです。

NIVR職業センター(以下、職業センター)の復職プログラムでは、次の5つの項目について取り組みを行っています。

  • 障害特性を整理し、職業生活上の課題について理解を深める
  • 生活リズムを整える・健康管理をする・通勤の練習をする など
  • 障害によって困難になったがやる必要のあること(課題)への対処方法を練習し、習得する
  • 復職後の業務に必要なスキル、集中力、体力などの向上を図る
  • 職場に依頼する配慮事項(仕事上のサポート、指示の出し方、環境整備など)を整理する

こうしたことをご本人や家族だけでまとめるのは、とても大変。もし可能なら、職業センターや就労支援機関の復職(リワーク)プログラムを活用するとよいでしょう。

事業所がやること

一方、障害をもつ方が休職している会社側でも、休職期間中に情報共有を行い、準備を進めていく必要があります。休職者の障害特性や必要な配慮についての把握、復帰後に担当してもらう仕事内容等の検討、職場における障害理解を深めることなどです。

職業センターでは、高次脳機能障害をもつご本人だけでなく事業所への情報共有や体制・環境整備のサポートも行っています。職業センターがこの期間に事業主とともに取り組んでいるのは、主に以下の3つです。

  • 休職者の障害特性と就労上配慮が必要なことを確認する
  • 復帰後の職務や配置、労働条件について障害特性等を考慮しながら検討する
  • 復帰後に配置される予定の部署に、ご本人の障害特性や仕事をする上で必要な配慮を説明する

具体的にどのような配慮が職場において求められるかは、個人差や業務内容によって差が大きくなります。「こうした障害特性や課題がある場合は、こういった配慮の仕方がある」という事例や対処策がまとめられた資料をNIVRが作成していますので、ぜひ参考にしてください。

ステップ3 復職に向けた部署や職務、職場環境の検討

いよいよ復職間近の段階では、障害特性や仕事の内容などを考慮しながら、復職後に配属される部署や仕事内容、必要なサポート、環境整備などについて最終調整を行いましょう。職業センターでは、復帰プログラム終了の約1カ月前に、事業所および関係機関との調整を目的とした連絡会議を実施することになっています。

連絡会議のためにいくつかの資料が作成されますが、これらはいずれもご本人・支援者・事業主・関係機関が障害特性や担当予定業務、必要な配慮等について共通認識をもつことが目的です。具体的には、以下のような資料を作成していきます。ご本人や事業所の障害理解や対応方法について共通認識をもてますので、職業センターのプログラムを利用しない方もぜひ参考にしてみてください。

<復職前の連絡会議に向けて作成される資料>

資料名 作成者 内容
リファレンスシート 本人+支援者 障害特性、その対処手段

事業者に求める理解・配慮

連絡会議資料 本人+支援者 受障の状況と経緯

これまでのリハビリ内容

プログラム実施状況

障害特性、その対処手段

報告資料 支援者 プログラム実施状況と結果

体調や生活リズムの状況

主治医からの意見

支援者から見た客観的状況

現在の病状や課題

今後の支援内容

事業所で必要な配慮

復職後の勤務条件など

まず、リファレンスシートと連絡会議資料は、高次脳機能障害をもつご本人が中心となって作成します。もしご本人による作成が困難な場合は支援者が助言したり代筆したりなど、柔軟な工夫が認められていますので、二人三脚で作っていくイメージで進めるとよいでしょう。

一方、報告資料は支援者が作成する資料です。支援者の視点から見て、ご本人がどのような状態かをデータや根拠を示しながら事業所の担当者・関係機関に共有するとともに、復職後も含めた支援の方向性を検討する重要な資料となります。

復職に向けた調整では、ご本人の障害特性と対処策、症状の状況、生活リズムや通院・服薬の状況、適した職域と職場環境、支援方法など、確認・検討すべきことが多岐にわたります。十分に検討し準備できるよう、スケジュールに余裕をもって資料作成を進めていきましょう。

ステップ4 リハビリ出勤・復職可否の判断・復職

配属先と職務内容が決定して復職時期を迎えたら、いよいよ職場での仕事再開です。

この時、いきなり本格復帰するのではなく職業生活に慣れる期間として「リハビリ出勤」を行う企業もあります。リハビリ出勤は、本格的な復職に向けて体を職業生活に慣らし、生活のリズムを整えたり働く感覚を取り戻したりすることが目的です。

期間や勤務時間は企業や状況によって異なるが、1カ月を目安に考えるとよいかもしれません。担当する作業は、無理のないよう復職プログラム等で取り組んできたものや、それに近い作業にすると無理がないでしょう。事業所側でも復職後の支援の練習ができるので、「誰がどのように指示・アドバイスを行うか」を決めて取り組んでみてください。ポイントは、とにかく焦らずじっくり慣れていくことです。

連絡会議やリハビリ出勤のあとは、主治医や産業医、事業所の担当者等と最終確認を行います。そこで復職可能と判断されれば、本格的に復職します。職場復帰にあたり、あらためて障害特性や復職後に必要なサポートを確認するとともに、配属部署の上司・同僚など、仕事で直接関わることの多いメンバーに障害への理解とサポート方法の説明を行いましょう。

まずは「できること」「できないこと」の確認から

高次脳機能障害をもつと、それまでできていたことができなくなるという状況を経験するでしょう。それまでのやり方ではできないことに気づき、ご本人も周囲の方も大きな戸惑いや苛立ちを覚えるかもしれません。そのようなときは、ぜひ「できること」に視線を向けてください。

「できること」には、ご本人が一人でできることもあれば、何らかの道具や手助けがあればできることもあります。注意力が低下したなら「なるべく必要なものだけを準備する」、疲れやすいなら「こまめに休憩をはさむ」、ミスが増えているなら「メモや付箋、手順書などを活用する」など、高次脳機能障害で見られる主な障害特性への対処方法も蓄積されてきています。その一部をまとめたのが、「事業所でやること」でもご紹介した「対処策リスト255」です。

新しいやり方を見つけて慣れていくため、ご本人の「できる・できない」をしっかり確認し、「どのような工夫ができるか?」という視点で他の方や事業所の取り組みなどもチェックしてみましょう。

【参考】
NIVR 『実践報告書No.40 高次脳機能障害者の復職におけるアセスメント』
JEED 『障害者雇用マニュアル6(コミック版) 高次脳機能障害者と働く』 pp.23-33

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