2021/02/26
マスク以外での感染防止対策 精神障害者・発達障害者への新型コロナ拡大の影響
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1年以上続いている新型コロナ感染症の流行。感染症拡大の影響は精神障害や発達障害をもつ方の生活にも及んでいます。どのような影響が出ているのか、どのような対策を続ければよいのか、就労移行支援事業所ルミノーゾでの対策とともにお伝えします。
もくじ
日本における新型コロナウイルス感染症の状況(2021年2月15日時点)
2021年2月15日現在、新規陽性者数は1日あたり1500人未満。全体として新規陽性者数は減少してきています。
とはいえ、4月〜5月の第1波、7月〜9月の第2波と比較すれば、どちらのピークよりも新規陽性者数が多く、新型コロナウイルスの変異株の市中感染も確認されました。東京都を含む一部の地域には緊急事態宣言が出され、引き続き感染拡大防止の対策をするよう強く求められています。
準備が進められている新型コロナワクチンについては、2月中旬に医療従事者への接種が始まりました。高齢者は早くても4月1日以降、その後、高齢者以外で基礎疾患を有する方や高齢者施設等で従事している方を対象に接種が進められる予定です。
※国内の発生状況や新型コロナワクチン接種のスケジュールに関する最新情報は、以下の参考記事でご確認ください。
【参考】
国内の発生状況など|厚生労働省(2021年2月15日閲覧)
接種についてのお知らせ|厚生労働省(2021年2月15日閲覧)
感染症拡大による精神障害者・発達障害者への影響
新型コロナウイルス感染症が広まったことで、多くの障害者が生活しにくくなったり支援を受けにくくなったりしています。主な理由は、外出自粛による隔離された生活や「感染するかもしれない」という不安、そして医療のひっ迫です。
生活や支援への影響
精神障害がある場合、外出自粛や隔離生活などで1人でいる時間が長くなると障害が悪化する恐れがあります。実際、イライラしやすくなったり、生活リズムが崩れたり、運動をしにくくなって身体機能が低下するといった事例があるようです。
営業時間を短くしたり、一定期間は閉めていたりする店舗や事業所に勤務している場合では、そこで働く障害者の収入も減ってしまうという事態が生じます。
また、「感染するかもしれない」という不安が障害者にも支援者にも常にあるのも事実です。障害が重い方ほど、体を接触させたり近くで話したりするような支援が必要になるため、より気をつけなければなりません。感染症にかかることを恐れて、いつもの通院をしにくくなっている方もいるでしょう。
医療への影響
「医療崩壊」「医療のひっ迫」という言葉をたくさん聞いた方も多いはず。新型コロナウイルス感染症の患者が多く入院することで、病院全体での厳しい感染症対策が必要になるとともに、それらの対策や治療で医療従事者は通常の何倍も大変な状況に置かれています。
感染症が拡大する前は、ちょっとした体調不良やケガも病院で診てもらえました。しかし、感染症患者が多い状況では、救急車で搬送される方でさえ受入れ先の病院が見つかりにくいといった状況が続いてきました。
精神疾患をもつ方でも、「入院したいのに、なかなか入院できなかった」という方がいます。入院している方の場合でも、マスクを付けられないため原則として部屋から出られないなどの状況があるようです。
感染症拡大を防ぎながら精神疾患の治療を続けるにはどうすればよいかという課題に、さまざまな解決策が模索されています。
【参考】
新型コロナ 精神医療と当事者への影響|ハートネット
新型コロナ どう守る?障害者の暮らし|ハートネット
新型コロナと障害者の暮らし|練馬区
「ルミノーゾ」での感染症対策
「障がい者としごとマガジン」編集部がある就労移行支援事業所ルミノーゾでも、感染防止対策を行いながら、障害をもつ方への支援を続けています。
<ルミノーゾでの感染防止対策>
- 通所時に入り口で検温し、「体調管理チェックシート」に毎回記入いただく
- 通所したらまず手洗いを行う。昼食前も必ず手洗いを行う
- 1時間おき、あるいは常時換気する(寒さの厳しい日などは1時間おき)
- 手すり、ドアノブ、テーブルなどをこまめに消毒する
- フロア席や面談室にはアクリルパネルを設置する
- フロア席では斜向いになるよう席を配置する
- 事業所内に12名以上にならないよう、通所を午前と午後で分け、密にならないよう人数制限をする
- 利用者、スタッフ、およびその同居する家族に37℃以上の発熱があった場合、通所、出勤を控える(平熱に下がり24時間経過までは、通所・出勤を自粛)
利用者の方が参加しているプログラムは、感染症拡大前と基本的には同じ内容。ただ、感染症流行の影響から企業の採用活動などでオンライン面接が増えているため、オンライン面接対策プログラムの提供を始めました。
体調管理に関するプログラムも増えました。毎月テーマを変えて行うヨガでは、「免疫力を高めるヨガ 〜ヨガと呼吸法で免疫力を高めて、ウイルスやストレスに負けない心と身体を作りましょう〜」といったテーマで実施。他にも、体力アップや免疫アップを意識した運動、座学のプログラムがあります。
事業所間でのスタッフや利用者の行き来をやめているので、他の事業所と一緒に行うプログラム(ヨガ、アンガーマネジメント)は、Zoomを使って実施しています。
感染への不安や、ご家族に持病のある方などは、在宅訓練を受けることも可能です。在宅訓練の場合、たとえば次のような流れで訓練を行います。
<ルミノーゾでの在宅訓練(例)>
- Zoomで朝礼(または電話でやり取り)
- テキストや動画を使って学習(資格取得、ビジネススキルアップなど)
- Zoomでグループワークに参加(アンガーマネジメント、ヨガなど)
- 1日の取り組み内容や成果物をメールで送る(テキストで学習した場合はページ数も報告)
- Zoomで終礼(または電話でやり取り)
学習に使う教材は通所で使うものと同じ。自宅にパソコンがない方には、パソコンの貸し出しも行っています。
また、ルミノーゾでは、在宅訓練であっても必ずスタッフと利用者が声を交わすようにしています。なんでもない雑談も大切なコミュニケーション。在宅訓練の方には、孤独を感じないよう特に積極的に声かけを行っています。
どうしてもマスクをつけなければダメ?
新型コロナ感染症が流行した第1波以降、普段の生活でマスクをつけることが推奨されてきました。医療者以外が使えるマスクとして一番飛沫を防止できるのは、サージカルマスクや不織布マスクです。
マスクをつけられない障害特性
サージカルマスクや不織布マスクが効果的ということは分かっていても、つけられない方々がいます。
飛沫の拡散を多く防げるマスクほど呼吸はしにくくなりますし、耳にゴムをかけたり、常に肌に布などが密着したりするからです。感覚過敏などの障害特性をもつ方にとって、マスクをつけ続ける生活はとてもつらいものなのです。
感覚過敏がある当事者から、マスクができないことへの理解を求める声が何度も発信されてきました。「感覚過敏研究所」が作成した意思表示カードを利用する方々もいます。
しかし、感染への不安から「マスクをつけられない人」に対する厳しい視線はまだ多いのが現状です。
マスクをつけられない人ができる感染症対策を知ってもらうことで、その不安を軽減できるかもしれません。
マスクをつけずに感染予防する方法
マスクをつけずに感染を予防するには、6つのポイントがあります。
<ポイント1>他の人から1〜2m離れる
咳やくしゃみ、普通のおしゃべりでも口や鼻から飛沫が出ます。飛沫を自分が浴びない・他の人に浴びせないようにするには、相手から離れればOK。1〜2m(両腕を広げたくらい)が目安です。
<ポイント2>咳エチケットを守る
咳やくしゃみは、特にたくさんの飛沫が出ます。咳やくしゃみをするときは、タオルやハンカチで口と鼻をおおうようにしましょう。タオルもハンカチもない場合は、肘の内側で口と鼻をおおって。また、咳やくしゃみをした後は、なるべく早く手指消毒用アルコールのウエットティッシュなどで手を拭きましょう(できれば手洗いも)。
<ポイント3>食器やタオルなどは自分専用のものを使う
これまでの食事では、大皿から料理を取り分けたり洗面所で皆が同じタオルで手を拭いたりするなど、食器やタオルを共有することもありました。しかし、食器やタオルにはツバがつきやすいので注意が必要です。最初から個別の食器に料理を盛り付けたり、自分専用のタオルを使ったりするようにしましょう。
<ポイント4>大声でしゃべらない
声が大きくなるほど、飛沫も多くなります。相手に聞こえる程度の声の大きさで話すことが大切。もし大きな声を出さなければならない場合は、他の人から2mほど離れましょう。
<ポイント5>外のものにあまり触らない
スーパーやコンビニ、図書館など、多くの人が触るものが置いてある場所では、あまり物に触らずに選ぶようにしましょう。商品や本に触ったあとは、手を洗うまで目・鼻に触れないように注意。ドアを開けるときは、肘の外側で押すとよいでしょう。
<ポイント6>外から帰ったら着替える
買い物や人の多い場所に行ったり、他の人と会って話したりしてから家に帰った場合は、奥の部屋に入る前に着替えを済ませましょう。ウイルスが部屋の奥まで入ってくるのを防ぐことができます。
マスクをつけられない方の感染予防や感覚過敏の方のための意思表示カードについては、以下の関連記事でもお伝えしています。
(関連記事)
マスクをつけられない人・病気とは? 中学生が意思表示カードを考案
人に会いにくい中での「心のケア」、ルミノーゾでお伝えしていること
他の人と会ったりおしゃべりしたりしにくい状況が続くと、孤独感や生活リズムの乱れが生じて、精神疾患の状態が悪くなってしまう場合があります。そのような時は、支援員と電話やチャット、メールで連絡をとったり、オンラインで開催されている当事者会に参加したりしてみてください。
感染への不安から通院を控えたいと思うこともあるかもしれません。しかし、きちんと治療を続けることで、苦しさを和らげることができます。感染症が流行している時期でも、基本的な感染予防対策をしつつ通院は続けましょう。もし37度以上の発熱がある場合は、事前に病院に連絡して通院の仕方を教えてもらってください。
また、新型コロナのニュースばかりを見ていると不安になってしまいます。ルミノーゾで精神障害や発達障害を持つ方にお伝えしているのは、情報の断捨離。少しでも「疲れたな」と感じたら、以下のことを試してみてください。
<ルミノーゾでお伝えしている情報の断捨離>
- テレビをつけっぱなしにしない
- 放送はラジオだけにする
- インターネットニュースは主要な2社だけにする
- Twitterなどもキーワード制限をかけ、見たくないものは目に入らないようにする
感染症対策も1年以上と長期化しています。生活リズムを保ち、手洗い・うがい・消毒・換気など基本の感染症対策を続けながら、心と体を守っていきましょう。