令和2年は民間企業で過去最高の実雇用率、公的機関も前年を上回る雇用障害者数|障害者雇用状況報告書集計結果


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2021年1月15日、厚生労働省から「令和2年 障害者雇用状況の集計結果」が公表されました。2020年(令和2年)の民間企業の法定雇用率は2.2%。民間企業全体での法定雇用率達成には至らなかったものの、雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新しています。

2015年からの推移とともに、2020年の民間企業、公的機関や独立行政法人などにおける障害者雇用状況を見ていきましょう。

民間企業における令和2年の障害者雇用状況

民間企業全体で見ると、雇用障害者数も実雇用率も過去最高を更新。ただ、法定雇用率にはあと0.05ポイント届かず、法定雇用率を達成した企業の割合も48.6%にとどまる結果となりました。

民間企業全体の雇用障害者数・実雇用率

2020年における民間企業の法定雇用率は2.2%。これに対して、実雇用率は2.15%でした。2019年と比べると0.04%増で、わずかに上昇し過去最高を更新しました。

一方、雇用障害者数は約58万人で、2019年より1万7,700人ほど増加。伸び率はややゆるやかになったものの、こちらも過去最高となっています。

身体障害者は約36万人、知的障害者は約13万人、精神障害者は約9万人が雇用されています。

企業規模別に実雇用率を見ると、常用労働者数が1,000人以上となる大企業では法定雇用率を達成。1,000人未満の企業規模においては依然として規模の小さい企業ほど実雇用率が低い傾向が見られます。

企業規模別に雇用障害者数を見ると、身体障害者、知的障害者、精神障害者全てで1,000人以上の企業での雇用数が最多でした。

ただ、各企業規模における障害種別の構成比を見ると、企業規模ごとに多少の違いも見られます。たとえば、身体障害者では300人〜500人未満の企業における約63.4%が、全企業規模の中で最大の比率。知的障害者と精神障害者の最大比率は45.5〜100人未満の企業となっており、それぞれ約24.6%、約16.8%です。

法定雇用率達成企業の割合

民間企業のうち、法定雇用率2.2%を達成したのは48.6%でした。前年より0.6ポイントの上昇です。

全体で10万2,698社ある中で、法定雇用率未達成である企業数は5万2,742社。そのうち45.5人以上300人未満の企業数が4万4,833あり、未達成企業の約85%を占めています。特に45.5〜100人未満規模の未達企業のうち90%以上が障害者を1人も雇用していないということで、前年に引き続き課題となっています。

とはいえ、感染症拡大等の影響が大きく失業者が増えた2020年に、45.5〜100人未満の企業で実雇用率や雇用障害者数が伸びているのも事実。障害者雇用推進の取り組みが結果としてあらわれているといえるかもしれません。

【参考】
新型コロナウイルス感染症関連情報: 新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響 国内統計:完全失業者数|独立行政法人労働政策研究・研修機構

公的機関と独立行政法人などにおける障害者雇用状況

公的機関と独立行政法人などにおける障害者雇用では、全体として多くの機関が法定雇用率を達成しました。一方で、市町村の機関や教育委員会では課題の残る結果となっています。

公的機関と独立行政法人などにおける実雇用率

国や都道府県、教育委員会、独立行政法人等の障害者雇用状況については、国の機関、都道府県の機関、独立行政法人等で法定雇用率2.5%を達成しました。

これに対し、市町村の機関は昨年同様に実雇用率2.41%で法定雇用率未達。教育委員会でも、昨年から実雇用率が0.16ポイント伸びたものの2.05%にとどまり、法定雇用率2.4%を達成しませんでした。

法定雇用率を達成した公的機関や独立行政法人などの割合、雇用障害者数

公的機関と独立行政法人などにおける法定雇用率を達成した機関の割合は、以下のようになっています。

<法定雇用率を達成した公的機関と独立行政法人などの割合と雇用障害者数>

  達成機関の割合 障害種別 雇用障害者数
97.8% 身体 5,696.5
知的 250.5
精神 3,389.0
都道府県 89.3% 身体 8,343.0
知的 228.5
精神 1,128.0
市町村 70.6% 身体 26,554.0
知的 1,141.5
精神 3,728.5
教育委員会 38.6% 身体 12,124.0
知的 653.0
精神 2,179.0
独立

行政法人

78.8% 身体 7,965.5
知的 1,632.5
精神 2,161.5

公的機関や独立行政法人等における障害者雇用の課題として浮かび上がってくるのは、教育委員会での達成率の低さです。

前年と比較すると、都道府県の教育委員会では全体として実雇用率が0.19ポイント伸びましたが、市町村教育委員会での実雇用率が0.03ポイント下がり、法定雇用率達成機関の割合も16ポイント下がっています。

市町村教育委員会での雇用障害者数は約93人増えていますから、地域によって障害者雇用に偏りがあるだろうことが伺えます。

なお、都道府県の教育委員会の実雇用率では、次のような大きな地域差が見られました。

<教育委員会での法定雇用率(2.4%)を達成した都道府県TOP5と実雇用率>
熊本県 2.83%
滋賀県 2.66%
高知県 2.65%
香川県 2.61%
広島県 2.59%

<教育委員会での法定雇用率未達の都道府県(一部)と実雇用率>
青森 1.70%
群馬 1.25%
愛知 1.14%
兵庫 1.42%
沖縄 1.70%

実雇用率が高い産業と低い産業は?

障害をもつ方の就職先として考えられることの多い民間企業。令和2年では、どのような産業で障害者の実雇用率が高くなったのでしょうか。

実雇用率が高い産業

実雇用率が高い産業のTOP5は、「医療・福祉」「生活関連サービス業、娯楽業」「電気・ガス・熱供給・水道業」「運輸業、郵便業」「製造業」です。

<産業TOP5の実雇用率と障害種別雇用障害者数>

  実雇用率 障害種別 雇用障害者数
医療・福祉 2.78% 身体 43,426.0
知的 22,682.5
精神 17,358.0
生活関連サービス業

娯楽業

2.33% 身体 5,189.0
知的 5,155.5
精神 1,790.0
電気・ガス・

熱供給・水道業

2.31% 身体 4192.5
知的 398.0
精神 431.5
運輸業、郵便業 2.23% 身体 25,035.0
知的 7,167.0
精神 4,118.0
製造業 2.16% 身体 100,380.5
知的 36,775.5
精神 16,290.0

実雇用率が低い産業

これに対して、実雇用率が低い産業は、「教育・学習支援業」「情報通信業」「不動産業、物品賃貸業」「建設業」となっています。

<実雇用率が低い産業と障害種別雇用障害者数>

  実雇用率 障害種別 雇用障害者数
教育・学習支援業 1.71% 身体 6,029.0
知的 1,057.5
精神 1,322.5
情報通信業 1.77% 身体 20,539.0
知的 1,777.5
精神 6,008.5
不動産業、物品賃貸業 1.81% 身体 5824.0
知的 1,489.0
精神 1,408.0
建設業 1.93% 身体 13,060.5
知的 904.0
精神 1,893.0

2018年・2019年(法定雇用率2.2%時代)の障害者雇用状況と比べると・・・

2020年の障害者雇用状況を2018年や2019年と比較すると、全国の民間企業の実雇用率はどの企業規模においても増加。2019年から2020年にかけて、企業規模別の達成企業の割合は多くの企業規模で微増だったものの、常用雇用者数1,000人以上の企業では大きく増えました。

ここでは、特に東京都と神奈川県でどのように推移しているのかを見てみましょう。

東京都・神奈川県における実雇用率の推移

東京都と神奈川県は、法定雇用率2.2%となった2018年以降、実雇用率でも法定雇用率達成企業の割合でも微増を続けています。ただ、いずれも都県の民間企業全体では法定雇用率を達成していません。

<東京都・神奈川県の民間企業の実雇用率(2020年)と達成企業の割合>

  • 東京都:実雇用率 2.04%(達成企業の割合 32.5%・算定対象企業数2万1,680)
  • 神奈川県:実雇用率 2.13%(達成企業の割合 47.4%・算定対象企業数4,815)

特に、東京都の民間企業の実雇用率は2018年以降で見ても全国ワースト1位。東京都では他の道府県とは1桁違う企業数(2万1,680)が算定対象となっているため、法定雇用率達成企業数が全国トップ(7,049)であっても割合としては最下位なのです。

民間企業が法定雇用率(2.2%)を達成した都道府県は?

都道府県別に見た民間企業の実雇用率のうち法定雇用率(2.2%)を達成している道府県は以下の通りです。

<民間企業が法定雇用率を達成した道府県(2020年)>

北海道 2.35% 島根 2.59%
青森 2.30% 岡山 2.44%
岩手 2.28% 広島 2.25%
秋田 2.25% 山口 2.61%
埼玉 2.30% 徳島 2.22%
石川 2.35% 愛媛 2.29%
福井 2.44% 高知 2.40%
長野 2.25% 佐賀 2.65%
三重 2.28% 長崎 2.61%
滋賀 2.29% 熊本 2.35%
京都 2.24% 大分 2.55%
兵庫 2.21% 宮崎 2.52%
奈良 2.83% 鹿児島 2.44%
和歌山 2.53% 沖縄 2.74%
鳥取 2.37%  

この中で、対象企業数が3,000を超えるのは

  • 北海道(達成企業の割合 50.9%・算定対象企業数3,734)
  • 埼玉(達成企業の割合 49.5%・算定対象企業数3,494)
  • 兵庫(達成企業の割合 50.9%・算定対象企業数3,481)

の3つ。いずれも5割ほどの企業が法定雇用率を達成しています。

東京都、神奈川県においても、まずは5割の民間企業で法定雇用率を達成することが目標の1つになるでしょう。

なお、2021年3月からの法定雇用率の引き上げが伝えられており、

  • 民間企業 2.3%
  • 国及び地方公共団体、特殊法人 2.6%(教育委員会2.5%)

となります。

感染症の流行で就職活動にも影響が大きい状況ですが、法定雇用率達成に向けて障害者雇用が推進される可能性も。ハローワークや地域障害者職業センター、就労支援事業所などと連携し、安全な採用・就職活動を続けていきましょう。

※各用語解説や令和元年の状況については、以下の記事もあわせてご覧ください。
令和元年の障害者雇用数が過去最多に|障害者雇用状況報告書集計結果

【参考】
障害者雇用状況報告の集計結果について|厚生労働省

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