2021/01/08
アビリンピック過去問題|全国大会第38回(2018)家具と木工
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全国アビリンピックの競技種目には、木材を加工して製作を行う競技が2つあります。家具を作る競技「家具」と小箱を作る競技「木工」です。どちらも毎年同じ課題が出され、選手たちは何度か参加しながら高い技術を競い合っています。
2018年の全国アビリンピックでは、「家具」の注意事項や使用できる工具類に若干の変更が見られました。
競技種目「家具」の課題内容と前大会からの変更点
アビリンピック競技種目の1つ「家具」は、原寸図を作成し、その後に手工具や木工機械を使って「花台」を製作する技術を競う競技です。製作する花台は、毎年同じものですが、原寸図作成は2017年大会から追加されました。
身体障害者・知的障害者・精神障害者が参加できます。
「家具」の全体的な難易度は、「2級家具製作(家具手加工作業)」と同程度です。正確に、かつ効率的に作業を進めないと高評価を得にくいでしょう。特に花台の脚部は、正面から見ると左右対称でも側面から見ると左右非対象という構造。これをきちんと、ねじれなく仕上げなければなりません。
2018年大会の「家具」では、課題内容自体に変更はありませんでした。しかし、注意事項や選手が持参するもの、競技会場に準備してあるものに若干の変更が見られます。
「家具」の注意事項における変更点
まず注意事項では、ほぞ穴加工についての規定が明記されました。内容は以下の3点です。
- ほぞ穴加工には、角のみ盤を使用しても良い
- ほぞの加工は手加工に限る
- 前脚のほぞ穴加工に角のみ盤を使用する場合は、治具を使用する(治具は選手が持参)
「家具」で選手が持参するもの、会場に準備されているものの変更点
競技会場に選手が持参するものと会場に準備されているものでは、数点の変更・追加が見られます。
選手が持参するものでは、斜め定規が自由定規に変更。さらに、留定規(150-200mm)と直角木口台(300mm×300mm程度)が追加されました。
そのため、選手による持参が認められるものは以下のようになっています。
<選手が持参できるもの>
- 両⻭のこぎり、胴付のこぎり、ほぞびきのこぎり
- 平(手)かんな、小かんな、きわかんな、⻑台かんな
- 追(大)入れのみ、向持ちのみ、薄(突き)のみ、かき出しのみ
- ものさし、さしがね、ノギス、直角定規(スコヤ)、自由定規、挽き当て定規 、留定規
- 白書き
- 筋けびき、ほぞ(のみ)けびき、⻑さおけびき
- 玄のう
- 端金
- 平行クランプ
- ドリル(木ねじ下穴用とだぼ穴用)
- ドライバ(プラス:呼び径4.5用)
- だぼ(φ10mm)
- 角のみ盤用治具
- 鉛筆、消しゴム
- 座布団、毛布等の敷物など
- のりべら
- 打ちあて
- といし
- 油つぼ
- 作業服、作業帽、作業靴
- 防塵メガネ
- 直角木口台
- 飲料
会場に準備されるものについては、荒神箒とボンド洗い用おけが追加されました。荒神箒は角のみ盤と卓上ボール盤に1本ずつ、おけは選手1名につき1個が用意されます。
「家具」の制限時間と製作上のポイント
前項で触れた変更点以外は、2017年大会と同内容で「家具」の競技が行われました。
「家具」はアビリンピック競技種目の中でも長丁場となる競技の1つ。2018年大会では朝9時に始まり、昼休憩を1時間挟んで、最長午後4時までの時間帯で実施されています。
競技の制限時間については、標準時間は5時間半、打ち切りは6時間です。
作品は、原則として標準時間内に完成させなければなりません。標準時間を過ぎると減点されますので、落ち着いた時間管理と効率的な作業を心がけましょう。さらに、作業に適した服装で安全に進めないと減点となります。慌てて作業しケガをしないよう、十分注意してください。
「家具」の評価ポイントは5つ。これらを意識しつつ、花台を製作しましょう。
<アビリンピック競技種目「家具」の評価ポイント>
- 板と板を正確に接合する
- 角材と角材を正確に接合する
- 左右の脚が対称に組み上げられている
- ケガをせず、安全に作業ができている
- 時間内に完成し、見栄えよく仕上がっている
製作は、まず原寸図(脚部の側面図)の作成から始まります。花台は特徴的な形状をしていますので、間違いのないように正確に作図することが重要。原寸図が完成したら、各材料を指示にしたがって加工しましょう。仮組み調整まで終わった段階で一度検査を受け、OKが出てから組立に入ります。
花台の形状や製作にあたっての仕様、各種注意事項等は、「障がい者としごとマガジン」の記事「アビリンピック過去問題|第37回(2017)家具と木工」でも詳しく紹介しています。実際に製作をしてみたい人は、ぜひ参考になさってください。
なお、2018年大会では金賞受賞者とその他の選手とで差がつき、銀賞該当者は出ませんでした。差がついたのは、形状寸法の精度の部分です。
講評では、最初に作成する原寸図を有効に使って正確な墨付けを行うことの重要性が指摘されています。他に、効率的な時間の使い方として、接着硬化時間を活用して別の作業を進めるなどの工夫が指摘されました。
(関連記事)
アビリンピック過去問題|第37回(2017)家具と木工
競技種目「木工」の課題内容
アビリンピック競技種目「木工」は、知的障害者のみが参加できる種目です。課題内容は毎年同じで、「蓋付き小箱」を制限時間内に完成させるというもの。2018年大会でも特に変更はありませんでした。
全体の作業の流れは、指示に従った墨付け・加工・組立となっています。支給された材料を加工する際は、正確な寸法になるよう細心の注意を払ってください。
「木工」の制限時間と製作上のポイント
「木工」の制限時間は、標準時間が5時間、打ち切り時間は6時間です。「家具」と同じく、標準時間を超えると減点対象となり、6時間の時点で打ち切られます。
2018年は午前9時から午後4時(昼休憩1時間)という日程で実施されました。
「木工」の評価ポイントは主に4つあります。
<アビリンピック競技種目「木工」の評価ポイント>
- 高い加工精度
- 小口などの出来映え
- ケガをせず、安全に作業ができている
- 時間内に作品が完成し、美しく仕上がっている
加工では、特に三枚接ぎで苦戦する選手が多いようです。2018年大会の金賞受賞者も、大会前は三枚接ぎを隙間なくきれいに仕上げられるようコツコツ練習したとのこと。まっすぐのこぎりを挽くことの大切さを伝えていました。
講評では、2018年の作品は全体的に加工が基本に忠実で出来が良かったと評価しています。ただ、各選手が持参し使っている刃物の切れ味については課題が見られました。のみ・かんな刃は、裏押しを行って刃裏を鏡面仕上げにすること、切れ刃が丸刃にならないように研ぐこと、工具類を準備する際は必ず刃の調整を行うことなどを指摘しています。
「木工」の課題図は毎年大会前に公開されています。実際に課題製作を行ってみたいという人は、公式ページで各図面や支給材料を見てみてください。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の全国アビリンピックのページで、過去3年分の課題が公開されています。
【参考】
過去3年の技能競技課題(参考資料)|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構