2026/10/08
大人のADHDとは?原因と種類、診断・治療・訓練方法
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ADHDとは、日本語で「注意欠如多動症」のこと。発達障害の1つです。近年、大人になってからADHDと診断される例が増えています。大人のADHDとは何か、ADHDの原因や種類、診断と治療の概要を解説します。

もくじ
大人のADHDとは何か?

まずは、「ADHDとは何か」という基本とともに、なぜ「大人のADHD」という言葉が広まったのかを見ていきましょう。
発達障害の1つ、ADHDの正式名称と定義
ADHDの正式名称は「Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder」、日本語では「注意欠如多動症」です。「注意欠陥・多動性障害」という呼ばれ方もあります。神経発達症(発達障害)の1つです。一般的な場面では「ADHD」(読み方:エー・ディー・エイチ・ディー)と言われます。
ADHDの定義は、国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターが掲載しているものが参考になるでしょう。
| 発達障害情報・支援センターが掲載しているADHDの定義※ |
注意持続の欠如もしくは、その子どもの年齢や発達レベルに見合わない多動性や衝動性、あるいはその両方が特徴(通常7歳以前にあらわれる)。
一般的に多動や不注意といった様子が目立つのは学齢期。 思春期以降はこういった症状が目立たなくなるともいわれている。 |
つまり、小学校時代から
- 落ち着いて座っていることが苦手
- 集中することが苦手
- 衝動的に行動してしまう
といった特徴が続いており、それによって困りごとが発生している場合は、「ADHDの特徴が関係しているかもしれない」ということになります。
障害による具体的な特徴は「特性」や「障害特性」とも呼ばれます。ADHDに関しては多くの特性が指摘されていますが、実際にどういった特性が現れるかは、一人ひとり異なります。
※各障害の定義|国立障害者リハビリテーションセンター より編集部作成
「大人のADHD」の意味と二次障害
ADHDの定義から、「大人になってから後天的にADHDになる」ということはありません。多くの場合は、子ども時代にADHDの診断を受けます。ところが、近年は大人になって診断されるケースも増えてきました。これが、「大人のADHD」です。
なぜ大人になってからADHDに気づくのでしょうか。そのきっかけとしてよくあるのが、併発している他の精神疾患による受診です。
発達障害の特性によって生じるつまずきが原因となり、心身の不調や問題となる行動が発生することがあります。これを「二次障害」と呼びます。
二次障害は生活や仕事に支障となるケースが多く、本人やご家族が困ってしまいます。そこで医師に相談して、「おおもとにADHDの特性があった」とわかることがあるのです。
【ADHDの二次障害の例】
| 不調が出るところ | 不調の具体例 |
| 身体面 | 頭痛・食欲不振・不眠など |
| 精神面 | 抑うつ状態・適応障害・うつ病・双極性障害・不安症など |
| 行動面 | 他者への暴言・暴力、自分への攻撃など |
ADHDをはじめとする発達障害の特性は、それらをもたない人には、なかなか理解してもらえません。周りの人から「わがまま」「やる気がないのか」といった否定的なことを言われることも、他の人より多いでしょう。これが繰り返されると、
「頑張っているのにできないなんて、自分はダメな人間なんだ」
「どうせできるようにならない。努力しても無駄なんだ」
といった思いが強くなります。自己否定的な考え方が、常態化してしまうのです。そのつらさの蓄積が、二次障害を引き起こします。
ADHD当事者の割合は何人に一人?男女比は?
ADHD当事者の割合は、大人と子どもで異なります。子どもの場合は、学年によって差があるものの、およそ20〜30人に1人と言われています。大人になると、約40人に1人いるとされます。
子どもより大人のほうが割合が少ない理由は、周囲への適応にあるようです。経験を積むことで、状況に応じた対応方法を身につけ、特性の影響を抑えられるようになってくるということです。
男女比については、子どもの場合、男子:女子=3:1の割合となっています。大人では、ほぼ1:1であり、男女差はあまり見られません。子どもの頃に男子のほうが3倍前後多くなる理由には、「女子は特性が気づかれにくい」ということがあります。
ADHDには不注意・多動性・衝動性という3つの特徴がありますが、女子の場合、このうち不注意の特性が強く出るタイプが多いとのこと。行動の面では落ち着いて見えることも少なくないため、ADHDの特性があることに気づかれにくいと言われています。
ADHDとASD(自閉スペクトラム症)、LD(学習障害)の違い・併発

ADHD当事者の中には、ASD(自閉スペクトラム症)やLD(学習障害)を併発している人もいます。これら3つは、いずれも発達障害の1つです。それぞれの違いは、下の表のようになります。
【ADHD、ASD、LDの違い】
| 種類 | 主な特徴 |
| ADHD (注意欠如多動症) |
不注意・多動性・衝動性がある
|
| ASD (自閉スペクトラム症) |
共感性に乏しい・強いこだわりがある
|
| LD (学習障害) |
読み・書き・計算・推論などで、特別苦手なものがある
|
ADHDは集中力や落ち着きのなさ、ASDは他者との交流の困難さや興味の幅の狭さ、LDは学習に必要な基本能力の育ちにくさが特徴です。
ADHDと一口に言っても、
- ADHDだけで、ASDもLDもない人
- ADHDと共にASDを併発しており、LDはない人
- ADHDと共にASDもLDもある人
といったように、多様な人がいます。
ADHD、ASD、LD、そして知的障害の違いについては、以下の関連コラムでも解説しています。併せてご覧ください。
(関連コラム)
分かりやすい大人の発達障害と知的障害の違い
ADHDの原因は生まれつきの脳の仕組み
ADHDの原因は、生まれつきの脳の特性にあると言われています。明確な原因はわかっていないものの、遺伝的な要素と環境的な要素が組み合わさって特性が現れると考えられています。
環境的要素として考えられているのは、胎児期のものを指します。出生後の「親の教育」や「しつけ」「愛情」ではありません。胎児の頃にアルコールやタバコへの暴露があったり、感染症に罹患したり、外傷性脳損傷などがあったりした場合に、遺伝的要因と複雑に絡み合ってADHDの特性が現れるのではないかとされています。
ADHDの3つの種類

ADHDには、3つの種類があります。「不注意優勢型」「多動性・衝動性優勢型」そして「混合型」です。
不注意優勢型の特徴
不注意優勢型は、集中したり落ち着いて考えたりすることが苦手なタイプです。より具体的には、次のような特徴が見られます。
【不注意優勢型の特徴】
- 細部に注意を払うことが苦手
- 忘れ物やなくし物が多い
- 指示を忘れてしまい、やるべきことを終わらせられないことが多い
簡単に言えば、不注意優勢型の人は頭の中が忙しく、1つのことに集中しにくいというものです。
ただ、頭の中が忙しくても、行動面では落ち着いているように見えることがあります。こうした場合、大人になるまでADHDの特性があることに気づかれにくくなります。先述した子どもにおけるADHDの男女比で女子の割合が少ない理由と考えられているケースです。
多動性・衝動性優勢型
多動性・衝動性優勢型は、不注意であるという特性が行動にまで現れているタイプです。例えば、次のような特徴が見られます。
【多動性・衝動性優勢型の特徴】
- 落ち着いて座っていることが苦手
- しゃべりすぎてしまう
- 相手の話を遮って意見を言うことが多い
- 待てずに割り込んでしまうことが多い
- 後先を考えずに学校や仕事をやめてしまう
特性が強く表れていると、「授業中に教室を飛び出してしまう」「突然道路に飛び出してしまう」などの行動が見られることもあります。
大人の場合は、経験や訓練によって危険な衝動的行動を減らすことに成功する人もいます。ただ、何となくずっとそわそわした様子を見せたり、一人でしゃべりすぎて周囲を疲れさせてしまったりするといった行動は、依然として見られるかもしれません。
混合型
混合型は、不注意と多動性・衝動性の両方が混在しているタイプです。
後でご紹介する診断基準おいて、不注意に関する項目と多動性・衝動性に関する項目の両方に一定数以上当てはまる場合、混合型と診断される可能性が高くなります。
大人のADHDはどこで診断する?検査と治療方法

ADHDの診断は、医師によって行われます。
ADHDに関する情報がインターネットでも閲覧できるようになり、そこにはセルフチェックリストも掲載されているかもしれません。
しかし、たとえセルフチェックで当てはまる項目が多かったとしても、それだけでは「ADHDである」という確定診断にはなりません。双極性障害の躁状態や複雑性トラウマなど、ADHDではない精神疾患や他の要因で似たような症状が出ている可能性があるからです。
では、大人のADHDの診断に関して相談したいとき、何科を受診すればいいのでしょうか。
大人のADHDは病院の何科を受診する?
大人がADHDの可能性について相談したいときは、病院の精神科または心療内科を受診しましょう。診療所・クリニックの場合は、名称に「心療内科」「精神科」ではなく、「こころ」「メンタル」といった言葉が用いられていることもあります。
また、近年は発達障害に関する認知・理解の広まりから、発達障害専門外来を設けている病院もあります。
ADHDの診断基準
大人のADHDの診断にあたっては、本人が12歳前後のときにどのような様子だったかを知る必要があります。これには、家族へのヒアリング、小学校時代の成績表や当時の担任からのコメントなどが重要です。
ADHDの診断基準には、アメリカ精神医学会による「DSM-5」が用いられます。不注意に関する9項目と多動性・衝動性に関する9項目があり、該当する数によってADHDのタイプが診断されます。
【ADHDの診断基準(DSM-5)】
| 領域 | チェック項目 |
| 不注意 |
|
| 多動性・衝動性 |
|
| その他 |
|
不注意に関する項目に6つ以上当てはまれば、不注意優勢型。多動性・衝動性に関する項目に6つ以上当てはまれば、多動性・衝動性優勢型とされます。両方についてそれぞれ6つ以上当てはまる場合は、混合型です。
ADHDの診断に活用される心理検査・知能検査
診断に際して、本人への心理検査・知能検査を行うこともあります。
心理検査は、本人の行動や傾向について質問に答えるもの。ADHDの特性に当てはまるものが、どのくらいあるのかを見るために行います。
知能検査については、一般的にWAIS-Ⅳが用いられます。全検査IQ(FSIQ)とともに、言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度といった各指標や、その下位項目における能力のバラつきを見るためです。
ただし、心理検査も知能検査も、診断においてはあくまで補助的ツールです。この検査結果だけで診断を確定できるわけではない点にご注意ください。
ADHDの薬物療法
ADHDの治療には、薬の服用によって困りごとを軽減する方法があります。服薬それ自体で特性を消したり、ADHDを根治させたりすることは、今のところできません。それでも、不注意や多動性・衝動性をある程度抑えられる可能性があります。
また、ADHDの特性そのものではなく、特性から生じている二次障害や、二次障害ではない精神疾患の治療で服薬している人もいます。
【ADHD当事者が行う薬物療法の例】
| 目的 | 対象となる疾患・作用など |
| 二次障害ではない精神疾患の症状緩和 | 統合失調症、てんかんなど |
| 二次障害である精神疾患の症状緩和 | うつ病・双極性障害・社交不安症など |
| ADHDの特性の抑制 | 脳内の神経伝達物質の働きを強める |
薬物療法で気をつけなければならないのは、体質や改善したい困りごとは一人ひとり異なるということです。同じ薬でも、人によって効き方が異なったり、副作用が強く出たりすることがあります。
勝手な判断で飲む薬を増やす・減らす・やめるといったことをすると、ADHDによる困りごとを軽減できないまま、健康を害する恐れもあります。医師・家族とじっくり相談しながら、「何のために服薬をするのか」を明確にしましょう。服薬のメリット・デメリットを把握したうえで決めることが大切です。
ADHDの特性による困りごとの軽減には、服薬と併せて、次にご紹介する認知行動療法などのトレーニングと本人に合った環境調整も行う必要があります。
ADHDの認知行動療法・環境調整
認知行動療法とは、課題に対して目標を設定し、「どうすればいいか」を練習するものです。カウンセリングと共に実施されることが多く、困りごとの原因や具体的な対処法を理解しながら進めます。
認知行動療法によるトレーニングを通じて、問題の軽減・改善につながる対処法を習得できたら、それをルーティン化することもポイントの1つです。「考えなくてもできる」ようになることで、日常生活や仕事、人間関係での振る舞いが、よりスムーズになるからです。
そして、同時に進めるのが環境整備です。例えば、
- タスクを細分化して、1つのタスクにかかる時間を減らす(注意力を維持する負担を減らす)
- 集中を妨げるような刺激(光・音など)を減らすため、照明の明るさを調整したりパーティションを設置したりする
- 刺激を減らすために、通勤中や仕事中は本人がカラーグラスや耳栓・イヤーマフを着用する
といった工夫があります。
ゲーム式の治療法(6歳〜18歳が対象)
大人のADHDの治療には適用されませんが、6歳以上18歳未満を対象とするゲーム式の治療法も登場しました。2026年6月から保険適用となったADHD治療用アプリ「エンデバーライド」です。
エンデバーライドは、注意欠如多動症治療補助プログラム(管理医療機器)として、国内で初めて厚生労働省から承認を受けました。ゲーム式のシステムで、
- 特定のものに注意を向ける練習
- 他の余計な刺激で気をそらされにくくする練習
- 注意を切り替える練習
ができます。
処方を受けるには医師による診察が必要です。
ADHDで障害者手帳を申請できる条件

ADHDの確定診断を受けており、生活や仕事で具体的な困りごとが生じている場合、精神障害者保健福祉手帳(以下、精神障害者手帳)の交付を受けられる可能性があります。
手帳申請の条件と交付されないケースについて、簡単にご紹介します。
ADHDは精神障害者手帳の交付対象
発達障害の1つであるADHDは、精神障害者手帳の交付対象です。そのため、ADHDで日常生活や仕事に支障が出ていれば、精神障害者手帳を受け取れます。
精神障害者手帳には3級から1級までの3つの等級があり、どれに該当するかは障害の状況によって変わります。数字が小さくなるほど障害が大きく、受けられる障害福祉サービスの幅も広がります。
交付されている人が多い2級と3級については、以下の関連コラムで詳しく紹介していますので、併せてご覧ください。
(関連コラム)
精神障害者手帳2級・3級はどんな人?違いと受けられるサービス
ADHDでも障害者手帳をもらえないことがある
ただし、「ADHDでも障害者手帳がもらえない」というケースがあります。それは、次のような場合です。
【ADHDでも精神障害者手帳がもらえないケース(例)】
- 医師からADHDの確定診断を受けていない
- 医師から「ADHDの傾向がある」と言われたが、グレーゾーンであり確定診断ではない
- 初診から6カ月以上経っていない
精神障害者手帳の交付を受けるには、少なくとも医師から確定診断を受け、「精神疾患が原因で6か月以上にわたって日常生活や社会生活に支障を来している」という条件を満たさなければならないのです。
手帳申請の具体的な流れや手続きについて、詳しくは以下の関連コラムをご確認ください。
(関連コラム)
精神障害者手帳の対象となる病名・障害と申請・更新の手続き
困りごとの“本当の理由”を探ろう
これまで何となく「うまくいかない」「他の人と同じようにできない」と感じていた人が、その原因の根本にADHDの特性があったということを知ると、「自分の努力不足ではなかったんだ」と安心できることがあります。
ADHDの特性や対処法のノウハウを他の当事者から学ぶという視点が生まれ、困りごとに対して前向きに工夫できるようになった例も見られます。
今、生活や仕事で具体的な困りごとを抱えているなら、まずは医師やカウンセラーなどの専門家に相談してみてはいかがでしょうか。自分だけでは気づかなかった原因がわかるかもしれません。
【参考】
【画像・イラスト素材提供】
どんぐりん/ photo AC
mapo/ photo AC
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